2018年5月21日月曜日

北朝鮮はボルトンのばかばかしい要求に対して米朝会談をキャンセルするかも


トランプ政権内ではもっとも強硬派で安全保障担当のボルトン大統領補佐官が発した言動が順調に進行しつつあった朝鮮半島の和平プロセスに激震を引き起こした。

その発端はボルトンが北朝鮮の非核化のプロセスをリビア方式で進めたいと言ったことにあった。リビアで何が起こったのかを考えると、激震の理由は明白だ。最終的には、カダフィは政権の座から放り出され、反政府派によって殺害された。この悲劇的な最期を誰もが思い出す。つまり、ボルトンの主張は北朝鮮にとっては彼らが前から言っていた政権の安定を真っ向から否定するものと映る。

西側のメディアからは北朝鮮の指導者はすぐに気が変わるから信用できないといった論調が出ていた。しかしながら、今回の動きを詳しく眺めてみると、米国政府の側にこそ根本的な問題が潜んでいることを示しているようだ。

そういった背景を伝える記事に出遭った [注1]。かなり詳細な情報であるので、現状を理解する上で役に立つのではないかと思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

トランプ政権は北朝鮮との交渉は容易いと考えていた。北朝鮮が3人の米国人抑留者を解放した時、トランプは
悦に入っていた。 そして、金正恩との会談は6月12日に行い、場所はシンガポールだと誇り高そうに発表した。 この会談で北朝鮮は核兵器のすべてと核兵器開発計画とを諦めることに同意することであろう。トランプはノーベル平和賞を手にし、すべてが丸く収まるのだ。

しかし、これは理解不足に起因する深刻な計算違いであった。米国は北朝鮮が発した声明のすべてを誤解したのである。トランプ政権には韓国駐在大使がいない。国務省で北朝鮮を専門としていた大使はうんざりして任地を離れてしまった。米国の国家安全保障会議は北朝鮮との間の合意に妨害工作をした連中によって運営されており、彼らは
またもや妨害しようとしている。

北朝鮮の全般的な目標は軍事費を削減し、その資源を経済発展に使うために十分な安全保障を確保することにある。米国との間で和平を達成する手段は核兵器計画の推進であった。核兵器計画でひとつの段階が達成される度に北朝鮮は韓国および米国との会談を模索した。北朝鮮は核弾頭やミサイルの開発を停止するか、または、開発速度を緩めるかといった何らかの譲歩を提示し、その代償として和平の合意と経済支援を求めた。原油を供給するという約束は実行されず、米国が約束した民生用原子炉は建設されなかった。合意事項が米国によって破棄される度に、北朝鮮は核兵器計画の次の段階を開始し、次の目標を目指した。

昨年、ついに、
頂点に達した。 北朝鮮は核融合兵器の試験を行い、最終的な破壊兵器に到達した。彼らは大陸部の米国に到達することが可能な大陸間を飛行するミサイルの発射実験を行った。北朝鮮は今や全面的に核保有国である。この達成後、北朝鮮は再び交渉の座につく用意が整ったのだ。

ドナルド・トランプが政権に就いた時、彼は米国を脅かすような核兵器をもつ北朝鮮は決して
容赦しないと約束した。彼は北朝鮮の核兵器を取り上げるために「最大級の圧力」をかける動きを開始した。国連安保理は北朝鮮に対して強烈な経済制裁を課した。

北朝鮮はすでに交渉の準備ができている。北朝鮮を交渉のテーブルに付けたのは経済制裁ではない。そうさせたのは新たに獲得した核保有国としての地位である。このことに関してはトランプ政権はついぞ理解しなかった。彼らは自分たちが課した「最大級の圧力」が北朝鮮をして「完全な非核化」を提案せしめたのだと
信じている。北朝鮮はそのような言葉遣いをしたが、その目的は全世界の強い願望のためのものであって、新たに入手した軍事能力を一方的に破棄するためではない。

トランプ政権はそれを理解しなかった。理解しようともしなかった。これは、ひとつには馬鹿さ加減に起因するものであり、知識の欠如のせいでもあった。また、それはある意味で有害でもあった:

金正恩は北朝鮮の指導者の誰もが述べて来たことから外れるようなことは一言も喋ってはいない。それにもかかわらず、トランプや他の高官らはこのプロセスを北朝鮮の軍縮をもたらす道筋として説明している。そして、われわれの集団的自己欺瞞においては、われわれは驚くべきチアーリーダーを抱えている。それは安全保障担当補佐官の
ジョン・ボルトンだ。

ボルトンがインタビューに応じて、数か月もすれば起こり得る北朝鮮の核兵器の完全排除を取り上げることにどうしてこんなに多忙を極めているのかを質してみる価値があろう。彼は繰り返して「リビア方式」を求めている。この方式では、米国がやって来て、核兵器やそれを可能にする付帯設備をすべてかき集めるのだ。
・・・
これは狂気の沙汰だ。このような手法に金正恩が同意すると考える理由はまったくない。

・・・
ボルトンが突然ナイーブになった訳ではない。彼は守護神役を演じている。そして、この守護神はほとんど間違いなく大統領の期待に合いそうにはない。ボルトンは反対することによって外交をぶち壊そうとしている訳ではない。むしろ、彼は完璧主義を善の敵にすることによってぶち壊そうとしているのだ。つまり、リビア方式の降伏を持ち出すことによって、金正恩が提案しているより穏当な解決策は相対的に嘆かわしいものとして見えるのだ。

これはボルトンと彼の仲間が演じている、相手を小馬鹿にした、危険なゲームである。

「最強の圧力」が北朝鮮に対して機能したとする間違った考えの副作用はトランプ政権がこれと同じ手法がイランに対しても奏功するだろうと考えている点に見られる。これが同政権がイランとの核合意を反故にした
成り行きである

強力な圧力をかけるキャンペーンの結果、トランプ政権は核合意のための好機がやって来たと思い込んでいる。「彼らはこれを北朝鮮シナリオと名付けている」とヨーロッパの高官が言った。「北朝鮮に強要し、イランにも強要する・・・ 金正恩に対しても彼らは同じことを強いる・・・ 降伏を。」 

今や国務長官となったポンペオがまだCIA長官であった頃、彼は交渉の準備のために5月10日に北朝鮮へやって来た。北朝鮮側はワシントン政府の考え方は間違っているとして
警告を与えた: 

到着後、ポンペオはキム・ヨンチョルと約1時間も会って、トランプ・金会談やポンペオ自身の予定について話をした。その後、金正恩がホテルの39階での昼食会に臨み、米国人一行を公式に歓迎した。 
・・・ 
金正恩は米国人に向かってこう言った。「われわれは核能力を完璧なものにした。この会談は外部から課された経済制裁の結果もたらされたものではではない。」 

この交渉サイクルの当初北朝鮮が求めていたひとつの条件は、北朝鮮が核兵器やミサイルの実験を凍結する見返りとして韓国と米国による「戦略的」な軍事演習を凍結することであった。このことは両者によって認められた。この条件はしばらくの間維持されてはいたが、2-3日前、米国と韓国は新たな軍事演習について
公表した

ソウル発、5月10日(ヨンハップ) --当地の高官が木曜日に述べたところによると、韓国と米国は大規模な空軍の演習を開始する。明らかに、これは北朝鮮との非核化に関する会談を前にして手の内を強化しようとする動きである。

「マックス・サンダー」と称される2週間にわたる軍事演習は金曜日(5月11日)に開始され、約100機の空軍機やレーダーを回避することができる8機のF-22戦闘機、機数が不明なB-52爆撃機、および、F-15Kジェット機が参画すると高官が述べている。

両同盟国が統合軍事演習に8機のF-22 を参画させることにしたのは今回が初めてである。強力な空軍力を見せつけることは北朝鮮が核兵器に関する野望を諦めるように圧力をかけることにあると観測筋は言う。

F-22ステルス戦闘機やB-52爆撃機は核兵器を搭載することが可能であることから、これらは戦略的な資産である。軍事演習にこれらの航空機を投入することは前に取り交わされている同意を破ることになる。この軍事演習の予告に対して、北朝鮮は韓国との高官レベルの会合を
キャンセルした: 

北の朝鮮中央通信社(KCNA)は韓国と米国の空軍によって行われる「マックス・サンダー」軍事演習は北朝鮮に対する侵略のための予行演習であり、南北の連携を進める最中の挑発であると述べた。
・・・ 
「この軍事演習は我々に向かって行われており、韓国全土で展開されていることから、これは板門店宣言の違反である。そして、朝鮮半島問題の積極的な政治解決に逆流する国際的な軍事的挑発である」とKCNA リポートが報じた。「また、韓国政府と共に合同で行われているこの挑発的な軍事的大騒動に踏まえて、計画されている米朝首脳会談の運命について米国は注意深く熟考しなければならない。」
国務省ならびにペンタゴンはこのような結果を招くとは気が付かなかったようだ。

北朝鮮は脅威を感じている。ミサイルと核兵器の実験を中断した。核兵器用の「北部試験場」を撤去する予定だ。3人の囚人に恩赦を与え、彼らを米国に向けて出国させた。韓国や米国との間で希望に満ちた会合を何回も行った。そのような北朝鮮が今になって何故にさらなる圧力に耐え忍ばなければならないのか?軍事演習の凍結と引き換えに北朝鮮は米国と韓国とが核実験の凍結に関する合意を破ることをなぜ許容しなければならないのか?

トランプはすでに勝ったと思っていた。しかし、ついに、北朝鮮はトランプを矯正した。北朝鮮は脅威に晒されてもけっして
核兵器を諦めない。諦めたとしたら、北朝鮮はそのような間違いが元で他国が経験したように潰されるだけとなる:

平壌の国営通信社KCNA によると、キム・ケグワン(Kim Kye-gwan)外務副大臣が核兵器を諦めることを強要されるような会談には共産党政権はまったく興味を持たないと明確に述べている。
・・・ 
同副大臣はリビアで以前用いられた非核化の前例を持ちだした米国に不快の念を示した。

その
声明は全文が「不快な」ジョン・ボルトンを非難の的にしている:

安全保障担当大統領補佐官のボルトンを含めて、ホワイトハウスの高官や外務省は非核化に関しては、先ずは核兵器を破棄し、その後で補償を行うことについて議論をする中、「完全で、検証可能な、不可逆的な非核化」、「核兵器、ミサイル、生物兵器の全面的な破棄」、等、所謂「リビア方式」の採用を好きなように主張している。

これでは話し合いを通じて問題を解決しようとする意志の表明にはならない。
・・・ 
核兵器国家となった北朝鮮を核開発においてはごく初期の段階にあったリビアと比較することは極めてばかばかしいことだ。

過去に浸っているばかりのボルトンの人柄に光を当て、われわれは彼に対する強い嫌悪感を隠す積りはない。

もしもボルトンのような人物による曲解や挫折を経験しなければならなかった過去の米朝会談からトランプ政権がいくばくかの教訓さえをも学ぶことがないとするならば、さらには、リビア方式やそれに類する策を主張する擬似的な「愛国者」の警告に耳を傾け続けるとするならば、迫りくる米朝会談ならびに米朝関係の展望は誰が見ても見え透いたものとなるだろう。

われわれは朝鮮半島の非核化に関するわれわれの意図をすでに述べており、非核化の前提条件は米国が北朝鮮に対する反感に満ちた政策や核兵器による脅かし、脅迫、等に終止符を打つことだと数回にわたって明確にして来た。

トランプのノーベル平和賞は何処かへ流れ去ろうとしている・・・ 

トランプがシンガポールにおける6月12日の金正恩との会談を心から望み、合意を得たいとするならば、彼はボルトンに対して余りにも包括的な要求はするなと制止しなければならないだろう。ポンペオ国務長官は調停のために何らかの声明を用意しなければならないであろう。韓国における自分たちの地位を下げることにつながる和平会談を嫌っているペンタゴンは挑戦的で「戦略的な」作戦行動を控えなければならないだろう。

さらなる会談に向けた軍事的代替案は何ら存在しない。核装備をした北朝鮮は核装備をしている中国と
同盟関係を持っている。北朝鮮に対する攻撃はワシントンDCの上空にきのこ雲を立ち上がらせるかも知れない。そのようなリスクを冒すことは無責任極まりない。

 ---
最新情報: 

北朝鮮の反対は二つの点で役に立っている。米軍の軍事演習は元に戻され、ホワイトハウスは米朝会談を邪魔するためにボルトンが持ち出したリビア方式による核武装解除案を撤回した。トランプはノーベル賞が欲しいのだ。

北朝鮮が不平をもらした「戦略的な資産」、即ち、核兵器を搭載することが可能な爆撃機は今や米韓合同軍事演習からは
除外された: 

オリジナルの計画とは違って、核の搭載可能なB-52爆撃機は現行の米韓軍事演習には参加しないと軍の消息筋が水曜日に述べている。

金曜日に始まった「マックスサンダー」軍事演習においては米国のF-22 ステルス戦闘機がすでに参加しているが、B-52はこれからの参加が予定されていたところであった」と、身分を明かさないことを条件に消息通が述べた。「B-52は5月25日まで続くこの演習には参加しない。」 
・・・ 
韓国国防省もB-52が演習には投入されないことを公に確認した。

関連のある動きにおいて、文在寅大統領の安全保障担当の文正仁特別顧問は議会での演説の中でこの決断は宋永武国防相と在韓米軍のヴィンセント・ブルックス指揮官との緊急会合の結果もたらされたものだと述べている。

核搭載爆撃機が北朝鮮にとって脅威であることは明らかであり、爆撃機の参加は北朝鮮による核兵器実験の凍結は韓国と米軍が戦略的軍事行動を凍結することによって
高く評価される との合意を破ったことになる。

北朝鮮の二つ目の批判はジョン・ボルトンの速やかで全面的な核武装解除の要求に関するものであった。

今朝、ホワイトハウスはボルトンが日曜日のトークショーで推進しようとしたリビア方式の核武装解除のシナリオを
重要視しなかった: 

リビアとの比較を引用して、ホワイトハウスのセイラ・サンダース報道官は水曜日に彼女は議論の一部としてそのような発言には遭遇しなかったことから、同発言がわれわれが用いる手法になるとは思わないと述べた。 

「私はその件が具体的な手法であるとは見なかった。それがどのように機能するかに関して言えば、クッキーを作るような決まった型が存在するわけではない。」 

彼女はさらに続けた。「これはトランプ大統領のモデルだ。大統領は彼にとって最適なやり方でこの件を先へ進めようとする。以前から何度も言っているように、われわれは100パーセントの自信を持っている。皆さんがそのことを十分承知していることは私には分かっているが、彼は最高の交渉の専門家であって、そのことについてはわれわれは強固な自信を持っている。」 

ホワイトハウスは速やかに終わりにした。これは政府が実際に合意を望んでいる兆候であると私には見える。

「気に食わない」ジョン・ボルトンが6月12日の金正恩とドナルド・トランプとの会談には参画しないように北朝鮮は主張するかも知れない。彼が朝鮮半島問題の交渉から外されるならば、確かにそれは役に立つことであろう。

=====
US does the one thing DPRK asked them not to do

https://youtu.be/5QTJsMFGXIM




Photo-1

<引用終了>



これで全文の仮訳が終了した。

ジョン・ボルトン大統領補佐官のやり過ぎの全貌がこの記事ではっきりと分かった。非常に興味深い内容である。ジョン・ボルトンが米朝首脳会談への参加メンバーから外されるならば、朝鮮半島の非核化や南北和平には希望が持てるだろうと述べて、同記事は結ばれている。

果たしてどのような展開が待っているのだろうか?1ヵ月足らずで答えが判明する。



参照:

注1: North Korea May Cancel Summit Over Bolton’s ‘Absurd’ Demands: By Moon Of Alabama, Information Clearing House, May/16/2018



 

2018年5月16日水曜日

トランプがイラン核合意を反故にした本当の理由


5月8日、トランプ米大統領は2015年に署名された「イラン核合意」から離脱するとの公式声明を表明した。

これから180日以内にイランから何らかの譲歩を引き出し、経済制裁を課すことになる。経済制裁を課し、国内経済を低迷させて、国内に反政府勢力を築き、イランを不安定化させることが目的だ。イスラエルやサウジアラビアからの要請を受けて、米政府は中東で台頭しつつあるイランの経済発展を抑え、世論の分断を図ることに専念しようとしている。

これを受けて、ドイツ、フランス、英国といった欧州勢は核合意を維持することで足並みを揃えようとしている。イランは石油や天然ガスといったエネルギー資源を有し、ドイツと肩を比べる程の8000万の人口を擁していることから、大きな消費者市場となる要素を持っている。欧州各国にとってイランとの交易には大きな魅力がある。

しかし、米国がイランを敵視し、イランに対して経済制裁を課すとなると、その先には、遅かれ早かれイラクやリビアが辿った政権の転覆が待っている。すでに、そういった文言があちらこちらで囁かれている。

ここに、「トランプがイラン核合意を反故にした本当の理由」と題された記事がある [注1]。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。われわれ一般庶民が理解している理由とはいったい何がどのように違うのであろうか?


<引用開始>


Photo-1

ドナルド・トランプ米大統領は、2018年5月8日、イランとの間で2015年に締結された包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action:JCPOA)から離脱することによって選挙で訴えていた公約のひとつを達成した。これはイランと国連安保理の常任理事国5か国にドイツを加えたグループ(いわゆるP5+1)との間で締結された合意であって、少なくとも2028年まではイランが自国産の原爆を開発する可能性を排除しようとするものだ。

しかし、今回のトランプの行動が米国やイスラエルに、あるいは、一般論的に言えば中東全体に安全保障の観点から意味のある改善をもたらすだろうとは思えない。そればかりではなく、イランの戦略的能力に大きな制約を加えることができるとも思えない。

米国がJCPOAからの離脱に関して最終的な決断をするまでの今後の6ヵ月を猶予期間として設けると約束をしたとは言え、トランプ大統領の今回の動きは米国の世界戦略に関わるいくつもの課題を不確実性の領域へ放り込んだも同然である。

この猶予期間は、実際には、彼がイランや北朝鮮、欧州、その他の国々と交渉を行う期間である。このトランプの動きに関わるひとつの側面は北朝鮮の指導者である金正恩との会談における動力学に何らかの変化をもたらすかも知れないということは確かだろう。この会談はトランプが作り出した「混乱の期間」内に予定されている。

イランに関するトランプの決断が迫っていることを知りながら、金正恩は2018年5月8~9日に中国の大連で中国の指導者、習近平国家主席と会談をしたが、これは単なる偶然の一致ではない。両指導者間の今回の会合はこの2か月間で2回目となった。

イランに関して米国が取った処置は北朝鮮が朝鮮半島の「非核化」の合意に関する交渉において取り得る選択肢の中ではもっとも基本的な要素である。北京と平壌は両者とも、トランプが米国・イラン間の2015年の合意を「冗談に」取り上げて、両国がイランとの調整をする(さらには、戦略兵器をイラン国内で凍結保存することの可能性)といった計画に不確定要素を持ち込んで来たことに恐らく気が付いている筈だ。米国のJCPOA からの離脱をトランプが決定したことは北朝鮮と中国に対するひとつのメッセージである。それは、国内や海外からの圧力には関わりなく、米大統領は自分が公約した選挙運動中の約束は守るということだ。さらには、テヘランにもメッセージを送った。つまり、トランプはテヘランとの「交渉のプロセス」を開始したという事実であり、今後6か月の猶予期間は両国間の駆け引きに非常に重要な期間となるだろう。
関連記事: The Truth About Peace On The Korean Peninsula

トランプが行った一方的な決断は非常に重要なプロセスの中のひとつの要素であって、いくつもの領域に分岐する。明確な成果は断言できない。換言すると、多くの関係国にとってリスクが存在する。

JCPOAは米国の観点からは機能しないということをトランプが感じていたことは疑う余地がない。彼はこの合意は修正が必要であるから再交渉を行うこと、あるいは、追加合意を締結することが必要だとする電報をテヘラン政府へ送付していた。テヘランはこの合意を見直す用意はないとして間接的に答えた。ヨーロッパ勢は「迂回」策を充てることができると言っていることから、米大統領を説得してくれるとテヘランは思ったことであろう。

テヘランとの交渉については何の兆しも得られないまま、トランプ大統領の手の内には一枚のカードだけがあった。それはJCPOAからの離脱だ。しかし、これはイランにとっても、他の当事国にとってもすべての選択肢が消えてしまったということではない。

この決断がペルシャ湾における紛争を拡大するという兆しは必ずしも見られない。確かに、今回のトランプの動きは湾岸諸国が再編するための時間を与えてやったことになる。重要な点は現実だ。米国による経済制裁を通じて課されるイランに対する強制策は世界市場に対するイランの原油の販売力に影響を与え、原油価格を高騰させることだろう。これはサウジアラビアに経済的な救済をもたらすであろう。

また、これはロシア経済を積極的に支援することにもつながる。ロシアは原油や天然ガスの輸出に大きく依存していることから世界市場における原油価格には敏感である。

さらには、2018年5月8日にイラン政府の高官が述べているように、米国の新たな経済制裁はイラン経済に深刻な影響を与えることにはならないだろう。しかしながら、公衆の期待感が損なわれるとともに、小さな負の影響がもたらされる。つまり、公衆のムードは影響を受けるだろう。

現実の戦略に対する悪影響としては、欧州の企業は次の6ヵ月間に米国とのビジネスを継続するのか、それとも、イランにおける通商のチャンスを追及するのかを選択しなければならない。EUの企業について言えば、これは主にエアーバス社を直撃することになるが、米国のボーイング社も同様に直撃を受ける。ボーイングは先陣を切ってイラン航空およびアセマン航空に110機の航空機(15機のB.777-9、50機のB.737 MAX 8、15機のB.777-300ER、ならびに、30機のB.737 MAX)を売ることになっていた。そのうちの何機かは2018年の納入である。イラン航空はエアバスから118機の航空機の購入を契約していた。これには12機の広胴型エアバスA380が含まれる。しかし、2018年2月には、イランは、単一通路型のロシア製98席型ツインジェットであるスホイ・スーパージェット100を含めた代替案を模索していた。エアバス製のいくつかの航空機(11機のATRツイン・ターボプロップ)は2017年の末までにすでに納入されている。ロシアおよび中国がイランに航空機を販売する場合、米国の経済制裁による影響は受けないであろう。

ここで重要な点はこの経済制裁は外国企業との間で行われるイランの決済が中国の「ユアン・レンミンビ」建てやロシアの「ルーブル」建ての決済を間違いなく早めることだ。また、サウジアラビアが「レンミンビ」建ての原油輸出を考えていることからも、世界経済において国際準備通貨として半世紀にわたって君臨してきた米ドルによるエネルギー市場での原油のドル建て決済(ペトロダラー)には終焉の時がやって来そうな気配である。短期的には、これが米国に悪影響を与えるとは考えられない。しかし、中国やロシアの経済を強化するであろうし、世界市場に対する米国の影響力にはしだいに衰退が感じられることになるだろう。
関連記事: Never Trust A Banker About Oil Prices

ところで、このトランプの決断が中東の近い将来において紛争の増加を促すという直接の証拠は必ずしも見当たらないが、イランが戦略的な能力を開発する上で、核兵器開発計画についてより大ぴらな姿勢をとることも含めて、より多くの自由裁量を与えることになるであろう。

しかしながら、イランのハサン・ロウハニ大統領は、2018年5月8日、トランプの決断に関してイランはこの合意に関与している他の締約国と共にJCPOAに留まると述べた。問題は米国がJCPOAから離脱し、米国がイランに対して経済制裁を課し、米国外の企業がイランとのビジネスを行おうとすれば、その企業の国内法規やJCPOAの許可にはお構いなく米国はそれらの企業に間違いなく罰を与える立場にあることはいったい何を意味するのかという点である。米国は貿易に関わるほとんどの大企業がイランとの交易を継続するためだけに米国市場でのビジネスを諦めることはないだろうと確信するだけの経済的影響力を十分に持っているのだ。

JCPOAやトランプの決断後の評価の両者に関してこのプロセス全体の現実を理解すると、核兵器の開発からその配備に至るまで、実際には、JCPOAはイランを制約することは何もしなかったのである。

核兵器開発に関するイランの歴史的な開発に関するイスラエルからの諜報を抜きにしても、イランが元ソ連の核兵器を(カザフスタンの貯蔵施設から)入手し、別の核兵器をウクライナや北朝鮮から入手していたこと、そして、ついには北朝鮮と共に独自の設計による核兵器を開発し、試験を行ったことが1990年以降知られていた。

JCPOAは進行していたイラン製の弾道弾ミサイル・システムの開発を排除しなかったし、イランの国家指揮最高部(NCA)の能力も排除しなかった。これらの開発は一貫して行われ、配備された。つまり、JCPOAはイランの現実に制約を与えるようなことは何もしなかったのである。単に、イランに急速に拡大しつつあった核分裂物質の大量生産能力を縮小させただけだ。

ビニヤミン・ネタニヤフが率いるイスラエル政府ならびにサウジアラビア政府はJCPOA から離脱するというトランプの決断を歓迎した。しかし、意味のある表現でこのことを語ろうとすれば、トランプの決断がいったいどのような恩恵をもたらすのかは不確かである。この合意が多分に「合意のための合意」であったことを考えると、この決断が偽善の期間に終止符を打ったことについては疑問の余地がない。しかし、これはイランならびにイランを中傷する連中に対して相互に敵意を抱き続ける期間を終わらせ、真面目な和平への道筋を築くことができる貴重な機会を与えてくれたのである。

米国にとってはイランに対する影響力を再構築する機会にもなり得る。ジミー・カーター米大統領が1978~79年にイランのシャーを放逐した時以降、このような機会はついに無かった。米国とイランの関係を正常化するプロセスを開始することによって、米国はイランにおけるロシア(ならびに、中国)の影響力をある程度相殺する機会がやってきたのである。しかし、米国はそうしなかった。イランの聖職者による政府もこの好機を全面的に活用することはなかった。

ほぼ間違いなく、さらなる触媒が必要であった。しかし、JCPOAはそのような触媒を提供することには失敗したのである。

しかしながら、そうこうしているいちに米国が導入した新たな経済制裁によってもたらされる真空状態を速やかに埋めようとしているのはロシア、中国およびトルコである。サウジアラビアやアラブ首長国連邦は、特に、イランが経済制裁による制約を受けて、中東地域におけるイランの軍事的な動きや代理戦争の遂行は低下するであろうとの希望を抱いており、戦略的な信頼感の再構築を試みるであろう。しかし、米国や西側にとっては好機の恩典は今や失われ、イランに制約を与える理由がより少なくなっているにもかかわらず、彼らはイランがその影響力を拡大すると見るリスクを冒しているのである。 

米国にとっては中東でその影響力や地位を多いに改善するという余地はほとんど無い。

短期的に見れば、どちら側にとっても唯一の戦略的な利点はJCPOAの偽善的な側面を排除することにあろう。この動きがトルコをイランとの協力関係に向けて押しやるだろうということはあり得る。その結果、トルコが戦略的には米国やNATOを敵視し始めたという事実と如何に向き合うかについて米国の政策決定を急がせることになろう。確かに、さまざまな出来事がお互いに不信の念を抱く者同志、つまり、イランとロシアならびにトルコを一緒にさせているのである。しかしながら、米国にとっては何の好機にもならない。

トランプ大統領の主な動機はJCPOAを終わらせるという選挙公約を守ることであり、迫りつつある金正恩との会談での交渉に新たなレベルの影響力を導入することだ。

ロウハニ大統領はトランプの動きに反応して、「米国は約束を守ろうとはしなかった」と述べた。米国の政府は前の政権が約束したことに矛盾する行動を取ることが多い。この歴史を見ると、このコメントにはそれ相当の正当性がある。しかし、トランプは自分の約束を守ることを明確にした。イランの国営テレビはJCPOAからの離脱に関する米大統領の決断は「非合法であり、正当なものではなく、国際的な合意を台無しにしてしまう」と報じた。トランプの決断は国際的合意を損なうであろうが、JCPOAからの離脱が非合法であるという証拠は何もない。 そうは言っても、米国にとっては将来何らかの同盟を構築したり、お互いの信頼を必要とする仕事に着手することはより困難なものとなるであろう。


著者のプロフィール: グレゴリー・R・コプリーは歴史家、著者、戦略分析の専門家であり、一時は産業界にも身を置いた。彼は70歳で、過去40年間世界中でさまざまな政府のために高度な仕事をしてきた。例えば、国家安全保障、諜報、国家運営の課題、等に関して。彼は、2006年の「The Art of Victory」や2012年の「UnCivilization: Urban Geopolitics in a Time of Chaos」を含めて、30冊以上の著作を行っている。オーストラリアの出身で、彼はワシントンDCに本拠を置く「International Strategic Studies Association」の理事長を務め、「Defense & Foreign Affairs」と称する出版企業グループの編集長でもある。これには政府のためだけの諜報サービスや「Global Information System」も含まれる。彼の国際的な貢献について言えば、2007年に女王誕生記念の叙勲でオーストラリア勲章の栄誉に浴した。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

興味深い内容である。

例えば、トランプが選挙公約を守るというイメージを確立し、それを引っ提げて北朝鮮との会談に臨もうとしているという解説は面白いと思う。この記事は国際政治の当事者である関係国の指導者が相手の人物や政府の出方を理解する構造をわれわれ一般の読者に伝えようとしているかのように思える。明確な行動原理を相手に示すことが会談の前の重要なプロセスであることがより具体的に理解できる。要するに、会談はすでに始まっているということになる。米朝会談に臨む北朝鮮側ついて言えば、核実験設備を5月23~25日に取り壊すと金正恩が宣言したこと自体も米国への具体的で、強力なメッセージであるに違いない。北朝鮮側が自分たちの具体的な行動を伝えることによって米国のやる気を試しているかのようだ。

イラン核合意についてはヨーロッパ勢は対策を練っている最中である。まだ詳細は公表されてはいないが、イラン市場に展開しているヨーロッパ企業の利益を最大限守るための策である。果たしてどのような対策が提案されるのか、それらが功を奏するのかどうかを近い内に見極めることができるだろう。

ヨーロッパにとっては米国に従属し、米国がイランやロシアに課す経済制裁にお付き合いをし続けることは国益を損なうことにつながることが、今や、明らかである。米国が2014年に発動した対ロ経済制裁ではヨーロッパ各国は米国に追従した。ところが、ロシアによる報復措置、つまり、食料品の禁輸政策に見舞われ、大きな経済的損害を被った。政治家にとっては同じ間違いを繰り返すことは政治的自殺に等しい。

仏・独・英の外相が共同声明を発表した。この合意は核拡散を防止する上で最良の策であるとして、EU はイラン核合意を維持すると述べている [注2]。

また、イラン外相のモハマド・ジャヴァド・ザリーフは最新の情報としてヨーロッパ諸国の外相との話し合いが順調に進んでいると述べた [注3]。

上記にあるように、今後の6か月間、ヨーロッパ勢が米国への従属をどれだけ断ち切れるのかが最大の関心事となろう。 

今後の展開に注目しようと思う。



参照:

注1: The Real Reason Trump Killed The Iran Deal: By Gregory R. Copley, Oilprice.com, May/09/2018

注2: France, UK, Germany to Stick to Iran Deal Irrespective of US Decision: By Sputnikniknews.com, May/07/2018

注3: ‘Good Start’: Iranian FM Cites Progress With EU Leaders on Salvaging Nuke Deal: By Sputniknews.com, May/16/2018



 
 

2018年5月9日水曜日

イランとイスラエルとの間の敵対関係を解決する鍵を握っているのはロシアだ

最近の投稿で「米国がかねてから敵視しているイランに対して果たして開戦を決断するのかどうか、今、世界が注視している。米政府は5月12日には決断しなければならない」と書いたばかりである。

米国とイスラエルの関係をさらに見てみよう。

イランはシリアのアサド大統領からの要請に応えて、シリア国内に戦力を配備している。これはロシアがシリア国内に戦力を配備している状況とまったく同じだ。つまり、国際法に準拠した行為である。

しかしながら、イスラエルの目にはイラン軍がシリアに配備されると、イランの最前線はイスラエルにより近づくことになるから、軍事的な不安感が増大する。このような論理から、イスラエルはイランからシリア国内へ派遣された部隊に対して空爆を繰り返して来た。過去においてはイスラエルの攻撃はレバノン国内のヒズボラ武装勢力に武器を供給するためにイランからシリア国内を通過してレバノンへ向かって武器を搬送する車列が主な攻撃目標であった。ところが、最近の空爆はイラン軍が活用しているシリアのインフラを攻撃目標とし始めている。最近のふたつの空爆はシリア領土の奥深くで行われ、シリア軍とイラン軍の兵士を殺害し、負傷させた。(出典: Israeli Defense Minister Asks Russia to Stand Down Syria Air Defenses or They Will Be Attacked Too: By IWB, May/03/2018)

世界の覇者たる地位を自他ともに認める米国のイランに対する姿勢は同盟国であるイスラエルの意向を多分に反映しているものだと言えよう。つまり、米国はイスラエルによってすっかり言いくるめられているということだ。イスラエルにとっては、以前はシリアが緩衝地帯を形成していたのであるが、シリア国内にイラン軍が配備されたことによって今やイランは国境を挟んでイスラエルと対峙する形となった。

特に、イスラエルの影響力を見ると、米国内での選挙における影響力には想像を絶するものがある。反イスラエルを標榜すると、候補者のほとんどは落選の憂き目を見ることになる。これほどに凄まじい内政干渉があるだろうか?結果として、イスラエルを忖度する政治家は後を絶たない。これはロシアが2016年の米大統領選に干渉したとしてフェークニュースが毎日のように流されたロシアゲートとは質的に大きく違う。

イスラエルの対外政策は敵国を分断することにある。そうすることによってその国の軍事力を弱体化させることが狙いだ。イラク戦争が好例である。当初、イスラエルの戦略はイラクを3分割することが目標であった。シリア戦争においてもシリア国内を分断し、アサド政権を弱体化し、打倒しようと試みたが、これには失敗した。

イランではイスラエルは現政権を排除しようとしている。

中東の状況は刻々と変化している。米国とイランとの関係、その背景にあるイスラエルとイランとの関係について現状を読み解く上で大きな助けになりそうな記事に出遭った [注1]。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。



<引用開始>




Photo-1


イスラエルとイランの関係に最近急速に現れて来た中東の危機的状況については、ワシントンの政治評論家や政治家らは予測を述べることで今多忙を極めている。この危機では、もしもこれらの二国間に戦争が勃発した暁には米国はどちら側を支持するのかが論じられ、ロシアが決定的な支援を提供する中で裏口での外交もかなり以前から行われている。これは、米国ではなく、ロシアが当地域における緊張の緩和に如何に大きな影響力を持っているのかを示すものであって、中東の地政学的な風景はもはや米国によって定義される訳ではないことを示唆するものだ。ロシアが緊張を段階的に縮小し得る鍵を握っているとする理由はロシアが両国と強い関係を持っている点にある。ふたつのライバル国家に対して均衡のある付き合いを継続しながら外交的成果を達成することはそれ自体が大きな挑戦となるが、ロシアは過去の数年間目覚ましい成果を挙げて来た。特に、シリア危機が始まった頃以降、イスラエルとの間では戦闘を回避することの合意を結ぶ一方で、イランについてはダマスカス政府がイスラムの急進派によって倒されることがないようにするためにシリアにイラン軍を駐留させることで絶妙な均衡を保ってきた。しかし、イスラエルはイランが原爆を製造しようとしている証拠を握っていると主張し、もしもイランがシリアから攻撃を加えるならばイスラエルは報復すると言っている今、ロシアは果たしてこの地域の熱気をうまく冷ますことができるのであろうか?ロシア外交はこの地域で今まで見たこともないような悲惨で、緊張度が高い戦争の勃発を阻止することに全力を注入しているようだ。

イスラエルはロシアと取引をすることを嫌っている訳ではないこと、そして、シリアにおけるロシア軍の駐留に反対している訳でもないこと、さらには、ロシアの国益に相反することをシリアにおいて追及する特別な興味を持っている訳ではないことをすでに匂わせていた。このことはアヴィグドール・リーバーマン国防大臣が先週の金曜日(4月27日)に米国を訪問した際に確認した。「ここで理解しておく重要な点はロシア人は非常に現実的であるということだ」と
リーバーマンが述べている。リーバーマンが中東におけるロシアのイランおよびシリアとの同盟関係について喋っている際にこれらのコメントが表明されたということが重要だ。彼のコメントはロシアの存在には信頼を置いており、ロシアがシリアにおけるイランの活動、例えば、イランが直接または間接的にイスラエルを攻撃することを回避し、管理することができるだろうという点を示している。「結局のところ、彼らは理に適った連中であり、彼らとは合意を結ぶことが可能だ。われわれは彼らの国益が何であるかを理解することができる」と彼は付け加えた。

最近開催されたソチ・コンファレンスにおいてはロシアの外交は積極的であった。この会議ではロシア安全保障委員会の事務局は、イランやイスラエルからの代表を含めて、約40カ国と会合を持った。驚くまでもないが、これらの二つの会合は至る所で大きな見出しとなって報じられることとなった。

ロシア側の高官はロシアがイランとイスラエルとの仲裁役を演ずることはまだ言及してはいない。しかしながら、この種の状況の進展に敏感に反応することは中東におけるロシアの国益の性格そのものを反映したものである。その一方、イランとイスラエルは両国とも同様に攻撃的な衝動を何とか抑えてくれる「バランス役」を必要としていることは否定できない。単純に言って、米国はこの役柄をこなすことはできない。何故ならば、米国はイスラエルがイランを敵視することに反対ではないし、イランとパレスチナに対するイスラエルの「自衛する権利」のすべてを常に支援して来たからである。 

イスラエルとイランは国連安保理(UNSC)に段階的な緊張の緩和を求める積りはなさそうだ。シリア政府が化学兵器を使用して自国民を殺害したとされる件ではロシアと米国の両国は頻繁に衝突しているからである。したがって、UNSCはえらく希薄な存在となっており、たとえそのチャンスがあったとしても、仲裁役を演ずる機会は望み薄だ。

こうして、この役割はロシアに回って来る。結果的に、イスラエルはロシアがシリアで軍事的存在を示すことには何の懸念も表明せず、その軍事的存在が拡大することについても異議を挟まなかった。このことはワシントンでリーバーマンが喋った中で彼によって再度確認されてもいる。彼は「シリアにおけるロシアの存在はわれわれのビジネスではない。われわれはわれわれ自身の安全保障上の利益を守るだけだ」と述べている。

これがシリアで7人のイランの軍事顧問を殺害したイスラエル軍の攻撃を憂慮するモスクワの熱を冷まそうとしているイスラエルだ。この攻撃についてはロシアは強く反論し、イスラエルが実際にはシリアにおけるロシアの役割と利益を勘違いしていることを示したのである。何故ならば、もしもイスラエルとの国境付近でシリア国内においてイラン勢力が拡大することに対してイスラエルがモスクワ政府の保証を求めたいならば、モスクワ側には、この地域全体に不安定化の波を引き起こし、テロを撲滅するために行って来たすべての苦労を水の泡にしてしまうような行動(つまり、大規模な爆撃)は決して起こさないという保証をイスラエル側に求めることもなしに、そのような保証を一方的に与える気は毛頭ないのである。

ロシアはイスラエル側の具体的な利益について気配りを示してもいる。このことは退任が近いイスラエル駐在ロシア大使のアレクサンダー・シェインが明確に確認した。彼は「もちろん、われわれはイスラエルとイランの相互関係、つまり、両国が互いに脅かし、互いを拒絶し合っている現状には懸念を抱いている」と述べた。「また、われわれはシリアにおけるイランの圧力も懸念しなければならない。現状を悪化し、中東全域に戦争の勃発をもたらしかねない。」 これはロシアがイランに対して直接・間接的に、つまり、ヒズボラを通じてイランが演じる役割には限度を設けるよう説得を開始するかも知れないことを示している。イランは、
イランの外相が最近述べているように、 シリア国内に長期的に軍を維持する意図は抱いてはいないようだ。

イランとイスラエルに関する限りでは、両国がますますロシアを当てにする理由は両国はシリアの現実を将来の見通しの中に置く必要があるからだ。シリアはもはやふたつの強国の間に存在する紛争地帯ではない。この状況においては、小国はふたつの強国のひとつにその軸足を置いて、自国の具体的な利益を確保するために自分のカードを巧みに使うことができるだけとなる。米国の大統領がシリアからの戦力の撤退を模索する中、シリアにはロシアだけが残り、中東で新たな危機の勃発を防ぐことが出来るのはロシアだけとなる。イスラエルとイランの両国は「
第一次北部戦争」の勃発を防ぐためには彼ら自身のルールに基づいて動かなければならない。したがって、ロシアは中東の平和の鍵となるのである。

著者のプロフィール: サルマン・ラフィ・シェイクは国際関係およびパキスタンの外交関係や国内政治を分析する「
ニュー・イースタン・アウトルック」オンライン・マガジン専属の研究者である。https://journal-neo.org/2018/05/03/russia-can-be-the-key-to-iran-israel-de-escalation/

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

今後中東に影響力を発揮するのが米国であろうが、ロシアであろうが、中東が不安定化して新たな危機に突入し、またもや新たな武力紛争の場を作って、何百万人もの市民が故郷から脱出せざるを得ないような事態は決して起こしてはならない。中東の安定化は当事国だけの課題ではない。5億人が住むEU全体の課題でもある。そして、過激派によるテロが横行すると、中国やロシアにとっては国内政治上の大きな脅威ともなり得る。ヨーロッパを襲った難民問題は過去の数年間貴重な教訓を残した筈だ。100年前にまで遡るような地政学的な課題が今でさえも如何に大きな影響を及ぼすかについては誰もが多くのことを学んだ筈だ。

米国は昨日(5月8日)イランとの核合意から脱退することを表明した。英独仏は同合意を維持することをすでに表明していた。米国はヨーロッパ勢に翻意するように圧力をかけることであろうが、ヨーロッパ各国は米国が主導した対ロシア経済制裁では非常に損な役回りを演じるという苦い経験を持っているだけに、今回はそう簡単には米国の言いなりにならないのではないか。

経済制裁は相手国に対して必ずしも実効を挙げるとは限らない。このことを考えると、米国がごり押しする国際政治の不毛さを見る思いがする。要するに、他国に対して経済制裁を課すという行為は米国が描くところの世界に対する覇権体制を可視化するためのひとつの道具でしかない。ガキ大将が自分の強さを周りに誇示する様子を皆に見て貰いたいのだ。政治評論家や主流メディアはこれをグロ―バル化とかネオキャピタリズムといった言葉を用いて外観を装おうとするが、実質は大変なまやかしである。

そして、その過程では米国は頻繁に国際法を無視する。例外主義という都合のいい言葉を使い始めた。

今後は、米国がイランに課す経済制裁の内容がどのようなものとなるのか、イランの報復措置がどんな内容となるのかに注目が集まることだろう。そして、ロシアの外交努力が奏功するのかどうかが最大の関心事となる。イラク戦争と同じことを繰り返してはならない。無辜の市民を再び犠牲にするようなことがあってはならない。ロシアの外交専門家やメディアにはイランを巡る戦争を是非とも回避して貰いたいものだ。




参照:

注1: Russia Can be the Key to Iran-Israel De-escalation­: By Salman Rafi Sheikh, NEO, May/03/2018 





 


2018年5月4日金曜日

米国にはもはやイランとの全面的な戦争を遂行するだけの資金力はない - 教授が指摘


米国がかねてから敵視しているイランに対して果たして開戦を決断するのかどうか、今、世界が注視している。米政府は512日には決断しなければならない。

さまざまな予測が出回っている。その中で私が一番興味深く感じているのはトランプ流の政治手法だ。

トランプ大統領は北朝鮮に対する政策においては強気一辺倒の姿勢を貫いて、空母を朝鮮半島に派遣した。派手に強硬姿勢を示すことによって、実際には軍事対決を望まないペンタゴンからは「やり過ぎだ、いい加減にしてくれ」という声を引き出した。また、シリアでのミサイル攻撃ではロシア軍との直接対決を回避するという基本姿勢をペンタゴンから引き出した。大きな流れを見ると、これらは田中宇氏が解説する「やり過ぎを推進することによって軍部に失敗させ、それとは別の政治目標を達成する」手法であると思われる。非常に面白い見方である。

戦争が起こって欲しくはないのはもちろんだが、米国によるイランとの対決はどのような展開となるのだろうか?最近はごり押し一辺倒から戦争を回避する意見が米政府内でも出始めている。
ところで、米国にはお国の事情がある。とてつもなく大きく重要な要素である。その辺を解説する記事が見つかった [1]
本日はこの記事を仮訳し、イラン情勢ならびに中東情勢を左右しそうなひとつの要素に関して読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-1© REUTERS / Mike Segar

世界はトランプ大統領が512日にイラン核合意を延長するのかどうかに関心を寄せている。ラジオ・スプ―トニクとの対談で、米国が新たな譲歩を求めてイランに対して圧力をかけようとしている本当の動機はいったい何かについてテヘラン大学で政治学教授を務めるハメド・ムサビ氏にその概略を語って貰った。
スプ―トニク: ムサビ教授に伺います。例の核合意についてドナルド・トランプが批判している内容はイラン核合意そのもの、あるいは、その合意条件と何らかの関係があるのでしょうか?それとも、何かもっと大きな思惑があるのでしょうか? 
ハメド・ムサビ: 実際には、米国のエリートのほとんどは、諜報部門の専門家や、最近では、CIAの長官を務めており、今や国務長官に指名されているマイク・ポンペオといった人物さえをも含めて、核合意は実のところ米国の国益に適うと認めています。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Photo-2: © AP Photo / Michael Sohn   「議論の問題ではない」: メルケルとマクロンはイラン核合意を維持するようにトランプを説得することができない 
 
そうとは言え、トランプ政権が行おうとしていることは前政権が達成することに失敗した分野で譲歩を引き出すことにあると思われます。それらの課題のひとつは中東における力の均衡です。イラクやシリアにおいては、最近の出来事は米国ならびにイスラエルやサウジアラビア、等の同盟国が望んでいた状況にはなりませんでした。その結果、基本的には、これらの国々はイランが他の分野で譲歩するように核合意を活用しているのです。その一例がシリアです。

スプートニク: イランのハッサン・ロウハニ大統領はもしもドナルド・トランプが核合意を反故にするならばワシントン政府は厳しい結果に見舞われるだろうと述べています。テヘラン政府はいったいどのような報復をするとお考えですか? 

ハメド・ムサビ: もしもトランプが512日に核合意から離脱すると決断した場合どのような対応を取るべきかに関してはイランはまだ最終決定をしていないと思います。イランの対応には三つのシナリオが在り得ると私は思っています。まずは、米国を抜きにして、ヨーロッパやロシア、中国との間で合意を維持する。二番目はイランが核合意から離脱する。 
三番目はイラン社会のある層ではより人気のあるシナリオですが、NPT(核不拡散条約)からも同時に脱退すること。現時点では、この核合意から離脱しようとする米国を抜きにして考えても、人々は非常に憤慨しています。過去の2年間、現行の合意の下でイランが享受する筈であった経済的な恩恵をイランは受け取ってはいないのです。これはこの合意を常に潰そうとして来たトランプ政権のせいです。これらの脅かしの結果、この合意から離脱する米国は別にして、ヨーロッパや他の国々のビジネスマンの多くはイランに対する投資を非常に心配しています。結局、イランは当然享受する筈であった経済的な恩恵を手にすることができないでいます。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Photo-3: © Photo: an official website of the Iranian Presidency office 
国家的な「核の日」を記念する201849日のテヘランでの祝賀行事にて新たな核に関する達成について説明を受けるハッサン・ロウハニ大統領 


スプートニク: ムサビ教授、この合意の締約国である他の国々はトランプ大統領が合意を維持するように呼びかけています。それだけでなく、国際原子力機関(IAEA)はテヘランは合意内容に準拠して来たと言っています。それにもかかわらず、トランプ大統領はどうしてこの合意に反対するのでしょうか? 
ハメド・ムサビ: ご存知のようにJCPOAの合意の下では、イランの順守に関してその詳細を監視できる当事者はIAEAだけです。過去2年間IAEA9本の報告書を発行しました。どの報告書もイランは核合意の下で求められた義務を履行していることを認めています。つまり、その点については何らの問題も無いのです。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

しかしながら、トランプ政権にとってはこの合意には気に食わない点がふたつあると思います。最初の点はこの合意は前政権、つまり、オバマ政権によって成立されたものであって、トランプとしては基本的にオバマが行ったことは何でも元へ戻したいのです。この方針は米国の国内政策においては彼自身には政治的に都合がいいのです。彼の支持者はこの種の政策を喜ぶことでしょう。 
 
二番目は、上述のように、イランの地域政策やミサイル開発プログラムといった他の領域においてイランから何らかの譲歩を引き出すことです。 

中東では核大国はイスラエルだけであるということを常に理解していなければなりません。同国は200個以上もの核兵器を所有しています。その一方で、イスラエルはフリーパスを手に入れ、核兵器の開発さえもが可能です。イスラエルはNPTの参加国ではありません。ほかには、トランプ政権はイランに対して通常兵器によるミサイル防衛さえをも諦めるように求めています。基本的に言って、イラン側にとっては交渉に応じる余地はありません。米政府によるこれらの新たな要求をイランが受け入れるとは私には思えません。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-5: © AP Photo / IRIB News Agency, Morteza Fakhrinejad   国営のIRIBニュース社が2017619日に配信したこの写真にはイラン西部のケルマンシャーからシリア国内のイスラム国武装勢力に向けて発射されたミサイルが示されている。

スプートニク: もしもドナルド・トランプがこの核合意を破棄すると決断したならば、他の締約国はどのように反応するでしょうか?
 
ハメド・ムサビ: これは彼が合意からどのような形で離脱するかによって左右されます。米国はイランに対してニ種類の経済制裁を課しているからです。まず最初の経済制裁ではイランとビジネスを行う米企業を罰することが目的です。二番目の経済制裁はイランとのビジネスを行う国家はどの国であっても罰せられます。ヨーロッパ、ロシアあるいは中国の企業であっても米政府が課す罰を受けることになります。 
もしもドナルド・トランプが512日に核合意から離脱すると決断すれば、いわゆる軟着陸を目指す可能性がありそうです。このシナリオでは同大統領は特定の国々を経済制裁からは除外するでしょう。たとえば、彼は「ドイツとフランスはこの二番目の経済制裁からは除外する」と言うかも知れません。これが何を意味するかと言えば、これらのヨーロッパ諸国にはイランとのビジネスを許すことになります。
ところで、もしもこれらの国々が除外されないならば、たとえ彼らが合意を維持したいとしても、この合意を継続することは非常に難しくなります。彼らはトランプ政権が合意を破棄したことを非難することでしょうが、基本的にこの合意は失効します。何故ならば、米国がイランとのビジネスを行った企業を罰し、経済制裁を課すと宣言すれば、イランにとってはヨーロッパ諸国やロシアおよび中国との取引を継続することが不可能となるからです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



Photo-6: © REUTERS / Joshua Roberts   2018424日、ワシントンのホワイトハウスにて到着の歓迎式典に臨むドナルド・トランプ米大統領とエマヌエル・マクロン仏大統領


スプートニク: 米議会で行った演説で仏大統領はイランとの合意はすべての課題を網羅するものではないかも知れないが、これに代わるものとしてより実質的な合意も無しにイランとの合意を破棄するべきではないと訴えました。しかし、彼はイランが核兵器を所有すると国際社会を危険に晒すので、イランは核兵器を所有するべきではないと付け加えています。ここで質問したいことは、国際社会はイランが核開発プログラムを持つことにどうしてこんなに反対するのでしょうか?米国だけでも6,800個以上の核弾頭を所有しており、核能力をさらに強化する予定です。パキスタンやインドは核兵器を所有していますが、NPTの締約国ではありません。ムサビ教授、仮定の上に立って喧伝されているイランの核開発プログラムは国際社会にとって本当に脅威となるのでしょうか?
ハメド・ムサビ: 問題はこの点にあるのです。つまり、現行の核合意の下ではイランは核兵器の開発は決してしないと義務付けられています。それが合意文書の文言です。しかも米政府によりますと、米国は実際にはイランの原爆を追及することになるとは思ってはいないのです。 
 
 
 
 
 
 
 
一例を挙げてみます。2-3週間前のことでした。マイク・ポンペオは上院外交委員会における確認の段階でイランの核兵器プログラムについて質問を受けました。彼はイランは実際にはJCPOAの前にも後にも核兵器を開発しようとしたことはないと陳述したのです。これがマイク・ポンペオの口から出たのです。しかも、彼は好戦派ですよ。彼さえもが問題は核兵器プログラムではないことを認めているのです。狙いはエネルギー開発を目指す民間プログラムです。 

れでもなお、米国はこれらの言い訳を駆使するだろうと私は思っています。これはイランに圧力を加えて、中東での力の均衡を元へ引き戻すためです。

中東では米国は過去の10年間後退に次ぐ後退をしてきたことを理解しておかなければなりません。イラク戦争は米国にとっては悲惨なものでした。兵力のほとんどを撤退しなければなりませんでした。アフガニスタンでの戦争は17年が経過した今でも好ましい状況にはありません。シリアにおける力の均衡は完全に変化してしまいました。一回や二回の空爆がその状況を変えることはないでしょう。つまり、本質的に言えば、中東にける力の均衡を変えようとしてまったく別の口実を活用しようとしているのです。イランの核兵器開発とは何の関係もないと私は思います。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-8: © REUTERS / Leah Millis   マイク・ポンペオCIA長官の国務長官への指名に関してそれを承認するかどうかを確認するために開催された米議会上院外交委員会における公聴会の席から同長官が離れるところ。

スプートニク: 最終目標は何でしょうか?シリアですか? 

ハメド・ムサビ: 最終目標は中東における力の均衡を変えて、1990年代のレベルと同等なものに戻すことです。ソ連邦の崩壊後、米国は中東では独り勝ちで自他ともに認める最強国の地位を得ました。しかしながら、2000年代には、イラクやアフガニスタンで米国自身が仕掛けた戦争を始めとして、中東では緊張が非常に高まり、それと同時に米国は財政的にも人命においても悲惨な経験をしたのです。中東で多くの兵士を失いました。 

その最終結果としては、力の均衡は自分たちが望んでいた形からは完全にはみ出してしまい、実際には米国は自分たちの勢力の多くを失なったのです。これがイランのような地域的強国の台頭を促し、この地域の外ではロシアの台頭をもたらしたのです。米国はこれらの事実が好きではないのです。本質的には、彼らは中東において唯一の強国でありたいし、采配を振るっていたいのです。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-9: © AP Photo / Hassan Ammar  トランプ米大統領を非難しながら、シリア、イランおよびロシアの国旗を振るシリア政府の支持者たち。このデモはバシャル・アサド大統領が自国民に対して行ったとされる化学兵器攻撃を罰するために行われた米英仏によるミサイル攻撃に抗議して2018414日、土曜日、シリアのダマスカスで行われた。

スプートニク: 報告によれば、ドナルド・トランプが核合意を破棄すれば、イランは核プログラムを再開するかも知れません。もしもテヘランがそうすると決断した暁にはイランは「大問題」に遭遇するだろうと米国の指導者が脅しをかけていました。われわれは今いったい何を議論しているのでしょうか?テヘランとワシントンとの間には軍事的衝突の危険性があるのでしょうか?
 
ハメド・ムサビ: 2-3ヵ月前のことですが、米国の借金は歴史上初めて20兆ドルを超しました。財政的には米国政府はうまく行ってはいないのです。昨年は6,660億ドルの財政赤字でした。2020年には年間の財政赤字が1兆ドルを超すものと予測されています。つまり、米国は財政的な観点から言えば、全面的な戦争を遂行するための資金を持ってはいないのです。
また、米国の世論は2003年に行われたイラク進攻のような侵略には反対しています。それ故に、政府の非常に攻撃的な論調とは裏腹に、トランプ政権は必ずしも全面的な攻撃を遂行するという姿勢ではないのです。これが理由で、たとえば、シリアではミサイル攻撃が行われましたが、シリア国内の軍事的均衡を変化させ得るものではありませんでした。これはイランについても当てはまると私は思っています。彼らは経済制裁を課すことができますし、外交的な圧力を加えることもできます。しかし、軍事的な観点から見ると、近い将来に何時でもイランを攻撃することが可能だとはとても思えません。

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。
この引用記事はマイク・ポンペオCIA長官が上院外交委員会の公聴会で述べた内容を公表している。非常に興味深い内容だ。米諜報部門のひとつを率いていた人物がイランには核兵器プログラムはないとはっきりと明言しているのである。しかしながら、主流メディアはイスラエルの宣伝に符合した言い回しだけを繰り返している。
日本のわれわれ一般庶民はどれだけの人がこの事実をはっきりと認識していたであろうか。恐らく、ゼロに近いのではないか。少なくとも、私は知らなかった。
512日が迫っている。同盟国であるイスラエルを支援するためにイランとの戦争を喧伝して来たトランプ政権はいったいどのような決断をするのであろうか?
国内の好戦派、つまり、ネオコン勢力に対する国内政策としては形だけでもイランに軍事的なちょっかいを出す可能性はあるだろう。しかしながら、その場合は早期の段階で全面戦争に発展することを回避することが可能なしっかりとした出口作戦が必要となって来るだろう。その時は、またもや、ロシアの影響力に期待するのであろうか?イランにおいて第二のアフガニスタン的な膠着状態を作り出す余裕は米国にはまったく無いのだから。
あるいは、ここで議論されている状況とはまったく別のシナリオが浮上して来るのかも知れない。
トランプ大統領がどこまで世論を大事にするかという点も大きな関心事である。本日(53日)のRTの記事(56 percent of US voters want Trump to keep Iran nuke deal as deadline looms)によれば、最近の調査で有権者の56パーセントはイラン合意を維持したいという。過去最高のレベルだ。それに対して、破棄したいと表明した有権者は26パーセント。今年の中間選挙を控えて、トランプ政権は512日にどう判断するのであろうか?
 

参照:
1US No Longer Has Resources to Start Full-Scale War Against Iran – Prof: Sputnik, Apt/29/2018

 

© REUTERS / Mike Segar