2017年1月15日日曜日

ワシントン政府(および米国)の本当の顔 - 政治の構図はもはや左翼対右翼ではなく、真実対プロパガンダとなった



一言一句をここに正確に再現することは出来ないけれども、20数年前に東西の冷戦が終結した頃ある歴史家が次のように指摘したことを私は記憶している。「何年か経つと、冷戦下にあった頃の世界がいかに秩序正しかったかを思い起こすことになるだろう」と指摘して、未来を予測していた。そして、何とその言葉はずばり当たっている。案の定、不安定、混乱、無秩序の世界が到来し、その出口が今も見えてこない。

中東における紛争、テロリズム、内戦を見ると、無秩序振りがはなはだしい。目を覆うばかりである。さらに、それは西側の内部にも伝染して来た。

昨年11月の米大統領選では、民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補との間で情報戦が繰り広げられた。もっと具体的に言えば、相手の候補を中傷し、多くの嘘の報道が流された。フェーク(嘘)・ニュースがこれほど横行したことがかってあっただろうか?あれほどまでに民主主義を説き、民主主義の重要性を喧伝して来た米国において、選挙結果が気に入らないからと言って、120日の新大統領の就任の当日には大規模なデモを繰り広げると言う。多数決原則の民主主義制度はいったい何処へ行ってしまったのだろう?

デモの計画・実施は合法的な「表現の自由」であることに間違いはない。しかしながら、クリントン候補側はロシア人ハッカーが民主党全国委員会のサーバーや選挙運動を指揮するジョン・ポデスタのサーバーに不法侵入し、情報を盗み出し、それをウィキリークスに提供したと主張。その行動を指揮したのはクレムリンのプーチン大統領であると言う。CIAがそう報告したのだ [1]。一方、ウィキリークスは情報を提供したのはロシアではないと反論している [2]。また、この情報をくれたのはどこの政府でもないと言っている。

しかし、民主党全国委員会はCIAに問題のサーバーを徹底的に調査するようには依頼しなかったし、CIAは自分たちがこの調査を行うこともなく、民間へ調査を委託した。

米国の大統領選がロシアのサイバー攻撃を受けて、クリントン候補は不幸にも選挙で敗退したと言わんばかりであった。このクリントン陣営の主張はヒステリ―状態を呈するまでになった。

しかしながら、米国人がすべてヒステリー状態に陥って、理性を失ったというわけではない。米国には数多くの諜報機関が存在する。経験が豊富な専門家も多い。それらの諜報機関でかって情報分析を専門にしていたが今では引退している人たちの団体がある。「Veteran Intelligence Professionals for Sanity」という名称だ。「健全性を求めるベテラン諜報専門家」とでも訳そうか。

ハッカーがサーバーに侵入して、情報を盗んだのではなく、内部の者が情報を外部へ流したのだとこのベテラン諜報専門家たちは述べている [3]。不正侵入ではなくて、内部告発であろうと分析しているのだ。

ロシア人ハッカー説を持ち出したCIAはその証拠を示してはいない。あくまでも状況証拠だけである。もしもハッカーが介在していたとすれば、技術的には、情報を送り出した者および受け取った者の指紋や足跡がコンピュータに残されている筈だと言う。しかしながら、CIAはそのような情報を持ち合わせてはいないので、証拠を示すことが出来ないままでいる。このベテラン諜報専門家たちからの手紙は、元CIAの諜報専門家も含めて、6人のベテランが署名している。


年が明けてから、最近の一連の米国内の政治状況に関して極めて大局的な記事 [4] が目に飛び込んで来た。「ワシントン(および米国)の本当の顔」と題されている。

本日はこの記事 [4] を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。



<引用開始>

おまえ自身を知れ。これは、ドナルド・トランプが大統領選に勝って、この勝利はいったいどのようにして起こったのだろうかと自問自答していた際に頭に浮かんだ言葉だ。言い古された言葉が頭に浮かんできたが、この言葉は非常に古く、ギリシャ時代のものである。古代ギリシャの作家であるパウサニアス(実は、彼の名前はウィキペディアで遭遇するまでは全然知らなかった)によれば、この言葉はアポロの神殿の前庭に刻まれたデルファイの神託であると言われているが、そのことについてはまったく何の考えも及ばなかった。私自身の三重らせん状の無知がかくも遠い時代にまで遡ることにはなったものの、私の出生はギリシャとはまったく違う米国であり、たった72年前のことだったということを念頭に置いていただきたい。

単純に言って、私は自分自身が知っていると想像していたことの半分さえも知らなかったのだ。これほどまでに基本的な事を思い出させてくれたドナルド・トランプには感謝の意を表したい。もちろん、この地球上に住むすべての人たちの頭の中に実際にどんなことが去来しているのかなんて知る術もなく、われわれ自身は自分のことについてさえも十分には知らない。もしも私自身が今自分のデルファイの宮殿の前庭に何かを刻むとするならば、私が刻む言葉は「私のことをいったい誰が知っているのか?(私自身ではない)」とでもしよう。 

このちっぽけな前書きをあの最近の選挙の夜から数時間が経った早朝に遭遇したミステリーのために捧げたい。あの時以来、あのミステリーは私の頭から去ろうとはしない。ドナルト・トランプが勝ったなんて単純には受け入れることが出来なかった。彼は御免だ。この国では受け入れられない。そんなことは不可能だ。百万年経ったとしても不可能だ。

念のために言っておくけれども、選挙運動期間中、トランプのことについては私が何度も書いたことだが、このすっかり混乱した2016年の米国においては彼がヒラリー・クリントンを破るかもしれないという可能性は常にあった。選挙運動の最後の数週間は世論調査結果やそれに乗っかった評論家たちの言動に惑わされて、私はその可能性を見失いそうになっていた。

しかしながら、選挙が済んでから私を捉えたショックは世論調査の間違いそのものではない。まったく別のことがゆっくりと分かり始めてきたのだ。でも、私の心の中のどこか奥の方では、よりによってこの米国で自己陶酔的な大金持ちのセレブを選出することになるかも知れないなどとはとても信じられなかった。また、彼は右翼系の「人気取り政治家」で、独裁者の始まりのようなイタリアのシルビオ・ベルルスコーニのスタイルと何処か似ているのだ。

あの確信には多くの皮肉が潜んでいた。それは選挙の終了後も続き、それ自体非常に現実的なものだった。最近の数年間、ドナルド・トランプを除いては、米国のすべての政治家がこの国は「例外的な」国家であるとか、「絶対に欠くことのできない」国であるとか、あるいは、歴史に関してはさておき、「地球上の最も偉大な」国家であると主張することが義務になっているかのような状況が現れ、そのことに関して私は批判的に書いて来た(最近の大統領や数多くの人たちが米国の軍隊は歴史上「世界最強の軍事力」を象徴するものであると主張しているが、このこともさらに付け加えておこう。) オバマ大統領、マルコ・ルビオ、ジェブ・ブッシュ、ジョン・マケインと。もうどうでも良かった。彼らはそれぞれが忠実で、熱狂的な米国人特有の例外主義者であった。トランプの対抗馬であったヒラリー・クリントンについて言えば、彼女は選挙運動中に米国在郷軍人会の全国大会で行った演説で三連勝単式とさらにもう一勝をものにした。その演説で、彼女は米国は「地上で最も偉大な国家」であり、「例外的な国家」であり、「絶対に欠かせない国家」であると言い、もちろん、米国は「最強の軍事力」を所有しているとも言ったのだ。(「私の友人たちよ、われわれは幸運にも米国人として生まれている。米国は特別に祝福されているのだ」と。) しかし、「米国を再度偉大な国にしよう」というスローガンから判断すると、トランプは米国がまったくそれとは違った別者であると捉えており、米国は衰退しつつあることを認めようとしているかのようだ。 

選挙後の状況は私にはショックだった。私自身も米国人特有の例外主義者であることが分かったのだ。単純に言って、ドナルド一派にとってはわれわれの国は単純に言って特別過ぎる程であると私は心の底から信じていたものだから、彼の勝利は私を思いがけない旅に誘い出してくれた。その旅の行き先は私が子供の頃ならびに青年期を過ごした1950年代から1960年代始めの頃の米国であって、当時は(ソ連邦の存在にもかかわらず)さまざまな面において地球上では実際に米国と肩を並べる者なんて誰も居なかった。もちろん、あの頃は、誰もがそのような言葉を口にする必要なんて全然なかった。「もっとも偉大」で、「例外的」で、「絶対に欠くことが出来ない」存在だという概念は当時はどれも特に重要ではなかったのだ。一方、それらを公に繰り返して主張する最近の政治は疑いもなく防御的な性格を帯びている。今何かが悪化していることを示唆するものだ。

米国の権力や軍事力、富、推進力および活力(そして、マッカーシーイズム、隔離、人種差別、スモッグ、さらには、・・・)がどん底に喘いでいる時、まさにその時に、ドナルト・トランプは米国を取り戻すことを明らかに切望している。私は心の深層にある「米国は特別である」という例の感情を取り込むことにした。それが、何十年も経ってから、私がまったく予期してはいなかった時に、こんなことが今ここで起こる筈なんてないという感情を打ち消すことができなかった理由でもあった。実際には、トランプ流の人物、たとえば、フィリピンのロドリゴ・ドウテルテ、ハンガリーのヴィクトル・オルバン、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン、ロシアのウラジミール・プーチンらが権力の座に上り詰めた出来事はどれも1ダースでたった10セント程度の出来事に過ぎなかったものだが、今や、世界の潮流であるかのように見える。ただ、私はそのような台頭をごく普通の、安物の国家あるいは幸運には恵まれない国と結びつけてみようとしたに過ぎない。

自分自身の例外主義的な精神を把握し、ドナルド・トランプがこの国で仕出かしたことに直面するのに私には何週間もが必要となった。 

こんなことがこの国で起こり得るのである。

どうして起こったのだろうか? 

現実を見つめてみよう。ドナルド・トランプは決して変人ではない。彼は大統領選に出馬し、選挙団の票をたくさん集めた(一般投票は別の話)。何故ならば、われわれ米国人は数多くの理由から彼のために準備を整えていたようなものだ。私の見る限りでは、米国人の生活や政治においては少なくとも5項目の主要な変化が起こっており、それらが「トランプ主義」の台頭を許したのである: 

* 1パーセントのための経済と1パーセントのための政治がやって来る。そんなことが起ころうとしている: この国の唯一の現実の姿は不平等さが米国人の生活にすっかり根ざしてしまったことであり、非常に多くの金が1パーセントの富裕者層の金庫に吸い上げられているのである。それと同時に、企業経営者の基本給と一般労働者のそれとの間には大きな隔たりが生じている。近年、我が国は裕福だが自由のない時代に突入したと指摘するのは決して私が始めてではない。言葉を換えて言えば、それはすでにドナルド・トランプが大統領選に撃って出る以前のマララーゴの豪邸の時期であった [訳注: ドナルド・トランプはフロリダ州のパームビーチにマララーゴの豪邸を所有している。128室から成る。ドナルド・トランプはかってはこの豪邸に住んでいたが、今ではこの豪邸を私的な会員制クラブとして経営している。入会金は10万ドルで、退会時には返金されない。年会費は14千ドル。食費には毎年2千ドルを費やすことになっている。世界でも稀に見る超豪華なクラブである]

大規模なカジノ資本主義の到来(それによって、ドナルド・トランプ自身は何回か破産した)がなかったとしたら、トランプ主義なんて考えにも及ばなかったことであろう。もしも2010年の市民連合の訴えに関する裁定で最高裁があの1パーセントの連中を歓迎して政治的門戸を開放してくれなかったとしたら、億万長者のセレブが大統領選に出馬し、白人系労働者の間で人気を博するなんて果たして可能であっただろうか?

ひとつの側面を覗いてみよう。億万長者らを自分の政府の省庁の長官に指名することによって、ドナルド・トランプがワシントン政府に21世紀型の金権政治家の真の顔をペタペタと判で押したとしても、それはそれで大したものだ。1パーセントのための経済、1パーセントのための社会、1パーセントのための政治は、結局のところ、1パーセントのための政府を作るべきではないのか?宣伝においてはトランプは米国型民主主義の真髄を実に明白に演じた。もちろん、もしも億万長者がこの時代にウサギが繁殖するように殖えることがなかったとしたら、彼が組閣のために人選を行うのに必要とする十分な数の金権政治家の集団は存在し得なかったことだろう。

* 永久戦争、ならびに、より以上に軍国化した社会の到来: 9/11同時多発テロから15年が経過した今、当初は「対テロ戦争」と称されていた政策が中東や北アフリカ全域における永久戦争に変身してしまったことについては疑う余地がない(そして、その巻き添え被害がヨーロッパからフィリピンに至る地域で現れている)。近年、米軍、ならびに、軍を支え武器の輸出では世界の市場を独占する軍需産業には膨大な資金が注入されてきた。その金額たるや一国、あるいは、複数の国の予算を超すような額である。その過程においては、ワシントン政府は戦争遂行の中心地となり、大統領は、ミシェル・オバマが最近オプラー・ウィンフレーとの対談でトランプの勝利について喋ったように、何にもまして軍の最高司令官となった。(彼女は「最高司令官を支持することはこの国の健全さにとっては非常に大切なことだ」とウィンフレーに言った。) 通常、戦時には大統領は最高司令官の役割を担うが、今は大統領というのはわれわれの多くが投票する対象でしかない(新聞各紙は支持を表明する)。しかし、戦争が米国の生き方に深く根を下ろしてしまっていることから、ドナルド・トランプは政権の期間中最高司令官のままでいるだろうことはほぼ間違いない。

近年、その役割は驚く程拡大された。何故かと言うと、ホワイトハウスは議会の承認を得ることもなく、あらゆる形態で戦争を遂行する権限を取得したからである。今や、大統領は無人偵察機を使って暗殺を遂行する大統領直属の空軍 を持ち、世界中の何処ででも誰に対してでも暗殺者を送り込むことが可能だ。それと同時に、米軍内にすっぽりと包まれた精鋭部隊であって、秘密行動を行う第二の軍隊としての特殊作戦部隊はその兵員予算および作戦範囲を際限なく拡大し、そのもっとも秘密に覆われた統合特殊作戦軍は大統領の私的な軍隊であるとして考えられている。

その一方で、決して終わることがない(そして、驚くほどに不成績な)戦いや紛争のためにこの国が用いてきた兵器や先端技術は、たとえば、プリデター無人偵察機から始まって、携帯電話の中継塔の機能を果たして近隣の携帯電話と接続するスティングレイに至るまで、すべてが母国へ舞い戻ろうとしている。これは米国の国境警備隊や警察が軍事化し始めたからである。警察にはイラクやアフガニスタンの戦場から直接武器その他の機材支給され、それらの戦場で戦って来たベテランたちは増加の一途を辿るスワットチームに加わった。これは特殊作戦部隊の国内版に相当し、今や警察署にとっては全米にわたって必須となるチームである。

トランプと将軍らがいわゆる「枯渇しつつある」米軍に資金を注ぎ込もうとすること、あるいは、近年の歴史を前提として、トランプが負け戦に従事してきた数多くの退役した将軍たちを軍事や安全保障の要職だけではなく重要な「文民」の要職にも割り当てようとしていること、等は決して偶然ではない。彼の取り巻きの億万長者の場合と同じように、トランプは疑いの余地もなく21世紀型の米国の本当の顔をワシントン政府にペタペタと判を押しているのである。

* 安全保障国家の台頭: 近年、国家の安全保障行政においてはまったく同様の過程が進行した。膨大な資金が米国安全保障省(Department of Homeland Security)、等の17の諜報関連部局(ならびに、さまざまな秘密の予算)に注入されてきた。(9/11同時多発テロ以前は、米国人は「homeland」という言葉を聞くと、即座にドイツあるいはソ連邦を連想したであろうが、米国を連想することはなかった。) 近年、新しい部局が設置され、精緻を極める本部その他の施設が屋上に屋を重ねるように設けられ、その費用たるや何十億ドルもの額となった。それと同時に、安全保障行政は「民営化」され、そのドアはパレードを成して下請け契約を取りにやってくる戦士たちの企業に解放されている。もちろん、「国家安全保障局」は世界規模の監視機関を設け、それはすべてを包含しており、20世紀の独裁政府がかって抱いた幻想は無価値同様となった。

秘密の覆い(ならびに、内部告発者に対する過酷な抑制あるいは訴追が行われ)が施される中、安全保障行政がワシントンに立ちあげられたことから、(三権分立で説明される三つの機関に続いて)それは事実上4番目の政府機関となった。現状においては、2016年の大統領選は、ジェームス・コメイFBI長官の選挙レースへの介入によって11日も早く決着が付いていたのかも知れないが、あれは偶然の出来事だったとは考えないで貰いたい。あの介入は国家安全保障行政にとっては歴史的には初の試みであった。コメイの介入が最終的な得票数に如何に重要であったかについては存分に議論されたい。確かに、あれはドナルド・トランプの勝利よりも遥かに前の新時代のムードを捉えていた。新たに就任する最高司令官にもっとも近い人物は彼の国家安全保障に関して補佐官を務めるマイケル・フリン元陸軍中将であろうが、これが単なる偶然の出来事であるとは考えるべきではない。マイケル・フリン元陸軍中将はオバマ政権の下で、更迭されるまでの間、国防情報局の長官を務めた。トランプとCIAや他の機関との間で論争があろうとなかろうと、それらの機関は(いったんトランプが指名した長官の下で業務を始めた暁には)トランプの支配にとっては基本的に非常に重要な存在である。

これらの億万長者や将軍、および、国家安全保障関連の長官らはトランプが選挙戦に出る前から米国特有の世界にどっぷりと浸っていた。彼らはこれから展開するトランプの世界の一部となる。その光景の中で第4の変化が進行中であって、完全には制度化されてはおらず、突き止めることは困難だ。

* 単独政党状態の到来: 近年の政治の展開により、ならびに、明らかに金権政治家の傾向を持った人物がオーバル・オフィスで執務を開始することにより、以前のわれわれの民主主義システムから米国式単独政党の誕生を想い描き始めることが可能となる。結局のところ、共和党がすでに下院(選挙区の改訂のお蔭で、多かれ少なかれ、今や永久的に優勢だ)、上院、ホワイトハウスを支配し、数年以内には最高裁をも支配下に置く見込みだ。共和党は50州のうちで33州の知事をもその勢力下に置き、これは新記録である。これは州の上院・下院を合わせて98の立法機関のうちで68をコントロールした記録と同記録となり、50の州の立法府のうちで33をコントロール下に置いたことでも記録破りである。加えるに、ノースカロライナ州の立法府が最近示したように、同州の民主党議員が自分たちに超民主的で、超法規的な新しい権限を与えるよう(ならびに、実際にはなかった選挙違反に焦点を当てて、長期間の共和党の優勢を確保しさまざまな形で選挙を抑制するよう)主張したが、この主張は難問を抱えた将来のトランプ主義国家が目指すかも知れない方向を示唆するものとして考えるべきであろう。

それに加えて、何年にもわたって民主党はさまざまな伝統的支持基盤を失い、あるいは、最近の選挙では、単に民主党員ではない人物さえもが党の指名候補になろうとし、そのような人物を選ぶという状況さえをも目にした。しかしながら、民主党が最近の選挙で敗北を喫するまでは、それは少なくとも依然として機能している最大級の政治団体であった。今日では、それがいったい何なのかは誰にも確信はない。しかし、米国の二大政党のひとつが調和を乱し、顕著に弱体化していることは明白だ。その一方で、トランプ主義者による単独政党国家の基盤となる共和党もそれ自体が乱れた状態となっている。つまり、党の職員やワシントンのイデオロギー信奉者、ならびに、追い詰められた地方の派閥のための団体と化しているのだ。
1パーセントの支配層の金が飛び交う中での二大政党制の崩壊の始まりはトランプの勝利のためにいく通りもの道を拓いてやった。先に述べた米国人の生活における三つの変化とは違い、これはすでにすっかり整っているとは言えない。その代わり、党の混乱や弱さの感触はドナルド・トランプの台頭には非常に重要であって、その感覚は依然として続いており、同一の混乱の感覚がこれから説明しようとする五つ目の変化にも適用することが可能だと言えよう。  

* 新しいメディアの時代がやって来る: トランプの登場を促したさまざまな事柄の中で、伝統的な新聞、TV、等のニュース報道の崩壊に関しては、いったい誰が議論の対象から除外したままにしておけるだろうか? 近年、 これらの報道機関はその宣伝広告の基盤の多くを失い、ソーシャル・メデイアに取って代わられ、TV部門は視聴者が毎日のように朝から晩まで釘付けになるような出来事を探し求めている。それらの出来事は永久に釣り合いを失うだろうが、中断することもなく報道することは容易であって、ニュース報道の要員が減ったとしても報道を続けることは可能だ。選択肢としては、視聴者が視聴せざるを得ないような出来事を探し出し、セレブから政治家に転向し、さらには扇動家に転向したような抜け目のない人物を含めて、ニュースキャスター(好ましくは、セレブのひとり)を選りすぐることが残されている。こういった人物はメディアにとっては喉から手が出るほど欲しい人物なのである。 トランプはツイートを駆使し、世界中に怒鳴り散らしたことによってあたかも「新メディア時代」を開幕したかのように見えるが、実際には、彼はこの新しい、混乱したメディアの特性を単に鷲掴みにして、それとうまく付き合ったに過ぎない。

ごく普通の億万長者や居なくても困らない将軍たち:

ここまでに論じて来た五つの事柄に加えて最後の点を付け加えてみよう: ドナルド・トランプは、彼に成功をもたらし、多くの専門家たちにとっては思いも寄らない、あり得ないような勝利をもたらした新しい現実によってすっかり空洞化された国家を引き継ぐこととなる。彼はもはや特別な存在ではなくなった国家を引き継ぎ、トランプ自身が指摘しているように、 輸送システムが世界の三流国並みになった国家(高速鉄道はたった1マイルさえも持たず、空港はその全盛時代がとうに過ぎている)を引き継ぐのである。インフラの品質は徹底して劣化しつつあり、毎日の経済を見ると、国民の多くに対して提供されるべき職場の数は減少の一途を辿っている。米国の破壊力だけは強化されているが、その力を勝利のために活用する米国の能力は絶え間なく後退している。

ごく普通の億万長者や居なくても困らないような将軍、決して偉大とは言えない米国の安全保障部門の高官、退屈な政治家、メディア界の大物たちを抱え、誰もが束の間のお金を求めており、この国はさまざまな形で燃え上がりやすい国家でもあるようだ。地球上の何処に住んでいようが、このことは誰にとってもますます身近な課題となり、自分の中に依然として住み着いている若い頃のトム・エンゲルハートにとってはより以上に不思議に見えるのである。

上記のような状況にある米国は120日には、議論の余地はあるだろうが、対応策に限られた、それほど優しくはないドナルド・トランプの手中に入る。


著者のプロフィール: トム・エンゲルハートはAmerican Empire Projectの共同設立者であり、著作としては「The United States of Fear」や冷戦の歴史を書き、The End of Victory Cultureを世に送り出した。Nation Institute のフェローを務め、TomDispatch.comを運営。彼の最近の著作はShadow Government: Surveillance, Secret Wars, and a Global Security State in a Single-Superpower World

Copyright 2017 Tom Engelhardt

注: この記事にご紹介した見解はあくまでも著者自身の見解であって、必ずしもInformation Clearing Houseの論説ポリシーではありません。

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

皮肉を込めた表現がいたるところに登場してくるが、それは教養の高い英語国民が持つ共通の性格であるので、ご容赦願いたいと思う。

何よりも、この著者が描写する米国の本当の顔は非常に厳しく、米国の将来はどう見ても楽観的ではないことがビンビンと響いてくる。そう言う意味では、この分析的な記事は秀逸であると思う。

なお、この記事の表題には副題として「政治の構図はもはや左翼対右翼ではなく、真実対プロパガンダとなった」を付け加えた。これはInformation Clearing Houseでこの記事に添付されている図解に示されていたものである。米国の政治が二大政党時代を終えたこと、そして、今後は「真実対プロパガンダ」の戦いとなることを指摘している。「真実」は一般大衆がニュース報道に求めるものであり、「プロパガンダ」は一般大衆を騙そうとする1パーセントの富裕層を代弁するものだ。つまり、この引用記事は米国の政治の本当の顔は貧富の差を中心に展開していくと指摘しているのだ。

今回の米大統領選でわれわれが見て来たフェーク(偽)ニュースを巡る論争はまさに「真実対プロパガンダ」の構図である。

そして、いまも論争は続いている。新大統領の就任まで5日を残すのみとなった。

非常に大きな変革に迫られている米国に関しては今後もこの種の議論が多くの論客によってさまざまな形で提出されることだろう。




参照:

1: U.S. Officials: Putin Personally Involved in U.S. Election Hack: By Information Clearing House / NBC NEWS, Dec/15/2016

2WikiLeaks Assange: Russia didn’t give us emails: By Euan McKirdy, CNN, Jan/05/2017

3US Intel Vets Dispute Russia Hacking Claims: Consortiumnews.com, Dec/13/2016

4The Real Face of Washington (and America) - Thank You, Donald Trump: By Tom Engelhardt, Information Clearing House - Tom Dispatch, Jan/03/2017