2017年11月12日日曜日

中国のペトロ・ユアンが軍産複合体によって支援されている米ペトロ・ダラーに挑戦し始めると、通貨戦争が激化



安倍首相はドナルド・トランプ大統領の日本訪問に先立って、「日米同盟の絆をさらに確固たるものにしていきたい」と記者会見で述べた [1]

しかしながら、米国による単独覇権から多極的世界に移行する際に、いわゆる「ツキジデスの罠」に米国が陥ったとしたら、「日米同盟の絆をさらに確固たるものにする」という政治目標は日本にいったい何をもたらすのであろうか。米国の現実の対中政策を見ると、米国は最後の最後まで軍事力に頼って台頭する中国を抑えようとしている。最悪の場合は戦争だ。

米中間の通貨戦争(つまりは、覇権争い)に当たっては、米国は日米同盟を通じて日本に対してどんな役割を求めてくるのであろうか?その展開次第では、これは日本人にとっては死活問題となりそうだ。

この問いかけに対する答の内容は人さまざまである。

ここに、最近の記事がある。「中国のペトロ・ユアンが軍産複合体によって支援されている米ペトロ・ダラーに挑戦し始めると、通貨戦争が激化」と題されている [2]

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。もちろん、ここに述べられている見方はいくつかのあり得るシナリオの内のひとつである。


<引用開始>




















Photo-1

米ドルの価値が低下し、それに伴う地政学的状況についてあれこれと考える際に決まって私の頭をよぎるのはジェラルド・セレンテの言葉である。彼はTrends Research Institute の創立者であって、「すべてに失敗した時、彼らは戦争を始める」と述べている。米ドルが世界の準備通貨の座を失いつつあることから、世界戦争は現実として避けようがないようだ。特に、中国やロシアおよびイランが米ドルをうっちゃって、中国の「ぺトロ・ユアン」といった他の通貨を使おうとする戦略的な動きをとる場合には、ことさらにそう思える。中国は原油先物市場での新たな取引を金に裏付けされた自国通貨「ユアン」で行うことを決定している。これは世界経済の力学に大きな変化をもたらす。中国は今年末にはペトロ・ユアンを立ちあげる準備をしており、これは世界の準備通貨としての米ドルに脅威を与えよう。

第二次世界大戦が終焉に向かっていた頃、国際経済システムは最悪の状態にあって、新しい経済システムを作る案が浮上した。19447月、730人超の代表者がニューハンプシャー州のブレトンウッズで開催された国連の金融財政会議に集まり、ブレトンウッズ協定に署名した。この協定は国際復興開発銀行(IRBD)や国際通貨基金(IMF)の設立に向けた規則や規制方針を設定しようとするものであった。IMFの主要な目的は支払いにおける一時的な不安定を防止することにあった。ブレトンウッズ協定の枠組みは各国間の貨幣価値を制御することであった。各国は自国通貨が金に対して定められた一定の為替レートの範囲内に収まるよう所定の通貨政策を維持しなければならないとされた。1971年、米国は米ドルの金との兌換性を中止した(当時、金の固定相場は1オンス当たり35米ドルであった)。これで、ブレトンウッズ体制は終わり、米ドルは不換紙幣となり、中央銀行(特に、連邦準備銀行)は「いくらでも増刷する」ことが出来るようになった。

中国の動きは何らかの影響をもたらす。まずは、ワシントン政府が如何なる国家に対してでも必要に応じて経済制裁を課す能力に対して、中国の動きは間違いなく影響を与える。それと同時に、輸入品がより高価になることから、米国の消費者の購買力を徐々に低下させることになろう。

原油の最大輸入国である中国(米国の債務を世界でもっとも大量に保有している)と世界でも最大級の原油輸出国であるロシアはペトロ・ダラーをうっちゃって、ペトロ・ユアンを使うことに同意した。ワシントンの敵国であるイランやベネズエラ、さらには、インドネシア(目下のところ、ワシントン政府のリストには記載されてはいないが)、等を含めて、幾つかの国家が原油の決済で米ドルからペトロ・ユアンに移行することに関心を示していることから、ペトロ・ユアンは全世界に覇権を行使する米ドルにとっては脅威となる。

「中国は米ドルを王座から引きずり降ろす壮大な計画を持っている。同国は年内にも強力な動きを開始する」と題したCNBCの記事において、米ドルを迂回し、ペトロ・ユアンを使うという中国の計画に関してこの大手メディアは国際社会に対して次のように報じている:

中国は世界における米ドルの優位性に対抗して大きな動きを始める考えだ。それは年内にもやって来るかも知れない。この新戦略はエネルギー市場からの協力を求めることになるが、現在国際市場で優位を誇っている米ドルに基盤を置いた取引とは違って、この新基準は中国の通貨を用いるものだ。中国政府が望んでいるように、もしもこれが広く採用されることになれば、世界でもっとも強力な通貨である米ドルに挑戦する第一歩を記すことになろう。

中国は世界でもトップの原油輸入国であり、北京政府は自国の通貨が世界経済においてもっとも重要な商品の価格を示す際にユアンを使用することは当然だと考える。しかし、それだけではなく、米ドルから別れを告げることは中国やロシアといった国々にとっては戦略的な優位性をもたらしてくれる。両国は米ドルへの依存性を軽減し、米国通貨に伴うリスクや米国の経済制裁に曝される危険を限定的なものにしようとしているのである。 

ドナルド・トランプ米大統領が先頭を切って相手を非難していることから、ワシントン政府にとっては北朝鮮との戦争は避けられそうにはない。米ドルの威力を生命維持装置に繋いで、借金漬けとなっている米帝国は戦争を脅かしの道具として使う。時には、世界の至る場所で、たとえば、米国のリストに記載されているイランやシリア、ベネズエラで実際に戦争をする。イランやロシアはワシントン政府が課す将来の経済制裁を避けるためにすでに米ドルから徐々に移行しようとしている。ロイター通信はべネヅエラの原油輸出の国際決済に関するマドーロ政権の決定について報道をした。「ベネズエラのマドーロは米ドルを避けて、ユアンを採用すると言う」との表題を持った報告記事はベネズエラの首都カラカスの連邦議会宮殿で開催された国家選挙人集会でマドーロ大統領が述べた内容を次のように引用している:

「べネヅエラは新しい国際決済システムを実施する予定で、米ドルの軛からわれわれを解放してくれる通貨バスケットを新設する」と、新たに選出された立法府で行った何時間にも及ぶ演説の中でマドーロが述べた。しかし、詳細については言及しなかった。「もしも彼らがわれわれに米ドルの使用を求めるならば、われわれはロシアのルーブル、ユアン、円、インド・ルピー、ユーロを使う心積もりだ」とマドーロは述べた。 

CNBCから報道されたもうひとつの記事は「中国はサウジアラビアに対して原油輸出はユアンで決済するように迫るだろう。これは米ドルに影響を与える」と題されているが、High Frequency Economics社でチーフエコノミストおよび最高経営責任者を務めるカール・ワインバーグはインタビューを受けて、「中国は世界でも最大の原油輸入国であり、サウジアラビアがペトロ・ユアンの使用を強いられた場合、どのようにして米ドルは世界における優位性を失うのか」に関して説明を求められた: 

中国が「世界でもっとも大きな原油輸入国」の座を米国から奪ってからというもの、原油の需要に関しては北京政府がもっとも影響力のある役目を担っている、とチーフエコノミストであり最高経営責任者であるカール・ワインバーグは述べた。

「サウジアラビアはこの事実に関心を寄せなければならない。何故かと言うと、今から1年か2年の内にさえも、中国の需要は米国のそれを遥かに凌ぐことになろう」とワインバーグは言う。「原油をユアンで価格設定をする事は間違いなくやって来ると思う。中国に催促され、サウジがそうすることを受け入れた暁には、他の原油市場の参加者たちもそれに従うことだろう。」 

米ドルは世界の準備通貨としての地位をゆっくりと失いつつあるが、中国との戦争はあり得るか?米国は中国に対する断固たる警告として北朝鮮を攻撃するのか?あるいは、米ドルを救うために中国をこの紛争に引きずり込むのか?サダム・フセインはイラクからの原油輸出で米ドルの代わりにユーロを使おうとし、リビアのムアンマル・カダフィはアフリカ大陸における米ドルの座を奪って、ゴールド・ディナールを使おうとした。イラクとリビア両国のこれらの決定は米軍およびNATO軍によって両国を破壊する結果となった。米国は中国に対してもこれと同じことをするのだろうか?中国は米国からの攻撃に対して自衛することが可能であることから、私は断じてそうはならないと思う。中国はイラクでもなければ、リビアでもない。もっと長い目で見た場合、対中戦争は起こるのだろうか?米国はゆっくりとしたペースで崩壊しつつある中で、ワシントン政府はその生存を賭けて何でも実行するであろう。米ドルは軍産複合体を支え、彼らが世界中で展開する破壊的で非常に金のかかる冒険を支えているのである。

ペトロ・ユアンの立ち上げはいわゆる「脱ドル化」を加速する。しかしながら、大手メディアにはペトロ・ユアンが近い将来米ドルを駆逐するとは考えない人たちが居ることも事実だ。たとえば、ブルームバーグのデイビッド・フィックリングは最近「ペトロ・ユアンの時代はやって来なかった」という記事で次のように述べている: 

たとえば、中国の大連商品取引所でもっとも多く取引されている鉄鉱石に注目してみよう。本土の商品市場では近年熱病に冒されたような行動が観察されている。売値と買値との間のかい離はロンドンやニューヨークにおける主要な取引におけるそれに比べると依然として何倍も大きいのである。そのような状況は取引コストを高め、乱高下を激しくさせ、価格形成を弱める。そして、
原油の大手消費国としては、北京政府はそのような変化には反対する筈である。

配慮すべき生産国も存在する。中東の輸出国のほとんどは自国通貨を米ドルに固定している。原油価格のユアン建てへの切り替えは自国の予算に外国為替リスクを招じ入れ、どう見ても利得はほとんどない。特に、それは中国が一般に輸出総額の20パーセント未満を消費するだけであるからだ。 

それは計画された契約がまったく無用であることを意味するものではない。中国は自分たちの目的により適合したベンチマークを持つことによって恩恵を被ることだろう。西側の主要契約の対象となる原油は硫黄成分が低い原油であることとは対照的に、これは特に中国市場で主として消費される中程度に硫黄成分を含む原油を反映したベンチマークの場合だ。

ユアンが世界を変えるなんて期待するな。経済の中心が東へ移動している中にあっても、ウェスト・テキサス原油や北海原油との関連付けは今後何年にもわたってそのまま強力に残っていることだろう。

書籍Currency Wars: The Making of the Next Global Crisisの著者であるジェームズ・リッカーズは、次に示すように、フィックリングの分析に対してもっとも強く反論するひとりである:

米国内で紙幣を増刷することは中国ではインフレ率を高め、エジプトでは食料品価格を高騰させ、ブラジルでは株式市場のバブル化をもたらす。紙幣の増刷は米国の借金が低く評価されるので、海外の債権国はより安くなった米ドルで返済を受け取ることを意味する。米ドルの価値が低く評価されると、発展途上国からの輸出品は米国市民にとってはより高価になることから、貨幣価値の低下はそれらの発展途上国ではより高い失業率をもたらす。その結果起こるインフレは発展途上国の経済に対するインプット、たとえば、銅、トウモロコシ、原油、小麦、等の価格の高騰を意味する。海外各国は米国発のインフレに対しては補助金や関税、資本規制を実施して対抗する。通貨戦争の影響は急速に広がって行く。 

米ドルはワシントン政府自体の経済や外交政策、ならびに、政府とウールストリートの銀行カルテルや多国籍企業および軍産複合体との間の共謀のせいで失墜しつつある。「カイザーリポート」のマックス・カイザーはRTニュースのインタビューを受けて、どうして世界は米ドルを避けようとしているのかに関して次のような説明をしている: 

世界中の国々は「借金帝国」の一員として米国の軍国・冒険主義に資金を提供し続けることに、つまり、米ドルを支えることにすっかり疲れてしまっており、これらの国々は「脱ドル化」に加わろうとしている、とカイザーは言う。米ドルは米国の基盤であり、主要な製品でもあることから、米国の金融界や軍産複合体は、戦うこともなしに、米ドルの覇権を諦めるようなことはしない。そして、米国はもうひとつのお気に入りの道具である戦争を活用することだろうとカイザーは言う。

「多分、彼らは日本と中国の間で戦争を引き起こすだろう。あるいは、北朝鮮との戦争を始めるかも知れない。米ドルを世界の準備通貨の座に維持するためであったら彼らは何だって実行するだろう」と、カイザーは言った。「彼らはアフガニスタンへ侵攻したように国家を侵略する。彼らを押しとどめる物なんて何もない。何故かと言うと、これこそが帝国の基盤なのだ。米国は土地に基盤を置くわけではなく、有形財に基盤を置くわけでもない。米国はレントシーキング(制度や規制の改正などによって超過利潤を追求すること)に基盤を置く。米ドルを無事に着陸させ、収益を持ち出し、もはやその国が支払いを履行することが出来なくなると、資産を解体し、それらを取り上げる。われわれはこの手法を南米で見て来た。これこそが米帝国を築き上げた方法なのだ。」

あなたご自身が同意をしようが、同意をしたくはなかろうが、通貨戦争はすでに始まっている。われわれは誰もが近い将来の数か月、あるいは、数年間注意深く観察し、米ドルの優位性を維持するためにワシントン政府がどこまで深入りするのかを見極めたいと思う。中国がペトロ・ユアンを立ちあげようとしていることからも、米国は北朝鮮に対する戦争を始める積りなのかも。

<引用終了>


これで全文の仮訳は終了した。

われわれ日本人にとっては、マックス・カイザーが喋った一言が恐ろしい。米国の戦争を推進する勢力をこう描写している: 米ドルは米国の基盤であり、主要な製品でもあることから、米国の金融界や軍産複合体は、戦うこともなしに、米ドルの覇権を諦めることはない。そして、米国はもうひとつのお気に入りの道具である戦争を活用することだろうと。そして、さらにこう付け加えた。「多分、彼らは日本と中国の間で戦争を引き起こすだろう。あるいは、北朝鮮との戦争を始めるかも知れない。米ドルを世界の準備通貨の座に維持するためであったら彼らは何だって実行するだろう

ここには戦争を巡る米国政治の本当の姿が率直に描かれている。

日米同盟の基本的な進め方として、有事の際には日本の自衛隊は米軍の指揮下に入るとされている。米国大統領ならびに彼を取り巻く軍産複合体の考え方に関して日本人の立場から予想し得る最悪の状況を纏めてみよう。

米軍の最高軍事司令官は米国本土を戦場にしたくはない。中国と戦う場合も例外ではない。仮に米国の同盟国である日本が対中戦争で戦場と化したとしても、それは米国にとっては太平洋を挟んで遥か彼方にあるアジアの国の問題であるのだ。たとえ日本が壊滅的な破壊を被ったとしても、そのこと自体は米国にとっては依然として戦術的な意味しか持たない。イラクの戦場で米軍の報道担当者によって記者会見の場で頻繁に用いられて来た「巻き添え被害」という言葉があり、この言葉はそのような深層心理を見事に象徴している。最終的には、米国本土を戦場にはしないという戦略が実現できさえすれば、日本が戦場になって、巻き添え被害が甚大になったとしても、米国にとっては痛くも痒くもないのだ。

戦争をどこかで継続していなければ一国の経済が成り立たないという体制は実に不健全である。米国の政治経済システムは末期的な成人病に蝕まれている。そして、日米同盟はその現状を支えようとさえしている。これは真の友人が相手に対してすることではない。




参照:

1安倍晋三首相「日米同盟の絆をさらに確固たるものにしていきたい」: 産経ニュース、2017115






2017年11月3日金曜日

米ミサイル防衛システムは詐欺行為だ。われわれは皆殺しにされるかも・・・



軍備はそれを設計し生産した企業が主張するような能書き通りの性能を発揮するとは限らない。そのような事例は過去においても無数にある。

特に、「弾丸を弾丸で撃ち落とすようなものだ」と形容されるミサイル防衛システムはこの議論を避けて通ることはできないであろう。

さまざまな試射が実施され、たとえ成功裏に終わったとか、成功率は何パーセントだとかの報告をされても、あくまでもそれは試射が成功裏に終わるように注意深く計画され、理想的な条件下で実施されたものである。したがって、実戦での成功率は公表されている数値よりも当然低下すると推論することは極めて妥当である。

実戦においては、弾道ミサイルの発射には相手のレーダー網を撹乱するためのさまざまな手段が併せて用いられる。囮のミサイルさえもが登場してくる。こうして、相手側の仰撃ミサイルの命中率は低下する一方となる。

どこの国であっても、ミサイル防衛システムの配備がすでに進行し、あるいは、完了している場合、世論を乱したくはない政府側は国民に向かって最新式の防衛システムを用いることによって北朝鮮から撃ち込まれて来る弾道ミサイルを撃墜すると説明する。ミサイル防衛システムを売り込む企業あるいは企業連合は、議員の買収さえをも含めて、巧みな販売戦略を総動員して、説得したり、持論を継続する。たとえそのシステムが未完成の代物であってもだ。耳に心地が良い説明を聴かされて、技術的な詳細情報に関しては何も知らない、あるいは、知ろうともしない市民は多くが安心する。こうして、政府は現実には成功率が非常に低く、市民が安心することができるような代物ではないミサイル防衛システムであっても、その受け入れについて世論の形成に成功するのである。


問題は実戦時の命中率だ。ミサイル防衛システムがそのメーカーや政府が言う程にはその性能に期待することができないとしたら、どうだろうか?北朝鮮から核ミサイルを撃ち込まれた場合、韓国や日本の市民は北朝鮮の核兵器によって一瞬のうちに蒸発することになる。最悪の場合、何百万人もの市民が犠牲となりかねない。(予想される犠牲者数に関しては専門家が推算したデータがある。詳細については1024日に掲載した「もしも北朝鮮が核攻撃を行ったとしたら、日本の被害の大きさはどれ程になるか?」と題した投稿をご覧ください。)


今、米国で議論されている事柄はまさにこの点である。北朝鮮の核ミサイルがシアトルやサンフランシスコあるいはロサンゼルスに飛来し、無数の市民が犠牲となるかも知れないのだ。米国には軍需産業が米政府に納入したさまざまな種類のミサイル防衛システムが存在する。それらは短距離から長距離まで、そして、低高度から高高度までを網羅すると政府は説明する。

ところで、ここに「米ミサイル防衛システムは詐欺行為だ。われわれは皆殺しにされるかも・・・」と題された記事がある [1]

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。これはわれわれ日本人の生命にかかわることでもある。米ミサイル防衛システムの実態に関しては最新の情報を少しでも多くおさらいをしておきたい。

<引用開始>





















Photo-1: 相互確証破壊だって?奴らを核攻撃せよ!


物事に対する見方を完全に180度も変えてしまうようなことを読んだり、観察したりすることが時にはある。

先週そのような経験をした。私はジョ―・チリンチオーネが書いた「ミサイル防衛の常識に対する申し立て」と題されたLobelogに掲載された記事に遭遇したのだ。その記事の著者は以前下院外交委員会でその職員として働いていたことがあり、現在はワシントンDCに本拠を置き、核・化学・生物兵器の拡散防止を目的とする国際的な基金「プラウシェア・ファウンデーション」でその長を務めている。

この記事はミサイル防衛に関してホワイトハウスや国防省が主張する筋書きの多くが偽りであることを暴いている。

1812年の米英戦争にまで遡って歴史を辿ると、戦争を正当化しようとして連邦政府が述べる説明は何でも疑ってかかることは極めて妥当である。

イランや北朝鮮に対する米国の好戦的な姿勢は米国自身のためにも十分に非難するべきである。米国にとっては、これらの国々が実際的な利害関係をもたらすわけではない。それにもかかわらず、これらの国に戦争の脅しをかけたり、さまざまな理由から外交的な解決策を意図的に排除してしまっている。

軍事力を誇示しながらも、それについて何の罰も受けないままに米国がやり過ごして来た本当の理由は歴史的な側面にある。米国の大陸部は1916年にパンチョ・ビリャによる侵入を受けた時点以降は国内で戦争を経験したことがない。米政権は如何なる政権も対外政策を履行する際には自分たちがしたいことをして来た。彼の国で何が起ころうとも、それは彼の国の出来事なのである。

結果として米国人は戦争を知らない。戦争は何処かよその国で起こり、外国の連中の身に降り懸かるものなのである。時には米国が仲裁に入ることが必要になり、特定の事柄を救済する。あるいは、その時の政権の見解次第では物事をさらに悪化させたりもする。 

これこそがジョン・マケインのようなタカ派の人物がジョ―・バイデン前副大統領から「自由」のメダルを贈呈された際に、真面目な顔をして、世界の警察官の役割を演じることにすっかり飽きてしまった米国人を公然と非難することができた所以でもある。

「われわれが作り上げた世界、そして、1世紀の四分の三近くにもわたって支配して来た世界を怖がっており、世界中に浸透させた理想を捨てようとし、世界の指導者の役割を担い、地球上の最後の希望として存在する義務さえをも生焼けで、間違いだらけの国家主義のために拒もうとしている」と言って、彼は米国人を描写している。

最近の世界の歴史に関してマケインが説こうとした説明は実体を完全に欠いており、この種の説明は自分の戦闘機を墜落させ、自分の空母を沈没させそうにしたことのある海軍パイロットには打って付けだ。また、彼は捕虜となってからは北ベトナムのラジオ放送のためにプロパガンダさえをも行った。不幸な事には、マケインのこの世界支配主義者的であり、米国例外主義者的でもある物言いにメディアも同調しているのである。

虚偽や半なまな真実を恒常的に鵜呑みにして来た事実が終わることのない防衛費の増加要求に対して一般大衆がじっと我慢している背景にあるのだ。そして、外界世界は危険な場所であって、避けては通れない場所として受け入れなければならない。当然ながら、われわれ自身は善良な市民なのである。 

しかし、世界を「安全な場所」として維持するためには軍部は外国に設けた米軍基地によって全世界を取り囲むべきだとする見解が一般市民に喜んで受け入れて貰える根拠は48州が危険に曝されることがなく、広大な大洋によって遮られ、南北には友好的な国家を持っているという想定に基づいている。海外の敵が発射する弾道ミサイルを仰撃し撃墜するために莫大な費用を投じて開発し、維持してきた最新の技術や仰撃システムを使用することによって遠隔の地の敵国からもたらされる脅威からは防護されるという構図だ。

北朝鮮に関する最近のスピーチにおいて、ドナルド・トランプ大統領は米国のミサイル防衛システムは97パーセントの有効性を有し、100回のうちで97回は米国へ侵入して来る弾道弾を仰撃し、撃墜することができるのだと言って、自慢した。

トランプは海の向こうの北朝鮮で何が起ころうとも、北朝鮮が米国の大陸部に望ましくない結果をもたらすことはできないし、ハワイやアラスカならびにグアムに対しても同様だと述べて、一般大衆を安心させようとした。これらの地域は対ミサイル防衛網によって防護されているのだからと。

トランプは詳細に関しては多くの事柄について無知であるとは言え、疑いもなく、彼はアラスカやハワイの地上配備型ミッドコースミサイル防衛システム(GMD)のことを言及している。これらの施設は3,300憶ドルにも達するミサイル防衛システムの一部を構成するものである。

われわれの政府が海外で何をしようとも、米国が核兵器や通常兵器による物理的な攻撃を受けることがないとすれば、確かに、それは政府の行動に一般大衆を追従させる威力があると言えよう。しかし、これは本当なのだろうか?もしも仰撃能力がゼロパーセントに近いとしたらどうだろうか? それは北朝鮮と戦争をするという考えを変えさせることになるのであろうか?あるいは、東欧でロシアに対抗するという考えについてはどうであろうか?

核兵器による応酬なんて想像することもできないと考える人たちにとってはジャック・キーンが発した最近のコメントを念頭に置くことが賢明であろう。彼は元将軍で、ネオコンの間でも指導的な地位を占め、すでに報告されているように、この件に関してホワイトハウスの耳を持ち、ホワイトハウスの考えを反映している。

キーンには平壌に対して軍事的選択肢を採用することに躊躇するような気配はまったくない。北朝鮮の核施設を潰し、「指導層の目標人物」を排除するためには、北朝鮮における核弾頭ミサイルの設定は何と言っても米国を狙うものであることから、米国側が攻撃の引き金を引くことはあり得ると彼は言う。

ある観測筋によると、北朝鮮は核兵器を小型化する能力を獲得することが真近に迫っており、もしもキーンが言っていることを信じるとするならば、それはまさに「戦争行為」であり、ワシントン政府は直ちに攻撃の火ぶたを切るであろう。それに応えて、平壌は報復攻撃を行う。 

米国のミサイル防衛システムは97パーセントの成功率を持っているとの主張はチリンチオーネや他の専門家から反論を受けている。米国は「敵のミサイルを何度かは撃墜することができるだろう」と彼は言う。 

彼らは幾つかの説得力のある議論をしており、それらは関連の物理学を理解してはいない素人にとってさえも分かり易い。簡単に纏めてみよう。

まずは、ミサイル仰撃機はその目標物に衝突するか、あるいは、効果的であろうとすれば目標物の近傍でそれ自身の弾頭を爆発させなければならない。どちらの手法であっても、達成することは実に困難である。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)は毎秒5,000メートルの速度で飛来する。因みに、ライフル銃から発射される弾丸はその五分の一の速度でしかない。

ライフル銃を持った二人の男が相手から1マイル程離れた位置から銃を発射し、弾丸をお互いに衝突させる場面を想像してみよう。もしも弾丸ではなく、ミサイルを言及したいならば、その速度は5倍になることを考えなければならない。

たとえもっとも優れたレーダーやセンサーならびに最新の誘導システムを使用する場合であっても、この仕事に関わる複数の変数は相手を撃墜することに成功するよりも、むしろ、失敗する頻度を高めるであろう。チリンチオーネは「相手の弾丸を撃ち落とせる唯一の可能性は相手の弾丸が協力してくれる場合だけだ」と言う。 

二番目に、信頼性を断定するためにペンタゴンが行った試射は、基本的に言って、詐欺的でさえある。ドナルド・トランプのコメントとは対照的に、1機の仰撃機では56パーセントの精度しかない。しかも理想的な条件下での話であることを補うために、97パーセントという精度は一機の目標物に対して4機の仰撃機を発射するという手法に基づいて外挿したものである。

この統計値は1999年以降に実際に行われた試射の結果に基づく数値であり、仰撃機は18機の目標に対して10機を撃墜することに成功しただけである。4機の仰撃機は97パーセントの命中率を達成するだろうという結論は複数の仰撃機は全体の精度を増してくれるだろうという考え方からである。しかし、もしも一機の仰撃機が技術的な欠陥から目標物を撃墜することができないとするならば、4機すべての仰撃機は同じ理由で撃墜には失敗するだろうとほとんどの技術者は主張するのではないだろうか。

試射そのものが首尾よく成功するように、台本は注意深く書かれている。最大の視認性を得ようとすればより好ましい時間帯は夕刻であるが、日中の良好な気象条件の下で実施され、飛来するミサイルは電子的対抗策やチャフまたは幻惑材のような仰撃機を惑わす手段は一切含めずに試射が実施されている。 

試射のために目標となるミサイルを発見し易くするために、時には、ミサイルを加熱したり、見失うことがないようにミサイルには応答装置を装着した。結果として、このミサイル仰撃システムは戦場における実際の条件下では一度も試射を行ったことがないのだ。

連邦政府の監視機関さえもがミサイル仰撃システムがうまく稼働することは極めて稀だと結論している程である。 

政府説明責任局はこの技術における欠陥を「故障モード」と記述しているが、これらの欠陥は米国は意図した通りには作動しない仰撃システムを所有していることを意味する、と同局は結論を下した。カリフォルニア選出の下院議員のジョン・ゲイラメンディは「この答えは完全に明白だと思う。このシステムは作動しそうもない。それでもなお、恐怖心の勢い、投資の勢い、さらには、産業界の勢いがあって、これを推進しているだけだ」と述べ、批判した。

国防省内の運用試験や評価を行う部門も懐疑的である。 アラスカやハワイの地上配備型ミッドコースミサイル防衛システム(GMD)は「・・・北朝鮮から発射された少量の中距離ミサイルまたは長距離弾道ミサイルから米本土を守る能力は限定的である・・・ 運用可能な仰撃機の信頼性や入手可能性は低い」と報告している。

北朝鮮からのミサイル攻撃を仰撃する能力に関するホワイトハウスの危険なまでに過剰な自信は部分的には虚勢でしかなく、平壌がミサイルの発射を始めれば、北朝鮮は廃墟と化し、米国は無傷のままに残ることを平壌に自覚させようと意図したものだ。

しかしながら、ともかくも、巧妙に手際よく物事を進めることがない大統領の下にあって、私はそれが事実であるとはとても思えない。そして、北朝鮮は核兵器やICBMを作ることが可能であり、米国のミサイル防衛網の欠陥については、他の誰もが知っているのと同じように、十分に理解していることであろう。

しかし、本当の危険に曝されるのは政府によって嘘を吹き込まれている米国の市民だ。16年間にもなる戦争を可能とし、さらに継続されている「テロとの戦い」が自分の身に危険を及ぼすことはなく、これが自明の理であるとするならば、戦争は考え得ることであり、核戦争さえもが起こり得る。これがホワイトハウスからのメッセージであるとすれば、安全保障を重視する国家には無謀な冒険主義をさらに鼓舞することになるのではないか。 

北朝鮮の脅威を真剣に受け止めた方が遥かにいい。シアトルのような西海岸の都市は核兵器攻撃の目標になり得ることを認めるべきではないか。

そうすれば、戦争は現実の生活に影響をもたらし、馴染ではない正直さを注入しさえすれば、多分、国連や連邦議会の演説で脅しをかける代わりに、平壌と真剣に交渉するべきだとする市民の要求が沸き上がって来るのではないか。

原典: The Unz Review

<引用終了>



米政府内の「政府説明責任局」や国防省の運用試験や評価を行う部門がミサイル防衛システムの有効性を疑っているにもかかわらず、この防衛システムは修正を施さないまま、放置されて来た。換言すれば、技術開発が出来ないまま、今も改良型を配備できないままであると言うべきかも知れない。

政府の説明を鵜呑みにする限りはこの現状はまったく意外である。要するに、現在配備されているミサイル仰撃システムは軍産複合体が述べた美辞麗句に乗せられて、米国や日本および韓国、ならびに、EUは米国製のミサイル防衛システムの導入を決めたということを意味する。上記に引用した記事の表題に「詐欺行為」という文言が現れるが、まさに格好の表現であると言えよう。

同システムの有効性がゼロに近いことを米政府が認めた場合はメーカーあるいは政府の誰かが責任を取らなければならないことから、政府内の官僚主義的な力学や政治的な思惑から隠蔽が続いて来たのではないかと思う。北朝鮮からの核ミサイルの脅威を受けて、今まで隠蔽されていた大嘘がばれたとは滑稽でさえもある。

北朝鮮の核兵器の脅威から日本の市民を防護するために、日本政府は米国のイージス・アショア・システムを導入したいと言っている。一般市民はこのシステムの有効性に関して十分に理解しているのであろうか。日本の市民にとっては、この疑問に関して技術的に正確な答を求めることが何よりも重要であると思う。



参照:

1: US Missile Defense Is a Scam That Could Get Us All Killed: By Philip Giraldi, Oct/25/2017, russia-insider.com/.../us-missile-defense-scam-could-get-us-all-...