2014年8月24日日曜日

ウクライナ紛争の本質は石油利権だ - ブレジンスキー戦略の背景

ウクライナ紛争の背景を論じる評論は多かれ少なかれズビグニューブレジンスキーが1997年に発刊した書籍(The Grand Chessboard)で提案した戦略を言及することが多い。

彼はこう書いている:「ウクライナはユーラシアを巡るチェス・ゲームにおいて新たに登場するが、非常に重要である。同国を独立した国として維持することがロシアの対応を変化させることになり、地政学的には状況を逆転させる機能を持つ。ウクライナを抜きにしては、ロシアのユーラシア帝国としての存在は終りを告げるしかない。」
ウクライナでは、この2月、選挙で選出された政権がクーデターによって倒され、それに代わって新政府が樹立された。この新政権では米国が指名した人物が首相の地位に就いた。米国が国益を追求する時手段を選ばない。今回のウクライナでの新政権の樹立には極右派あるいはネオナチの活動家を使った。2月の下旬、キエフの街頭では反政府デモの参加者ばかりではなく警察官が狙撃され、双方に多数の死者が出た。その時、発砲をしたのは政府側ではなくて、デモを組織し、その指揮をとっていた反政府側によるものであることが判明している。
シリアでは、アサド政権を倒そうとして米国やサウジアラビアならびに西欧はアラブ過激派に武器や資金を注ぎ込んだ。911同時多発テロ後に始まった対テロ戦争ではアルカイダの組織がであった。しかし、シリアのアサド政権を倒そうとする米国と西側諸国はアルカイダの一派を使った。
一方、ウクライナではアルカイダの代わりに極右派やネオナチの活動家を使った。そして、今も、彼らを使っている。
ウクライナ南東部の反政府派を鎮圧するためにウクライナ政府軍と並んで特殊部隊が投入されている。地元の人たちの報告によると、無線や地上で聞こえる言葉としてウクライナ語やロシア語ばかりではなく、英語が聞こえてくるそうだ。この英語を話す連中は何処からやって来たのだろうか?言うまでもなく、米国が背後から操っているのだと言えよう。
何故米国はウクライナへの執着を持ち続けるのか?
もっとも説得力のある説明は米国の覇権を維持するためである。経済的に、あるいは、国際政治の舞台で新たに台頭しつつあるロシアや中国は世界を相手に覇権を維持したい米国にとっては邪魔な存在であるのだ。
ウクライナ危機を巡っては様々な見方や分析あるいは解説が行われている。このブログではそれらをご紹介してきたが、それらの背景にある大きな構図としては、米国による一極支配、つまり、世界に対する揺るぎない覇権を維持するためにウクライナに親米傀儡政権を築き、それを足掛かりとして米国はロシアを弱体化させようとしていることが明確に読み取れる。
ひとつの記事がこの5月の始めに現れた [1]。今日はそれを引用したいと思う。同記事は「ウクライナ紛争の本質は石油利権に尽きる。それはブレジンスキーがかって述べた戦略を踏襲したものだ」と解説している。
それでは、同記事を仮訳して、その詳細を皆で共有したいと思う。 

<引用開始>
ステーブン・キンザー [訳注:米国の作家であり、ジャーナリストであり、また研究者としても知られている。新著に『政権転覆:ハワイからイラクまで「体制転換」のアメリカ百年史』がある(2006年)] の弁: 「米国はウクライナの崩壊において全面的なパートナーとしての役割を担った」 - ボストン・グローブ紙
1991年に旧ソ連邦が崩壊した時点から、米国はロシアの包囲を執拗に推進してきた。この動きは仮想敵国としての中国やイランに対する動きと同様である。かってはモスクワ政府の盟友であった中欧の12か国をNATOに加盟させた。米軍は今やロシアの国境線に直接接している… このウクライナ危機は部分的には冷戦以降米国がロシアに対して採用し、政策として採用してきたゼロ・サム・ゲームがもたらしたものだ。その根本思想は、ロシアの損失は何でも米国の勝利に繋がり、ロシアにとって有利なことは米国にとってはすべてが不利になるという考え方にある。これは対立を深めるばかりであって、決して鎮静化する動きにはならない。」 
ミュンヘン安全保障政策会議でのウラジミール・プーチン大統領の弁(20072月):
『われわれはロシアのヨーロッパ寄りの地域にあった重火器を撤去して、それらをウラル山脈の裏側に移設した。そして、30万人の武装兵力を削減した。われわれの側はヨーロッパにおける「適合通常兵力条約」(Adapted Conventional Armed Forces TreatyACAF)によって要求されている他の幾つかの段階もこなしてきた。しかし、それに対応するヨーロッパ側の施策としてわれわれが見たものは何だったのだろうか?東欧は新兵器を受け取り、新たにふたつの基地がルーマニアとブルガリアに設置された。また、ふたつのミサイル関連施設が建設されている。そのひとつはチェコ共和国のレーダー施設、もうひとつはポーランドのミサイル発射装置だ。われわれは「いったい何事が起こっているんだ?」と自問する。ロシアは軍備を一方的に削減している。われわれが自分たちの側から軍備を縮小した場合、われわれは、当然のことながら、われわれのパートナーの側もヨーロッパにおいて同じことを前向きに実施する様子を見たい。ところが、ヨーロッパには新たな兵器システムが投入されている。もちろん、われわれとしてはこのことを憂慮せざるを得ない。』
ファシストが主導するクーデターに対して支援をするというオバマ政権の論拠は水曜日にはもろくも崩れた。その日、EUの外相であるキャサリン・アシュトンとエストニアのウルマス・パエト外相との間の電話による会話が不正侵入され、その内容がリークされた。「キエフのマイダン広場で反政府デモの参加者に向けて発砲した狙撃者はヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領の側に属しているのではなくて、反政府デモの指導者の側に属している」ということが分かった。この新事実の発見が如何に重要であるかは論を待たない。何故かと言うと、オバマ政権は新たな替え玉の政府を支持する理由として反政府デモの参加者の殺戮を挙げているからだ。今や、新政府のメンバーは無実の市民を殺害する行為に関与していたのかも知れないということになった。この新たな情報はオバマ大統領はキエフでのクーデターを起こした連中に対する支援をやむを得ず撤回することに繋がるかも知れない。そうすると、ロシアをクリミアから撤退させるというオバマ政権の計画やNATOをウクライナにまで拡張するという計画は頓挫する。下記にRussia Today 紙の記事を簡単に記してみよう:
エストニアの外相は彼がEU外相と交わした電話の内容は正しいということを確認した。ウルマス・パエト外相はキエフでデモの参加者や警察官を殺害した狙撃者はマイダン広場のデモ指導者に雇われていたと述べている。 
その会話では、パエト外相は「背後から狙撃者を操っていたのはヤヌコヴィッチ大統領ではなく、新たに生まれた連合勢力の誰かであるという現状認識が強まるばかりだ」と強調した。
エストニア外務省はそのウェブサイトに声明を掲載し、パエト外相とアシュトンEU外相との間の電話内容がリークされたが、そこに記録された内容は「信頼の置けるものだ」と述べた。 (Russia Today紙のEstonian Foreign Ministry confirms authenticity of leaked call on Kiev snipersを参照)
本当であるという信念の下に、英国のガーデアン紙は基本的な事実関係を網羅する記事を報道したが、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストならびに主要なテレビ局はまったく何も報道しなかった。米国のエリート・メデアはオバマ政権ならびにその盟友である欧州諸国が民主的に選出された政権を転覆させるために市民の殺害に直接関与した極右勢力を支援していることを一般大衆の関心から隠そうとして連携し、ニュースを隠ぺいしたのである。同記事からさらに引用してみよう: 
「…背後から狙撃者を操っていたのはヤヌコヴィッチ大統領ではなく、新たに生まれた連合勢力の誰かであるという現状認識が強まるばかりだ」と、パエト外相は言う。「同一の筆跡や同種の弾丸。そして、実に厄介なことには、彼らは、つまり、新連合政権は何が実際に起こったのかを究明しようともしない点だ。」(ガーデアン紙のUkraine crisis: bugged call reveals conspiracy theory about Kiev snipersを参照)
調査は行われないだろう。何故かと言うと、調査を実施すると真実が暴露されて、キエフに傀儡政権を樹立しようとしているオバマ政権の計画を台無しにすることになりかねないからだ。キエフ新政権はすでにワシントンの意図に従うことを意思表示している。具体的に言うと、ウクライナの労働者たちには窮乏政策を課し、さらに強力な搾取者であるIMFを通じて公債の所有者であるベルリンやブリュッセルの大金持ちへ利益をもたらし、ベルリンの壁が崩壊した後に父ブッシュがロシア側と交わしていた合意に違反してロシアの国境にまでNATO組織を拡張し、「新世界秩序」を妄想するズビグニューブレジンスキーが書いた書籍「グランド・チェスボード」に記載された世界規模の覇権を追求することがその意図である。これらが今日の政策の主要目標であり、これらには不正行為や犯罪行為がついてまわることになる。
電話の盗聴という決定的な証拠が暴露されたが、あれはちょうど米国高官が東ヨーロッパでの軍事的影響力を拡大する積りであることを明らかにする数時間前のことだった。ワールド・ソーシャリストのウェブサイトによると、こうだ: 
「チャック・ヘーゲル国防長官は、ペンタゴンはポーランドでNATO軍の共同訓練を行い、バルト諸国ではNATO空軍によるパトロールを強化する。…米軍の高官は6機のF-15 戦闘機とKC-135 輸送機を配備したと述べた… 誘導ミサイル・フリゲート艦テイラーはソチ・オリンピックの期間中黒海の海域をパトロールしていたが、その後、今も、トルコの黒海の港に係留されている… 
トルコの高官は、トルコは米国海軍の軍艦がボスポラス海峡を通過し、ウクライナと接する黒海に入ることに対して許可を与えた事実を認めた。(ワールド・ソーシャリスト・ウェブサイトの(“Amid Ukraine crisis, US launches military escalation in Eastern Europe”から)
また、Russia Todayの報告によると、米海軍の誘導ミサイル駆逐艦トラクストンは黒海に向かっており、その目的は、ある高官によると、「日常的な」展開に過ぎないと言う… 同駆逐艦には約300名が配されており、2月中旬に米国を出航した空母を中心とした空爆グループのメンバーである。(RT紙の“US navy confirms missile destroyer USS Truxton approaching the Black Sea”から)
「日常的な展開」だって?ロシアとの戦争を誘発することが「日常的」な行動だとでも?この余りにも控えめな言い方については良く議論しようではないか。
核戦力を保有する二大強国の間で緊張が高まる中で軍事的激化が起こっており、これは相互不信を増大させている。ヘーゲルの展開はオバマ政権の思想的なボスであるズビグニューブレジンスキーが何日か前にワシントン・ポストの紙上で述べたモスクワを敵にまわす提案に符合している。「何をするべきか?ウクライナにおけるプーチンの侵略に対しては対応が必要だ」と題した記事でブレジンスキーが言いたかったことはこうだ: 
…西側は素早くウクライナの新政権を正当なものだと認めるべきだ。新政権の合法性がうやむやのままに放置されていると、プーチンにクリミアで見せたロシアのおかしな動きを繰り返させるようなものだ…
…西側は次のことを伝えるべきだ。つまり、自国の防衛能力を強化するためにウクライナは西側からの迅速、かつ、直接の支援を頼りにすることができるという点をだ。プーチンの念頭にはウクライナへの侵略は長期にわたって費用がかさむ状況になるということに関して疑念の余地があってはならない。また、ウクライナ人には自分たちが窮地のまま置き去りにされるという恐れを抱かせてはならない。
当面は、NATO軍は危機管理計画に沿って厳戒態勢を維持するべきである。米軍の空挺部隊を直ちにヨーロッパへ派遣するといった高度の即応態勢を見せることは政治的にも軍事的にも意義がある。西側が衝突を避けたいとするならば、中央ヨーロッパにおいてさらに冒険主義的な戦力を使用した場合には結果として何が起こるかに関してクレムリンには曖昧さを見せてはならない。(ワシントン・ポスト紙の“What is to be done? Putin’s aggression in Ukraine needs a response”から)
「冒険主義者」だって?ストレンジラブ博士 [訳注:この「ストレンジラブ博士」はNATO欧州連合軍の最高司令官である「ブリードラブ将軍」をもじったものと思われます] は自分の推奨内容が判断の間違いによって熱核戦争に帰結する可能性を増加させ、NATOや米国ならびにモスクワを一触即発の危険な状況に放り込む場合、彼はクレムリンを冒険主義者と名付ける。でも、これはまったくお互いさまではないだろうか?
ブレジンスキーの論説が示す論調を聞いてみよう。多くの人たちがこの著者を控えめで、明晰な戦略家と見なしているが、幾つかの短い文章の中で彼はプーチンを悪党、マフィアのボス、ムッソリーニ、あるいは、ヒットラーと呼んでいる。私の想像では、もしも彼が他にも文章を書く機会があったら、彼のリストには悪霊の「ベルゼブブ」も追加されるのではないだろうか。
これはもう政治ではない。ヒステリーだ。大衆を焚き付け、国家主義の火を煽ろうとする扇動的で対外強硬主義的なたわ言である。まさにこれはイラクへの軍事侵攻を導いたあの独善的な狂乱と同種のものである。
ブレジンスキーはいったい何を言おうとしているのか?
クリミアでの出来事は米国の安全保障に脅威を与えると言っているのだろうか?われわれの大きな鼻を大統領にとって都合のいい場所であるならばどこへでも突き付けて、地球上の如何なる場所においてでも米国は自由にモンロー主義を適用するべきだと彼は言っているのだろうか?
クリミアの問題は米国とは無関係だ。クリミアでの戦いにはわれわれは関心がない。ブレジンスキーが言いたいことはユーラシアへの軍事的侵攻であり、これはパイプライン回廊と油田地帯のことであり、これはロシア帝国を崩壊させ、新世紀のために多国籍企業やウオール街の投資銀行をアジアに配置しようとするものだ。そして、最終的には、これは大理石の棺に送り込まれる前に、精神病的ではあるが、新世界秩序における世界規模の覇権の姿を見たいと願うひとりの老人が演じる欲に駆られた聖戦である。これがすべてだ。栄光に満ちた新たな世界規模の混乱が起こり、シンクタンク貴族が抱く悲惨でうじうじした夢があちらこちらで語られる。彼らの生涯におけるたったひとつの目的は他人の子息が兵士として戦わなければならない戦争を開始することにある。
ウクライナを「西側連合」株式会社に加入させることはブレジンスキーのマスタープランの中ではもっとも重要な点である。基本的な戦略はベルリンの壁が崩壊した時点から進行していた。当時、米国からやって来たネオリベラル派の詐欺師たちは旧ソ連邦を奪略し、ロシアを政治的には崩壊させ、経済的には貧窮化させた。あれ以降、米国の対露政策はあからさまに敵対的となり、石油資源が豊富な同国を包囲するためにありとあらゆる手段を講じたのである。また、ロシアの周辺には核ミサイル施設を配備した。今、ワシントンはウクライナではファシストの支援によるクーデターを活用して、ロシアには自国の安全保障にとっては死活的な地域に対する影響力を放棄させようとしている。
ここにステーブン・コーヘン氏とのインタビューの抜粋がある。同氏はニューヨーク大学のロシアに関する研究や歴史を専門とする教授であって、月曜日にPBS [訳注:米国の公共ラジオ放送局] のニュース番組に出演した。コーヘン教授の解説は米国とロシアとが向かい合って実際には何をしようとしているのかを理解する上で役立つと思う: 
「今日われわれが目にすることは歴史上最悪である。新たな冷戦の突然の襲来によってヨーロッパは西側と東側に引き裂かれる。今回は遠く離れたベルリンにおいてではなく、ウクライナを真っ二つにし、ロシアとの国境のすぐ側での話だ。これは不安定さを招き、われわれの子供たちや孫たちにとっては何十年間にもわたって戦争の脅威におののく暮らしが続くことだろう。公式の筋書きではプーチンを悪者として扱い、「これは彼がやった」と言う。しかし、端的に言って、それは真実ではない。要は、これは20年前にクリントンがロシアに向かってNATOを拡大し始めた時から始まったもので、その動きが今も続いているのである。
今日もっとも基本的な課題はこういう点だ。数年前にプーチンが非常に明快に述べた点ではあるが、そのひとつは旧ソ連邦の一員であったグルジアにある(プーチンはNATOのグルジアへの拡大は許そうとはしない)。もうひとつはウクライナにある。われわれはこれらふたつとも侵犯した。グルジアでは2008年に戦争となった。そして、今はウクライナにおいてだ。これは米国とヨーロッパがプーチンが示した「超えてはならない一線」をわれわれが越してしまったからだ。」(PBSニュースから) 
コーヘン教授の考えでは誰を非難するべきかという点については何らの疑念もない。言うまでもなく、ワシントンだ。
こうして、われわれは板挟みの状態に陥っている:プーチンは自国の安全保障にとって死活的な課題を放棄することは出来ず、ワシントンは今まで以上にウクライナをヘンリー・キッシンジャーが言うところの「協力的で国際的な枠組み」(別名、世界的な資本主義のルール)へ招き入れようとしている。これでは、やがては戦争が起こることを意味する。
木曜日にはクリミア共和国の議員たちは同地域がロシアの一部になるかどうかに関して住民投票を行うとして全会一致で賛成票を投じた。住民投票は10日以内に実施される。しかしながら、オバマ大統領はすでに住民投票の結果は認められないと表明している。ここで明らかになったひとつの点は、他の国々にとっては、自分たちが投票を行う前に、まずは米国から青信号を貰う必要があるという点だ。何と馬鹿げた状況になったものか! 
2008年、中央アジアにおける米国の偽らざる動機についてブレジンスキーはある記事の中で自論を開陳した。その記事はハフィントン・ポスト上で公開され、内容はグルジアでのひと騒動についてである(グルジアではプーチンは南オセチアのロシア語を喋る住民の安全を確保するためにロシア軍を投入した)。ブレジンスキーが言いたかった内容を下記に示してみよう:
「国際社会が今向き合っている課題は、より大きな帝国主義的な意図をもってあからさまに武力を行使するロシアに対して如何に立ち向かうかということだ。つまり、ロシアはかって旧ソ連邦の影響下にあった地域をクレムリンのコントロール下に収めようとしており、グルジアを通過するアゼルバイジャンのバクーからトルコのジェイハンに至るパイプラインの管理権を取得することによってカスピ海や中央アジアへの西側のアクセスを遮断しようとしている。
大雑把に言って、利害関係は非常に深刻だ。資源は少なくなる一方であり、より高価になっていることからも、石油資源へのアクセスは重要である。また、大国が新たな独立した世界においてどのように振舞うかということも非常に大切であり、その振る舞いは武力によってではなく、順応と合意に基づくべきである。
もしもグルジアの政権が転覆されると、西側はカスピ海や中央アジアから遮断されるというだけではない。プーチンは、もしも何らの抵抗も受けないとするならば、ウクライナに対して同様の戦術を使うだろうとわれわれは論理的に推論することができる。プーチンはすでにウクライナに対して公然と脅威を与えている。」 (ハフィントン・ポスト紙上にブレジンスキーが投稿した“Russia’s invasion of Georgia is Reminiscent of Stalin’s attack on Finland”から)
何ということだ!ブレジンスキーは石油資源は彼自身のものであると考えているみたいだ。あるいは、石油は西側の大手原油開発企業に属しているとでも思っているのかも知れない。そんな風に読み取れないかい? 
つまり、われわれはここで一国の安全保障とか主権、あるいは、影響圏について論じているのではない。実際に論じている内容は「原油へのアクセス」である。そればかりではなく、ブレジンスキーは、「西側」は他国の国土にある資源についてさえも正当な要求をすることが出来ると単刀直入に表明している。いったい何処からそのような考えを持って来たのだろうか?
2008年のカフカセンター・ドット・コムにおける別のインタビューでは、ブレジンスキーは同じ警告を発したけれども、その時はいささか語調を変えていたようだ。「ロシアはグルジアを不安定化させようとしている」と題した記事の概略を下記に示す:
「米国はロシアによる脅威の可能性を目撃したとブレジンスキーは言った。それは領土的な野心によるものではなく、バクーからジェイハンまでのパイプラインについて管理権を取得するという意図によるものだ。」 
「もしもグルジア政権が不安定化したら、バクーやカスピ海ならびにその先へのアクセスは限定的なものになるだろう」とブレジンスキーは言う。「ロシアはこれらの市場での独占状態をさらに強化しようとするだろうし、ヨーロッパやバルト諸国へのエネルギーの供給を政治的な動機から停止するような場合も含めて、現存する政治的ならびに経済的なすべての手段を動員することだろう。」 
「ロシアは中央アジアの地域を世界経済、特に、エネルギー供給へのアクセスから意図的に孤立化させようとする」と、この政治学者は考えている。(kavkacenter.com掲載の“Zbigniew Brzezinski: ”Russia tends to destabilize Georgia”から) 
プーチンは誰かを孤立化しようとはしていないし、誰かのパイプラインを横取りしようともしてはいない。彼はロシアの大統領である。彼は石油を売って稼ごうとしているが、これがこの世の仕組みなのだ。これを資本主義と称する。しかし、問題の石油は彼ら自身のものだ。天然ガスも彼らのものだ。われわれのものではないのだ。諦めるしかない!
自分を偽らないで欲しい。要は、すべてが石油なのだ。石油と権力。米国の帝国主義的野心はすっかり石油にまみれ、石油のコントロールに集中している。石油なしでは、帝国は存在せず、ドルによる覇権もなく、弱小国を蹴散らしたり、貢物を強要するような高慢で無法者の軍部が存在することもない。石油は同帝国で標準言語として使われる新造語であり、世界規模の覇権に至る進路そのものなのである。
プーチンは大胆にもロシアの国土の下に存在する石油はロシアのものであると思っている。ワシントンはそのことに関するプーチンの考えを変えたいと思っている。この状況こそがウクライナ危機が如何に深刻であるかを物語るものだ。石油に対する飽くなき渇望がわれわれをもうひとつの戦争へと駆り立てている。 
著者のマイク・ウィトニーはワシントン州に居住。彼はHopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion と題する書籍に寄稿している(AK Press)。このHopelessキンドル版でも入手可能。彼との連絡にはfergiewhitney@msn.comをご利用ください。

<引用終了> 

もっとも興味深い点は、この引用記事の冒頭にも記されているように、作家であり、ジャーナリストであり、研究者でもあるステーブン・キンザー「米国はウクライナの崩壊において全面的なパートナーとしての役割を担った」とはっきりと述べている点だ。これは選挙を通じて民主的に選出されたヤヌコヴィッチ大統領を追い出して、極右翼やネオナチが閣僚の一部となっている親米傀儡政権を登場させたのは米国であると言っているのだ。この認識と、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストならびにBBCといった欧米の大手メデアが口を揃えて喧伝して来た「ロシアが悪い、プーチンは悪党だ」という大合唱との間にはまさに巨大な隔たりがある。この隔たりの大きさには呆れるばかりである。また、大衆を操ろうとするこのメデアの大合唱はイラク戦争への突入の前夜を思い起こさせる。
正直言って、私はブレジンスキーの書籍「The Grand Chessboard」を読んではいない。しかし、ここに紹介されている彼の言動を見ると、米国の戦略的な政策立案者としはトップにあると見られている彼の考え方にはとてもついて行けそうにもない。
ロシアの国土にある石油に対して米国の石油資本がアクセスできないと言ってわわめき散らしている姿が明確に描き出されている。これこそがいわゆる新資本主義の実態であり、覇権国特有の傲慢な振る舞いであるとも言えよう。新資本主義と植民地主義との間にどれだけの違いがあると言うのだろうか。本質的には何らの違いも見い出せない。
ネオコン政治家に重用され、主要メデアに登場するズビグニューブレジンスキーはいわば最強の御用学者ということのようだ。 

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日本を取り巻く国際政治のことを考えると、沖縄や他の地域にある米軍基地を巡る米軍将兵の犯罪に対する治外法権、あるいは、環太平洋経済連携協定におけるISD条項、等には米国が覇権を維持するための仕組みが満載となっている事実についてもこの際しっかりと認識しておきたい。 

参照:
1Grand Puppetmaster Brzezinski: Directing War Strategies from the Shadows: By Mike Whitney, May/02/2014

 

 

2014年8月16日土曜日

米国流「収容所群島」へようこそ! – 思想統制

米国における主流メデアによる一般市民に対する思想統制は今やその極に達したかのごとくだ、と指摘する論評に出合った。

マレーシア航空MH17便の撃墜が報じられた直後から、何の証拠もないのに、「あれはウクライナ東部の反政府派がブク・ミサイルを発射して撃墜したのだ」、「ロシアからミサイルを持ち込んだ」、「プーチン大統領は大悪党だ」といった根も葉もない言動が繰り返された。しかし、この大狂想曲はそう長くは続かなかった。ロシア政府が数多くの主要なメデアを前に、ライブで、全世界に対して検証可能な衛星画像等を用いて実際に何が起こっていたのかを提示し、説明したからだ。このロシアからの情報提供はそれまで続いていた米国・NATOEUによって行われていた宣伝の大合唱を大きく後退させた。
米国政府は当初MH17便を撃墜したのは親露派(とロシア)であるとする説に跳び付いたが、今や当初の見方からは後退し、米国の諜報部門の高官がウクライナ軍の関与説を支持するまでに変わった。これは724日のことだった。
オバマ大統領やジョン・ケリー米国務長官が余りにも声高に親露派説をぶち上げたことから、諜報部門としては政府の見解とは異なる自分たちの意見を公表しにくい立場に押しやられていたとも伝えられている。基本的には、米政府が諜報部門からの最終的な報告を待たずに、政府側の見解(つまりは、素人の見解)をゴリ押ししたことが大きな間違いであった。米国務省は昨年8月のシリアでの化学兵器による市民の大虐殺の際にもまったく同様の間違いをしでかした。そして、昨年の夏の記憶が冷めやらないこの夏、またしても同じ間違いをしでかしたのだ。
このような現状に関して、最近、諜報部門でかって高官の地位にあった人たちは現政権が政策を推進する際に諜報を取り扱う姿勢には間違いがあることを連名で指摘し、オバマ大統領あてに苦言を表明する手紙を送付した。
何らかの政治的な筋書きに沿って嘘の情報を流し、それを何回も繰り返す。そうすると、嘘の情報であってもそれはやがて独り歩きを始める。このような情報操作は第二次世界大戦前から戦中にかけてナチ・ドイツ政府の国民啓蒙・宣伝大臣であったヨーゼフ・ゲッペルスが採用した手法である。第一次世界大戦の前は、戦争の形態は二国間の軍隊と軍隊とが戦い、非戦闘員は戦争に直接関係することはなかったものだが、第一次世界大戦からは戦争の形態はガラッと変わって、当事国の国民全体を含む総力戦となった。こうして、一国の政府にとっては国民を如何に戦争に駆り立てるかが重要な課題となったのである。歴史を見ると、日本を含めて、他の多くの国でも同様であった。
ゲッペルスは「宣伝の天才」と称され、ナチ・ドイツを維持するための情報操作で辣腕を振るった。ウィキペデアによると、彼はこう言っている。「もしあなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう。嘘によって生じる政治的、経済的、軍事的な結果から人々を保護する国家を維持している限り、あなたは嘘を使える。よって、国家のために全ての力を反対意見の抑圧に用いることは極めて重要だ。」 また、「もっとも速度の遅い船に船団全体の速度を合わせる護送船団の如く、知識レベルの低い階層に合わせた宣伝を心掛ける」ことが政治宣伝のあるべき姿であると心掛けていたとも言われている。
米国・キエフ・NATOEU枢軸ならびにその主要メデアはMH17便が撃墜された直後から宣伝戦に突入し、「撃墜をしたのは親露派の分離主義者だ」、「ロシアが支援した」、「プーチンは大悪党だ」という大合唱を始めた。ゲッペルスが述べた宣伝の手法と何とよく合致するのだろうか。まさに、驚くほどである。
こういった昨今の欧米のメデアの風潮を「まるで収容所群島のようだ」と評した人物がいる。
「収容所群島」と言えば、旧ソ連時代のソルジェニーツンの小説で有名だ。1970年代、われわれ読者はあの本が伝えようとしたソ連における強制労働収容所の実態にひどく興味をそそられたものだ。たかが一冊の本とはいえ、この本は欧米の読者にとっては歴史の一部として語り継がれるほどの衝撃を与えた。一方、旧ソ連では、この本は1989年まで禁書であった。 
そういった歴史的背景を持った「収容所群島」という言葉が米国やヨーロッパの今の世相を描写するのに使われ、それが妙に的を射ていると感じられるのは何故だろうか。
「米国社会は収容所群島のようだ」と言ったのはアイルランド出身のフィニアン・カニンガムというジャーナリストだ [1]。このジャーナリストは国際問題に関して数多くの論評を著しているが、そのひとつは47日に「ロシアとEUを戦争に引っ張り込みたい米国の戦略」と題した小生のブログでもご紹介した。
それでは、フィニアン・カニンガム氏の最近の論評を仮訳し、下記に皆で共有したいと思う。
ウクライナでロシアとNATOとが武力衝突をした場合、それは米露間の核戦争に発展する可能性があることから、私は米国の主要メデアが行っている反ロシアの大合唱は戦争を煽ることになって、危険極まりない行為であると認識している。ふたつの核大国の間で核戦争になったら人類の終焉が待っているだけだ。どちらが先に核攻撃をした場合であっても、結果は同じである。発行部数や視聴率を重視して扇動的な報道に走ることは極力自制して、もっと冷静な報道をして欲しいと願うばかりだ。
この願いこそが「米国社会は収容所群島のようだ」と言った記事をご紹介する理由である。
当然のことながら、ここに引用する論評の内容にご賛同いただけるかどうかは読者の皆さんのご判断次第だ。私としては、日本のメデアが取り上げてはいないだろうと思われる英語圏の記事を日本語でご紹介することに尽きる。ウクライナ危機に関して言えば、最近は仮訳を待つ記事の数が増える一方である。 

<引用開始>
米軍の高官が公の席でウクライナでの出来事に関してロシアを悪者扱いしようとして根も葉もない「メデアの話題」を繰り返して喋ると、米国の諜報部門にとっては厳しい事態となることは皆さんもご承知の通りだ。
誰の場合であっても、たとえば、それが数多くの勲章で身を飾っている将軍の場合であっても同じことであるが、何の考えもなしにどうして自分の身を辱めるようなことをするのだろうか? 
思想統制を行っている米国流収容所群島へようこそ!これはひとつの文化であるとも言えそうであるが、メデアは自由と独立という大いなる幻想に浸り、惰眠を貪っている。しかしながら、現実には、彼らは反対意見をことごとく潰そうとし、異議を唱える者を罰する専制君主のように振舞う。 
先ずは米国のマスメデアがどのようにウクライナ紛争やマレーシア航空の旅客機の撃墜を取り扱っているかを見て欲しい。その様子は恐ろしい限りであって、物事をじっくりと考えようともせず、十分な情報に根ざそうともせずに、「ロシアがやった!」とか「プーチンがやった!」あるいは「モスクワには経済制裁を!」との大合唱だけが進行している。村八分にされたり、中傷されたりすることの痛みを避けようとして、この思想統制から外れることは誰も許されず、質問をすることさえもできない。  
米国には物理的な収容所として2百万人を超す囚人を収容することが可能なグアンタナモ刑務所やその他無数の刑務所が存在する。それに加えて、専制的なマスメデアと思想統制によって縛られた米国流収容所群島がもうひとつの現実として存在するのである。
この仮想の監獄に入った最近の囚人は米統合参謀本部議長のマーテン・E・デンプシーである。彼はウクライナにおけるロシアを非難し、東部のドネツク地域で撃墜されたマレーシア航空の旅客機の話を持ち出した数多くの公僕の中でも最後のひとりとなった。同機は717日に多くの疑惑が存在する環境下で墜落し、298名の乗員・乗客全員が死亡した。
オバマ米国大統領と他の米政府の高官たちはこの大惨事を政治問題化しようとして、ジェット旅客機を撃墜したのはロシア政府とウクライナ東部の反政府派勢力であるとして非難した。信頼できる証拠はそのかけらさえも提示することはなかった。ワシントン政府や西側の同盟国ならびに欧米のメデアによって今までに引用された証拠は多くが検証が不可能な秘密の情報であって、キエフ政権によってでっち上げられた素人じみた偽データであることが判明している。キエフ政権の嘘をつき、否定し、突飛な主張をする能力には限界は存在しないかのようだ。 
しかし、信頼できる情報が欠如している中、ワシントンとEUのいわゆる指導者たちはロシアの戦略的な分野であるエネルギーや金融および防衛産業に対する経済制裁を、今週、一段と厳しいものにしようとしている。 
ロシアがこの旅客機の撃墜に対して責任を持っていると主張するにしてはワシントン政府は信頼できる証拠にはまったく欠けているのだが、大騒ぎをしてそれを埋め合わせようとしている。しかも、大量にだ。別の言い方をすれば、宣伝文句をますます主張する始末である。
こうして、宣伝文句を主張するために通りを練り歩いているのはオバマ大統領であり、ジョン・ケリー国務長官であり、大統領選への出馬を目論んでいるヒラリー・クリントンであり、民主党の議会指導者であるナンシー・ペローシであり、長老のダイアン・フェインスタインである。それに続いては、政治貴族であり、ずる賢い米国帝国主義者のズビグニュー・ブレジンスキーやマデレーン・オルブライトの姿も見える。これらの高位高官の連中は誰もがロシアのウラジミール・プーチン大統領はMH17便の撃墜に何らかの形で関与していたと、判で押したような非難をすることによって米国のメデアをもてなした。控えめに言っても、お喋り好きの操り人形たちの大合唱によると、プーチンは独立を標榜する反政府派に武器を供給したことから有罪であると言う。
しかも、これはこの大惨事に対して独立した国際的な調査が行われる前の段階での話である。今週、オランダとオーストラリアの調査団は墜落現場へ入ることができなかった。何故かと言うと、西側によって支援を受けているキエフ政府がウクライナ東部の独立派でありロシア語を喋る地域住民に対して戦争を仕掛けているからだ。何故西側は調査を妨害するような政府を支持しているのだろうか?何故西側は町や集落を無差別に砲撃し、何百人もの犠牲者を出している政府を支援しているのだろうか? 何故西側のメデアや政治家はこういった紛れもない質問をしようとはしないのだろうか? 
さて、プーチンをやり玉に挙げようとするこの愚かな大合唱に加えて、一銭程の価値しかない自分自身の重々しさを示そうとする最高位にランクされたひとりの軍人が登場してきた。それはデンプシー将軍である。
リンチをしようとする暴徒たちの痛烈な非難に一種の歪曲を新たに付け加えて、デンプシーはプーチンに対する非難の言葉を繰り返した。プーチンのロシアは国境を越してウクライナへ向けてミサイルを発射している、と。デンプシーは先週コロラド州のデンバーで安全保障の会議場で話をしていた。彼はこれらの言葉を撃墜されたMH17便に関する文脈の中で引用していたことは明白である。
聴衆に向けてデンプシーはこう言った。「ここには自分たちが所有する武力を他国の領土内で行使することを意識的に決定したロシア政府がある。このような事態は、私が思うに、実に1939年以降初めてのことだ。」
彼の怪しげな歴史の捉え方は別にしても、ロシアがウクライナへ向けて砲撃を行ったとする証拠に関しては、この米軍のトップは自分の主張を支える証拠を挙げようともしなかった。彼は単に米国務省の報道官であるマリー・ハーフが当日もっと早くに述べた事柄を繰り返して喋っただけであった。米国政府は自分たちが行ったロシアに対する主張を支えると思われる衛星画像を公表した。しかし、これらの画像はソーシャル・メデアに掲載されたものであって、解像度が低く、検証可能な地理的な場所を示すデータもないことから、冷笑を誘う始末であった。
それでもなお、デンプシーは彼の相手であるロシアの軍部はむしろ彼の側にあると主張した。すなわち、これらのロシア軍の大物たちはモスクワ政府の政策とは意見を異にしている、と述べたのだ。
デンプシーはウラジミール・プーチンがヨーロッパにおいて地政学的な戦略を実行しようとしているが、それはあたかも「コントロールを失うことになる火遊び」のようなものだとして、プーチンを非難した。 
さらには、この米国の将軍は自分の相手であるロシア軍の参謀総長であるヴァレリー・ゲラシモフ将軍の名前を挙げて、ゲラシモフは「ウクライナならびにヨーロッパに対するプーチンの干渉については消極的である」と述べた。
米国防省のある報告書に引用されていることであるが、デンプシーは「ロシアの軍部は、恐らく、その気ではないと私は思う。こういったことを喋るのは私にとってもリスクが伴うけれども、連中の10人位は明日にでも収容所送りとなるのではないか。でも、私が知っているロシア軍やその指導者たちは、恐らくは、この種の武力衝突には、どちらかと言うと、参加したくないと思っているのではないか」と述べた。
ロシアのゲラシモフ将軍は先にワシントン政府がウクライナや他の国で推進した「カラー革命」を非難している。これはロシアを不安定化させることを目的とした新種の戦争行為であると言った。ゲラシモフやロシアの軍部はウクライナで燃え上がっている紛争は米国がウクライナで関与した非合法的な政権交替に端を発していることを十分に認識している。マレーシア航空の旅客機の悲劇は米国の扇動という厳しい文脈の中でじっくりと見つめなければならない。ウクライナの国境を越してロシア領内に対して行われている砲撃についても同様である。これらはデンプシーや他のワシントンの高官らが主張する内容とはまったく矛盾するものである。 
ロシア側の相手に対してデンプシーが心理的な作戦を展開していると推測するのは誇大解釈だろう。証拠が示す実像は、この米軍のボスは余りにも愚かであって、とてもそのような黒魔術を遂行するだけの器量はない。 
彼が公共の場に現れることによっていったい何が表面化するのかと言うと、それは米国の諜報活動が如何に低いレベルにとどまっているかという点だ。もしも米軍の高官が安っぽい政治的な得点を達成するために素人くさい嘘や作り話をまじめに繰り返すことが出来るのだとすると、それは米国の最高機関がひどく悪化してしまったという事実を顕わにすることに他ならない。
一国の兵は誠実さのために勇気をもって立ち上がる高潔な戦士であると見なされている。米国においては、米軍の指導者は余りにも多忙であって、客観的な証拠や誠実さに基づいて独自の判断をするのではなく、むしろ、周りに広く喧伝されている筋書きや思想警察に調子を合わせようと専念する始末だ。 
米メデアの統一見解に奴隷のように従順について行く他のすべての評論家や政治家の場合と同様、デンプシー将軍も真実について自分自身の考えを巡らし、真実を喋ろうとすると米国社会から隔離されるのではないか、つまり、収容所群島のどこかに放り込まれるのではないかとひどく恐れているように見える。
© Strategic Culture Foundation
<引用終了> 

米国社会全体が収容所群島と化したかのようだとの指摘は秀逸だ。とにかく、分かりやすいところがいい。この記事によって、米国の社会は今やこのような状況になっているのか、米軍の高官はこういう風に動いているのか、等についてより具体的に理解することができる。
また、この著者は米国の諜報部門は質が低下していると見ている。
NH17便が撃墜された時、米国政府はいち早くウクライナ東部の反政府派をその犯人扱いをし、それと同時にロシアを、さらには、プーチン大統領を大悪党だと位置づけた。しかし、その1週間後、米国の諜報部門はロシアはこの民間機の撃墜には直接の関与をしてはいないと認めた。
この一連の動きを見ると、米国の諜報部門(CIA)にはふたつの部門があって、ひとつは国際政治部門、もうひとつは情報分析部門であり、これらの間では米国政府の政策を巡っての主導権争いがあるように見受けられる。
CIA内部の暗闘はわれわれ素人にとっては興味津々であるが、それに関しては、別途、詳細に検討したいと思う。 

   
MH17便の墜落原因はまだ特定されてはいない。ブラックボックスの解析が進行中である。ただ、その作業が行われている場所は英国の研究所である。英国は米国とならんで上述の大合唱を扇動してきた。この事実を考慮すると、このブラックボックスの解析作業が誠実に実施されているのか、何も隠さずに結果が公表されるのかはその時が来るまでまったく予測がつかない。
今は何の報道もなくて、台風の前の静けさみたいだ。そよ風程度で終わってくれれば申し分ないのだが、超ド級台風となる可能性もある…
 

参照:
1The American Gulag Of Thought-control: By Finian Cunningham, Information Clearing House – Strategic-Culture Foundation, Aug/03/2014






2014年8月11日月曜日

MH17便はウクライナ軍の戦闘機によって撃墜された


MH17便を撃墜したのは地対空ミサイルだ」とか「地対空ミサイルを用いたのは反政府派か、それとも、ウクライナ軍か」といった議論に捕らわれている間にインターネット上には非常に興味深い記事が現れた。
旅客機を撃墜をしたのはミサイルではなく、ウクライナ軍のジェット戦闘機だとの意見がドイツの専門家から提出された[1]730日のことである。
また、墜落の現場へ最初に到着したOSCE(全欧安保協力機構)からの監視団の一員であるカナダ人のメンバーもコックピットの外壁に残された多数の穴は重機関銃で撃たれた跡であると述べている [2]
今日はこれらの記事の詳細を仮訳して、共有したいと思う。 

♞  ♞  ♞
先ずはドイツ人の元パイロットが提示した内容は次の通りだ。

<引用開始>
 
Photo-1: コンドル航空のDC10機のコックピットに座る著者、Peter Haisenko

マレーシア航空MH17便の悲劇は依然として非常に捉えにくいままである。フライトレコーダは英国に引き渡され、解析作業が進行中である。いったい何が出てくるのだろうか?恐らくは、あなたが思っていること以上のことが出てくるのではないだろうか。コックピットの外壁の写真を見ると、ボイスレコーダが特に何を教えてくれるのか非常に興味深い。航空ビジネスにおける専門家のひとりとして、私はインターネット上で入手できる残骸の映像を詳しく観察した。
先ず最初に驚いた点がある。グーグルで検索できる残骸の画像が意外と少ないということだ。そして、画像のほとんどは解像度が低い。でも、例外がひとつあった。それはコックピットの操縦士側の窓の下側の部分だ。この画像は衝撃的だった。ワシントンでは、今、MH017便に関しては「潜在的に非常に悲惨な過失、あるいは、事故」といった見方を聞くことができる。このコックピットの画像を見せられても、私には驚きではなかった。
コックピット区域には発射物体(弾丸)が入った穴と出た穴とが…:  

Photo-2: これらの写真はすべてがインターネットから。

上に示す写真をクリックすることをお勧めしたい。そうして貰えば、この写真について解像度がより高いPDFファイルをダウンロードすることが可能だ [訳注:確かに高解像度の写真を入手できるので、試してみて下さい。かなり大きく拡大できるので、詳細を観察するには持って来いです]。そうして貰うと、ここで私が述べようとしていることを良く理解していただける筈だ。事実は明快で、憶測の域を超える。つまり、このコックピットは銃撃の跡を示しているのだ!弾丸が入って行った穴と出て来た穴とを見ることができる。穴の縁の一部は内側に曲がっている。これらの穴はより小さな穴で、丸くて、きれいだ。これらは弾丸が撃ち込まれた場所であって、恐らく、口径が30ミリの弾丸である。別の形状を示す穴はより大きく、僅かに外側に向かってほころびたような外観を呈している。金属がずたずたに引き裂かれているが、これは機内から出て来た弾丸によって形成されたことを示している。さらには、二重のアルミの板で補強された構造体の外側の板がちぎられて、曲がっている。外側へだ!また、小さな切れ目が観察されるが、皆外側へ曲がっている。これは「小破片」が強力な破壊力でコックピットの内側から外側の板を破って外へ飛び出して来たことを示している。板がはがされた後に残っているリベットの頭も外側に曲がっている。
入手可能な画像を入念に調査したところ、ひとつの事実が際立ってきた。つまり、機体は破片としてしか残されていない事実を除けば、コックピットよりも後方の部分の残骸はかなり完全な状態にある。コックピットの部分だけがこれらの特別な損傷を示している。これは調査官にひとつの貴重な手がかりを残すことになる。この機体の中央部はミサイルに撃たれたのではない。破壊はコックピット部分に限られている。ところで、機首の部分は特別に補強された構造になっていることを念頭に置かなければならない。どの航空機の場合でも、機首部分は大型の鳥が高速でぶつかった時の衝撃に耐えなければならないからだ。機体の二重のアルミ板の外側の板(外皮)について言うと、コックピット部分には残りの部分に比べて遥かに強度が高い、特別に厚いアルミ合金が用いられている。ロカビーで墜落したパンナム便のことを想い出す人もいることだろう。あの事故では、特別に強度の高い構造を持っていることから、ひとつの塊として墜落後にも原型を保っていたのはこの機種部分であった。MH017便の場合は、機体の内部で爆発が起こったことも極めて明らかとなる。
戦車を破壊するだけの威力を持った複合型弾丸: 

Photo-3: 外皮に見られる弾丸の穴

いったい何が起こったのだろうか?ロシアは最近レーダーの記録を公開したが、それによると、少なくとも一機のウクライナ軍のSU25戦闘機がMH017便の近傍を飛行していた。これは今や行方が分からないスペイン人管制官「カルロス」が述べた内容、すなわち、MH017便の直ぐ近くを二機のウクライナ軍のSU25が飛行していたという報告と一致する。典型的なSU25戦闘機に装備される武器を調べてみると、次のような事実を学ぶことができる。この戦闘機にはニ連装の口径30ミリのGS-302/AO-17A型機関砲が装備されている。250発の弾丸が入った弾倉が装着され、対戦車用の焼夷弾と「小破片」が爆発的に飛び散る弾丸とを交互に発射する。MH017便のコックピットは明らかに両側から銃撃された。コックピットの一部である同一の機体破片に弾丸が入って行った傷跡と出て来た傷跡の両方が見出されるからだ!
さて、一連の対戦車用の焼夷弾と小破片が爆発的に飛び散る弾丸とがコックピットに打ち込まれた場合いったいどういった状況が起こるのかについて考えてみよう。これらの弾丸は近代的な戦車を破壊するために設計されている。対戦車用の焼夷弾の一部はコックピットを横断し、弾丸の形は多少変形してはいるだろうが、コックピットの反対側に出て行った(航空関連の科学捜査専門家はキエフの軍部のコントロール下にある地域で地上に散らばった弾丸を見つけ出すことができるかも…)。結局、これらの弾丸は戦車の装甲版を貫通することができるように設計されている。また、小破片が爆発的に飛び散る弾丸の方は、数多くの小破片の衝撃によって、まさに設計通りに、コックピット内で大きな爆発を引き起こす。GSh-302機関砲の速射によって、非常に短い時間の間に、同機関砲はコックピット内で急速度で進展する爆発を引き起こす。これらは戦車を破壊するのに十分な威力を持っていることに留意されたい。
どんな「間違い」が実際に起こったのか?そして、いったい誰が間違いを起こしたのか? 

Photo-4: 翼に見られる擦り傷

旅客機の内部は密閉され加圧された容器であることから、爆発が起こると機内の圧力は一気に上昇し、非常に極端な圧力に達する。場合によっては、破壊に繋がるようなレベルに達する。このような条件に対しては旅客機の強度は対応することができないから、ゴム風船のように瞬間的に爆発する。このことは一連の破壊現象を理解しやすく説明してくれる。もっともあり得そうな現象としては、結構大きな破片として残った機体の後部は異常に高まった機内圧力の下で強度がより小さい箇所から破壊を起こし、空中でバラバラになった。広範に広がっている残骸の画像と無残に破壊されたコックピットとは手袋の中の手のように相互に良く合致する。さらには、主翼の部分には擦り傷の跡が見られる。これは、とどのつまりは、コックピットに繋がるのだ。興味深いことには、私は弾丸によって何か所も撃ち抜かれたコックピットの断片の画像と擦り傷を負った主翼の画像 - 両者とも高解像度の画像 - が「グーグル画像」から撤去されてしまったことを後になって気が付いた。今や、煙をあげている、良く知られた画像を除いては、さらに多くの残骸の画像を実際に見つけようとしても、それはできない。 
もしも「潜在的に悲惨な過失または事故」であると述べたワシントンからの声に耳を傾けようとするならば、最後に残る質問はここに演じられた「事故」はいったいどういった性格のものだったのかという点にある。私は憶測の域に長く留まっている積りは毛頭ないのだが、次の事柄についても注意を払うよう皆さんをお誘いしたい:MH017便の機体は三色のデザインでロシアの大統領専用機のデザインとよく似ている。プーチン大統領が搭乗していた専用機はあの当時マレーシア航空のMH017便の「近傍」を飛行していた。航空輸送業界では「近傍」という言葉は150~200マイル程度を指すものとして使用される。また、この文脈においては、「カラシニコフを使ってプーチンを撃ちたい」と述べたテモシェンコ女史の言葉も念頭に置くべきであろう。
でも、これはまったくの憶測である。しかし、マレーシア航空MH017便のコックピットへの銃撃は憶測ではない。   

補足情報(201481日):

SU25戦闘機の到達可能な高度は7,000メートルであると繰り返して言及されてきた。だから、この戦闘機はMH017便を撃墜することは不可能だった、と言う。ウィキペデイアで答えを探してみると、次のような記述を確認することができる。もしもあなたが専門家用の書籍を紐解き、自分の知識を広げようとしさえすれば、あなたはまったく異なる情報を手にすることだろう:SU25戦闘機の最高到達可能高度は14,600メートルである。こちらで確認願いたい: http://www.fliegerweb.com/militaer/flugzeuge/lexikon.php?show=lexikon-50

2014年の7月の始めまでウィキペデイアはSU25の最高到達高度は「約10,000メートル」としていた。英語版もドイツ語版もまったく同様だ。ところが、今は、7,000メートルに「改訂」されている。ウィキペデイアのデイスカッション・フォーラムでは正しい数値に関して議論が沸騰している。

W. Green著のFlugzeuge der Welt」ハンドブック(1984)は軍事用の「ジェーンズ・マニュアル」からデータを収録した標準的な書籍であるが(NATOの参照文献でもあった)、1984年にすでにSU25 (輸出用はSU25MK)の最高到達高度は10,670メートル(208頁)としている。その時点以降SU25の性能は改善された。

また、ここにカナダから参加しているOSCEのメンバーによる発言が掲載されているサイトがある。彼は最初に墜落現場を観察したひとりであり、残骸は重機関銃で銃撃された跡を示している: http://www.youtube.com/watch?v=76PG9RQStFU#t=470
<引用終了> 

SU25戦闘機の最高到達高度に関して日本語のウィキペデイアを見ると、「7,000メートル」と記載されている。上記に説明されているように、日本語版でも最近「改訂」されたのだろうか。
1)現場の残骸の一部の写真が撤去された。(2)マレーシア航空の旅客機の近傍をウクライナ空軍の戦闘機が追尾していたとの地元の目撃者の話を伝えたBBCロシア支局のオルガ・イヴシナが伝えた「BBCビデオ・リポート」は掲載の数日後に撤去された。(3SU25戦闘機の最高到達高度に関するウィキペデイアの記述内容が最近改訂された。これらみっつの事象は個々に見るとそれとは分かりにくいが、これらを並べてみると、その背景には「情報隠し」という共通した具体的な意図が見えてくるような気がする。
また、上記の記事の最高に面白い点はこのMH17便の撃墜に関しては科学的な、あるいは、客観的な捜査を行うことが如何に大切であるかということを改めて教えてくれていることだ。
もしもこの墜落事故が米露間の地政学的綱引きゲームによって影響されなかったとしたら、あるいは、欧米のメデイア・マシーンによる偏見に満ちたゴリ押しがなかったならば、今頃は旅客機のコックピットを貫通して地上に落下していったSU25戦闘機由来の機関銃の弾は、キエフ政府によって隠ぺいされることもなく、何個も見つかっているのではないだろうか。
客観的な捜査の重要さは最初から分かっていたことではあるが、真相の追及は利害関係者間の政治的な駆け引きによってすっかり翻弄されてしまっている。まだ発表されてはいないブラックボックスの解析結果が果たして正当に取り扱われるのだろうかとの懸念は一向に消えようとはしない。 

♞  ♞  ♞
87日のクアラルンプール発の記事 [2] には米露間の地政学的綱引きには直接影響を受けない立場にある専門家の言葉が報道されている。これは上記のドイツの元パイロット氏の指摘と並んで重要な発言であると思う。 

<引用開始>
…パリー [訳注:これは調査報道で有名なロバート・パリーのことを指しているのだと思われます] 729日にカナダのテレビ局CBCがマイケル・ボーチュルキ [訳注:スペルはBociurkiwだが、その発音が正確には分かりません] 氏に対して行ったインタビューを参照している。彼は全欧安保協力機構(OSCE)の調査専門家としてはドネツクに近い墜落現場に最初に到着した。

ボーチュルキ はウクライナ系のカナダ人でOSCEに派遣されている。彼は同僚と共にMH17便の撃墜後に残骸が散らばる現場へ入った最初の国際監視団のひとりである。

CBCのインタビューでは、ビデオに現れるリポーターは先ずこう説明した。「OSCEからの小さなチームが現場へ到着した時、残骸はまだくすぶっていました。もう何日にもなりますが、国際機関からは他には誰もまだ現地入りはしていません。」 

「機関銃で撃たれたと思われるような、かなり、かなり強力な機関銃で銃撃された痕跡を示しています。そういった機体の破片が2~3個ありました」と、彼はインタビューで述べた。

「このボーチュルキ の証言はまったくの処女地のような誰も喋ったこともない証言であって、このような証言は今後も入手できるかどうかは分からない。ロシア、英国、ウクライナ、等の政府によるブラックボックスの解析はまだまだ長い時間がかかり、そのレースにはそれぞれの政府が自分の馬を走らせている。それとはまったく違って、ボーチュルキの証言は生のままであり、利害関係者からは独立しており、彼は初期の段階に物理的な証拠に近づくことができた二人の目撃者のうちのひとりだ」とパリーは述べた。 

「あれは強力な、専門家らしい証言だ。後からやって来るOSCEの残りのチームのために現地の人たちと交渉を行っていたことから、ボーチュルキは現場へ早く到着した」とパリーは言う…

<引用終了> 

MH17便が機銃で撃たれたと指摘するふたつの独立した情報源からの話をここに引用した。それぞれが説得力があり、貴重な情報であると思う。
また、上記に簡単に触れたけれども、三つ目の報告も存在する。地元の住民から入手した目撃談を収録したBBCロシア支局のオルガ・イヴシナ記者による「BBCビデオ・リポート」だ。これもウクライナ軍の戦闘機がMH17便の撃墜に関与していたことを示唆している。実に貴重な報告であるが、BBCビデオ・リポートそのものはすでに撤去されてしまった。しかしながら、そのビデオの一字一句を収録した記録はインターネット上で今でも入手可能だ [3]
MH17便が墜落した真の理由はいったい何だったのかという問いかけについては、今までの私のブログでは、地対空ミサイル、空対空ミサイル、戦闘機による銃撃といったさまざまな説明を掲載して来た。
欧米の大手メデアが一般大衆に押し付けようとする筋書きとは別個に、われわれとしては、個人として、いったいどの説が真実であるのかをこの際じっくりと究明してみたいと思う。そのために必要な情報はインターネット上には山ほどもあるのだから。
主だった筋書きが出揃ったと思われる今、ブラックボックスの解析結果を待つしかない…
少なくとも、米国政府の姿勢は地対空「ブク」ミサイル説を捨てて、ウクライナ軍の戦闘機による撃墜に移行しつつあるようだ。親露派ならびにロシア、さらには、プーチン大統領に責任をなすりつけるべく大々的な宣伝戦を展開してみたけれども、真相を語る証拠の前にはどうしようもなかったということのようだ。 

♞  ♞  ♞
MH17便が撃墜された直後から、まさに717日の当日から、米国・キエフ・NATOEU枢軸ならびにその主要メデイアは政治的な宣伝戦に突入し、「撃墜したのは親露派の分離主義者だ」、「ロシアが支援した」、「プーチンは大悪党だ」という大合唱を始めた。
その背後では証拠の隠ぺいも進められていた。
それに加えて、ロシアに対する経済制裁が発動された。ロシア側は、それに対抗して、EUからの食料品の輸入を停止するとの対抗措置を最近発表した。欧米による経済制裁によってロシアが経済的な打撃を受けるばかりではなく、EU各国もこれによって大きな経済的打撃を受けることが明白になって来た。そうでなくても、経済の持ち直しが非常に微弱であったEU圏においては、昨今の不安定な国際政治の中、同圏内では経済規模が三番目に大きいイタリアがマイナス成長に陥ったとの報告がある。
ロシア政府は、当初、欧米がロシアに対してチラつかせていた経済制裁はブーメランとなって経済制裁を仕掛けた側にも悪影響を与えることになる…と言って牽制をしていた。この予告が、今、現実のものとなって現れようとしている。ヨーロッパ各国の政府は今狼狽しているに違いない。
ロシアとNATO間の戦争はウクライナを戦場とした局地戦から全面戦争に発展する可能性を秘めている。その全面戦争は、遅かれ早かれ、米露間の核戦争となる。そうなったら、地球上の生物はすべてが絶滅する。
核戦争を避ける鍵を握っているのはNATOのお膝元にいるEU諸国の市民だ。
ガザ地区でイスラエル軍が繰り広げている人間性を否定するような一般市民に対する暴力に抗議して、多くの市民が街頭デモに参加している。イエメン、ダブリン、ロンドン、ニューヨーク、モントリオール、マスカット、ザグレブ、バルセロナ、アルジェ、東京、ベルリン、シカゴ、エクアドル、カラカス、クアラルンプール、オタワ、マルタ、アイルランド、モンテビデオ、アムステルダム、テキサス州のオースチン、ワシントンDC、チリ、ブリュッセル、カラチ、ニコシア、ワルシャワ、香港で…まさに世界各地でデモが展開されている。
これと同じようにEU圏の市民の英知や良心を大きな声として政治に反映させなければならない。それに期待するしかないのではないか。 

参照:
1 Shocking Analysis of the ’Shooting Down’of Malaysian MH17: By Peter Haisenko, Jul/30/2014, www.anderweltonline.com/.../shocking-analysis-of-shooti...

2MH17: Pockmarks look like from very, very heavy machine gun fire, says first OSCE monitor on-scene: By Haris Hussain, New Straight Times ONLINE, Aug/07/2014, www.nst.com.my/node/20961


3Deleted BBC Report: Ukrainian Fighter Jet Shot Down MH17, Donetsk Eyewitnesses: By Global Research News, Jul/27/2014, www,globalresearch.ca/deleted-bbc-report-ukrainian-figter-je…