2024年3月18日月曜日

アヴァンギャルド ― 米ミサイル防衛システムを使い物にならなくしたとプーチンが豪語する極超音速ミサイル

 

314日の投稿で「ロシア側は極超音速ミサイルを有しており、西側の対空防衛システムはこれに対応できない」と簡単に記述したが、これについてもっと詳しい情報を探ってみよう。

丁度、ここに「アヴァンギャルド ― 米ミサイル防衛システムを使い物にならなくしたとプーチンが豪語する極超音速ミサイル」と題された最新の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: © Photo : Russian Defense Ministry

水曜日(313日)のロシアのメディアとのインタビューで、ロシアの大統領は同国の核の三本柱は他のどの国よりも「近代的」であると断言し、モスクワはその国家としての地位が脅かされない限りはそのような恐ろしい兵器を決して使用しないと繰り返して述べた。

ロシアが開発した核搭載可能な極超音速滑空体「アヴァギャルド」はミサイル防衛システム構築のために米国が行った巨額の投資を無意味にしたとウラジーミル・プーチン大統領は公に述べた。

プーチン大統領に対する「ロシア・セヴォードニャ」のドミトリー・キセレフ事務局長のインタビューの全文はこちらからご覧いただきたい。

「よく知られている米国のミサイル防衛にはいったいどれだけの費用がかかったのかを計算すると、これらのミサイル防衛を克服するためにわれわれが所有する主要な構成要素のひとつは大陸間滑空装置を備えた大陸間弾道ミサイルであるアヴァンギャルドだ。まあ、予算を比較することは必ずしもできそうにはないが、基本的には、われわれは連中がやったこと、つまり、連中がこのミサイル防衛システムに投資したことのすべてを無にした」と、プーチンはスプートニクの親会社であるメディア・グループのロシア・セヴォ―ドニャのドミトリー・キセレフ会長に語り、米防衛産業の気前の良さと莫大な浪費に言及した。

プーチン大統領によると、アヴァンギャルドの開発経験はロシアが戦略兵器の分野で堅持し続けるべき道を示しているという。

アヴァンギャルドとはいったい何か?:

2018年にプーチン大統領がロシアの国会議員に向けた演説で初めて発表され、2019年後半に就役したアヴァンギャルドは、既存の、ならびに、将来のすべてのミサイル防衛システムを突破するように設計されており、機動性が高く、超高速で、核搭載可能な極超音速滑空体である。

重量級のR-36およびRS-28サルマト大陸間弾道ミサイルに搭載されて、軌道に投入され、ミサイルの弾頭である多重再突入機(MIRV)の一部として展開されるアヴァンギャルドは近宇宙空間では最大マッハ2732,200 km/時)の速度まで加速でき、降下中は大気抵抗によって推定でマッハ15-2018,500-23,000 km/時)まで低下する。

滑空機の独立航続距離は6,000km以上で、爆発力は0.82メガトンと報告されている(訳注:広島や長崎へ投下された原爆の爆発力はTNT火薬換算で2022キロトン相当であるから、約40100倍の威力がある。201912月から実戦配備されている)。また、通常兵器モードでも利用可能で、ターゲットを攻撃する高速によって生成される巨大な運動エネルギーを活用して、さまざまな戦略的目標を破壊することができる。

Photo-3: Characteristics of Russia's Avangard hypersonic glide vehicle. © Sputnik

機動性と速度に加えて、飛行特性、特に摂氏2,000Cまでの高温度に耐えられる本ミサイルの能力はアヴァンギャルドに対する防御を本質的に不可能にしているもう一つの要因である。

「アヴァンギャルドは(飛行中は)実質的にプラズマで覆われる。プラズマは電磁波を吸収することから、この極超音速滑空体はレーダーからは見えない。高い運動エネルギーを持つ結果として、アヴァンギャルドは核兵器を使用しないでも標的を破壊することができる。これはユニークなツールであって、今日まで世界の他のどの国もそのようなものを生み出してはいない」と、軍事史家であり、国防評論家でもあり、ミサイルおよび防空の専門家であるユーリ・クヌートフは、最近、スプートニクに語った。

打ち上げ用のサルマト・ミサイルは15,200kmから18,000kmの航続距離を有することから、アヴァンギャルドは地球上のあらゆる地点を攻撃することができる。

1発のサルマト・ミサイルには最大で24個のアヴァンギャルドを搭載でき、他のMIRVや、敵のミサイル防衛を欺いて分散させるように設計されたダミー弾頭を搭載することも可能。

アヴァンギャルドはロシアの兵器庫に待機する6種の新型戦略兵器のひとつであり、たとえ敵が核攻撃や通常攻撃でロシアの不意を突いたとしても、これらの兵器は敵の戦争計画立案者が侵略を開始する前に考え直さざるを得ないほど厳しい対応を保証するように設計されている。

ロシアのNPO法人「マシノストロイェニア・ロケット設計局」がアヴァンギャルドの開発を主導した。その伝説的な名誉総裁であり、デザイナーでもあるゲルベルト・エフレモフを称賛したプーチン大統領は、彼の2020年の誕生日に、アヴァンギャルドの製作におけるマシノストロイェニアの成功を1949年にソ連が初めて核爆弾を製造したことになぞらえた程である。

エフレモフの指導の下でNPOのマシノストロイェニアは1980年代にアヴァンギャルド計画の前身を創設し、ロナルド・レーガンの「スター・ウォーズ」ミサイル防衛構想への直接的な対応として1987年に「プロジェクト4202」として知られる極秘プロジェクト、後には「アルバトロス」というコードネームの下で開発が承認された。この計画はワシントンとの関係が改善した1990年代初頭に、そして、その後はソビエト連邦の崩壊に伴う財政難のために保留となった。

2000年代初頭、米国が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約から一方的に離脱し、ヨーロッパにミサイル防衛網を配備し始めた後、ロシアは独自のミサイル防衛プロジェクトを再開した。

2002年に米国がABM条約から離脱したことで、ロシアは極超音速兵器の開発に着手せざるを得なくなった」と、プーチン大統領はエフレモフとの会話で回想している。「われわれは米国の戦略ミサイル防衛システムの配備に対応して、これらの兵器を作らなければならなかった。同防衛システムはわれわれの核の可能性全体を無力化し、時代遅れにすることさえできたであろう・・・現代ロシアの歴史上初めて、ロシアは最も近代的なタイプの兵器を保有している。その威力、速度、そして、非常に重要なこととしてはそれ以前に存在し、現在も存在するすべてのものと比較しても、精度の点で遥かに優れている」とプーチンは述べている。

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これで全文の仮訳が終了した。

極超音速ミサイルの開発にロシアが成功したという事実は確かに驚くべき成果である。だが、歴史的背景を考えると冷戦下にあった当時の米ソ両国の思考や行動は実に興味深い。

米国は常にソ連に対して軍事的脅威を与え続けてきた。そして、ソ連は常に米国からの脅威に反応し続けてきた。この引用記事が報じているように、ロナルド・レーガン米大統領のスターウオーズミサイル防衛構想に反応して、ソ連はアヴァンギャルド・プロジェクトを立ち上げた。2000年代初頭、米国がABM条約から一方的に離脱し、欧州にミサイル防衛網を配備し始めた後、ロシアは独自のミサイル防衛プロジェクトを再開した。

しかしながら、米国が旧ソ連に対して一人勝ちしたとして有頂天になって浮かれている間(1990年代以降)にロシア側は次世代戦略兵器の開発に注力した。それは1990年代にイエルツィン政権の下で米国の経済専門家たちの手でロシア経済が食い物にされるという苦い経験がロシアの政治家を目覚めさせたからであろう。西側の資本家にロシアを売って、巨万の富を自分のポケットに収めようとした数多くの新興財閥たちはロシアから追放された。

核を搭載することができる極超音速ミサイルをロシアが実戦配備したことによって米ロ間の軍事バランスは崩れた。べいこくにとっては一方的に不利になった。

だが、自分たちが相対的に弱体化したという米国を取り巻く現実は、ある意味で、新しい脅威を招く可能性が出て来た。一部の専門家によると、自暴自棄になった米国の戦争屋は自分たちが所有する核兵器を最後の頼りとするのではないかという心理的側面を新たな脅威として取り上げているのである。極めて不気味な洞察である。


参照:

1Avangard: Hypersonic Glide Vehicle Putin Credits With ‘Nullifying’ US Missile Defenses: By Ilya Tsukanov, Sputnik, Mar/14/2024

 

 



2024年3月14日木曜日

スコット・リッター:ペンタゴンによるウクライナの妄想は潰えた

 

スコット・リッターはロシア・ウクライナ戦争に関するトップ級の解説者のひとりである。代替メデイアにおいては、最近、毎日のように何らかの形で彼の見解が報じられている。これはウクライナ紛争の終焉が真近に迫っているということだ。

ここに、「スコット・リッター:ペンタゴンによるウクライナの妄想は潰えた」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: © AFP 2023 / MANDEL NGAN

フランスのステファン・セジュルネ外相は、金曜日(38日)にリトアニアでバルト三国とウクライナの外相らと会談した。この訪問は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がフランス軍をウクライナに投入する可能性を提起したことから欧州のより強力な同盟国のいくつかを怒らせてしまった数日後に行われた。

ウクライナにおける米国防総省の幻想は崩壊しつつあると、元国連兵器査察官であって、現在は軍事問題の解説者でもあるスコット・リッターは、月曜日(311日)、スプートニクの「断層線」に語った。

ペンタゴンからの戦術的助言にウクライナが耳を傾けなかったことから、キエフとワシントンの間では緊張が高まっているとの米メディアの報道について、リッターはその主張は現実に基づいてはおらず、米国から責任を転嫁するように仕組まれたものであると思うと述べている。

「ウクライナに対する巨大な幻想が崩壊しつつあるため、ペンタゴンは間違いなく自らの責任を政治的に隠蔽しようとしている」とリッターは断言し、ウクライナはアウデーエフカの背後に防衛線を構築できるように、できるだけ長く同拠点を保持する以外に選択肢はほとんどなかったと説明した。だが、ロシアの空軍力はその目標を達成することさえをも許さなかったと指摘。

「肘掛け椅子に座ったクォーターバックを演じて、そこに座り込んで、こき下ろすのは簡単なことだ。しかし、現実には、ウクライナ人には彼らが持っていた最後の防御可能な地位を何とか維持しようとする以外に、他にどのような選択肢があったのだろうか?」

キエフ政権は「いわゆる友人や同盟国が自分たちを見捨て、ウクライナを自らの運命に任せているという現実に目覚めつつあるところだ」と、リッターはフランス軍がウクライナに配備されるかも知れないというマクロンの最近のコメントを議論しながら、説明した。

「マクロン大統領がなぜこのようなことを言うのかを理解するには、現在のウクライナの状況がどれほど悲惨であるかを理解する必要がある。彼らは軍事的崩壊に直面しており、今まさにわれわれが話しているように、ウクライナ軍の最後の予備兵力がオルロフカ村の周辺で戦闘に投入されている」とリッターは説明した。「これは奇跡が起きる時間を稼ぐためであり、フランスの戦闘集団がやって来ることは奇跡だが、ウクライナはそれを望んでいる」と述べた。

しかしながら、この「奇跡」の可能性が戦場の見通しを変えることはないとリッターは主張し、マクロン大統領が求めているとされるバルト三国の同盟国からの兵力の派遣の有無にかかわらず、「ウクライナに軍事的に意味のある部隊を配備する能力は非常に低い」と述べた。

一方、選挙シーズンは米国に軍事紛争からの撤退を余儀なくさせるとリッターは主張する。「バイデンは大統領選挙のサイクルに入っており、11月の最終的な追い上げに近づいている。バイデンは政治的な露出を最小限に抑えるために必要なことは何でもするだろう」と述べた。

「ウクライナに関する政策の立案者であるビクトリア・ヌーランド(政治担当国務次官)を解雇し、一歩後退した。」

その結果、欧州は「ウクライナに居座っても、率直に言って、米国の資金なしでは何も成し得ないことに気付いた。これは飲み込むのが困難な薬であり、その間、戦場ではウクライナ軍は極めて絶望的な窮地に立たされる。

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これで全文の仮訳が終了した。

ロシア経済を疲弊させ、ロシアが内部から崩壊し、プーチンを政権の座から引きずり下ろすという西側が2年前に公言した目論見は見事に失敗した。ロシア側は軍需生産を強化し、武器や弾薬、ミサイルの生産を大きく引き上げた。これは西側が武器や弾薬を思うようには増産できないでいるのとは好対照である。西側は武器や弾薬の在庫が自国の防衛をとってさえも危険なレベルに近づき、この状況を解決するにはある特定な部門では10年もかかると言われている。材料の手当だけでも7年はかかるのだそうだ。一夜にして回復することなんてできない話なのである。しかも、ロシア側の最新鋭・最強の武器は温存されている。最強の持ち札は核兵器であろう。ロシアの大統領選は31517日に行われる。プーチン支持率は80%だと言われている。このような現状では、どう考えても、ウクライナにおける対ロ代理戦争は終わったと考えざるを得ない。ペンタゴンによるウクライナの妄想は潰えたのである。

フランスのマクロン大統領が最近提言した欧州の軍隊をウクライナへ送り込むことに関しては、NATO加盟国の間では意見が分裂している。ポーランドの外相はウクライナへ欧州の兵力を送り込むことはあり得ると言い、英国の外相はあり得ないと言った。この6月には欧州議会の選挙が控えており、この議論は熱を帯びて来るだろうと思う。過去の歴史を見ると、国内景気の悪化から国民の関心を逸らせるためには外部に敵を求めることがよく起こった。つまり、国内の政治的危機を逃れるために指導者らは外部との戦争に向かうことが多い。

現時点では、特に西欧では「ウクライナ疲れ」によって生活の質が低下する一方であることから既存の政治エリートたちは人気を失い、極右勢力が票を伸ばすだろうと言われている。生活の質を取り戻すにはウクライナ紛争を収束させるしかない。この単純明快な論理をどれだけ主張し、選挙民の関心をどれだけ集結させることができるのかが鍵だ。

ところで、プーチンはロシアの核兵器は何時でも使える状態にあると述べ、最近、西側に対して警告を出した。日頃の彼の発言はハッタリではなく、常に率直な発言であることを考えると、NATOがロシアに向かって同国の脅威となるような軍事行動を起こすならば、ロシア側は何時でも核兵器を使うと言っているのである。これは今に始まったことではない。これはロシアの軍事ドクトリンであるとして前々から公表されていることだ。核兵器の悲惨さを直接わきまえている人たちは、今や、欧州には殆ど居ないとは言え、NATO側は一部の交戦派が主張するように安易にロシアへ武力侵攻することなどはできない。ロシア側からは核兵器による反撃があり得るからだ。しかも、ロシア側は極超音速ミサイルを有しており、西側の対空防衛システムはこれに対応できない。ブリュッセルやパリ、ロンドン、ベルリンは一瞬にして蒸発する。自分たちが実行しようとしたことを2倍返し、3倍返しで報復されるのが落ちだ。そんなことは誰も望んではいない。

ただ、米国には先制核攻撃を信じる政治家がいることが最大の懸念材料だ。彼らは近視眼的であって、本質を理解しようとはせず、目先の利益、つまり、次回の選挙結果しか眼中になく、人気取りに走る。広大な国土を有するロシアを相手にして先制核攻撃を行い、報復攻撃を行うことができなくなるまでロシア全土を一方的に叩くことなんて不可能だと私は考える。移動型のミサイル発射装置をどうやって一気に壊滅させることができるのか。それだけではなく、核搭載の潜水艦が常に外洋をパトロールしており、第一波の攻撃によってこれらの潜水艦を壊滅することは技術的には不可能だ。こうして、ロシアの潜水艦や移動型ミサイル発射装置からの報復核攻撃は間違いなく行われる。報復核攻撃にはさらに報復が行われる。こうして、世界規模の核戦争になる。

一言で言えば、ロシアとウクライナが一日でも早く停戦合意に漕ぎ着け、和平協議を始めることを祈るばかりである。

 

参照:

1Scott Ritter: Pentagon’s ‘Ukrainian Fantasy’ Is Falling Apart: By Ian DeMartino, Sputnik, Mar/12/2024

 

 


2024年3月10日日曜日

ウクライナにおけるCIAの活動がリークされたことはキエフ政権にとっては終焉が真近になったことを示すものだ


 私のような素人にとってはロシア・ウクライナ戦争はかなり前に既に終わっている。だが、この代理戦争を計画し、実行して来た連中にとってはそう簡単に「止ーめた!」とは言えない状況があるようだ。利害関係者にとっては軍事的な観点と政治的な観点がうまく一致することは稀なのだろう。常にどちらかが固執し、他方は譲歩することになるのだ。

ここに、「ウクライナにおけるCIAの活動がリークされたことはキエフ政権にとっては終焉が真近になったことを示すものだ」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© Sputnik / Stringer

ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、日曜日(225日)、ウクライナにおける中央情報局(CIA)の作戦に関して大規模な暴露記事を掲載し、ロシア国境近くに12カ所もの秘密情報前線作戦基地を設立したことの詳細を報じた。スプートニクは元CIA職員のラリー・ジョンソンに連絡を取り、この報道の内容を精査するのを手伝ってもらった。

ロシア外務省はウクライナにおけるCIAの作戦に関して報じたNYTの日曜日の記事を分析し、欧米諜報機関のウクライナへの積極的な関与は20142月のユーロマイダン・クーデター後に始まったという同紙の主張に異議を唱えた。

CIAはキエフ政府がスパイを訓練するのを助けてきたが、スパイだけではなく、あからさまな武闘派や過激派、テロリスト、凶悪犯さえをも訓練した。誰もかれもだ。そして、この連鎖行動が動き出した最も顕著な例のひとつは2013年から2014年にかけて起こった。」ニューヨーク・タイムズの報道に反応して、外務省のマリア・ザハロワ報道官はこう述べた。「民主的な勢力や民間人を装って、マイダンに参加した人々は主にポーランドやバルト諸国の基地で訓練を受けた。そして、われわれはこのことについては話したことがある。」

NATO諸国の諜報機関は、2022年に起こった展開のずっと前から、ロシアとの国境だけではなくウクライナ全土に基地やその他のインフラを設置するために働いていたと同報道官は述べている。

「ここで疑問が湧いてくる点がある。それは、なぜ今になってようやくNYTはこのことについて懸念を表明したのかという点だ。われわれはすべての情報を公開して来た。なぜ米国のメディアは何年も沈黙を守っていたのだろうか?」と彼女は疑問を投げかけている。

タイムズの記事によれば、CIAは、2016年にまで遡って8年間にわたって、ロシアに近いウクライナで12カ所の秘密スパイ基地を創設し、諜報「パートナーシップ」は、マイダン革命時に任命されたスパイ長官のヴァレンティン・ナリヴァイチェンコが当時のCIA長官ジョン・ブレナンやMI6に接触し、ウクライナ保安庁(ウクライナの頭字語SBU)を「ゼロから」再建するのを手伝うよう依頼したことから、「10年前に根をおろした」と見られている。

筋書きを構築するための嘘:

「彼らは初期段階での米国の役割については嘘をついている」と、元CIA分析官であり、国務省テロ対策室の専門家であるラリー・ジョンソンは言う。

『彼らは、クーデターの実現に米国と英国が果たした役割やマイダンで起こったことについては嘘をついている。彼らは「ああ、マイダン革命が起こって、それからCIAは事後的に連絡を受けたんだ」というふうに演技をしている。まあ、それは本当の話じゃない』とジョンソンはスプートニクに語った。NYTはマイダン革命、マレーシア航空MH17便撃墜事件、2014年に始まったドンバス地域でのウクライナ政府による懲罰的「対テロ作戦」を無視した「侵略者ロシア」の物語についての筋書きを作ろうとしていることを示唆した。

この観察者によると、このストーリーにおいて「誰もが次から次へと偽情報を受け取ることになった。」

『そして、彼らは、米国はウクライナがこれらすべてのテロ行為を実行するのを抑え込もうとしていたと言っている。つまり、「ロシアに対するこれらの攻撃は米国のせいではなく、ウクライナ人が独自に行動したのだ」というメッセージを送ろうとしているようなものだ』とジョンソンは述べている。

「われわれは1955年に遡って、(ウクライナの反ソビエト・反ロシア分子との)繋がりを持っていた。つまり、バンデラ主義者たちに対処する上でのCIAの役割は1940年代後半から1950年代初頭にまで遡る。彼らは、これを新しい関係のようなもの、つまり、過去1015年間に展開したものであったかのように描こうとしている。これはまったくのナンセンスだ!」と元CIA分析官は強調した。

沈没しかけた船から逃げ出すネズミ:

ロシアがドンバス地域へ進軍し、キエフ政府に対する米国とヨーロッパの武力支援が脅かされている中で、ウクライナでの代理戦争の現段階において暴露情報を公表する動機について質問を受け、これはワシントン政府がウクライナ・プロジェクトを終わらせることを決めた兆候かも知れないとジョンソンは示唆したのである。

「これはウクライナの終焉が近いことの表れだと思う。それこそが彼らが今この情報を漏らしている唯一の理由だ。なぜならば、ウクライナ人自身がその情報を発信しているからだ」とジョンソンは述べた。『これは、沈みつつある船をネズミが離れ始めている兆候なのだ。これは米国のせいではないと主張する彼らの何時ものやり方だ。「われわれがやれることは全部やった。クレイジーなウクライナ人!」って。これは「ウクライナを非難する」(筋書き)の一部だ』と同観察者は指摘する。

この記事で言及されている12の秘密基地については、ジョンソンはロシアがこれらの施設についてはすでに知っていたことであり、それらを除去するための行動をとったか、あるいは、行動を取る可能性が高いと個人的な自信を表明している。

「もし私がロシアの諜報機関員ならば、それらの基地を爆破するだろう」と彼は言った。「基地はロシア領土にそれほど近くはない。なぜなら、ロシアに近ければロシア側はそれらの基地をいとも簡単に排除できるからだ。そして、彼らは収集された情報の種類をほとんど誇張している。繰り返しになるが、もしも彼らが想定されているような形でCIAが本当に活動していたのであれば、CIASBU内の人員を訓練していたであろうと想定される。情報を受け取り、受領確認をせずに彼らに情報を渡していたことであろう。だが、それは実際に起こっていたことではない。これは彼らが言うところのオープンな連絡サービスなのであって、情報は自由に受け渡しされている。」

ロシア側にとっては何の驚きでもない基地:

CIAは「あらゆる友好地域に基地を設置する。これらは技術的、作戦的、人的な諜報を含むCIAの活動を促進するための基地であるとロシアの予備役大佐であり、「ロシアの英雄」であり、軍事諜報機関のベテランでもあるリュステム・クルポフは言う。

「諜報と防諜の分野の軍事専門家にとってウクライナでの12カ所のCIA秘密基地に関する情報はセンセーショナルでもなければ、信じられないようなニュースでもない」とクルポフはスプートニクに語り、グルジアや他の旧ソ連内の共和国にも同様の施設があり、そこには米国のスパイが招かれていると指摘した。「基地には研究所や技術諜報機器が配置され、工作員や特殊諜報部隊を駐留させる施設を設置することも必要だ」とし、そうすれば、海を越えてこうしたインフラを引きずり回す必要はなくなる。

CIAはスパイ組織であり、その主な目的は米国のソフト・パワーにとって有利な条件を作り出すこと、あるいは、特殊なスパイ活動や破壊工作を含む特殊作戦の助けを借りてそういった条件を作り出すことである。このため、CIAの痕跡が見つかるところであるならば、それがどこであっても腐敗し、悪臭を放つ活動や出来事がいろいろと起こるのである」とこの観察者は指摘する。

2011年のいわゆる「アラブの春」と称される抗議行動に先立って、同様の基地が作られたとロシアのベテラン将校は述べた。CIAは東欧での来るべき紛争に備えて「アラブ人を相手に自分たち自身を訓練した」と言う。後者のプロジェクトの目的は隣国と兄弟国の間にくさびを打ち込むことを含んでいた。

米国人は長期戦を演じる:

「米国は長期戦を演じる」とクルポフは強調し、ワシントン政府はヨーロッパにおける第一次世界大戦の頃にまで遡って、「まず、彼らに武器を供給し、次に配当を受け取る」ことなどをやってきたと述べた。彼らはすべての戦場で長期戦を演じ、すぐに権力を掌握することができないところでは長期的なプロジェクトを生み出した。そして、ソ連の一部であるウクライやソ連邦全体はそういった長期戦を演じるプログラムだったのである。」

「ウクライナ軍の将校がCIAに気に入られようとしてソ連時代からソ連崩壊後に至るまで、ロシアとウクライナの平和的な交流の時期まで、ありとあらゆる機密文書をCIAに提供したことは想像に難くない。これが公式に言及されるのは今になってだけだ」と同退役将校はNYTの記事とその「暴露内容」に言及した。

「主な目標はロシアの崩壊である。彼らに必要なのはロシアそのものではなく、ロシアが保有する天然資源だ」とクルポフは強調し、ウクライナでの代理戦争は現代のあらゆる紛争と同様に経済をその中核に据えていると指摘した。

「ソビエト時代にはわれわれは政治的対立や階級的対立を最前線に置いた。今や、われわれはこれらの米国との階級的対立は乗り越えた。しかしながら、矛盾は残っている」と言う。つまり、今や、それは「地政学」として改めて定式化されているのである。

結局のところ、もしもロシアが2年前にウクライナでの特殊軍事作戦を開始していなかったならば、ロシアは「ドンバス地域のロシア系住民が踏みにじられ、この地域は焦土と化すのを目の当たりにせざるを得なかったであろうとクルポフは考える。そして、そこには最新兵器の全てを備えた米軍の基地が設置され、それらは我々のすぐ隣に接して存在することになったであろう。」


Photo-6: 関連記事:A Fateful Error: History of NATO's Expansion: By Sputnik, Mar/20/2023

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これで全文の仮訳は終了した。

私は10年前にマイダン革命が起こった頃から、ロシア系ウクライナ人に対する敵意に満ちたキエフ政府の弾圧については批判的であった。このクーデターにおいては米国のNGOの活動が極めて大きな役割を担っていたことについてもブログに投稿した(注:詳細については、Mar/10/2024tに投稿した「ウクライナでのNGO活動」を覗いていただきたい)。20145月、オデッサにおいてフットボール・ファンのグループの間で抗争が起こり、親ロ系ファンの若者たちが何十人も焼き殺されるという実に悲惨な出来事があった。この事件によってウクライナにおけるロシア語圏地域の住民たちの反政府行動は後戻りができない決定的な段階に至ったと言える。

つまし、最大の要点は、ロシア軍が2022224日にウクライナへ侵攻したことによって、ロシア・ウクライナ戦争が突然始まったというわけではない。

2022224日の前には長い歴史があった。こういった歴史を無視し、ロシアが突然ウクライナへ侵攻したとする西側メディアによる単純極まりない大合唱は西側のプロパガンダであったことは、今や、多くの人達が認め、理解している通りだ。ウクライナ紛争は10年も前から米国が関与し、ウクライナにおける対ロ嫌悪感情を煽り、政治的に、そして、軍事的に主導し続けてきた米国による勝手気ままな対外政策の賜なのである。さらに過去の歴史を紐解けば、30年以上も前にソ連邦が崩壊し、旧冷戦時代からの負の遺産、つまり、対ロ嫌悪感や憎悪感情によって支配されていた西側の精神構造がワルシャワ条約機構軍が解体された後でさえもNATO軍を存続させ、西側はNATOを東方へ拡大し続けた。

怠惰が故にそうなったのか、あるいは、他の理由によるものなのかは判断が難しいが、結果としては新しい世界の動向について誤判断をしてしまった西側の政治家や軍人たちの責任は極めて大きい。だが、ここでひとつだけ記憶に留めておきたい件がある。マイダン革命が起こった2014年、米国ではジョン・ミアシャイマー教授が米国における一般的な論調に抗して孤軍奮闘していたことだ。その詳細については201491日に投稿した「ウクライナ危機を招いたのは西側であり、プーチンではない ― 米外交問題評議会」をご覧いただきたい。そして、その後の10年間に実際に起こったことを見れば、当時の彼の主張はその後ほぼ実証されたと言ってもいいのではないか。

人類が長い年月をかけて培ってきた道徳とか価値観を踏み外して、妄想的で新奇なポリコレ政策に走ると、そういった政治家や指導者は最終的には人の世から見放される。これは歴史上で繰り返して起こってきたことだ。

参照:

1Leaked Details on CIA Ops in Ukraine Signal ‘End is Near’ for Kiev: Agency Vet: By Ilya Tsukanov, Sputnik, Feb/26/2024

 

 


2024年3月6日水曜日

われわれはわれわれの敵となった:ポーランドの農民はヨーロッパが自殺するのに抗して立ち上がった

 

欧州の政治システムは、今、大きな挑戦に直面している。私が住んでいるルーマニアもEUの一角であって、お隣の独自路線を貫こうとするハンガリーやさらにその隣のスロバキアとは違って、EUとの集団行動志向が強く、EUからの圧力を陰に陽に受ける。その一方で、EUからはさまざまな資金提供の恩恵を受けている。

プーチン大統領の最近の演説の一部を借りて言えば、EU圏に見られる現行の混乱振りはまさに無能なエリートたちのせいだと言えそうだ:

「エリートという言葉自体が大きく信用を落としていることは皆さんもご存知だろう。社会に何のメリットもないのに、自分たちを特別な権利や特権を持ったある種のカーストだと考えている人たち。」これはロシア国内のオリガルヒや富裕層となった人たちを表した言葉であるが、西側のエリートにも言えることではないかと思う。自分たちは特権を持っていると思い込み、ある種の特別な階級にいると勘違いし、自分が神様でもあるかのように哀れな庶民たちを導いてあげようなどと不遜な考えを持っているのが今のエリートたちではないだろうか。そして、プーチン大統領は次のようにも語っている。「本物の真のエリートとはロシアに奉仕する労働者や戦士、そして、ロシアへの献身を示した、信頼のおける、信用のある全ての価値ある人々のことだ。」エリートとはいったい何だろうか。一度フォン・デア・ライエンEU委員長やヌーランド米国務次官に聞いてみたい質問である。(原典:【RusNews解説】プーチン大統領が分析する西側エリート達の本質〜年次演説の内容を深堀り‼️ニキータ伝〜ロシアの手ほどきMar/02/2024https://youtu.be/wyhgVhKI_vM?si=WAX9-b-YANmbzum7

ロシア・ウクライナ戦争を受けて現出したさまざまな混乱の中で、ウクライナへの支援は何時まで続けるのかという確実な答えは見い出せそうもないウクライナ紛争と並んで、EU各国の指導者を悩ませているのは何と言っても農民が展開している反政府デモであろう。国内のインフレ、エネルギーコストの高騰、金利の高騰、農家に対する補助金の先細り、等はヨーロッパ中で農民の生活に大きな歪をもたらし、いったい農業を継続できるのかという死活問題にまで発展している。追い打ちをかけるかのごとく、ウクライナ産小麦のEUへの輸出がEUのエリートたちによって決定され、超安値の小麦が無関税でヨーロッパへ流れ込む。これでは、高コストに悩まされているヨーロッパの農民はたまったものではない。こうして、各国の農民たちが立ち上がったのである。

ルーマニアでも1か月前に政府に対する要求を捧げるトラックの運転手たちが二日間にわたって抗議行動を行った。ポーランドではウクライナとの国境沿いに多数のトラックが集結し、彼らの抗議行動は1か月以上にも及んでいる。

ここに、「われわれはわれわれの敵となった:ポーランドの農民はヨーロッパが自殺するのに抗して立ち上がった」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© AP Photo / Czarek Sokolowski

実態を把握してはいない欧州のエリート指導者たちは市民の生活の質と自分たちの政治的正当性を破壊していると、ある専門家は主張している。

欧州の政治システムは、しばらくの間、かなりの緊張状態に曝されてきた。英国のEUからの脱退は、おそらく、欧州大陸が向かおうとしている方向性に対する人々の不満を最も顕著な形で表明したものだと言える。しかしながら、他にも多くの課題が続いている。

ポーランドの駅でデモ隊が鉄道車両から160トンものウクライナ産小麦を地上にぶちまけたことによって、この週末、注目すべき抗議行動が起こった。ウクライナのオレクサンドル・クブラコフ副首相は直ちにこの行為を非難し、逮捕を呼びかけ、同国の傀儡政権は欧州連合の政策を命令し、徹底させる権利をどれだけ必要と感じているかを示そうとした。しかしながら、欧州大陸の指導者たちは欧州市民のニーズと福祉を無視しているため、この抗議行動はこれが最後のものとはなりそうにないのである。

「今起きていることは欧州の至る所で起きており、広がってさえいる」と、ジャーナリストのイライジャ・マニエが火曜日(227日)にスプートニクの番組「断層線」で指摘した。「これは氷山の一角であって、ほんの始まりに過ぎない。事のすべてはヨーロッパ国民のニーズや利益とは相容れず、EUが推進する誤った政策によるものだ。」

「そして、今日欧州で起きていることはウクライナとそれに付随するすべての物事に対して指導者たちが採用した政策がもたらしたブーメラン効果であるとさえ言える。」

Photo-2:関連記事:Take a Look at How Polish Farmers Block Ukrainian BorderBy Sputnik, Feb/27/2024

マニエは、キエフ政権に対する欧州の奴隷的な献身が、EU諸国がウクライナに振り向けている資源の面からだけではなく、紛争のより大きな経済的影響の観点からも欧州の農民にいかに大きな害を及ぼしているかを詳述した。ウクライナからの非課税の農産物の輸入を認めることでウクライナ経済を救おうとする試みは欧州の農民が競争できない環境を作り出していると彼は指摘している。

インフレにより欧州製品の競争力はさらに低下しており、EUの気候変動対策は収益性を低下させ続けている。

輪作や肥料の削減といったEU政府からの指令は多くの農民にとっては我慢の限界だ、とマニエは言う。「特に補助金が削減された今、われわれは生き延びるのに十分なお金を持ってはいない」と、この元従軍記者は欧州の農民のジレンマを要約して言った。「農民らは完全に追い詰められており、彼らの背中はすでに壁に接している。先月、ブリュッセルの街路に1,300台ものトラクターが終結したのはそのせいだ。」

「欧州の農民たちが抱いている不満は欧州の農民に限ったことではなく、農民ではない他の市民も加わっているため、さらに拡大するであろう」とマニエは予測している。

より広範な危機をさらに悪化させているのは欧州大陸全体で政治的正当性が欠如していることだ。EUの政策は、平均的な人々の闘争からは切り離されており、選挙ではなく欧州委員会が任命したエリートたちによって立案されていることから、EUは長い間「民主主義の欠陥」と称され、批判されてきた。ところで、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はウクライナへのヨーロッパ軍の派遣について非常に挑発的な発言をしたことから、特に正当性がないと見なされている。

「特にフランスでは非常に不人気で、人々が右翼過激派のマリーヌ・ルペンに投票したくなかったために、わずか24%の得票率で権力の座に就いたエマニュエル・マクロンのような人物に対してはますます多くの抗議行動が行われるだろう」とマニエは述べた。

最近の2020年の米大統領選で起こった醜い出来事のように、欧米の著名な政治家たちはマクロンのような不人気なリベラル派が極右の敵対者を恐れて、利益を得るような選挙を画策することができた。だが、やがて、こういった政治家たちは彼らの政治的目標の現実が明らかになるにつれて、苦しむことになるだろう。マクロン大統領は労働者たちが苦労して勝ち取ってきた諸々の権利を抹殺し、フランス国民の生活の質を低下させようとする中で、在任中、大規模な抗議行動に見舞われてきた。

「イングランドでは医療制度が崩壊しつつある。エネルギー・コストは少なくとも5倍から6倍に上昇し、今年は年初からすでに14%も上昇している」とマニエは付け加えた。「だから、われわれは完全な混乱に陥って、大惨事に向かっている。それらはすべてがウクライナで何をすべきか、ロシアとはどのように戦うべきかについての指導者たちの決定によるものであるが、われわれは自国の経済と戦っているのだ。」

「彼らがやっていることは欧州を貧困化させている」と彼は付け加えた。

マニエは、ロシアを悪者扱いする欧州指導者の決定は欧州大陸全土に大混乱を引き起こし、ロシアと敵対するという名目で欧州の経済と政治制度の正当性を犠牲にしていると結論づけた。

「政府は180度態度を変え、ロシアは我々の敵となった。 しかし、それは真実ではない。なぜならば、われわれこそが自分自身の敵になってしまったからである」と彼は主張した。

同氏はポーランドでの反抗的な行動について「これはほんの始まりに過ぎない」と述べ、抗議行動は今後数カ月、あるいは、数年にわたって欧州を揺るがすことになるだろうと予測している。

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これで全文の仮訳が終了した。

「政府は180度態度を変え、ロシアは我々の敵となった。 しかし、それは真実ではない。なぜならば、われわれこそが自分自身の敵になってしまったからである・・・ ロシアを悪者扱いする欧州指導者の決定は欧州大陸全土に大混乱を引き起こし、ロシアと敵対するという名目で欧州の経済と政治制度の正当性を犠牲にしていると結論づけた」という要約は憎い程真実が詰まっている。

マイダン革命以降10年も続いてきたウクライナにおける紛争、ならびに、米国の対ロ代理戦争は欧州の農民だけではなく、EU市民のほとんどすべての生活の質を低下させた。これが最大の、そして、避けようと思えば避けることができた筈の代価なのである。

欧州の悩みは尽きることがない。それはEU政府が対米従属路線を採用した時にすでに約束されていた状況であったと言えるだろう。具体的にはノルドストリーム・パイプラインが破壊工作を受けて、それまで供給されていたロシア産天然ガスの安定供給が中断され、それに代わって、高価な米国産LNGが輸入されている。その結果、欧州におけるエネルギーコストは急増し、インフレ率が高まり、金利が跳ね上がって、欧州経済の機関車役であったドイツは競争力を失い、脱工業化のプロセスが進行している。

そんな環境であってさえも、欧州の政権は対ウクライナ支援政策を継続している。そして、欧州の農民は甚大な被害を被っている。これは、「みんなで渡れば怖くない」と揶揄される赤信号と同様で、EUおよびNATOという集団行動を隠れ蓑として行動する政治エリートたちの倫理観や常識の欠如、市民のニーズや現実からの乖離、等がもたらした結果なのである。


参照:

1‘We Have Become Our Own Enemy’: Polish Farmers’ Remarkable Protest Against Europe’s Self-Destruction: By John Miles, Sputnik, Feb/28/2024

 

 



2024年3月2日土曜日

消えゆく帝国:妄想めいた支援キャンペーンとウクライナで「死か覇権か」の難問に見舞われたNATO

 

ウクライナにおける米国の対ロ代理戦争は過去10年間にわたって米CIAによって行われてきたと、最近、ニューヨークタイムズ(NYT)が報じた(原典:NYTs Report: CIA OPS in Ukraine for a Decade: By John Leake, Feb/26/2024。これを受けて、このような報道をNYTが流したということは米国がウクライナから足を洗いたいと言っている兆候であると米国の元諜報専門家が解説している。

このことは歴史的にも重要な節目となるであろうから、関連情報を記録として残したいと思う。

ここに、『消えゆく帝国:妄想めいた支援キャンペーンとウクライナで「死か覇権か」の難問に見舞われたNATO』と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: By Gerry Nolan

地政学的に見るととんでもない瞬間にある今、ウラジーミル・プーチンと習近平は米国の力に挑戦したことを後悔するであろうと述べた米上院多数党の院内総務を務めるチャック・シューマーの宣言はまさに傲慢さの極致を指し示すだけではなく、欧米支配の黄昏さえをも示唆している。ウクライナとイスラエルに何十億ドルもの援助を注ぎ込むために、米上院が超党派で芝居がかった瞬間に結集し、その時のシューマーの言動は米国の決意の証としてではなく、むしろ、主張をすることさえもできなくなり、一極支配の秩序の痕跡に必死にしがみつこうとしている衰退の途上にある帝国のまさに最後のあがきとして響き渡った。

このようなスタンドプレーは世界中が画期的な変化の中で震え、世界の覇権という地殻プレートの構造がわれわれの足下で割れ、移動する時に現れる。表向きはロシアに対抗してウクライナを支援し、イスラエルを支援する。そのための驚異的な額の950億ドルもの「国家安全保障」予算の承認は強さの尺度というよりは、むしろ、それは米国の権力の殿堂に浸透している根深い不安の尺度でさえある。今展開している物語の核心はここにある。つまり、急速に進化する世界の大舞台で敵国も同盟国も同様にお互いの立場を再調整する中、かつては難攻不落であった超大国が自らの覇権が崩壊する現実に取り組もうとしているのである。

シューマーはNATOの同盟国と敵国に「明確な超党派の決意のメッセージ」を送ったと豪語したが、彼がとった立場が示す皮肉はこれ以上にないほど深刻なものであった。それは不屈の自由の砦を示威するものではない。それは米国を悩ませる脆弱性と内部分裂を覆い隠すための大掛かりな政治シヨーなのである。モスクワや北京を威嚇するどころか、この動きは紛争地帯に何十億ドルもの支援を約束するたびに超大国自身が戦略的包囲に曝されていることを目撃するといった絶望の証として機能し、米国の例外主義のうわべに現れた亀裂を露呈するのである。

「今日、われわれはプーチンに後悔の念を起させる・・・」とシューマーは宣言したが、この感情は現代の地政学的なチェス盤に対する深い誤解を裏切るものである。本物の後悔は多極化時代の夜明けを認識できなかった人々のためにあるのではないか。その到来は上院議員たちの万雷の拍手によって告げられるのではなく、それを抑止しようとする連中の静かで戦略的な策によって告げられる。米国が永遠の紛争の深淵にその財宝を注ぎ込むにつれて、米国は岐路に立たされ、道徳的権威の振りを強化しなければならないことから、苛立たしい世界に直面していることにますます気づくのである。

米国の決意のパラドックスと過ぎ去った時代からの残響:

シューマーが喧伝したように、超党派の支持という大舞台は米国の外交政策の核心にある深遠なパラドックスを覆い隠している。米国は民主的価値の擁護を宣言する一方で、代理戦争を行い、民族自決を踏みにじり、軍事的覇権の追求をする、等、冷戦時代の戦術の特徴を色濃く帯びた紛争に膨大な資源を投入している。理想とされるものと行動との間に現れるこの不一致は国際舞台における米国の信頼性を損なうだけではなく、権力の回廊における米国の戦略において耳障りな不協和音を浮き彫りにする。

ウクライナに610億ドルを支援し、イスラエルと台湾にさらに数十億ドルを配分するということは時代遅れの思考に陥った戦略を象徴するものである。米国の強さを誇示するというよりは、むしろ、これは明白な脆弱性と不安感を露呈するものだ。つまり、死にゆく覇権国家の命令にはもはや追従しない世界における米国の影響力の衰退を示している。

イーロン・マスク:同調の合唱における逆張りの声:

Photo-2:テスラ、スペースXのイーロン・マスクCEO  © AFP / Leon Neal   
© AFP / Leon Neal

地政学的な正気と完全に狂気の狭間においてイデオロギー的および戦略的大失敗の真っ只中における当文脈において、イーロン・マスクの反対の声は外れ値としてではなく、実用主義的なビーコンとして受け取られる。マスクは彼の技術帝国を超越して、不条理の政治的舞台を切り裂くような明快さをもってウクライナ紛争への無限の資源の注入を批判している。ロシアがウクライナに「まさか」負けることはないという彼の主張は彼のソーシャルメディア・プラットフォーム「X」におけるより広範な議論の中で明確にされており、主流メデイアが流す一方通行の物語は批判的な視点がひどく欠けていることを強調している。

米国が紛争地域において流血し続けることの有効性と道徳性に関するマスクの懐疑的な見方は支配的な社会通念に挑戦するものである。米国の介入主義の再評価を求める彼の呼びかけ、特に、上院の最近の資金提供での派手なショーに関する批判はこれらの関与の真のコストについてはドルだけではなく、人命と世界の安定についての真剣な会話を求めている。

地政学的な争いに足を踏み入れるにあたり、イーロン・マスクはウクライナへのさらなる資金提供に反対を表明するだけではない。彼は現代におけるテクノロジーと外交の交差点を体現している。上院の惜しみない支援パッケージに対するマスクの批判的な姿勢ではデジタル戦の戦場と宇宙をベースとした通信ネットワークとが極めて重要な役割を果たしており、戦争の様相の変化に対する現実的な理解に根ざすものである。ロシアの特別軍事作戦の中でウクライナの部分的な接続性を確保したSpaceXのスターリンクを通じて彼が実現した貢献は戦争の長期化に対する彼の慎重な姿勢とは鋭く対照的である。この二極分化はマスクを中傷者としてではなく、従来の戦場を超えて広がる戦争の意図しない結果を真摯に警戒する現実主義者として彼を位置付ける。

「支出はウクライナの助けにはならない。この戦争を長引かせてもウクライナの助けにはならない」とマスクは主張し、財政的・軍事的支援は効果的には友好な支援になるという言説に異議を唱えている。この視点は彼のプラットフォームXでの議論で共有され、米国の関与の持続可能性だけではなく、米国にとっては勝ち目のない、最終目標のない紛争を扇動することの倫理的意味合いにも疑問を投げかけている。戦争の「肉挽き器」をやめようというマスクの呼びかけには身勝手で、政治的・戦略的には誤った計算の背後にしばしば曖昧にされてしまう人的コストをはっきりと思い起こさせるものがある。

さらには、ロシアの政権転覆の可能性に関するマスクの考察は多くの西側政治家にとっては夢精であり、プーチンの追放を願うという狂気の沙汰を浮き彫りにしている。後継者は誰でもが「さらに筋金入り」になる可能性を示唆し、マスクは過度に単純化された欧米の言説に現実性を注入し、国際関係に求められる慎重なバランス感覚を利害関係者たちに思い起こさせようとしている。彼の解説はウクライナ紛争の直接的な文脈を超えて、核大国を不安定化させることのより広範な影響に触れている。主に西側権力の回廊から反響して来る、妄想的で、かつ、自殺的で、過度な単純化の大洋の中でマスクは単なる逆張りとしてではなく、戦略的誤算が渦巻く海の中で正気の声として浮かび上がってくる。彼の批評は典型的な党派的な美辞麗句を超越し、イデオロギーの硬直性や変化し続ける世界秩序の現実に対して立ち向かうことの危険な拒否によって台無しにされた風景の中で、現実主義のビーコンとして彼を位置付けている。

瀕死の瀬戸際にある覇権国のショー ― 否定に包まれた愚行:

死にゆく覇権国が否定を続ける中でしか思いつかない不条理の舞台において米国は民主主義を強化し、権威主義に対抗するという滑稽極まりない装いをまといながら、世界の大舞台でその富と道徳的地位を失墜させ続けている。ワシントンにおける超党派の合意によって維持されているこの壮大な幻想のドラマは内部分裂や永遠の戦争にうんざりした民衆に悩まされており、崩壊しつつある米国社会の殿堂とは全く対照的である。ウクライナとイスラエルにおいて米国が仕組んだ大惨事に何十億ドルも注ぎ込むという、直近の議会が見せた派手なショーは米国の強さの証としてではなく、衰退する一方の超大国に対する痛烈な告発として機能している。

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米国人の富は同意もなしに永遠の戦争に注ぎ込まれ、貧困が広がり、犯罪率が急上昇し、インフラが崩壊する、等、数多くの国内の優先事項が米国の都市部を悩ませている。

国境危機や非常に高い犯罪率、インフラの破綻、強度な貧困、水面下で醸成されている内戦の囁き、そして、麻痺するほどにまで意図的に二極分化されてしまった有権者、等、の問題に見舞われ、この極めてグロテスクな光景は歴史的な規模の危機に取り組んでいる国を背景にして着実に展開している。2024年の大統領選では、妄想的で非常に分裂的なバイデン政権は「米国」のうわべを壊す態勢を整え、復活しつつあるトランプ陣営と対峙し、火に油を注ぐ。ところが、こういった嵐の真っ只中で、米国の政治機構はほとんど滑稽な程の皮肉を込めて、朽ち果てつつある自国の資源を勝てそうもなく、大半の米国人が反対している底なしの戦争に注ぎ込み続けることを選択しているのである。

この状況の不条理さはいくら強調してもし過ぎることはない。米国のインフラが崩壊し、貧困がいや増しに広がり、社会構造が裂け目から真っ二つに引き裂かれている時、勝ち目のない代理戦争への関与をエスカレートさせるという決断は単なる見当違いではない。まさに、これは間違いの悲喜劇である。この国は自国内における明白な格差や不正義に対処するのではなく、むしろ、政権転覆や大量虐殺を可能にするという身勝手な策謀に関与し、民主主義の名の下に混乱を輸出する。その一方で、自国の民主的制度は瀬戸際に曝されて、ぐらついている。

ここでは、悲劇的な皮肉が明白である。かつては希望の光であり、世界の安定の保証人としての役割を担っていた米国は、今や、放火犯の役割を果たし、消火することのできない火を燃やしている。紛争と介入の果てしないサイクルに既に幻滅した米国民はカフカ流の悪夢に巻き込まれていることに気付く。つまり、彼らの声は無視され、彼らのニーズは脇に追いやられ、彼らの未来は世界支配との見せかけの関連性を維持することに執着するエリート階級の野望に抵当に入れられてしまうのである。

さらには、米国社会の分裂は国内だけの問題ではない。それは世界の舞台における地位に深い意味合いを秘めている。同盟国も、そして、敵対国も当惑と日和見主義が入り混じった目で米国が国内の矛盾を解決しようと奮闘する様子を見守っている。かつては安定を指し示す灯台であった米国のリーダーシップの約束は、今や、不確かな揺らぎを見せており、国家の優先事項は理性的な観察者にとってはますます不可解なものになっている。

この文脈では、ウクライナ内外で失敗した戦略を執拗に追求することは政策の失敗以上のものだ。それは急速に衰退する超大国を示す明白な象徴である。これらの紛争に充てられた何十億ドルもの資金は国内で切実に必要とされている資金であり、財政の枯渇だけではなく、道徳的破綻さえも意味する。米国は歴史の教訓に耳を傾けることを頑なに拒否し、自らが作り出した崖っぷちに向かって容赦なく行進している。最後のウクライナ人になるまで戦い、米国民に何の利益ももたらさない政権や紛争を支持するという執拗な主張はその傲慢さに目を眩ませ、壁に書かれた文字を見ることさえもできない程だ。これは死にゆく覇権国への明快な呼びかけである。

最後の抵抗 ― 覇権の野望がウクライナで死を迎える:

すでにウクライナに誓約された2230億ドルの中でも群を抜く驚異的な610億ドルの支援の陰でNATOの苦境の皮肉が露呈し、英国の軍事的混乱は同盟のより広範な倦怠感の痛烈な象徴として機能している。ウクライナ紛争に何十億ドルもの資金が注ぎ込まれる中、NATOではニ番目に手ごわい軍隊である英国の製造部門が無能と目覚めによる麻痺の泥沼に陥っている時、これらの資金はいったいどのように役立つのだろうかという疑問が浮かび上がってくる。英軍の現状に関するこの評価はロシアのマスコミを通してではなく、伝統的にNATOの狙いの代弁者を務め、欧米のお得意様であるマスコミ界の重鎮、デイリー・テレグラフから出ているのである。デイリー・テレグラフ紙のような体制派の柱が崩壊しつつある状況を内側に向かって見つめようとしている時、皆はもっと真剣に注意を払った方がいい。この大げさな資金はウクライナを敵に対抗させることを意図したものではあるが、支援国自身の軍事的構造が剥き出しであって、ウクライナでは徴兵の苦悩に満ち、軍産複合体が飛躍するどころか足を引きずっている時、あたかもシーシュポスの果てしなく続く辛い仕事に見えてくる。

英国の防衛が崩壊する光景は艦船が老朽化し、運用可能な戦車の数が乏しく、陸軍が医療の軽視によって半減し、NATOの総合力に長い影を落としている。このような風土病的な衰弱が第二の柱の中心に見られることから、同盟が軍事力を投射する能力が疑問視され、兵站のライフラインを維持する能力さえもが疑問視されている。こうした状況下でのウクライナへの610億ドルの注入は勝利のための戦略というよりは、欧米の妄想的な誇大さの証しであり、自国の武力を結集しようと奮闘している国々に支えられた支援の見せかけにさえ見えるのだ。

この資金の流出は英国の国防上の窮地を背景に並置されて、そのような支援の有効性や目的についてより深い疑問をもたらす。NATOが自らの存亡にかかわる課題、つまり、兵器の枯渇、包囲されたサプライチェーン、そして、NATOが擁護すると称するイデオロギーそのものに包囲された軍事的気風に取り組んでいる中、ウクライナへのこのような巨額の配分は空虚に響くのである。NATOそのものの中枢である米国は、(ウクライナとイスラエルで)高い需要がある中で、産業能力の苦境と相まって、弾薬の極度の不足や自国の徴兵の大失敗をじっと見つめている。同盟自体の基盤が脆弱性や忍び寄る陳腐化に満ちている時、これらの資源はいったい何のために配備されるべきなのかという疑問が湧いて来るのである。

ウクライナに資金を緊急に注ぎ込むこととNATO内部の老朽化を無視することの対比は戦略的近視眼を浮き彫りにする。それは弱体化する超大国に率いられた西側諸国が、その軍事的建造物が崩壊する中であってさえも、不換紙幣の力による影響力の痕跡にしがみつこうとする地政学的な舞台を反映している。この文脈では、すでにウクライナに供与された2230億ドルの中でもトップを占める610億ドルはウクライナへの揺るぎない支援の象徴ではなく、西側の役割にますます疑問を投げかける多極的な世界秩序の中での関わりを主張するための必死の試みを象徴するものだ。

NATOが自ら作り出した深淵を覗き込む中で、かつては自慢していた軍事力における苦境は英国の衰退に代表されるのであるが、これは教訓的な物語として機能する。同盟が東部戦線での紛争に資金を提供する準備ができている一方で、自国の兵器庫と兵力が衰退していることは戦略上の不協和音、ならびに、願望と能力との乖離を明確に物語っている。ウクライナ支援というこの壮大な物語の中で、悲劇的な皮肉は欧米の軍事力の体力そのものが弱体化しつつあり、痛烈な疑問に答えられないままになっていることにある。ウクライナは、あるいは、実際にはその支援国は彼らの軍事力が、まさに、彼らの体力そのものが怠慢とイデオロギー的分裂によって萎縮しているのに、610億ドルでいったい何を成し遂げようと願うことができるのか?

結局のところ、ウクライナに対する援助の洪水は戦場の厳しい現実を変えるのに何の役にも立たない ― 不可避的であり、全面的なロシアの勝利はNATOに対する驚異的な打撃を意味するだけではなく、偉大なペペ・エスコバーの言葉を借りれば、それは覇権国が潰える戦場を意味する。希望の光を装ったこの支援の洪水は欧米が保護すると言ったウクライナ人自身に苦しみを与え、長引かせるだけである。それなのに、ウクライナの連中は単なる駒に追いやられ、ロシアを弱体化させるために身勝手な夢精の祭壇で生贄にされ、彼らの苦悩に対しては冷血な無関心さで最後の一兵となるまでウクライナ人を故意にロシアと戦わせている。西側の戦略は民主主義のための聖戦ではなく、ロシアに立ち向かうためにウクライナ人を消耗品として利用し、彼らが守ると誓った命に対する犯罪的な軽視を誇示する悲惨な物語である。覇権国の野望が死に絶えることになったのはウクライナの黒土地帯においてであり、これはかつては難攻不落だった帝国がその支配を探求し続けた陰鬱な終楽章である。

最後の思い・・・:

地政学的な潮流が嵐のような猛烈さで変化する現代の壮大なタペストリーの中で、私たちの目の前に展開される物語は単なる紛争の物語ではなく、時代の終焉を示す深遠な証である。NATOの混乱と英国の軍事的苦境の亡霊の中で、シューマーの妄想的な宣言は不屈の力についての明確な呼びかけとしてではなく、黄昏に直面している支配の呪われた汚点としてこだましている。既にウクライナの泥沼に注ぎ込まれた2230億ドルの中でもトップクラスの610億ドルという驚異的な支援はそれが意図された命綱としてではなく、妄想と否定に陥ってしまった戦略の最後の行為として浮かび上がってくる。これは単なる支出ではない。多極化の夜明けがやって来てさえも、消えゆく一極世界の影にしがみつこうとする西側が最後に見せる癇癪なのである。

英国の武力減退とNATOの継ぎ目を引き裂く内部矛盾を背景にして展開される本ドラマはそれ自体の勝算が疑問視される同盟について鮮明な絵を描いている。これは伝承についての不動の連合体ではなく、断片化された存在であって、もはや単一の覇権国の周りを回ってはいない世界との関わりと取り組んでいるのである。NATOの防衛上の策略に怯える必要がない世界だ。ウクライナの黒土地帯で繰り広げられた悲劇は単なる戦場ではなく、かつてはアンタッチャブルだった帝国の野望が必然的に終焉を迎える荒涼とした一幅の絵である。

この地政学的な地震の震源地を覗き込むと、今後の道筋としては戦略の再評価だけではなく、グローバルな舞台での真のリーダーシップとは何かを根本的に再評価する必要があることが明らかだ。未来においては協力が対立に取って代わり、主権の相互尊重が国際関係の礎石を形成する多極的な世界秩序が約束される。この新しい時代においては、強さの真の尺度は支配や威嚇する能力ではなく、橋を架け、集団安全保障と繁栄に向けた共通の道を切り拓く能力にこそある。

このように、われわれがこの極めて重要な岐路に立つ今、現状の危機の根幹に刻み込まれた教訓はあまりにも長きにわたって国際政治を特徴付けてきたゼロサムゲームからの脱却を明確に呼び掛けている。

ウクライナの黒土地帯は国民の闘争と犠牲によって特徴づけられ、覇権追求の無益さを痛烈に思い起こさせる役割を果たしている。この神聖な地で過ぎ去った帝国の野望は彼らの結末に遭遇し、グローバルな関与に関する新しいパラダイムを今にも必要としていることを強調している。

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これで全文の仮訳が終了した。

著者が述べている視点は広く、奥が深い。読めば読む程に著者の主張に引き込まれ、極めて教育的な記事である。一気に視野が広くなったような気がする。

われわれ一般庶民は国際政治における出来事を体系的に理解することは少なく、断片的な理解に陥りやすい。個別の情報はひとつひとつが独立して存在し、お互いが有機的に織りなすような俯瞰的な理解はなかなか期待できない。そこへ、ロシア・ウクライナ戦争に関してこの記事が登場してきた。そして、大きく広がっていたギャップを隅々に至るまで埋め尽くしてくれた。

参照:

1Fading Empire: The Delusional Aid Crusade and NATO’s Existential Quandary in Ukraine - Death of a Hegemon?: By The Islander, Feb/15/2024

 

 



2024年2月22日木曜日

本当であることが判明した二大陰謀論

 

新型コロナ騒動が始まった頃は、当局側の筋書きに沿って学会、医師会、等の団体、大手メデイアは新型コロナ感染症がもたらす脅威を喧伝し、一般庶民に恐怖心を抱かせるような情報操作作戦をとっていた。今思うに、あれはすべてが一人でも多くの人がワクチン接種を受けるようにするために設計されていた茶番劇であったと言える。

当時、一部の専門家を除けば、誰もが恐怖に駆られて、ワクチン接種の有効性を疑うといった批判的な余裕などは持ち合わせてはいなかったが、ワクチン接種を開始してみると、ショック死があちらこちらで多発。たとえば、血気盛んなスポーツ選手が競技場でバタバタと倒れた。当局側はワクチン接種に疑問を呈する意見や反論を検閲し始めた。最初のワクチン接種は医療関係者が対象となった。しかしながら、米国では、医療関係者の間では一部の人たちから強い反論が現れた。私は「オヤッ」と思った。彼らはどうして反論するのかという素朴な疑問だった。彼らはわれわれ一般庶民が持ってはいない情報をすでに持っていたに違いない。そして、いわゆる体制側は反ワクチンの意見を述べる者には陰謀論者というレッテルを貼り始めた。都市閉鎖の策として新たに課されたルールに従わない者には罰金を課す国も現れた。国によってルールの詳細は異なるが、一部の国は他の国に比べて極めて厳しいルールを課した。

あの大混乱から3年が経った。今、振り返ってみると、当時の社会の空気は極めて摩訶不思議な様相を呈していた。それは、それだけ強烈な洗脳作戦が実施されたということを示していた。社会が完全に正常な状態に復帰したとはまだ言えないであろうが、当時は陰謀論者としてレッテルを貼られるような議論も、今や、ようやく公に発言することができるようになったようだ。皮肉なことには、3年前に反ワクチン論者を陰謀論者だと言っていた連中こそが実は本物の陰謀論者であることが判明し始めたのである。このことが判明しただけでも喜ばしいことだと思う。

ここに、「本当であることが判明した二大陰謀論」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:ジョン・フレデリックスが「米国の真の声」で質問

メディアに友達がいるのはいつの世でも好ましいことだ。ジョン・フレデリックスはウェブサイト「米国の真の声」において「ベルトウェイの外で」の司会を務めており、パンデミック対策における大失敗に関して政府には批判的であって、当初から私の陣営にいた。彼は、メディアで私が立ち往生させられた陰謀論のうちで時間の経過とともに真実であることが判明した上位ふたつについて私に質問して来た。彼は世界中の人々に最も大きな影響を与え、最も影響力のあったふたつのことを望んでいるのだと私は解釈した。私が選ぶトップふたつはこうだ:

陰謀論No.1:新型コロナウィルスの起源は武漢ウイルス研究所にあり、米国と中国との協力の下で研究が行われ、4人の主要な共謀者たちがもたらしたものである:ノース・カロライナ大学チャペル・ヒル校のラルフ・バリック博士、エコヘルス・アライアンス社長のピーター・ダスザク博士、国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ博士、ならびに、中国の武漢ウィルス研究所のシ・ゼングリ(石正麗)博士。

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現在、複数の米国政府機関がこのウイルスは自然発生したものではなく、研究所から漏洩したものであることを認めており、当時、我が国の諸々の機関が真実を隠蔽するために共謀していたことを示す証拠は増える一方である。

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これで全文の仮訳が終了した。短い記事であるが、内容は画期的なものだ。

私が知る限りでは、この引用記事の著者であるピーター・マッカロー医師は当初から新型コロナ感染症については専門的な知識に基づいて十分な疑念を抱いていた。その旨を議会で証言して来た。それは彼のニューズレターを読んでいると容易に分かる。その著者が陰謀論のNo.1として新型コロナパンデミックを取り挙げたのは医師としては当然であろう。この記事の全文は彼のニューズレターの有料購読者に限って公開されており、私には彼が取り挙げた二番目の陰謀論とは何なのかはまったく分からない。察して見るに、この議論の対象を過去の2030年間とするならば、9/11同時多発テロかも知れないし、対象の期間を最近の数年間に絞るのであれば、2020年の米大統領選挙における不正選挙ではないだろうかと私は思う。

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もうひとつの記事を覗いてみよう。

2020年の始め、致死性の高い感染症が中国から全世界に広がっていることを知った時、誰もが恐怖に襲われた。そして、言論の自由が抑圧され、科学は政治によってハイジャックされた。新型コロナウィルスの起源があれこれと追求され、新たなmRNAワクチンがワープ・スピードをもって開発された。FDAの仮承認を得たワクチンの安全性に関して疑義を挟む学者たちは個人攻撃に曝され、人格をキャンセルされ、医学研究上の議論を行うプラットフォームからは追放された。こうして、言論の自由は大手製薬企業の利益の追求を容易にするために完全に抑圧されたのである。

このような状況に関連して、タッカー・カールソンはインターネット上での言論の自由を擁護する動きで旗艦的な存在であるマイク・ベンツとのインタビューを行った。

ここに「国家安全保障を標榜する国家による支配」と題された記事がある(注2)。この記事も仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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タッカー・カールソンは元国務省職員のマイク・ベンツにインタビューを行ったばかりであるが、国家安全保障国家はそもそも外敵から米国本土を守るために考案されたものであるが、それは米国民を支配することにますます注意を向けていると指摘。主な手段は検閲である。

この状況は建国の父たちが米国のために考えたこととは真逆である。ジェームズ・マディソンは182284日の手紙で次のように書いている:

大衆に関する情報やそれを得る手段を持たない大衆政府は茶番劇、あるいは、悲劇の序章に過ぎない。あるいは、その両方かも知れない。知識は永遠に無知を支配する:そして、彼らの統治者であろうとする人物は知識が与える力によって自分自身を武装しなければならない。

マイク・ベンツは、国家安全保障国家を注意深く研究するのに何年も費やしてきたようだ。米国で起こっていることに関する彼のプレゼンテーションは非常に博識で、組織化されており、それは複数の信頼できる情報源によって裏付けられている。私がこのサブスタックで指摘しようと努めてきたように、新型コロナ感染症の大流行に対する対応策は選挙で選ばれたわけでもないディープステートの連中によって指揮されている数多くの公共政策プログラムのひとつに過ぎない。

ベンツはパンデミックに対する対応策と2020年の大統領選挙における郵便投票の重要な役割との相互関係を強調している。また、新型コロナ感染症と新型コロナワクチンに関する情報を制御したのと同じ検閲装置が2020年の大統領選挙で投票結果がどのように処理されたのかについて批判的であった者たちを先制的に抑圧したのであると指摘している。

彼の結論はこうだ。わが国の国家安全保障国家は国民の意思の正当性を認めてはいないという。選挙で選ばれたわけでもない役人たちがわが国を動かし、大衆政府には敬意を払ってはいない。大衆政府の生命線である筈の大衆に関する情報を尊重してはいないのである。

このインタビュー全体を視聴することを私は強くお勧めする。

Photo-3:写真の上部に挿入されたキャプションの仮訳:この安全保障国家こそが米国における検閲や不正選挙を推進する元凶である。「私が今記述しているのは軍の支配のことだ」とマイク・ベンツは言う。「それは民主主義の真逆だ。」

あなたは、今、ピーター・マッカロー博士とジョン・リークが主催するCourageous Discourse™を無料購読しているが、その恩恵を全面的に享受するにはアップグレードをお勧めしたい。 

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これで二番目の記事の仮訳が終了した。

米国の民主主義はどこへ行こうとしているのか。

20191129日、私は「米国は民主主義を失うことはない。民主主義はとうの昔に失われてしまったからだ ― プリンストン大学の研究」と題して投稿した。この5年前の投稿に念を置いて、本日の投稿の中にある要素をあれこれと考察していただきたいと思う。今、識者たちは米国が軍産複合体、あるいは、グローバリズムによって支配されていることを危険視しているのである。

新型コロナ感染症が世界を席巻し、その対応策は混乱の極を呈して、全世界を翻弄した。新規に開発されたmRNAワクチンの安全性に関する当局の姿勢はいい加減で、人命を尊重し、感染症による被害を最低限にしようとして本気で対応していたのか、今になって見ると、極めて心もとない感じがするのである。まさに暗黒の時代に突入したかのような観がする。また、2020年の米大統領選において観察された選挙不正は、幸か不幸か、民主主義を説いてまわる米国とはまったく相容れないものであって、衆人の目に醜い実態を曝すことになった。そして、今年の秋に行われる米大統領選は4年前のそれ以上の醜態を見せることになるのかも知れない。こういったふたつの出来事は同根であるとタッカー・カールソンは看破している。

参照:

1Top Two Conspiracy Theories that Turned Out to be True: By Peter A. McCullough, MD, MPH, Feb/19/2024

注2:Rule By The National Security State: JOHN LEAKE, Feb/19/2024