2017年2月21日火曜日

米国の指導層は核戦争を選択したのだろうか?



「ネオコン派や米国を背後から操る指導者らはトランプ大統領を去勢してしまった。みんな、これですべてはお終いだよ!」と題した衝撃的な記事が米ロ間の政治や安全保障の分析で定評が高いThe Sakerのブログに掲載された [1]

何が終わったのかと言うと、これはトランプ大統領が選挙運動中に約束していた公約が反故になったという意味だ。トランプ政権の安全保障担当補佐官として登用されていたマイケル・フリン少将がネオコン派や主流メディアの攻撃にあってついに辞表を提出し、トランプ大統領が彼の辞表を受理したのだ。当面、ジョセフ・キース・ケロッグ退役陸軍中将が補佐官代行の任につくという。

このThe Sakerのブログによると、フリン国家安全保障担当大統領補佐官の更迭によって、トランプ大統領の外交政策上の中核であった「ロシアとは仲良くやって行きたい」という非常に基本的な路線はその方向性を見失ったのである。すべてはネオコンの好戦的な筋書きに逆戻りする可能性が高い。

これらは214日の報道である。

ネオコンの筋書きはロシアを米国の脅威と見なすことによって、さらには、ロシアをNATO軍の仮想敵と位置付けることによって米政府の天文学的な軍事予算を正当化し、武器や弾薬を大量に消費させ、軍需産業の繁栄を何とか継続させることにある。そうすることによってのみ、米国の陸・海・空の数多くの将官らは退役した後の天下り先をたくさん確保することが可能となるのだ。そして、政治家たちは見返りとして軍産複合体の団体や企業から豊富な選挙運動資金を入手する。この癒着構造には衰える気配がない。

こうした一連の動きは米ロ対決路線への逆戻りを可能にし、トランプ大統領が約束していた選挙公約を反故にしてしまうだろう。好むと好まざるとにかかわらず、その延長線上には米ロ核大国間の戦争が再び浮上して来る。

実は、こうした予見は今回の国家安全保障担当のフリン大統領補佐官が辞表を提出する前からくすぶっていた。上記の記事 [1] は次のように述べている(斜体で示す)。

「本日、クレムリンではこの出来事を祝う人は誰もいない。プーチン大統領、ラブロフ外相、および、その他の政府高官らは今回起こったことの意味を正確に理解している。それはあたかも2003年の大統領選 [訳注: 大統領選は2003年ではなく、2004年だった] でホドルコフスキーがプーチンを破ることに成功したかのようなものだ。事実、私はロシアの批評家たちに敬意を表したい。すでに数週間も前から彼らはトランプを(ウクライナの)ヤヌコビッチに喩えていた。ヤヌコビッチも選挙民の大多数によって選出されてはいたのだが、彼は自分に対する「色の革命」を阻止する決意を実現することには失敗した。もしも、トランプが新たなヤヌコビッチであるとするならば、米国は次のウクライナに相当するのであろうか?」

また、ネオコンの政策が再登場するかも知れないことを受けて、ポール・クレイグ・ロバ―ツは最近の記事 [2] に「米国の指導層は核戦争を選択したのだろうか?」という不気味な表題を付けている。

本日はこの記事 [2] を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたい。


<引用開始>

もしもあなたが米国のテレビやプレスティチュートと呼ばれる西側の主要メディアの対談番組でその司会役を務めたいと望むならば、まずは、あなたはビル・オライリーやCNNMSNBC、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ウオールストリートジャーナル、等のように無能で、知性を疑われるような人物となる必要がある。

ドナルド・トランプ大統領との対談で、オライリー [訳注:1949年生まれ。FOXニュースのニュース番組「ジ・オライリー・ファクター」の司会者] は次のように言った。「プーチンは殺人者だ」と。

オライリーは熱核戦争が一度起これば地球上の生命を死滅に追いやるという事実にはまったく無関心である。オライリーにとっては、トランプ大統領が願望する対ロ関係の正常化が進められると、米国の大統領は殺人者たちと取引を行わなければならないことを意味する。これはあたかも最近の三代の米国大統領は他国を完膚なきまでに、あるいは、部分的に破壊したことや何百万もの無辜の市民を殺害したことには決して関与してはいなかったとでも言いたいかのようである。

オライリーの文言に対してトランプ大統領からの反撃があった。「我々の側には数多くの殺人者がいる。あんたはいったいどう思っているんだね?米国は比べようもない程に無実であるとでも思っているのかね?」

トランプ大統領の反撃の言葉にはひとつだけ間違いがあった。それはプーチンはオバマやジョージ・W・ブッシュならびにビル・クリントンとは変わりがないと暗黙のうちに認めているようなものであるからだ。しかしながら、プーチンが「殺人者」であるという証拠はまったくない。この非難は資金や権限が自分たちに向かってとどこおりなく流れて来ることを堅持するために「ロシアの脅威」を主張し続けている連中が唱える文言そのものである。

フィニアン・カニンガムが示してくれているように、新大統領がこれから正常な関係を構築しようと願っている一国の大統領に対して証拠もなく、外交的な配慮に欠けた非難をしたとしてトランプ大統領はオライリーを叱責するべきであった。http://www.strategic-culture.org/news/2017/02/06/trump-apology-for-killer-putin-wrongheaded.html

明白な事実であるにもかかわらず、トランプ大統領の主張に対しては議会の共和党員やヒラリー大統領候補を推していた民主党員、自由主義者、進歩派、左翼、および、西側のプレスティチュート、等によって「殺人者の擁護」というレッテルが貼られた。

たとえば、politico.comというオンラインのサイトでさえもが、「ウラジミール・プーチンの殺人歴に対するドナルド・トランプによる擁護」という文言を批判している。アフガニスタンやイラク、ソマリア、リビア、イエメン、パキスタンおよびシリアにおけるイスラム教徒に対して、さらには、イスラム圏以外ではユーゴスラビアやウクライナのロシア語地域の住民に対して、ワシントン政府は過去24年間方々で大量殺人を行った来た。その後の言葉としてはまさに驚きに値すると述べているのである。ワシントン政府は人類の歴史においては大量殺人を行った最悪の政府のひとつとしたランクされるが、西側のプレスティチュート各紙はプーチンに対して大量殺人者としてのレッテルを貼っている。

ここで、ワシントンにおいて米国民を代表する議員たちの言葉を聞いてみよう: 

上院多数派のリーダーであるミッチ・マッコネル(共和党、ケンタッキー州)は3回も選出されているロシアの大統領を指して「彼は悪党だ」と言った。マッコネルは過去15年間ワシントン政府が関与してきた市民の殺戮を支持して来た。そして、この大量殺人への加担者は、ワシントン政府による何百万人もの殺戮の結果、西側諸国の至る所へもたらされた無数の難民は米国を非難するのに十分な証拠にはならないと言った。トランプの発言に対する反論として、実際に、マッコネルは「われわれはロシア人が振る舞うようには振る舞わない。米国人全員が理解することができるような違いが歴然として存在すると思う。私はその違いをそのような仕方で特徴付けようとはしなかった」とも述べている。http://www.politico.com/story/2017/02/republicans-denounce-trumps-defense-of-killer-putin-234665

フロリダ選出のマルコ・ルビオ共和党上院議員は「我々はプーチンとは同じではない」と言った。もちろん、われわれは同じではない。われわれの方こそが大量虐殺者なのだ。

ネブラスカ州選出のベン・サース共和党上院議員は「プーチンは政治的に反対意見を持った敵だ。米国は政治的な反対意見を祝福し、暴力に遭遇することなく、何処でも[カリフォルニアのバークレイのように]、どんな考えについてさえも市民が論争する権利を称賛する。世界の歴史を見ても自由をもっとも愛する米国と自分の身内を擁護するプーチンの下にある悪党共との間には道徳的に等価なものは何もない」と言ったが、これはもう無知以外の何物でもなく、米国人にさえも理解することが困難だ。 [訳注: 彼の発言を読んでみると、論理が支離滅裂だ!]

ウオールストリートジャーナルのブレット・スティーブンスは「トランプは米国をプーチンが率いるロシアの道徳と同レベルに置いた。大統領自身が自国をこのように中傷するとは歴史的にはなかった」と言った。

ブレット、そうじゃないよ!君はまったく逆に受け取っている。確かに、米国の大統領はロシアをこのように中傷したことなんてないんだ。ワシントン政府とモスクワ政府との間には道徳的に等価なものなんて何もない。ワシントン政府には道徳のかけらさえもない。でも、ロシアはそうではない。過去15年間にわたって少なくとも9ヵ国で殺人を犯し、人々を不具にし、故郷から移動させ、難民を西側各国へ送り出したのは(米国であって、)ロシアではない。そうした難民の中の何人かは当然恨みを抱いても不思議ではない。

トランプの副大統領を務めるマイク・ペンスは、急遽、NBC テレビでトランプ大統領は米国が道徳的にプーチンのロシアよりも優れているわけではないと言いたかったわけではないと注釈した。もちろん、米国は道徳的には誰よりも優れているのだ。何百万人もの市民を殺害し、故郷から追い出していることこそがわれわれの道徳的優位性に疑問の余地を感じさせない証拠だ。我々が結婚式や結婚式に参列して殺害された人たちの葬式、あるいは、子供たちのサッカーの試合や数知れない病院や医療センター、学校、農場、公共輸送機関、等を爆撃した時、例外的な存在で、かつ、必要不可欠な存在であるわれわれ米国人は全世界に対して決まってわれわれの道徳的優越性を行動で示して来た。道徳的に優位な者だけがその責任を問われることもなく人間性に対する重大な犯罪を犯すことが可能なのだ。

ロシアとの正常な関係は手の内のカードに含まれてはいない。悪魔視することや嘘は継続するだろう。「新冷戦」の存在は支配者層にとっては極めて重要であって、トランプ大統領がロシアとの関係を正常化することは軍事・安全保障関連からの選挙運動資金に依存する下院や上院の議員らにとっては何としても回避したい一大事である。

リーガンとゴルバチョフが成し遂げたことはすべてが覆されてしまった。一握りの連中が求める物欲が再び人類を危機の瀬戸際にまで追い込んでいるのだ。

「世界の歴史の中で自由をもっとも愛する偉大な国家」でありながら、それを論じることさえもない。何故ならば、その議論はまさにプーチン自身の弁証論であり、プーチンと道徳的に等価であることを意味することになるからである。

著者のプロフィール: ポール・クレイグ・ロバーツ博士は経済政策担当の財務次官補を務め、ウールストリートジャーナルでは副編集長として働いた。また、ビジネスウィーク、スクリップス・ハワード・ニュースサービス、および、クリエーターズ・シンジケートではコラムニストとして執筆した。数多くの大学から招聘を受けている。彼のインターネット・コラムは世界中の読者を魅了している。ロバ―ツ博士の最近の著書:The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHow America Was Lost、および、The Neoconservative Threat to World Order

注: この記事に掲載された見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの見解を代弁するものではありません。 

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

このブログでは同一著者の記事がふたつも続いてしまったが、ポール・クレイグ・ロバーツの見解は歯切れがいい。国際政治の深層を見事に読み解いてくれる。

私が理解した内容で私流に反芻するとすれば、米国の好戦派の政治家や支配者層および主流メディアの論説委員たちは日頃プーチンを悪魔視し、プーチンについて嘘の報道を行っているからこそ、テーブルを挟んでプーチンと議論をすることは受け入れられない。そうすることは非常に恐れている。彼らは自分たちがプーチンに関して流して来た嘘八百によって金縛りにされているのだ。何故ならば、そんなことをすれば道徳的には自分自身もプーチンと同列となってしまい、日頃米国民に向かって言い聞かせて来た心地よい言葉、つまり、全世界に対する米国人の「例外主義」や「必要不可欠な存在」が胡散霧消してしまうからだ。そうなったら、今まで行って来た軍産複合体に対する支援は継続する意味が無くなってしまい、自分たちの出る幕は消えてしまう。この点こそが、著者が指摘する「一握りの連中」にとっての最大の関心事であり、一歩も譲歩することは出来ないのである。

「一握りの連中」は、何とまあ、利己的な考えに浸っているのであろうか?

しかしながら、これこそが現実の姿であり、大なり小なり今日の米国の政治を操っている原動力なのである。

こうして、ポール・クレイグ・ロバーツの「米国の指導層は核戦争を選択したのだろうか?」という懸念がいや増しに現実味を帯びて来る。




参照:

1The Neocons and the ‘deep state’ have neutered the Trump Presidency, its over folks!: By The Saker, Feb/14/2017

2Has The American Establishment Opted for Thermo-Nuclear War?: By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Feb/08/2017






2017年2月12日日曜日

トランプ政権はすでに死に体か?



120日、米国にトランプ新政権が誕生した。あれからまだ1ヶ月にもならない。

したがって、同政権を評価することはあまりにも近視眼的である。それにもかかわらず、世間にはトランプ政権をあれこれと批判する声が実に多い。なぜだろうか?

ひとつには、トランプ大統領自身が国際政治にはまったくの素人だとする見方があって、外交には疎い新大統領が行おうとすること、たとえば、メキシコとの国境沿いに塀を建設するとか、イスラム教徒の入国を禁止するといった政策やその進め方がひどく稚拙に見えてしまうからではないか。そして、もうひとつは、昨年11月の大統領選で大敗を喫したヒラリー・クリントン候補を支えていた活動家や民主党を支えるネオ・リベラル派は、主要メディアやジョージ・ソロスと組んで、新政権をあれこれと非難し、街頭デモを行い、トランプ叩きを継続することに余念がない。

新政権にあれこれと注文をつけることはむしろ建設的なプロセスだ。メディアは社説で多いに論じるべきだ。

しかしながら、彼らは世論操作のためのフェーク・ニュースに貴重な人的資産をふんだんに投入しているのが現状だ。1960年代から1980年代にかけての米国では調査報道がメディアの主流であった。ニクソン大統領を辞職させたワシントンポストのニュース記者の活躍は映画にもなって一世を風靡した。しかし、今や、そうした伝統を持つワシントンポスト紙さえもが退廃の一途を辿っている。メディアはもはや娯楽の一形態でしかない。英語圏では「infotainment」という合成語が新たに登場し、ニュース報道は娯楽の一翼を担う役割を与えられているに過ぎない。この新語は、とりもなおさず、現在のメディアの位置を象徴していると言えよう。

こうして、一般庶民の洗脳のためには膨大な資源が投入されている。そんな人的資源の浪費は止めて、真実を報道することに少しでも専念して欲しいものだ!

こうした表面的な諸々の現象を目にして、これらの現象の背後にはいったいどのような真相が隠されているのだろうか?われわれ一般人には見えてこない根源的な理由はいったい何だろうか?

そのような問いに対する識者の答えがひとつ見つかった。米国の政治に関しては冷静、かつ、辛辣な論評で名高いポール・クレイグ・ロバーツの記事 [1] である。その表題には「トランプ政権はすでに死に体か?」という衝撃的な言葉が躍っている。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

トランプ新政権に対する希望は必ずしもその明るさを増し、さらに燃え上がりつつあるわけではない。トランプ政権の国防長官に指名されたマティス将軍は彼のニックネームである「狂犬」に相応しい姿を見せ始めた。イランは「世界で唯一のテロ支援国である」と、最近、 彼は断言した。

彼はロシアは米国にとって最大級の脅威であるとも言っている。

彼は中国の領土問題に介入するという脅しもかけている。

私は間違がっていた。わたしはマティス将軍の起用はまともな選択だと思っていたのだ。何故ならば、彼は拷問の効果に関しては異論を唱えており、トランプ大統領によれば、「拷問は効果がない」ことをトランプにも確信させたとのことであったからだ。しかしながら、マティスはどうやらこのレベルの確信を超えて、それよりもさらに先にある次元がより高い地政学的な確信にまでは到達することはできないようだ。トランプ大統領はロシアとのまともな関係の再構築の行く手を塞ごうとするペンタゴンの長官としてのマティスを解任する必要がある。

イランやロシアおよび中国の挙動にはマティスの見解を支持する証拠は何もない。「脅威」という言葉に関する彼の定義はネオコン派のものである。つまり、米国の覇権に抵抗する国家を指している。これは軍産複合体にとっては非常に好都合な言葉だ。そのような「脅威」が存在することによってこそ、天井知らずの軍事費の予算を正当化できるからである。この覇権に対する強い欲求こそがテロリズムの源泉となっている。

真実を語ることが許されるとすれば、覇権に強い願望を抱く国は世界中でも2カ国しかない、と私は断言したい。米国とイスラエルだ。そして、これらのふたつの国がテロリズムの源泉となっているのだ。イスラエルはパレスチナ人にテロ行為を行い、すでに約70年となる。米国は全世界でそれ以外の国々でテロ行為を働いている。

イスラム教徒のテロリストは、知り得る限りでは、米国政府が作り上げた産物である。アルカエダは、アフガニスタンが旧ソ連によって占領されることを聖戦によって阻止するために、カーター政権によって作られた。ISISは、トランプ政権の国家安全保障補佐官に任ぜられた国防情報局元長官のフリン少将がテレビで公表したように、リビアのカダフィ政権を打倒するためにオバマ/ヒラリー政権によって作られた。ドネツクおよびルガンスクの両共和国を攻撃しているウクライナのネオナチらはオバマ/ヒラリー政権がウクライナで民主的に選出されていた政権を打倒したことによって解き放たれた。ワシントンとイスラエルはすべてのテロ行為に関連している。

ウクライナ政権の打倒にワシントン政府が関与した事実には反論の余地がないけれども、洗脳されてしまった大多数の米国人はロシアがウクライナへ侵攻したと信じ込んでいる。この洗脳の構図は「イランはテロ支援国家である」とするフェークニュースを信じてしまうことと酷似している。

イランが最後に他国に対して侵略戦争を行ったのは18世紀最後の10年間であった。当時、コーカサス地方とジョージアを再度征服したが、イランは間もなくロシアとの戦争の結果それらの地域を失った。

我々の時代におけるイランは侵略行為を行ってはいない。単にワシントン政府の傀儡国家になることを拒んでいるだけだ。

加えるに、自らは何の政策も持たず、独立した対外政策を持たず、独立した経済政策を持たないイスラム教徒の国家の間では、ロシア人によって救出されたイランとシリアだけが米国に従順な傀儡政権ではない。

イランは膨大なエネルギー資源に恵まれた大国である。イランはその独立心と軍事能力に関しては古代まで遡る長い歴史を持っている。今日、イランはロシア連邦のイスラム教地域にイスラムによる聖戦を引き起こそうとする米ネオコン指導者らの企てに対する緩衝地帯としてロシアにとっては非常に重要である。その結果、もしもトランプがロシアとの間に脅威を与えない正常な関係を構築しようとするならば、イランはトランプにとってはもっとも都合の悪い目標である。その上、狂犬とのニックネームを持つペンタゴンの長官は、向こう見ずにも、イランは「テロリスト国家」であると主張し、脅しの声明を発している。

イランに対する脅かしにはイスラエルの手が伸びているのであろうか?中東においてはイランとシリアは米国の操り人形ではない唯一の国家である。シリア軍は戦闘を通じてより以上に頑健な軍隊になっており、これはシリア軍が米国の支援を受けたイスラエルに立ち向かうためには必要不可欠である。シリアとイランの両国はナイル川からユーフラテス川までに及ぶ「大イスラエル」というシオニスト構想を奉じるイスラエルの前にはだかっている。シオニストにとってはパレスチナやレバノン南部はほんの緒戦に他ならない。

イスラエルは腐敗に満ちた英国を実に巧妙に活用して来た。そして、今は、神が彼らを放り出した地で自分たちの領土を再構築するために腐敗に満ちた米国を操ろうとしている。これは英国や米国の知性や道徳を褒めるものではない。そもそも褒めるべき事柄なんていったいあるんだろうか? 

また、マティスやティラーソンからは中国の影響圏に対して干渉しようとする脅かしの声が聞こえて来る。トランプ政権の要職に指名されたこれらの高官は、イランや中国に照準を合わせているようでは、ロシアとの関係を改善することはできないということが十分に理解することができてはいないようだ。

トランプ政権には地政学的に覚醒する見込みがあるのだろうか?強気な発言をするトランプ政権は米国の外交政策に影響力を及ぼそうとするイスラエルのシオニスト勢力を屈服させ、米議会の票をひっくり返すだけの十分な頑健さを果たして見せてくれるだろうか?

もしもそれが不可能であるとすれば、より多くの戦争が不可避的に勃発することだろう。

24年間(つまり、犯罪者的なクリントン政権の8年間、ブッシュ政権の8年間、ならびに、オバマ政権の8年間)にわたって世界はワシントンからの脅かしを受けて来た。その結果、何百万人もの無辜の市民が殺害され、幾つもの国家が崩壊した。トランプ政権は今までとはまったく異なるワシントンの姿を全世界に向けて提示する必要がある。

著者のプロフィール: ポール・クレイグ・ロバーツ博士は経済政策担当の財務次官補を務め、ウールストリートジャーナルでは副編集長として働いた。また、ビジネスウィーク、スクリップス・ハワード・ニュースサービス、および、クリエーターズ・シンジケートではコラムニストとして執筆した。数多くの大学から招聘を受けている。彼のインターネット・コラムは世界中の読者を魅了している。ロバ―ツ博士の最近の著書:The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHow America Was Lost、および、The Neoconservative Threat to World Order

注: この記事に掲載された見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの見解を代弁するものではありません。 

<引用終了>


この記事を読むと、ネオコン派のイデオロギーや政策が如何に米国の政策を歪めているかがよく分かる。歴史を歪曲し、一般庶民を洗脳してしまう。それが過去24年間の米国政府の姿だ、と著者は言う。

また、結びの言葉が素晴らしい。

24年間(つまり、犯罪者的なクリントン政権の8年間、ブッシュ政権の8年間、ならびに、オバマ政権の8年間)にわたって世界はワシントンからの脅かしを受けて来た。その結果、何百万人もの無辜の市民が殺害され、幾つもの国家が崩壊した。トランプ政権は今までとはまったく異なるワシントンの姿を全世界に向けて提示する必要がある。

トランプ新大統領が今までとはまったく異なるワシントン政府の姿を全世界に向けて提示することができたとしたら、彼は間違いなく米国のトップクラスの政治家として歴史に名を残すことになるだろう。そうなれば、クリントン、ブッシュおよびオバマの三人の大統領とは大違いとなる。

ここで言う「今までとはまったく異なるワシントン政府の姿」とは経済的、政治的および軍事的覇権を追求する今までの国内政策や対外政策とはまったく異なるものであり、多国籍企業のためにさまざまな国際条約を締結して米国の利益のみを確保しようとする姿勢とも異なり、気に入らない政権の転覆や傀儡政権の樹立に翻弄する対外政策の対極に位置するものを指す。それは過去24年間の米国の政策を正面から否定するものに他ならない。

現在の米国の政策やNATOの動きは軍産複合体という一部の組織や企業の利己的な延命策に翻弄されている。一般大衆は覇権の維持のために主要メディアによって作り出されたイデオロギーによって洗脳されている。こうして、最悪の場合、米国ではロシアに対する核先制攻撃さえもが正当化されよう。米ロ核大国間の核戦争による相互確証破壊を誘発し、人類の絶滅のリスクは、偶発的な核戦争を含めて、飛躍的に高まってしまう。今までの米国の政策と決別することによってしか人類は生き延びることができないのだ。国際社会は、富める国も貧しい国もすべてが分け隔てなく、今や、そのような位置にまで追い込まれているのだと認識しなければならない。

トランプ政権の出現は伝統的な指導者層にとっては天地をひっくり返すような大きな変化である。トランプ政権が約束のすべてを実現できるとはとても思えないが、その基調は米大統領選の最中に繰り返して聞かされてきた。そして、昨年11月の米国の大統領選ではトランプ候補が大勝した。選挙民が彼を選んだのである。

ポール・クレイグ・ロバーツによれば、トランプ新政権に対する希望は必ずしもその明るさを増し、さらに燃え上がりつつあるわけではないと言う。しかしながら、これは新政権の発足の前後に見られた、そして、今でも続いているクリントン候補の陣営による執拗な嫌がらせやサボタージュによって引き起こされた一時的な混乱に過ぎないのではないか。

今後必要な軌道修正を適宜行って、トランプ新大統領による選挙公約の実現を目にしたいものだ。



参照:

1Is The Trump Administration Already Over?: By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Feb/06/2017