2015年8月27日木曜日

遺伝子組み換え食品には安全性の証拠が出揃ってはいない



遺伝子組み換え(GM)食品や除草剤の安全性に関しては、小生もこのブログで何回か取り上げてみた。

例えば、「モンサントの元社員であった一流専門誌の編集者、その地位から解かれる」を今年の622日に、「モンサントの除草剤と発がん性との関連性 - WHOは公表した調査結果を撤回しそうもない」を今年の65日に、「まさに信じがたい - 遺伝子組み換え作物に反対する人を黙らせようとしたシンジェンタ社の対応」を昨年の67日に、「遺伝子組み換え食品による著しい炎症反応 - 豚を使った試験で」を昨年の66日に、そして、「モンサントの除草剤と腎疾患との関連性」を昨年の62日にそれぞれ投稿した。これらは何れも除草剤そのものやGM食品が健康被害をもたらすことを報告したものである。つまり、安全性が確保されてはいないことを示すものだ。

もちろん、小生がブログで取り上げることができた記事や報告は氷山の一角に過ぎない。また、残念なことには、このブログの読者の皆さんの大部分と同じで、GM食品や食品の安全性に関しては小生はまったくの素人であることから、投稿した記事や報告が全体を代表しているとは到底断言できそうにもない。しかしながら、上記にリストアップした数件の記事を読んだだけでも、GM食品や除草剤の安全性はメーカーが主張している程には安全ではないのではないかと読者の皆さんに理解していただけた、あるいは、そう感じ始めていただけたのではないだろうか。これらの情報が示すように、特に怖いのは長期的な影響だ。


Photo-1: ルーマニアにおける広大な菜種畑 (ブカレストの北東、ウルジチェニ市の手前にて20144月に撮影) 

私が今住んでいるルーマニアは農業が盛んで、広大に広がる菜種畑は花の季節になると特に素晴らしい。しかしながら、GM食品の安全性が実際にはそれ程完璧ではない現状を考えると、この菜種がGM品種だとしたらこの美しい景色も我々に与えてくれる印象はまったく違ったものになるのではないだろうか 景色だけを堪能してはいられなくなるのだ。本質的には、人や動物の安全性のことであるから、曖昧なままに放置しておくことは出来ない。

そこで、本日はGM食品の安全性に関してもう一度おさらいをしておきたい。

最近の記事で「遺伝子組み換え食品の安全性には科学的な証拠が確保されてはいない」と題した恰好の報告 [1] がある。モンサントが市場で販売するGM大豆に関してスウェーデンの専門的な研究機関が発表したものだ。その仮訳を下記に引用して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。


<引用開始>

GM食品の安全性には科学的証拠はない。

「不完全な」科学的知見だけでGM食品が安全であるとするのは「時期尚早」である、とノルウェーの環境庁によって依託された研究報告が述べている。 

Jul/13/2015
報告者: Nafeez Ahmed

本報告はINSURGE INTELLIGENCEによって公開されたもので、この調査報道のプロジェクトのための費用は新方式であるクラウド・ファンディングによって集められた。
皆さんには誰も取り掛かろうとはしないテーマを支援し、グローバルな庶民のための独立した調査報道の後援者になっていただきたいと思う。



ノルウェー政府の依託を受けて、バイオテクノロジーの安全性に関して国家的に認められている権威のある研究機関によって行われた新たな調査が行われた結果、GM作物について入手可能なデータだけではそれらの安全性を証明するには不十分であるとの結論が下された。

この研究報告 [訳注: この報告はSustainability Assessment of Genetically Modified Herbicide Tolerant Cropsと題されている。除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆(IntactaTMRoundup ReadyTM2Pro)のブラジルにおける栽培についてのものだ。Biosafety Report 2014/02。全117頁。201411月発行] はノルウェーの環境庁によって依託されたものであって、ノルウェー北極大学に所属するゲノク・バイオセイフティー・センターによって6月に公開される前に昨年完成となった。ゲノク・センターは国家によって指定されたバイオセイフティーの問題を取り扱う専門的な研究組織である。


証拠が出揃ってはいない:

この新たな研究はアグリビジネスにおける巨大複合企業、モンサントが作成した書類を詳しく吟味するものであって、モンサントの書類はブラジル政府から提供された。さらに、本研究は他の情報源から入手可能な科学的文献に関しても包括的な吟味を行った。

関心の焦点はモンサントのGM大豆、「Intacta Roundup Ready 2 Pro」に向けられている。このGM大豆はブラジルで栽培されており、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイでも認証され、周囲の国々から非合法的に持ち込まれたボリビアでも、多分、栽培されている模様である。

「除草剤耐性型の遺伝子組み換え作物の持続性に関する評価」と題されたこの報告では、科学的文献には非常に大きなギャップが存在することから、GM作物の安全性に関して科学的な判断を下すことは可能ではないと結論された。本報告は次のように述べている。つまり、モンサントの書類は幅広い方法論的な弱点を持っている。また、他の入手可能な文献ではGM作物に関して不完全な情報や研究が報告されていることが問題点のひとつであるとも指摘している。

モンサントによると、GM作物は人間や動物の健康には害がなく、したがって、作物や環境には有害な影響を与えることはないとしている。

しかし、この新たに行われたノルウェーの研究によると下記のような具合だ:

「上記の主張に反して、文献によると、環境や(動物や人間の)健康に対して有害な影響があることが指摘されている。また、社会経済的な状況に悪影響をもたらし、特に、中期的および長期的な影響が指摘されている。」 

この新たな研究は、ボリビアのコチャバンバにあるマヨール・デ・サン・シモン大学の農業・畜産・林業科学学部に所属する農業経済センター(AGRUCO)の研究者であるジョルジーナ・カタコラ・ヴァルガスによって執筆された。カタコラ・ヴァルガスは最近までボリビアの環境・水・林業管理を担当する副大臣のためにバイオセイフティーに関する技術顧問を務めていた。

GM作物の安全性についての主張は特定の試験研究では健康被害の証拠は現れなかったという点に依存したものであって、安全性に関する実際の証拠に依存したものではない」とカタコラ・ヴァルガスは指摘する。

「健康被害の証拠が無いというだけでは人間の健康や環境を守るための基準としてはその水準が余りにも低い… さらには、GM作物に関するほとんどの研究は短期的なものであって、これらの手法は長期的には現出するかも知れない、微妙ではあるが重篤な影響を検出するには適切ではないという点で方法論的な弱点を持っている。もうひとつの良く見られる弱点は、私の報告でも指摘していることではあるが、研究者として意味のある結論を導きたいとする十分な熱意が欠如していることである。」 

彼女の報告によると、「現出するかも知れない長期的な影響」を大部分の研究が無視していること、ならびに、GM作物は肯定的な効果を示しているとする研究の多くは少ない数の反復的な指標を用いていることから来る「方法論的な制約」が存在することから、これらの研究には疑問の余地がある。」 

この種の研究の殆んどはGM作物を他の生産方式(例えば、総合的病害虫管理、無農薬、および、農業生態学的な手法)によって栽培された作物との比較は行ってはおらず、「複数の特徴を持ったGM作物に見られる組み合わせ効果や相加効果」ではなく、むしろ「単一特徴」のGM植物に焦点を当てようとしており、さらには、栽培現場の条件を適切に考慮してはいない実験に基づいたものである。 

「これらの制約は申請者(モンサント)によって報告されている知見がどのような種類のものであるかを部分的に物語っている。つまり、大量の文献があるのとは対照的に、すべての結論は悪影響は現出しないという一点だけだ。」 


モンサントの反論: 

モンサントの広報役を務めるマーク・バッキンガムは本報告書の結論を退けた。

GM作物の安全性を適切に評価することは可能であり、我々は実際に評価を行っている。農家が栽培しているGM作物は安全であり、伝統的な作物や食品に比べてもより安全であるという事例さえもが見つかっている」と彼は述べた。 

EUの資金によって調査が行われ、2010年に欧州委員会によって出版された調査の概要によると、「現在のところ、伝統的な植物や生物と比較して、GM作物が環境や食品・飼料の安全性に関してより危険性が高いということを示す科学的証拠はない。」 

GM作物は科学者や植物育種家によって「安全であるようにデザインされる。」その一方、国内や国際的な規制当局は「作物が安全であることをチェックし、消費者を守る」ことが仕事であり、彼らがGM作物を認証する。

GM作物は、19年前の1990年代の半ばに初めて大規模栽培が行われて以来、世界中の人たちによって何億もの食事の素材として安全に消費されてきた。何らの健康被害も観察されてはいない。GM作物には安全の実績がある」と、モンサントの広報担当者は言った。

しかしながら、この新しい研究の著者はこれに反論した。ノルウェーの環境庁の要請に基づいて、この報告はモンサントの「インタクタ」という名称のGM作物の特徴である除草剤耐性に関して吟味することに焦点を絞った。

「文献を見ると、最近の科学的研究が数多くあって、それらはまさに潜在的な悪影響を示唆している」とカタコラ・ヴァルガスは述べ、モンサントのコメントは単にインタクタの昆虫耐性を言及しているだけであると指摘した。

作物のある特定な効果に関する研究に対して選択的に焦点を当てることによって、モンサントや他のバイオテクノロジー企業は公衆を間違った方向へ導こうとしている。

彼女はさらに追加して次にように言った。このEU2010年の概要はノルウェーの新しい研究報告によっても参照されているが、「これは決して多くはないインタクタに関する具体的な研究のひとつである。これらの少数の論文は、証拠を示すという観点からは、インタクタは環境にも人間の健康にも安全であると肯定するには不完全である」と。もしもGM作物の持続性に関する総合的な解析が不完全であるならば、それはGM作物の安全性や持続性に関して得られている知識が不完全であるからに他ならない。GM作物の安全性を示す証拠よりももっと多くの未知の事柄が存在しているのが現状だ。」


モンサントの旗艦的な存在であるGM作物がWHOの非難を受ける: 

このノルウェーからの新しい研究報告は折からのバイオテクノロジー・食品業界にとっては相次ぐ悪いニュースの時期と重なった。アブラムシを寄せ付けない特性を持つと言われているGM小麦に関して多くの費用がかかる試用研究が2年間にもわたって「ロスアムステッド・リサーチ」によって実施されたが、計画していた結果を得ることには見事に失敗した。

GM作物のほとんどはモンサントが特許を有するラウンドアップ・レディーの特性を持っている。しかし、この3月、WHOの癌部門がランセット誌にラウンドアップは「恐らく、人間に対して発がん性がある」とする評価結果を発表した。

この研究は2001年以降、主として米国、カナダおよびスウェーデンの農業従事者についてではあるが、ラウンドアップに対する人間の暴露に関して評価を行った。その結果、驚いたことには、「限定的な証拠であるとは言え、人間に対して発がん性があって、非ホジキンリンパ腫を引き起こし」、それだけではなく、「グリフォサートは研究用の動物に対して発がん性があるという説得力のある証拠が見つかった」と報告した。

Genewatch UK」と称する活動家グループのヘレン・ウオレス博士によると、モンサントのGM作物は「GM作物の農地では一面に散布される雑草退治用のラウンドアップに対して耐性を獲得した「スーパー雑草」が現れて来たことによって、現場では失敗続きである。」 

「実験用のGM作物での高い失敗率」が観察されているにもかかわらず、「Genewatch UK」は次のような現状を指摘している。「政府系の科学者や関係大臣たち、ならびに、産業界はGM作物を英国内の市場に復権させ、規制を弱めようとする」PR戦略に注力していると述べている。

こうして、産業界や政府からの大量の資金が学会の科学者らに流れ、産業界に対して好意的で、悪影響を軽視するようなGM作物についての研究を奨励することとなる。

新たなスウェーデンの研究の著者であるカタコラ・ヴァルガスは、現時点での知識の水準においては、「GM作物が安全であると判断することは時期尚早である」と述べている。「現時点では、GM作物に関して多くの研究をすればするほど、より多くの新たな疑問や不確実性が現れて来る」と言う。

加えるに、低入力農法や農業生態学的な取り組み、あるいは、農民による家族農法といった非GM系の農業が政府から受ける関心は不十分極まりない、と彼女は言う。

これらの非GM系生産システムは「十分な量の安全な食料や飼料を生産する能力を持っていることを示して来たし、それに必要なエネルギーや資源の量も少なくて済む。他の生産方式に比較してGM作物が如何に安全であり、如何に多くの恩恵をもたらすかを正当に主張することができるだけの証拠を示せる科学的研究をデザインするには、我々の前にはまだまだ長い道のりが横たわっている。」 

GM作物を食物連鎖の中に組み入れることに対して一般消費者が抱く懸念は増加するばかりであり、産業界が主張したいこととは矛盾するような科学的研究は抑え込みたいとする産業界の役割に関しても懸念は増加するばかりであることから、これらの知見は火に油を注ぐことになりそうだ。



ナフェーズ・アーメド博士は調査報道ジャーナリストであって、彼の著作はベストセラーとなった。国際安全保障に関する学者でもある。以前はガーデイアン紙でも執筆した。今はオンラインマガジンである「VICE」誌の「マザーボード」にある「システム・シフト」というコラムに寄稿し、さらには「Middle East Eye」のコラムニストも務めている。

彼はガーデイアン紙での卓越した調査報道によって「代替ピューリッツー賞」として知られている「2015 Project Censored Award」を受賞し、イブニング・スタンダード紙が主催する「ロンドン市民の中で世界に対してもっとも影響力のある1000人」のひとりに選出された。

ナフェーズ博士はインデペンデント紙、サンデー・モーニング・ヘラルド紙、(オーストラリアの)エージ紙、スコッツマン紙、フォーリン・ポリシー誌、アトランテイック誌、クオーツ・ビジネスサイト、プロスペクト誌、ニュー・ステイツマン誌、ル・モンド・デイプロマテイーク誌、ニュー・インターナショナリスト誌、カウンターパンチ誌、トルースアウト・オンライン・ニューズレター、等に寄稿。アングリア・ラスキン大学の科学・テクノロジー学部の客員研究員でもある。

ナフェーズ博士の著書としてはA User’s Guide to the Crisis of Civilization: And How to Save It (2010)、科学フィクション分野でのスリラー小説である ZERO POINT 等が挙げられる。国際テロリズムとリンクした要因や秘密裏の作戦を扱う彼の作品は「911コミッション」や(200577日にロンドンで起こったテロに関する)77検視官の審問」をもたらした。

<引用終了>


GM作物や除草剤の安全性については巨大企業による拡販戦略が先に立ってしまって、消費者にとってはもっとも大切な筈の安全性が置いてけぼりをくってしまった。資本の論理が先行し、人間の健康や環境は新自由主義や規制緩和に逆手を取られた感じがする。まったく本末転倒である。

GM作物が安全であると判断することは時期尚早である。現時点では、GM作物に関して多くの研究をすればするほど、より多くの新たな疑問や不確実性が現れて来る」との結論を導いたこの研究報告に喝采を送りたいと思う。

また、モンサント社ならびに同業他社はここに引用された科学者らの報告を真摯に受け止め、その市場開拓戦略については抜本的な見直しを行い、一般消費者の長期的な安全性を確保して貰いたいと思う。その方針を実行し、成果を見るまでには長期の時間と多大な資源の投入が必要となることだろう。しかし、それらは、基本的にはモンサントの手によってすでに実施されていて当然であると判断される性格のものであることには論を待たない。


参照:

1No scientific evidence of GM food safety: By Nafeez Ahmed, INSURGE Intelligence, Jul/13/2015




2015年8月22日土曜日

プロパガンダの場と化してしまったウィキペディア - MH17便の例



情報源としてウィキペディアを参照することは頻繁にある。これはデジタル化された情報が持つ利便性が我々をそう仕向けているからだと思う。まさにテクノロジーの恩恵である。検索する案件は政治や経済、あるいは、時事問題や歴史であったりする。ウィキペディアによって取り扱われている分野は膨大で、際限が無いかに見える。

その結果であるとは思うが、最近は、分厚い百科事典を引っ張り出して、ページをめくるという作業が何だか億劫にさえ感じられる程だ。我々はすっかり甘やかされてしまっている。

ところが、そのウィキペディアが客観性を失い、偏向した説明や記述しかしていないならば、あなたはウィキペディアをどう思うだろうか。これはもうインターネット百科事典としてのウィキペディアの存在そのものを揺るがすような一大事である。

MH17便の撃墜事件との関連から見たウィキペディアの偏向振りを批判する記事 [1] が見つかった。

この記事によって関連情報がここまでも操作され、ウィキペディアが関係政府の都合のよい宣伝の道具と化してしまっている事実を皆が知ることにはなるが、この記事を足掛かりにして、国際政治に地政学的な野望が横行することは避けては通れそうもない折柄、MH17便の事例を冷静に観察してみたいと思う。

また、MH17便の事故は298人にものぼる犠牲者を出しているだけに、歴史家である著者が事実だけを直視しようとする真剣な態度には敬意を表したくなるほどだ。愛する家族の一員を失った遺族の方々にとっては、今なお結論が得られない国際調査団とは対照的に、この著者が示す見識は喉から手が出る程の存在ではないだろうか?

<引用開始>

Photo-1
ウィキペディアの記事は歴史的な説明と言うよりも、むしろより多く宣伝の場と化してしまった。多くの場合、ウィキペディアに参照されている情報源は誤解を招く恐れがあり、時には完全な間違いであることさえもある。
2007815日、“Wikipedia Shows CIA Page Edits,” と題して、「登録内容の編集にはCIAが絡んでいることが判明した」とBBCのジョナサン・ファイルズが報道した。これはウィキペディアのページを編集する組織の素性を明かすことが出来ると言われているオンライン・ツールを駆使して判明したことだった。すなわち、CIA にとって都合が良くない情報に関しては、彼らはそれを除外したり、変更したりすることが出来るのである(そして、そうしている)。
最近、2015625日のことではあるが、「reddit[訳注:ニュース記事や画像などを紹介し、感想を求めるソーシャル・ニュース・サイト] の匿名のポスター、「ムース」が18種類の内容の違ったニュース記事をリストアップし、互いの記事を直接関連付けしていたこれらのニュース源はニューヨークタイムズやワシントンポスト、テレグラフ、ミラー、ガーディアン、およびニューズウィーク、等のメディアであり、CIAばかりではなく米政府の他の省庁や大企業さえもがウィキペデアの編集に関与していると報告している。この人物は「スキャンダルの渦中にあるウィキペディアのボスが辞任し、報酬を受けて行う編集を防御している」と述べ、ウィキペディア自身をニュース報告の対象として取り上げた。ウィキペディア自身の腐敗が報じられているのである。そこに報告されている他のニュースの殆んどは、報酬は受けとらいないものの、CIAや米議会、英国議会、DCRI(フランスの諜報機関)の職員、大企業の従業員、自己本位に走る個人、他によって行われている諸々の編集作業に関するものである。ある記事は「全ロ国営テレビ・ラジオ放送公社(VGTRK)は民間航空機事故を報じるページのロシア語版を書き換え、MH17便はウクライナ軍によって撃墜されたと記述している」と報告している。基本的に言って、ウィキペディアは数多くの自己本位な情報源によってすっかり汚染されてしまった「情報」の川のような存在であることが暴露されたのだと言えよう。つまり、「ウィキペディアはニューヨークタイムズやワシントンポスト、テレグラフ、ミラー、ガーディアン、あるいは、ニューズウィークよりも信頼できるというわけでは決してない。」 
これはまったく信頼が置けない。例えば、2002年から2003年にかけて、サダム・フセインは「大量破壊兵器」を備蓄していると皆が理解していた。誰もがそのように報じるニュース記事を読んでいたからだ。結果として、ウィキペディアがそういった記事にリンクを掛けると、ウィキペディアは嘘を拡散するだけの存在となる。結局、ニューヨークタイムズやワシントンポストは、あたかもそれらのニュースが真実を伝えているかの如くにホワイトハウスから流された嘘を、速記者のように、右から左へと「報告」しているに過ぎなかった。出版者の名声は正直さ(つまり、整合性や注意深さ)とは何の関係もないのである。速記者のような「ニュース」報道は、たとえニュースを伝える母体が有名で賞賛されていると言っても、真のニュース報道とは言えない。皮肉なことには、もっとも信頼の置けない幾つかの「ニュース」メディアがトップレベルの名声を誇っている。
ウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空の旅客機:
一例を挙げると、2014717日に撃墜されたマレーシア航空のMH17便に関するウィキペディアの英語版は米国政府およびその職員によって作成されたものであって、破廉恥な宣伝道具である。現時点では脚注には320もの情報が動員されているが、この旅客機を撃墜したのはウクライナ軍であるとの証拠を示す多くの記事(ほとんどが外国のメディアによる報道)が存在するにもかかわらず、いずれも参照されてはいないのだ。まったく言及されてはいない項目の中には幾つかの重要な疑問点がある。例えば、ウクライナ政府はMH17便の事故の調査に従事する公式の4カ国(オランダ、ベルギー、オーストラリアおよびウクライナ)が発行する最終報告書に対しては拒否権が与えられているが、これは何故か? 疑惑の目を向けられているふたつの主要な国のひとつがウクライナ自身であるにもかかわらず、ウクライナはどうしてこの調査団の一員として加えられたのか?
パイロットの座席の直ぐ側にあるサイド・パネルには30ミリの弾丸による穴 が無数に開けられているにもかかわらず、この長ったらしいウィキペディアの記述ではそのことについて何も触れてはいないのは何故か?(もしも、ウィキペディアが想定するように、この旅客機がミサイルだけで撃墜されたとすれば、機銃による穴はまったく無いか、ずっと少ない筈である。)この惨劇が実際にはどのように起こったのかをもっと良く示す証となる筈ではあるが、最初の解析結果はウィキペディアの記述からはまったく無視されている。これは何故か?結局、サイド・パネルの解析結果はその後他の信頼できる証拠によって確認されてはいるが、これらについてもウィキペディアの記述はそれらすべてを無視している始末だ。
私はウィキペディアの幾つかの記事を編集したことがある。しかし、私はMH17便に関する記事を編集しようとは思わない。何故かと言うと、日和見的な情報源やその他の悪意のある情報源によって余りにも徹底的に改ざんされてしまっていることから、全面的な書き換えが必要となるからだ。この記述を通じて個々の詳細事項に関して最適の証拠に根ざした説明を提供するには、偽りの「証拠」はすべて排除しなければならない。現行のウィキペディアの記述は完全に反ロ的プロパガンダに乗っかったものである。これはCIA によって書かれたものであるからかも知れない(ちょうど、「サダム・フセイン」の大量破壊兵器の説明のようにだ)。
MH17便の撃墜に関する米国のプロパガンダを確認したい向きには、ウィキペディアの記述をこちら に示す。
こちら にはMH17便の撃墜に関して私自身が作成した最新の記事を示す。
こちら には私が作成したもっとも包括的な記事を示す。これは旅客機をどのように、何故に、そして、いったい誰が撃墜したのかに関して証拠に基づいて再構築してみたものである。
私の論点の中核はハイセンコが最初に公衆の関心を呼ぶことになった証拠物件と同じだ。例のサイド・パネルである。基本的に、私は旅客機の撃墜に関して彼が示した再構成を支持する立場にあるが、私は追加的な証拠を提示し、補足している。記事の中に示したリンクをクリックして、記事の中では直接説明をしてはいない事項に関してさらなる疑問をお持ちの方は、それが何に関することであろうとも、もっと深く解析された証拠を確認していただきたいと思う。
著者の記事は、ウィキペディアの記述に比べると、遥かに少数の証拠を取り上げているだけである。それは、取り上げた詳細事項に関しては、もっとも信頼性の高い証拠を除き、私はすべてを除外したからだ。世間には不確かな情報に基づいた推測が実に多く、嘘の「証拠」が何と多いことか。したがって、私自身が従うべき原則はもっとも信頼性が高く、改ざんされてはいない証拠に基づいて展開された見解だけを取り上げること、そして、推測の度合いがもっとも少ないものに依存することにしている。これこそが司法の場でとるべき態度である。このことは、信ぴょう性や信頼性について言えば、現代の法的・法医学的な基準を満たさない証拠については判事はそれらを陪審員に示す証拠には含めないという権限を付与されている理由でもある。このような手法によってこそ、偏向のない陪審員の評決が可能となる。単なる作り話とは対照的に、これこそが歴史を語る際の前提条件である。
これが私自身がMH17便について作成した記事と320個もの引用記事によって構築されているウィキペディアの記述との間の違いである。そして、この違いは、「マレーシア航空17便という同一のテーマに関して、私の記事をウィキペディアのそれからは完全に切り離すものでもある。
ウィキペディアの説明の何が悪いのかと言うと、それはサイド・パネルに残された30ミリの弾丸によって形成された穴について言及してはいない点にある。この証拠はこの旅客機がどのようにして撃墜されたのかという米国・ウクライナの説明(ウィキペディアの説明)とはまったく辻褄が合わない。(ウィキペディアは、その代わりに、「ブク・ミサイル発射装置」で頭が一杯になっている。)これは米国とウクライナの両政府によって提唱された説であって、この説は弾丸によって形成された穴とは基本的には両立するものではない。33,000フィートもの高空で弾丸による穴を地上から生じさせることは出来ない。)そして、ウィキペディアの記事はピーター・ハイセンコのことを参照してはいない。彼はルフトハンザの優秀な元パイロットであり、彼はサイド・パネルに生じた弾丸の穴を指摘した最初の人物である。また、この旅客機を撃墜したのは33,000フィート下方の地上から発射されたミサイルから飛び出したシュラップネルだけであったとすれば、パイロットの体へ直接撃ち込まれた弾丸によって無数の穴が形成されることはなかったであろうと彼は言う。単純に言って、33,000フィートも下方の地上からパイロットの腹部を狙って、無数の弾丸を撃ち込むことは出来そうにはない。このサイド・パネルの存在によって、米国・ウクライナの論理は覆され、ウィキペディアのプロパガンダ臭に満ちた記述も同様の運命にある。
そして、パイロットの死体解剖の結果は何故公開されないのだろうか?死体の中に何が発見されたのかは誰もが知る必要がある。しかし、ウィキペディアや「ニュース」メディアはいずれもこの非常に基本的な疑問に興味を示そうとはしない。
我々は民主主義の社会に住んではいないのだ。紛れもなく、これは専制主義である。理性が豊かで独立心が旺盛な市民にとっては、「ニュース」メディアを信用することはできない。真実を追求するには、(不幸極まりないが)自分で調査を行い、もっともしっかりした証拠に基づいている主張や憶測の範囲が最低限に抑えられている主張こそが本物の歴史を支えるのだとする態度を断固として維持する必要がある。これは歴史以外においても同様である。それを除くと、すべてが「ニュース」メディアを日常的に信用し、単に嘘や作り話を受け入れることに等しく、市民に情報を流す代わりに、(イラクへの侵攻を行った時のように)市民を巧みに操作するためにデザインされている。「ニュース」メディアを信用しない理由は山ほどある。そして、ウィキペディアも大衆が操作されているのとまったく同様に操作されているのである。
我々は今真実から引き出された嘘や作り話の文化の中で生きている。 換言すると、我々は専制主義の社会に生きている。それが今日の米国の姿である。それが我々が生きている現実であると言える。そして、もっとも大きな嘘は「いや、そうではない」という断言だ。しかしながら、哀しいかな、証拠が証明している。我々は嘘の中で生きている。明らかに、それは事実だ。
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注: 調査報道に徹する歴史家のエリック・ズエスは著作を行い、最近の著作としてはThey’re Not Even Close: The Democratic vs. Republican Economic Records, 1910-2010,  CHRIST’S VENTRILOQUISTS: The Event that Created Christianityがある。
<引用終了>


ウィキペディアの日本語版を調べてみた。マレーシア航空17便撃墜事」と題した記述が「ハイセンコ」を参照している様子は見当たらない。「ハイセンコ」という言葉を検索しても、ひとつも引っかからないのである。日本語版は英語版の原文を翻訳したものであるから、このブログが引用する記事の著者であるエリック・ズエスが述べている通りの実態が日本語版で観察される。つまり、日本語版についても、英語の原文と同様、記述内容の信ぴょう性は地に落ちたと言える。

ウィキペディアはどれだけの自浄能力を持っているのだろうか?ウィキペディアの利便性が証明され、広く使用されている今、オンライン百科辞典として本来求められている客観性や信ぴょう性を取り戻して欲しいものだ。ウィキペディアを運営するウィキメディア財団は、明らかに、そう努力しなければならない。


参照:

1Wikipedia as Propaganda Not History - MH17 as an Example: By Eric Zuesse, Jul/08/2015, www.washingtonsblog.com > Home > General