2014年12月27日土曜日

ウクライナ危機の深層 - 調査報道の先駆者、ロバート・パリーの見方


ウクライナを舞台にした米ロ間の地政学的な対立は何時の日にか核戦争に進展するかも知れない危険性を秘めている。これは多数の専門家がすでに指摘しているところである。 

核戦争の発端は、想像し得る一例を挙げると、米ロのどちらかの大統領の気まぐれな判断、もしくは、不十分な情報に基づいた意思決定によるものかも知れないし、核弾頭を装備したミサイルの発射基地に勤務する将校の現体制に対する不満が昂じたことによるものかも知れない。あるいは、核爆弾を搭載した爆撃機の偶発的な故障に起因したものかも知れない。たった一人の兵士、将校、あるいは、パイロットの偶発的な間違いによって核戦争を誘発してしまう可能性もある。米ロのどちら側にも起こり得ることだ。核大国同士の間でひとたび核戦争が始まった場合、途中でそれを止めることはできずに発射可能なミサイルのすべてを使い切るのではないだろうか。幸運にも核弾頭による直接の攻撃を受けなかったとしても、コンピュータを代表とするエレクトロ二クス・システムは破壊され、インフラは壊滅状態となり、遅かれ早かれ核の冬が到来し、食糧生産は不可能となる。文明は滅びるしかない。生命体は、バクテリアを除き、放射能によってすべてが絶滅してしまうだろう。フィクション映画が現実となる瞬間である。 

米国の対外政策はネオコンに牛耳られており、行きつくところまで拡大する。そして、最終的には破綻する。米国の対外政策はそんなパターンの繰り返しであるとの指摘がある [1]。その指摘によると、ネオコンの行動パターンは次のように説明される: 

彼らの計画のひとつがうまく行かなかった場合、彼らはより大きな、危険がより増大するような筋書きへと移行する。もしもパレスチナ人やレバノンのヒズボラが彼らを悩まし、イスラエルに頭痛の種を与えたとすると、彼らはそのスポンサーである国の「政権の打倒」を新たな目標にする。イラクやシリアならびにイランがその好例だ。もしもイラクにおける政権の打倒がうまく行かなかった場合は、彼らはシリアの政権を転覆しようとし、イランを破産させようとする…
ここに描かれたネオコンの思考パターンを考えると、ウクライナにおける米ロ間の衝突は際限なく大規模なものへと移行し、より危険性の高い方向へと展開する可能性があるのだ。 

この認識は単に厭世的な世界観を煽ろうとするものではなく、今日ウクライナを舞台にして核大国の米ロ間で展開されている情報戦争、金融戦争, あるいは、代理戦争が最終的に行きつくところはいったい何処かを考え、それを回避しようとする時、ウクライナ危機が潜在的に持つ究極的な危険性に触れないまま素通りすることはとてもできない。 

皆さんはどうお思いだろうか? 

発行されてからもう3か月以上にもなる記事ではあるが、米国における調査報道の先駆者的な存在であるロバート・パリーの記事 [2] が手元にある。ロシアを相手にした場合、危険極まりない核戦争の可能性があるにもかかわらず、「ウクライナを舞台にして、限りない危険性さえをも顧みない理由はいったい何なのか?」と多くの政治分析の専門家らが首をかしげている。その理由は天然ガスを手中に収めるためか、米ドルの優位性を防護するためか、あるいは、ネオコンの過激思想が過剰に発展した結果にあるのだろうか、とロバート・パリーの見方は展開する。 

この記事はわれわれ素人が持つ疑問の多くに答えてくれているように感じる。今日はそれを皆さんと共有したいと思う。
 

<引用開始>

最近、米国のベテラン外交官の一人が私にこう言った。「仮にロシアがウクライナや隣国のベラルーシの全域を占領したとしても、米国の国益に与える影響はゼロだ」と。もちろん、この外交官はそういった事態が起こることを擁護しようとして言ったわけではなく、現在進行しているワシントン政府の戦争ヒステリーは純粋な安全保障上の懸念を反映するものではなく、奇妙極まりない現実を現出している点を指摘しようとしたものだ。
つまり、高名な政府高官から始まって主要メデアの批評家たちに至るまで、ワシントンの著名人は揃いも揃って、ウクライナ紛争を契機にしてロシアと対抗することの必要性を主張するために、この一年間、どうしてあれ程多くの時間を注ぎ込んだのだろうか?完璧な程に回避することが可能でありながら、それでいてこの上なく危険性の高い危機的状況から利益を得るのはいったい誰だろうか?いったい何がこのような狂気を駆り立てているのだろうか?  


Photo-1: 20131213日、シェブロンがスポンサーとなって開催された会合にてウクライナや他の国々から参加した主要なビジネスマンたちを前にして講演する米国務省のヴィクトリア・ヌーランド欧州担当国務次官補

もちろん、ワシントンで広く受け入れられている通念は、米国はウクライナの国民のために「民主主義」の確立を願っているだけであり、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は1991年にソ連が崩壊した際に失った領土を回復するために帝国主義的な大計画の一部としてこの紛争を引き起こしたのだとしている。しかしながら、そのような「グループ思考」は綿密な究明にはとても耐えられるものではない。 [詳細についてはConsortiumnews.comに掲載のWho’s Telling the Big Lie on Ukraine?を参照されたい。]
ウクライナ危機はプーチンによって引き起こされたのではなく、EUが自分たちの影響圏を東方へ拡大する動きと米国のネオコンの陰謀によって引き起こされたのである。米国のネオコンは自分たちが「政権の交替」を目論んでいたふたつの国、シリアやイランにおいてバラク・オバマ大統領に協力してシリアとの抗争を回避させたプーチンに対しては怒りを募らせていたのだ。
もしも「民主主義の推進」が現実的な動機であったとしたならば、それを実現するには、明らかに、もっと遥かにうまい手法があった筈だ。民主的に選出されていたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領は、221日、欧州の3カ国からの代表と交わした合意書の中で自分が持っている権力の大部分を放棄し、総選挙を速やかに実施すると約束をした。選挙が行われた場合、状況によっては自分が大統領の座から追放される可能性さえも予見されたのだが。
しかし、222日、ネオナチの武装集団が大統領府を襲ったことからこの合意書は無視され、ヤヌコヴィッチ大統領や政府高官らは命からがら逃亡するしかなかった。米国は221日に締結された合意内容を支えようとはせず、米国務省はクーデターによって樹立された政権を「合法的な」政権であるとして速やかに承認した。米国の主流メデアはどうであったかと言うと、たとえば、ヤヌコヴィッチが建設中であった私邸には高価なサウナが備わっていると報道して、律義にもヤヌコヴィッチを悪者扱いしたのである。
クーデターを実行するに当たっては重要な成果を挙げたとして、ネオナチの功績が認められ、彼らは数人の閣僚の座を手中に収めた。彼らの主要な役割については、米国のすべてのニュース・メデアはわざとそれを避けて通り、速やかに忘却の彼方へと葬り去ってしまった。[詳細についてはConsortiumnews.comに掲載のUkraine’s ‘Dr. Strangelove’ Reality.を参照されたい。]
クーデター政権が遂行する残虐な「テロリスト掃討作戦」によってすでに数千人ものロシア語系住民が殺戮されており、混迷が深まるばかりのウクライナにおいては米国の国益はプーチンの帝国主義的な拡張をストップさせることにあるとか、ウクライナ国民のためには民主主義を確立しなければならないといった公式説明は、もはや、道理をわきまえる人にとってはそのまま呑みこむことはできない。
このような疑念があることから、核装備を持つロシアの国境で戦争を煽り立てることには計り知れない危険性があることから、多くの観察者はこの危機の背景に存在する戦略的な意味を見い出そうと試みている。たとえば、西側はウクライナの東部でシェール・ガスを採掘したい、あるいは、米国としては世界通貨としてのドルを防衛したい、といった推測だ。

核戦争?いったい誰が?
地球上のすべての生命を絶滅し得る核戦争を遂行するといった冒険を実行するにはその代価は余りにも大きく、そのような冒険をおかす動機は代価の大きさに対応するものでなければならないとする考えがある。この考えにはひとつの論理があるけれども、ウオール街の住民たちも含めて、すべての人類を滅亡させる危険性に対する対価とはいったいどれ程の経済的見返りを想定しなければならないのだろうか?結論付けることは困難である。
しかし、全面的な壊滅状態が出現するのを防ぐための冷静な判断が介入する前に多額の金をポケットに入れることができるのではないかとの想定の下に、時には、博打を打つ輩がいる。あるいは、より短期的な危険性としては、ウクライナ危機はユーロッパを三番底の景気後退に引きずり込み、それがさらには脆さを見せている米国経済を不安定化させるかも知れない。
ウクライナ危機においてもっとも誘惑にかられる考え方としては、モスクワは拡大するばかりの経済制裁に打ちのめされ、EUと米国のエネルギー関連勢力がウクライナ東部のエネルギー埋蔵地域をコントロール下に収めるにつれて、ロシアは後退するしかないだろうというものだ。フラッキングによる天然ガスの採掘は投資家にとっては大儲けになり、中欧や東欧に天然ガスを供給しているロシアの優位性を終焉させることに繋がる。この場合、経済的ならびに地政学的な見返りは非常に大きい。
米エネルギー情報局によると、ウクライナにはヨーロッパで三番目に大きなシェール・ガスが埋蔵されており、42兆立方フィートに達するという。英国やポーランド、フランスおよびブルガリアでは環境汚染の懸念からフラッキングに関しては根強い抵抗があることから、ウクライナでのフラッキングが米国の触手を動かした要因である。経済面ではすっかり無気力となっているウクライナとしては「ノー」とは言えない。 [詳細についてはConsortiumnews.comに掲載のBeneath the Ukraine Crisis: Shale Gas.を参照されたい。]
この「天然ガスの動機」をさらに支えたのは221日にジョー・バイデン米副大統領が要請した警察官のキエフ街頭からの引き上げであった。この動きがネオナチの武装集団に道を開き、米国支援のクーデターを可能にしたのである。そして、その3か月後、ウクライナで最大の天然ガス企業であるブリスマ・ホールデングはバイデン副大統領の息子、ハンター・バイデンを重役会のメンバーとして迎えた。
これは深刻な利害の不一致であるとして、一部の人たちにはかなりの衝撃を与えたかも知れない。しかし、政府内の倫理問題に関心を寄せる団体は、ヤヌコヴィッチを追い出したという事実に対して与えられたほぼ全面的な賞賛やキエフのクーデター政権に対する暖かい思い遣りを目の前にして、声を挙げることもなかった。
たとえば、ワシントンにある「責任と倫理のための市民」と称する団体の専務理事を務めるメラニー・スローンはハンター・バイデンの新しい職は眉をひそめざるを得ないとする立場を退けて、ロイター通信にこう言った。「父親が副大統領であるからと言って、息子のあんたはそんなことをしてはダメだとは必ずしも言えない」と。 

ブリスマの背後にはいったい誰が居るのか?
キプロスに本社を置く謎につつまれた企業であるブリスマ社は、程なく、ジョン・ケリー国務長官とのコネを持つロビイストをも戦列に加えた。ロビー活動に関する情報公開によると、ケリーが上院議員であった頃に選挙顧問団長を務めたデイビッド・ライターが含まれている。
タイム誌が報道しているように「ブリスマへのライターの関与は政治的に連携するアメリカ人たちの権力と直結したチームを完成させるものであって、このチームには民主党の纏め役で2004年の大統領選でジョン・ケリーの顧問を務めたデヴォン・アーチャーも含まれている。」 アーチャーとハンター・バイデンは両者ともケリーの義理の息子でプライベート・イクイテー・ファンドのローズモント・キャピタルを創立したクリストファー・ハインツとビジネス・パートナーとして一緒に働いたことがあった。」 
ウクライナの調査報道ジャーナリズムによると、ブリスマの所有者はプリヴァ銀行であり、同銀行は新興財閥のイホル・コロモイスキーのコントロール下にある。コロモイスキーはクーデター政権によってウクライナの中央南部に位置するドニエプロぺトロフスク州の知事に任命されている。コロモイスキーはウクライナ東部におけるロシア語系住民の殺害に従事している民兵組織に対する財政支援にも関与している。
さらには、エネルギー上の動機に関しては、忘れてはならないことがある。20131213日にシェブロンをスポンサーとする会議で、ヨーロッパを担当するヴィクトリア・ヌーランド米国務次官補はウクライナの「ヨーロッパに対する強い願望」のために米国はすでに50億ドルを費やしたと述べた。彼女はシェブロン社のロゴマークの側に立って話をした。
ワシントン当局のロシアとの対立では、詰まるところ、ウクライナ東部のロシア語を喋る少数派にはある種の自治権を与えるのか、それとも、断固として米国と友好関係を保つキエフ当局の支配下に置くのかに要約されるけれども、米当局が何故にこうも荒れ狂うのかを紐解こうとする際、彼らに付き物であるエネルギー源や何億ドルという資金の動きは明らかに重要な要素であろう。
それから、ロシアの国益の問題がある。国益を追求するために、ロシアは中国や他の国々との連携を深めている。そうすることによって米ドルの覇権から逃れようとしているのだ。この動きが功を奏して米ドルからの離脱に成功すると、それは米国の世界経済に対する優位性に深刻な脅威をもたらす。この考え方によると、国際的な通商のために他の通貨を使用するといった実験を中止させるには、米国やその同盟国はモスクワ政府を自分たちの地政学的野心の下に跪かせる必要がある。まさにロシアがイルツンの統治下にあった時のようにだ。
この論理の擁護者たちにはひとつの核心がある。ウオール街にとっては「強力なドル」を防護することがもっとも重要だ。世界の標準通貨としての米ドルが追い出されるかも知れないという金融上の大激変が米国の権力層に核大国のロシアとの間で度胸比べをさせたとしても、それ自体は容易に想定することが可能だ。
もちろん、NATOや米国の「軍産複合体」の予算上の関心も存在する。ワシントンの多くの「シンクタンク」は国家予算から活動資金を得ており、あらゆる宣伝の機会を捉えて、彼らは米国市民の間に「ロシアの脅威」に基づく恐怖の念を煽っている。
主要な国際紛争はどれを取ってみても複数の要因を含んでいることは自明の理である。2003年に行われたイラクへの侵攻の動機について振り返ってみよう。数多くの要因を挙げることができるが、それらの中にはデイック・チェイニー副大統領の原油に対する強い欲望やジョージ・W・ブッシュ大統領の父親に対する心理的なライバル意識、あるいは、イスラエルに敵意を抱いていると見られる国々に対しては「政権の転覆」の指揮をとりたいとするネオコンの執拗な関心、等が列挙される。[詳細についてはConsortiumnews.comに掲載のThe Mysterious Why of the Iraq War.”を参照されたし。]
プーチンを見下して彼を退けようとする理由は他にもある。上半身裸で乗馬している姿から始まって、同性愛者の人権に関する彼の逆行した政策に至るまで… しかしながら、彼はスターリンでもなく、間違いなくヒットラーでもない。

ネオコンの「サムソン的な選択肢」 
ウクライナを巡ってのロシアに対する瀬戸際政策の背景にある複数の動機を解析することは合理的なことだと判断されるが、この抗争の無謀さには、私の見るところ、価値体系の相違が感じられる。つまり、連中は自分たちの存在の核心となるより大きな視点を防護するためにはすべてをリスクに晒す用意があるのだ。
ウクライナ危機は中東におけるイスラエルの関心事に対するネオコンの執着心から生じた副産物であると私は以前から言っているが、これこそがその理由である。
ネオコンの中心人物たち、たとえば、ヌーランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員らは昨年の冬クーデターのど真ん中に自分の身を置いていたが、ネオコンにはもっとも重要な動機があった。つまり、1年前にシリア政府に対する米国による空爆を回避させ、さらには、イランの核開発プログラムの交渉では同プログラムを排除するのではなく制限することによってイランとの交渉を前進させたオバマ大統領とプーチン大統領との間の舞台裏での協力関係を彼らは破壊したかったのである。
オバマとプーチンとの間で実行されたこれらの外交的な構想はイスラエルの高官らが抱いていた願望を妨げ、ネオコンはこれらの国々での「政権の転覆」を画策するようになった。ベンジャミン・ネタニヤフ・イスラエル首相はイランの核施設を爆撃することは自国の存在のためには絶対に必要であるとさえ信じている。
さらには、オバマとプーチンの協力関係の進展は中東における米国の対外政策に関する主要な裁定者としてのイスラエルの強力な地位を奪いかねない危険性さえもあった。こうして、オバマとプーチンの関係は破壊され、ウクライナ危機はこの破壊工作のための完璧な起爆装置であったと言える。[詳細についてはConsortiumnews.com掲載のWhy Neocons Seek to Destabilize Russia.”を参照されたい。]
オバマは今やネオコンや他の強硬派の連中は如何にしてウクライナで自分を出し抜いたかをよく理解していると私は聞いているが、ワシントンの公式の政策としては彼は際限のないプーチン叩きに加わるしかないと感じており、これを受けて激怒したプーチンはもはやシリアやイランのような外交政策上の苦境においてさえも自分はもう頼りにされたくはないと言明するに至った。
この4月に私が書いたように、これは「ハエを呑みこんだおばんちゃん」訳注1という子供向けの歌を思い起こさせるが、これがネオコン流の物の考え方だ。彼らの計画のひとつがうまく行かなかった場合、彼らはより大きな、危険性がより増大するような筋書きへと移行する。もしもパレスチナ人やレバノンのヒズボラが彼らを悩まし、イスラエルに頭痛の種を与えたとすると、彼らはそのスポンサーである国の「政権の転覆」を新たな目標にする。イラクやシリアならびにイランがその好例である。もしもイラクにおける政権の転覆がうまく行かなかった場合、彼らはシリアの政権を転覆しようとし、イランを破産させようとする
[訳注1:この「ハエを呑みこんだおばんちゃん」という子供向けの歌について簡単に説明しておこう。この歌に登場するおばあちゃんはハエを呑み込んでしまった。そのハエが体の中を駆け回るので、ハエを退治するためにクモを呑みこむ。今度はハエとクモが体の中で駆け回っている。クモを退治するためには鳥を呑みこむ。こうして、だんだん大きな動物を呑みこんでいく。鳥の次には猫、猫の次は犬、山羊、牛、馬と続く。馬を呑みこんでからおばんちゃんは死んでしまった。]
バラク・オバマ大統領を大規模なシリア空爆を行うところにまで追い込み、さらにはこれに続いてイランに対する戦争を行うことを画策していた矢先に、プーチンが介入して来て、シリアは化学兵器の所有を放棄し、イランは核兵器プログラムに制約を加えることに同意したのである。このオバマとプーチンとの間の協調はネオコンにとってはまったく新しい脅威となった。これが何を意味するかと言えば、ネオコンの次の目標はウクライナだ。ウクライナはロシアのもっとも敏感な部分である。
ネオコンは選挙で選出されたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領に反抗する暴動を支援し、実際にクーデターを実現させるためにはネオナチの武装勢力さえをも使った。さらには、米国務省はクーデターで設立された暫定政権を速やかに承認した。また、暫定政権はヤヌコヴィッチの選挙基盤であるウクライナ東部や南部の多数の市民から公民権をはく奪した。
プーチンがロシア系少数派の利益を擁護するために介入し、クリミア自治共和国のロシアへの統合の要請(大急ぎで実施された住民投票では投票者の96%が賛成票を投じた)に応えると、ネオコンの目標はまたもや移行した。オバマとプーチンとの間に楔を打ち込むことに成功したにもかかわらず、ウクライナに関する画策はプーチンの抵抗に遭って、ネオコンの次の目標はロシアでの「政権の転覆」へと移行する。 
米国の主要メデアにいるネオコンの多くの友人たちは専制国家を誇りに思わせるような宣伝を集中砲火のように浴びせ、プーチンを執拗に悪者扱いし始める。反プーチンの「グループ思考」はほぼ完ぺきであって、事実が伴うとか伴わないとかには関係なく、如何なる批判であっても構わないのである。
しかし、「馬を呑みこんだおばあちゃん」という子供向けの歌とまったく同様に、潜在的にはロシアとの核による対決の危険を冒すことによって、ネオコンはこの子供の歌に描かれている限界を遥かに越してしまう。それはイスラエルの「サムソン的な選択肢」の国際バージョンにほぼ近いものとなった。自分たちがどんな対価を支払おうとも、自分たちの敵を排除するためには自己破滅的な行為である核兵器の使用さえもが取りざたされている。
この場合特に衝撃を覚える点は米国の官僚や主流メデアの中でほとんど皆がこの狂気じみた行動に賛成しているという現状だ。 

調査報道に専念するロバート・パリーは、1980年代、AP通信社やニューズウィーク誌上で数多くのイラン・コントラに関する記事を発表した。彼の最新の書籍「America’s Stolen Narrative」は通常本はこちらで、電子書籍はAmazonまたはbarnesandnoble.comから購入されたい。期間限定ではあるが、ブッシュ家と右翼との関係に関する三部作をたった34ドルで注文することも可能。この三部作には「America’s Stolen Narrative」が含まれている。詳細についてはこちらをクリックくされたい。
<引用終了> 

この論評は非常に興味深い。今年のウクライナ紛争と昨年夏のシリア空爆騒ぎとの繋がりを指摘している。主流メデアだけに頼っていると、ここまで掘り下げた情報にはとてもお目にかかることはできない。これこそが代替メデアに接することの最大の醍醐味であると言えよう。
著者が冒頭で米国のベテラン外交官の話を引用して、こう言った。「仮にロシアがウクライナや隣国のベラルーシの全域を占領したとしても、米国の国益に与える影響はゼロだ」と。
この外交官が言った言葉は米国政府や政府に追従する主流メデアの公式説明(すなわち、ロシアの最近の動きは旧ソ連邦の崩壊によって失った領土を取り戻すことにあるとする見方)とは大きく異なる。この外交官のウクライナ危機の見方は嘘に継ぐ嘘で固められた米政府の公式説明に慣らされてしまっているわれわれの耳にはとても新鮮に聞こえる。
このところ、今まで推進されたきた対ロ政策やプーチン叩きに関して西側の政治家の間や産業界では反省を促す論調が急速に増えている。特にドイツではその傾向が顕著だ。ドイツでは西側が課した対ロ経済制裁のブーメラン現象が現れ、ドイツ経済を疲弊させている。極めて深刻である。このような状況はロシア側が当初から予測していて、西側に伝えていた点ではあるのだが…
また、ネオコンの思考パターンとして、ひとつの外交政策が失敗した場合、より大きな政策、より危険性が増大するような方向へと移行するという指摘は非常に秀逸だ。この観点から最近の米国の対外政策の動きを見ると、まさにそのパターンが見えてくる。それだけに、ネオコンの思考パターンには米国の「核の優位性」とか「先制攻撃論」も含まれていることを思うと、最悪の場合は文明の絶滅にまで行き着いてしまうという究極の危険性を孕んでいる。
「米国の核の優位性」に関しては、今年の75日に「核戦争による人類の絶滅」と題するブログを掲載して、詳細を記述している。興味のある方はそのブログを覗いていただきたい。 

参照:
1Why Are Obama/NATO Stoking a Thermo-Nuclear War With Russia?: By libbyliberal, Sep/05/2014

2The Whys Behind the Ukraine Crisis: By Robert Parry, Consortiumnews.com, Sep/03/2014, consortiumnews.com/.../the-whys-behind-the-ukraine-c...

 

 

 

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