2014年3月30日日曜日

ドネツクの住民は英国に帰属するべきだ!


今日は肩の凝りを解きほぐしたいと思う。
325日、RTが非常に興味深い記事 [1] を配信した。これはクリミア共和国で316日に実施されたロシアへの併合に関する住民投票の結果を認めようとはしない米国やEUの反対を揶揄したものだ。ドネツクのボランテアーがオンラインで投票した結果だという。ドネツクはウクライナの東部に位置しており、ハリコフやドニエプロペトロフスクと並んでロシア系住民が多い都市だ。強烈な風刺になっている点が面白い。
しかし、政治的な混迷が深まるばかりで、親EU派と親ロシア派との間では何時暴力が爆発しても決して不思議ではないような状況が続いている中、こんなユーモアが現れたことは私にとっては実に意外だった。
政治的なユーモアやジョークは一般的に言ってその国の圧政の度合いが強ければ強いほど、巷では非常に風刺の効いたジョークが出現する。
たとえば、チャウシェスク政権が健在であった頃、街を歩く人たちにとってはこういった政治的ジョークが毎日の生活の知恵であったような気がする。国営テレビは特別に面白いわけではないし、当時はインターネットもDVDもゲームもなかった。そうしたジョークは多くの場合詠み人知らずだ。ごく普通の人たちが時には天才的なジョークを捻り出し、24時間も待たずにそのジョークは街中に広がったりする。ブレジネフが健在であった頃、モスクワ市民はまったく同様な状況にあったのではないか。ウクライナでも然りだっただろう。
この記事はそんな時代を彷彿とさせてくれた。

それでは、その記事を仮訳して、読者の皆さんのご批判あるいは気晴らしに供したいと思う。
 

♞   ♞   ♞

<引用開始> 


Photo-1: 英国の国旗を背景に共産主義を象徴するような図案を中心に配している。トップには「ドネツクは英国の町」と記し、下部には「女王陛下万歳!」と記している。
 
ウクライナの東部の都市、ドネツクの市民がウクライナから分離して英国に帰属するべきだとのオンラインの住民投票に投票した。もちろん、これはパロデーである。住民たちは自分たちの町はひとりの英国人の努力によって始まったことから、英国は是非ともこの「決定的な瞬間」を見逃さずに、ドネツクを取り込むべきだと書いた。
英国が自分たちの町を「再統合」するように訴え、「ドネツクは英国の町、女王陛下万歳!」と記した。これは地元のメデアからの報告である。この嘲笑じみた訴えは316日にクリミア自治共和国で投票され、ウクライナから分離し、ロシアへ帰属することになった住民投票を模したものだ。
英国との繋がりはドネツクでの最初の鉄工所がウェールズからやってきたジョン・ヒューズが19世紀の終わり頃に操業を開始したという事実にある。そんな史実に基づいて、この町はユゾフカあるいはヒューゾフカと呼ばれた。
「ジョン・ヒューズと彼の町に栄光あれ!」
「われわれはユゾフカの町が町の祖先の懐へ、つまり、英国へ返還されるよう住民投票の実施を求めたい!」と、この訴えは述べている。
「同胞の英国人よ、この決定的な瞬間を逃がすな!」と、訴え、住民たちに向けては「自分たちの子供は何処で住むべきか、何語を喋るべきか」について投票をするよう呼びかけた。
地方メデアによると、オンライン投票には7千人が応じてくれた。ところで、2012年の調査によるとドネツクの人口は95万人である。
日曜日の時点で、この投票では投票総数の61%が英国への編入に賛成し、16%の人たちは「英国の広域的な自治体」に賛成した。公用語は英語という条件だ。これはDonbass.uaからの報告である。
オンラインでの熱狂的な騒ぎはツイッターを鷲掴みにし、ツイッターの利用者たちは新しい世界秩序の到来を示唆する始末だ。
「多分、われわれはこの世界を手中に収め、世界を再分割するべきかも」と、下記のツイートは述べている。
ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が2月に追い出された後、ドネツクはクーデターによって設立されたキエフ政権に抵抗する反対運動ですっかり拘束された状態にある。何千人ものデモ参加者は住民投票の実施を訴え、ウクライナの新政権を認めることを拒んだクリミアがそうしたように、ドネツク地域の将来を決めたいとしている。
クリミアの住民投票では投票総数の96%がクリミア自治共和国のロシアへの編入に賛成した。ロシアはこのクリミアの統合を先週受け入れた。

<引用終了>
 

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この記事の最後には読者からのコメントが掲載されている。鋭い観察眼をもったコメントもあれば、軽く受け流すコメントもあって、実にさまざまだ。また、コメントの提供者の間では口論となることもある。コメント欄は英語で書かれているので、コメントへの参加者は英語国民や英語を操ることができる他の国の人たちである。コメント提供者の名前を見ればどこの国の人かを推測できる例も少なくはないように思える。
このコメント欄はわれわれと同じような一般大衆がウクライナでの出来事についてどのように感じているのかを知る上で非常に有用ではないかと思う次第だ。
コメントは、まずコメント提供者の名前とコメントの日時が表示され、コメントの内容が掲載される。それでは、一番古いコメントから順を追って下記に示してみよう。
 

<引用開始>

コメント総数:35
 
Dimitri 25.03.2014 16:22
これは面白くなって来そうだ。ニュースがこんなにも興味深いことってあっただろうか… 

Roo Ben 25.03.2014 16:24
気にするなよ。われわれの政府も同様に最低だよ! 

Mr Spock 25.03.2014 16:24
人間は驚くべき才能を持っている。それは自分たちが選択したことにはすっかり心酔する能力だ。さらには、痛みを伴うことは考えないことにする能力さえも。 

IE22 25.03.2014 16:26
「英国」は違法国家だ。スコットランドが英国の支配から脱しようとする住民投票が行われる今年の終わり頃にはもう存在してはいない可能性がある。
とは言え、英国への編入には幸運を祈っている! 

MPX 25.03.2014 16:30
思うに、ウクライナでの騒乱は西側諸国が仕掛けたものであることから、彼らは「ドネツクが英国に統合されることは極めて合法的だ」と言うだろうな。その一方、「クリミアがロシアに統合されることは違法だ」と… 

Kaya 25.03.2014 16:30
ドネツクの住民は薬をやっているのかい、ハ、ハ、ハ :)  

Z Aquarius 25.03.2014 16:30
ドネツクシャー [訳注:「シャー」は英国の州の意]
クイーンスキー万歳? [訳注:女王陛下という単語に「スキー」という接尾語を加えて、ロシア語の響きを与えたもの]
ウクライナの連中よ、ヤツ
ニュックの頭へ弾丸をぶち込め!それですべてが終わりだ。

seb o 25.03.2014 16:32
新しい国を確立するための世界規模での住民投票は一体何時になるのだろうか。新国家では、人種偏見がなく、汚職もなく、住民は働くことに精を出し、隣人や友人あるいは同僚たちと談笑し、他の多くの人たちが何とか生きようとしているのをよそに一握りの連中が突拍子もなく多くの利益にあずかるような社会に代わって誰もが平等に繁栄するんだ。
いったい何時になったら? 

Roo Ben 25.03.2014 16:33
seb o 25.03.2014 16:32 (新しい国を確立するための世界規模での住民投票は何時になるのだろうか。この新国家では、人種偏見がなく、汚職もなく、住民は働くことに精を出し、隣人や友人あるいは同僚たちと談笑し、他の多くの人たちが何とか生きようとしているのをよそに一握りの連中が突拍子もなく多くの利益にあずかるような社会に代わって誰もが平等に繁栄するんだ。いったい何時になったら?)について:
俺も参加したいけど、何処へ行ったら申し込めるの? 

peter snow 25.03.2014 16:34
アングロ・サクソン人は1066年にノルマン人に征服され、船に乗って英国を離れ、東ローマ帝国へ行った。当時の東ローマ帝国の皇帝を警護するエリート部隊は主にアングロ・サクソンだった。多くの連中が皇帝の警護から退役した後はクリミア半島に居を定めた。それを考えると、クリミアは英領だとも言える!:) 

litlespark 25.03.2014 16:34
このニュースを聞いて、すっかり緊張病状態に陥ってしまった。挑発そのものだよ。 

Agromnoy 25.03.2014 16:41
当たり前じゃないか。英国なんて忘れてしまえよ。彼らは何時も道路の反対側を走行するんだから。 

NathanE. 25.03.2014 16:42
たったひとりのウェールズからやって来た企業家をロシアとウクライナとの間にある千年もの長い歴史と比較するなんて馬鹿らしいにも程があるぞ。 

Alexander Vi Britannia 25.03.2014 16:42
国営のプロパガンダ局であるロシア・トデイ、つまり、RTにはこれがクリミアの住民投票を妨害する国際法に対する鋭いジャブであることを理解して欲しい。これによって、英国が悪者に見えるわけでもなく、これはロシア・トデイが無知であることを曝け出すだけだよ。 

Allen 25.03.2014 16:45
われわれは右側を走り、あんたたちは間違った側を走る。
正しい右側が正当であって、左側を正当だとするのは間違いであることを理解しよう。
 

Allen 25.03.2014 16:46
NathanE. 25.03.2014 16:42 (たったひとりのウェールズからやって来た企業家をロシアとウクライナとの間にある千年もの長い歴史と比較するなんて馬鹿らしいにも程がある。)について:
あんたたちはそれよりも立派に街を築くことなんてとてもできなかったじゃないか。

Allen 25.03.2014 16:47
Alexander Vi Britannia 25.03.2014 16:42 (国営のプロパガンダ局であるロシア・トデイ、つまり、RTにはこれがクリミアの住民投票を妨害する国際法に対する鋭いジャブであることを理解して欲しい。これによって、英国が悪者に見えるわけでもなく、これはロシア・トデイが無知であることを曝け出すだけだ。)について:
でも、これは住民が投票をしたんだ。あれは自由で公平な住民投票だった。 

NathanE. 25.03.2014 16:47
Alexander Vi Britannia 25.03.2014 16:42 (国営のプロパガンダ局であるロシア・トデイ、つまり、RTにはこれがクリミアの住民投票を妨害する国際法に対する鋭いジャブであることを理解して欲しい。これによって、英国が悪者に見えるわけでもなく、これはロシア・トデイが無知であることを曝け出すだけだ。)について:
何時ものように間違った側に回って言えば、これはひどく貧弱なジョークだ。町を築いたひとりのウェールズ人を引き合いに出すことによって何百万もの人たちが持っている千年にも及ぶロシアとの繋がりを小ばかにしようという考えはむしろ無知そのものではないか。気のきいた風刺とは言えないな。 

Trinity 25.03.2014 16:47
Alexander Vi Britannia 25.03.2014 16:42 (国営のプロパガンダ局であるロシア・トデイ、つまり、RTにはこれがクリミアの住民投票を妨害する国際法に対する鋭いジャブであることを理解して欲しい。これによって、英国が悪者に見えるわけでもなく、これはロシア・トデイが無知であることを曝け出すだけだ。)について:
あれは住民投票のパロデーとして掲載され、明らかに鋭いジャブとしても十分用をなしている。 

Steven 25.03.2014 16:56
連中は英国へ編入したいとは言っているが、とりたててウェールズへ編入したいというわけではないようだ。でも、彼らを責めるわけにはいかないな。ウェールズのことを聞いたことがあれば、ウェールズがどんなに素晴らしいかは誰でも知っている。 

paradigm-respawn 25.03.2014 16:59
ユーモアは下らない政治家に対してはもっとも強力な武器になると思う。
もし1936年に世界中がヒットラーを笑い飛ばしていたら、ネタニヤフは石を投げるパレスチナの子供たちを殺戮するようなことはしなかったに違いない。


Monte 25.03.2014 16:59
このオンライン投票には、多分、少数派だけが投票したんだろう。だから、これはキエフ政府に対する抗議ではあっても、民族主義の名を借りて個人の人権や自由を抑圧するそれ以外の連中には当てはまりそうもないな。 

RockyRacoon 25.03.2014 17:00
95万人のうちでたった7千人が投票したということは、これは単に冗談好きの冗談でしかないのではないか。連中はこれが如何に奇妙であるかを理解してはいないようだ。ロシアに編入したい市民が一体どれだけいるのかを調べる真面目な調査を実施し、その結果を見るがいい。 

mega-fidel 25.03.2014 17:00
Alexander Vi Britannia 25.03.2014 16:42 (国営のプロパガンダ局であるロシア・トデイ、つまり、RTにはこれがクリミアの住民投票を妨害する国際法に対する鋭いジャブであることを理解して欲しい。これによって、英国が悪者に見えるわけでもなく、これはロシア・トデイが無知であることを曝け出すだけだ。)について:
俺もそう思うよ。国営のBBCやカナダのCBCはこれをあたかも本当の話のように放映している。能無し!


Fred 25.03.2014 17:02
馬鹿馬鹿しい。どうしてこのようなナンセンスがRTで掲載されるのだろうか!  

Henry 25.03.2014 17:03
ロシア人が古くから受け継いでいるのは実に愉快な国民魂にある。連中は笑い飛ばすことが好きなんだ。考えてもみたまえ。経済制裁は終わってはいないんだよ。それなのに、連中はまたもや可笑しな話を持ち出してきた。実は、ジャーナリズム精神と均衡のとれたこのような娯楽こそ私がRTのサイトを毎日のように訪れる理由なんだ。 

Peter Bugarchich 25.03.2014 17:06

Allen 25.03.2014 16:45 (われわれは右側を走り、あんたたちは間違った側を走る。
正しい右側が正当であって、左側を正当だとするのは間違いであることを理解しよう。)について:
ならびに、
RockyRacoon 25.03.2014 17:00 (95万人のうちでたった7千人が投票したということは、これは単に冗談好きの冗談でしかないのではないか。連中はこれが如何に奇妙であるかを理解していないようだ。ロシアに編入したい市民が一体どれだけいるのかを調べる真面目な調査を実施し、その結果を見るがいい。)について:
他に見られる如何なる変化とも同じように、物事の始めは緩慢そのものだ。ウクライナにインターネットが無かった場合を想像してみて欲しい(ヤッツや他の連中は聞いてはいないだろうな!)。このような出来事が起こったということは量を物語っている。キエフ政府のナチのレーダーの下をうまくかいくぐって来ているようだな。第一に、キエフの連中はそれほどスマートというわけじゃないんだ。ユリアを釈放するために彼女にはドルをたんまりと払わせることもできただろうに。しかし、どうだったと思う?念頭にも浮かばなかったようだ。バカ者どもめ!
今は、ロシアに関して現実的な仕事をして欲しい。でも、それさえも、キエフ政府のバカ者どもは無視してしまうんだろうな。
ウクライナには極右派がお似合いだ… 

bruce-wayne 25.03.2014 17:08
コメントする気にもなれない。 

bolshevik jew2 25.03.2014 17:09
これは単なる冗談だよ。われわれは小休止でも何でも笑いのネタにしてしまうのさ。 

mega-fidel 25.03.2014 17:11
Henry 25.03.2014 17:03(ロシア人が古くから受け継いでいるのは実に愉快な国民魂にある。連中は笑い飛ばすことが好きなんだ。考えてもみたまえ。経済制裁は終わってはいないんだよ。それなのに、連中はまたもや可笑しな話を持ち出してきた。ジャーナリズム精神と均衡のとれたこのような娯楽こそ私がRTのサイトを毎日のように訪れる理由なんだ。)について:
ハンク、気をつけなよ。あそこにいる変人たちはあんたを金を貰っているロシアのおとりだと決めつけるかも。  

mega-fidel 25.03.2014 17:12
bruce-wayne 25.03.2014 17:08(コメントする気にもなれない。)について:
フ~。でも、あんたはもしかして… まあ、気にするなよ。 

Michael Dunham 25.03.2014 17:13
mega-fidel 25.03.2014 17:00(俺もそう思うよ。国営のBBCやカナダのCBCはこれをあたかも本当の話のように放映している。能無し!)について:
それは事実かい?多分、あんたの英語の理解力が足りないからじゃあないのかい。おふざけのキャンペーンってどういう意味だかあんたは知っているよね?

Mike Littlefield 25.03.2014 17:15
奴らは世界でも「もっとも偉大な」国への編入を考えもしなかった。そのような場合、いったい誰がこのことを真面目に受け止めてくれるんだろうか?  

Michael Dunham 25.03.2014 17:16
これはクリミアで実施された住民投票とまったく同じ重さを持っている。

<引用終了>


参照:

1Donetsk is British? Ukrainians vote in mock referendum to join UK: By RT, Mar/25/2014, http://on.rt.com/zpo6bf

 

 

2014年3月20日木曜日

クリミアでの国民投票は本当に非合法なのか


米国とEU316日にクリミア自治共和国で実施された国民投票は非合法であると喧伝している。
その一方、ロシアのプーチン大統領は国際法に準拠したものであって、合法的な行為だと主張している。
われわれ素人にとっては、どちらの主張が正しいのかはなかなか分からない。しかしながら、少なくとも今までの国際政治において米露の主張が分かれた場合どちらがより正しいかと言えば、それはロシアの言い分だと言えるのではないか。そして、たとえロシアの言い分が正しくても、国際政治の流れは、ほとんどの場合、良い悪いは別にして依然として米国の考えに沿うのが常だ。
米国の国際政治における主張の特徴は、自国の国益に合った筋書き以外はすべてが違法だと言い張る点にある。これを「例外主義」と自ら称している程だ。
今回のクリミアでの国民投票が合法か非合法かの議論では、米国やEUのメデアを読んでいるだけではその根拠が何も分からない。「非合法だ」、「非合法だ」と言うだけであって、何故非合法なのかを掘り下げて丁寧に説明した記事はほとんど見当たらないのが現状だ。少なくとも、私個人にはそのように見えるのだ。
そこへ、今日(319日)、格好の記事 [1] が目についた。過去の国際政治が示す所謂状況証拠だけで米国やEUの主張を退け、ロシアの主張に賛同してしまうことはいかにも簡単だ。しかし、21世紀の市民のひとりとしては、表面的に決めつけてしまうのではなく、専門家は果たしてどのような考えを持っているのかを自分の目で確かめておきたいと思う。その後で、クリミアの国民投票が合法なのか、それとも、非合法なのかを個人個人が決めればいいだけの話だ。

それでは、その記事の仮訳を下記に示し、読者の皆さんと情報を共有したいと思う。
 

<引用開始>
EUはクリミアの国民投票を非合法だと決めつけて、EU自身が「少数独裁的」であり「反民主主義的」であることを露呈した。これはInstitute of Democracy and Cooperation [訳注:文字通りに訳せば、「民主主義・協力研究所」とでも言おうか。これはロシアのシンクタンクのひとつ]のジョン・ラフランドがRTに語った言葉である。さらに、ロシアに対してさらに多くの制裁を行うと西側の経済が疲弊するだけだ、とも付け加えた。
RT: 西側諸国は国民投票ならびにクリミアのロシアへの再統合は非合法的だとして非難しました。彼らはいったい正しいのでしょうか?あなたは彼らの主張に賛成ですか、それとも、反対ですか?
ジョン・ラフランド(JL): 私はあの主張にはまったく反対です。彼らの偽善振りには息を呑むばかりです。多くのヨーロッパ人はあのような偽善の下で物事を判断しているのではないかと思います。本件に関してさまざまな新聞のインターネット・サイトでのコメントを覗いてみますと、ダブル・スタンダードが未解決のまま放置されているという事実を大多数のヨーロッパの人たちが理解しています。「私は反対だ」と強く主張する理由は、EUは昨日(318日)この日曜日に実施された国民投票を受けて、国民投票は非合法であるとして非難したからです。EUが非難したことによって、EUはEU自身が持つひどく反民主主義的な性格を露わにしました。何故かと言いますと、国民投票はまず第一に民主主義体制においては非常に合法的な行為です。二番目には、ウクライナ憲法の第138条はクリミア自治共和国が地域的な国民投票を実施することができると規定しています [訳注:ウクライナ憲法を調べてみると、第138条の第2項目にはっきりと規定されている] 。つまり、クリミアのウクライナからの分離についてではなく、EUが、むしろ、国民投票そのものを非難したという事実は、EUが少数独裁的で反民主主義的な素顔を露わにしたと言えます。分離は、もちろん、厳密に言いますと、非合法です。ひとつの州が国家から分離しますと、領土の一部の分離によってその国家の法的構造が破壊されます。そういった状況が分離の定義です。分離は非合法だと言うことは当たり前のことです。ウクライナの法律の観点からは、明らかに非合法です。しかし、このことは、まさに、世界の歴史上に見られる分離を振り返ってみますと、ほとんどすべての分離は非合法であったということを意味しています。1776年の大英帝国からの独立宣言も、同様に、その意味からは非合法だったのです。
RT: プーチン大統領は今日(319日)の演説で西側が作り出したコソボの事例に言及しました。あの比較は適切であると思いますか?
JL: まったく正当だと思います。これは前例があるとかないとかの問題ではなく、法理の原則としては、法の侵害は前例とはなり得ません。これはローマ法においては非常に重要な原則です。私自身も含めて、多くの専門家たちはコソボの2008年の独立宣言はそれ自体が国際法違反であると考えています。何故かと言いますと、それ以前に国連安保理の決議があって、それによるとコソボはユーゴスラビア連邦の一部であるからです。しかしながら、2008年の宣言以降、国際法の立場が国際司法裁判所が示した裁定によって明確化されました。このことをプーチン大統領は非常に正確に引用したのです。国際司法裁判所は国際法に関連する事項についての最終的な調停者です。セルビアは国際司法裁判所の意見を求めたのです。セルビアにとっては不幸にも、判事たちはセルビアの期待に反する裁定を下し、独立宣言は合法だとしました。そして、もっと一般論的に言いますと、歴史的に見て、さまざまな独立宣言がありますが、それらは決して国際法と矛盾するものではないと裁定したのです。そして、国際司法裁判所はさらに先へ踏み出しました。20世紀の独立宣言は民族自決の名において国際法と両立するものであって国際法によって支持もされている、と彼らは述べました。したがって、これは単に2008年にコソボが独立したという事実に止まるだけではなく、法律的な観点からもっと重要なことは、上述のように、2010年の国際司法裁判所の裁定をプーチン大統領が正当に引用したという点です。
RT: 西側諸国やロシアの人たちは誰もがクリミアの再統合を予期しているようですし、課された制裁はその範囲が限られているようです。後戻りはあり得ないとは思いますが、ロシアに対してさらに制裁を加えることに西側は何らかの論点を見出せるのでしょうか?何か利点はあるのでしょうか?
JL: 彼らは多くを失うでしょう。ロシアは応酬すると思います。その応酬がさらなる応酬を呼ぶことになるのかどうか、また、両者はどこまで突き進む用意があるのかを私たちは見極める必要があるでしょう。将来を予測することは非常に難しいと言わざるを得ません。ウクライナの国内状況は非常に流動的です。東部やオデッサではこれからどのように展開するのかはまったく分かりません。キエフの政権がどれだけ持ちこたえるかについてもまったく予測できません。つまり、何がこれから起こるのかは何とも言えない状況です。基本的には、二通りのシナリオが考えられます。報復のための制裁措置や高まるばかりの敵意、あるいは、ウクライナ国内における暴力行為や不安定さによって東西間の関係が極めて悪化することが考えられます。これは容易に起こり得るシナリオです。また、別の可能性もあります。それは西側が、それを認めることもなく、多かれ少なかれ既成事実を受け入れるというシナリオです。結局、多くの人たちが述べているように、制裁措置は極めて象徴的なものです。事実、冗談みたいなものだと言ってもいいでしょう。誰も真剣に受け取ってはいないのです。フランスは、たとえば、ロシアへの空母の納入は継続すると言っています。2015年中に、クリミアの軍港であるセバストーポリという名前を持った二艘目の空母を納入する予定になっているのです。当面、制裁措置は非常に小さなものばかりです。したがって、ふたつ目のシナリオとしては、1974年にトルコがキプロスの北半分を非公式に、しかしながら、実質的に吸収した時にトルコが受けた制裁措置と比べても、ロシアに対する制裁が極端に大きくなることはないでしょう。今クリミアで起こっていることと同じような理由である国が他国の領土を併合した、あるいは、実質的に統合した例はたくさんあるという事実を忘れないようにしましょう。
<引用終了> 

かなり専門的な説明だったと思う。国際司法裁判所の見解が詳しく説明されており、プーチン大統領の主張が法理的にも極めて合理的なものであるということが分かった。歴史を振り返ると、米国の大英帝国から独立したのも非合法的なものであったという指摘もまた秀逸だ。
ここに引用した記事の内容によって、私個人としてはクリミアの国民投票は合法的なものであると理解した。また、クリミアがウクライナから分離すること自体も近世の歴史を見ると、民族自決の原則に基づいて受け入れざるを得ないと言えよう。これらを認めないと言えば、それは民族自決を推奨し、民主主義を標榜する米国やEU諸国にとっては政治的には非常に不健全な立場をとることになると言える。
ひとときの熱気を冷まして、冷静な判断を行い、健全な国際関係に少しでも早く戻って欲しいと願うばかりだ。 

 
参照:

1'EU showed its oligarchic face by condemning the Crimean referendum': By RT, Mar/19/2014, http://on.rt.com/ddrp2w