2016年9月29日木曜日

米国はロシアとの協調体制を確立する機会を繰り返して逸してしまった



2001年の911同時多発テロの後、米国はテロを撲滅すると宣言した。それを受けて、ロシアは米国に対して対テロ活動のために全面的な協力を提供した。たとえば、アフガニスタンへの米軍の武器や兵力の輸送にはアフガニスタンと接するロシア領内の通過を容認し、さらには、アフガニスタンに関する諜報を提供した。米国にとっては、これは貴重な支援であったに違いない。

しかしながら、この米ロ協調体制は長くは続かなかった。

どうして長続きしなかったのか?

ここに、「米国はロシアとの協調体制を確立する機会を繰り返して逸してしまった」との表題を持つ、興味深い記事 [1] がある。つい先日、924日付けの記事だ。

プーチン大統領を悪魔視することは決して米国の安全保障のためにはならない、と著名な教授が述べている。しかしながら、ひと言付け加えると、西側の大手メディアはこの種の記事が出回ることは好まない。軍産複合体が標榜する筋書きにはまったく一致しないからだ。こうして、一般大衆は継続的に偏向報道に晒される。

この記事がワシントンポスト紙に掲載されたとは驚きでさえもある。私の理解ところでは、ワシントンポスト紙はニューヨークタイムズ紙と並ぶ御用メディアであるからだ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。


<引用開始>


 Photo-1: © AP Photo/ Evan Vucci, ファイルの写真から

米国と合同でテロリズムと闘うためにロシアがワシントン政府との良好な関係を築き上げようとしていかに働きかけても、米国の「タカ派」は米ロ協調という名のついたリンゴ運搬車を繰り返してひっくり返してしまった。

15年前、ワシントン政府にはモスクワ政府との間で両者にとって有益な関係を築き上げる機会があった。

15年前、短期間であったとは言え、ワシントンとモスクワの両政府にとっては安全保障問題でより恒久的な関係を築き上げる絶好の機会があった」と、ジョージタウン大学の「ユーラシア大陸・ロシア・東ヨーロッパ研究センター」(CERES)で教授を務めるアンドリュー・C・クーチンズ博士はワシントンポスト紙の論説コラムで述べている。

 Photo-2: © Sputnik/ Michael Klimentyev。 脅威だって?「ワシントン政府はプーチン大統領がいかに西側に対して手を差し伸べてきたかを忘れてしまっている」 

元米政府高官の言葉を引用して、クーチンズ博士は、2001年の9/11 同時多発テロの後、米国が行おうとしていたアフガニスタンでの軍事行動に対してロシアが多くの支援をしてくれたことを思い出させてくれた。ロシアは米国が主導する同盟軍に対して諜報や兵站における支援を提供したのだ。

ニューヨーク大学とプリンストン大学でロシア学の名誉教授を務めるスティーブン・F・コーエンも、この5月に行われたジョン・バチェラー・ショウと称されるラジオ番組のインタビューで、9/11 同時多発テロ直後の米ロ関係を特徴づけて、これと非常に似通った発言をしている。

9/11の後、ウラジミール・プーチンはジョージ・W・ブッシュに軍事施設の便宜を図ったり、アフガニスタンに関する諜報およびアクセスのルートを提供して、タリバンに対する米国の地上戦のために大きな支援をしてくれた。プーチンの支援は何百人もの米兵士の命を救った。あるいは、何千人にもなったかも知れない」と、コーエン教授は強調する。

しかしながら、ブッシュ政権はロシアを対等なパートナーとして処遇しようとはしなかった。

「ロシアによるアフガニスタンでの支援が開始されて数か月もすると、ワシントン政府はABM条約(弾道弾仰撃ミサイル制限条約)から撤退すると宣言した。そして、米国はNATO2004年にバルト諸国を迎え入れると発表した」と、クーチンズ教授は強調している。

当時のジョージ・W・ブッシュ大統領はロシアとの関係を改善したかったが、ドナルド・H・ラムズフェルド国防長官や他の高官らが米ロ協調には強く反対した、と同教授は述べた。

クーチンズ博士は、名前は不明ではあるが、元米政府高官のひとりが述べたこととして、「ラムズフェルドはロシアは二等国の強国であって、何の値打ちもないと見なしていた」と引用している。

 Photo-3: © REUTERS/ Brendan McDermid。 米ロ間の緊張緩和2.0NATOに関するトランプの批判はどうして当を得ているのか

米ロ間の溝は2004年に北コーカサスのベスラン第1中学校で起こったテロ攻撃以降に現れたと彼は言う。この研究者によると、あの悲劇を節目として、9/11の事件後に始まった米ロ協調路線は短期間のうちに終わってしまった。

しかしながら、アトランティック誌のジェフリー・テイラーによると、節目は「NATOが継続してヨーロッパで拡大したこと」にあり、1999年にロシアの歴史的な盟友であるユーゴスラビアを空爆したこともあって、これらの出来事によって「モスクワ政府の西側との関係はより厄介なものになり始めた。」

言うまでもなく、米国の後押しを受けて2004年にウクライナで起こった「オレンジ革命」、ならびに、2008年の北京オリンピックの最中にジョージアのミカエル・サーカシビリ大統領が起こした南オセチアに対する軍事侵攻はまさに踏んだり蹴ったりであった。南オセチアに対する侵攻はブッシュ政権の暗黙の了解の下に始まったばかりではなく、当時、ブッシュによって自分の後継者として自他ともに認められていたジョン・マケイン大統領候補は「本日、われわれは皆がジョージア人である」と言って、サーカシビリの動きを熱烈に支持した。

2011年にリビアの指導者であるムアンマル・カダフィに対して行われた米国主導のNATOによる軍事行動は我慢の限度を超えさせるものとなった、と専門家らの意見は一致している。




Photo-4: © REUTERS/ 米空軍の上級将校マシュー・ブラッチ/資料。失敗の連続: ワシントン政府はシリアの反政府派をしっかりと制御することができない

「あの年の秋、私は外国の専門家たちとの間で開催される年次会合に出席していたが、プーチン大統領は激怒をチラッと見せて、NATOの行動は「野暮な違反」であると指摘し、延々と語った。これはシリアのバシャル・アル・アサドにはリビアの殺害された指導者と同じ運命を辿ることは決して許さないとする彼からのメッセージであった」と、クーチンズ博士は回想する。 

一見したところ、歴史はシリアでも繰り返している。シリアでは状況はどうにか均衡を保っている。イスラム国と闘うためにはワシントン政府と組みたいとするロシア側の度重なる努力にもかかわらず、米国の「戦争屋」は米ロ協調の将来については懐疑的なままである。

ペンタゴンはシリアに関する米ロ合意を何としてでも覆そうとしている、とロシアの専門家であり、中東・コーカサスに関するシンクタンクの所長でもあるスタニスラフ・タラソフは推測する。

「それは(Deir ez-Zor近郊の)シリア政府軍の陣地に対して空爆を実施したことやアレッポの近くで人道支援物資を輸送する車列をロシア側が空爆したとうそぶいて、非難したことによって証明された」と、タラソフはロシアのオンライン紙「Vzglyad」で語っている。

「ここで認識しておきたい点がある。米国務省の長官を務めるジョン・ケリーは間もなく任期が切れる政府を代表しており、彼らにとってはシリアに関して、選挙前に、少なくとも何らかの合意に達しておくことが外交上の原則である。その一方、ペンタゴンにとっては国務省の計画を台無しにすることだ」と、この専門家は指摘する。

ペンタゴンと国務省とが秘密の政府内の闘争に明け暮れている中、シリアでは状況が悪化するばかりである。

「米国が自国の安全保障に到達することができる道はモスクワを経由している」と、コーエン教授はジョン・バチェラー・ショウ番組のインタビューで強調している。

「プーチンを悪魔視し、プーチンを拒絶すればする程、われわれは組織的に自分たちの国家の安全保障を損なう。そのテーマが核拡散であろうと、テロリズムや環境問題、あるいは、国際経済であろうとも、プーチンを悪魔視することは米国の安全保障を組織的に無視することと等しい」と、同教授は警告している。

関連記事:
US Massacre of Syrian Soldiers Exposes Washington's Mendacity
Deir ez-Zor Attack 'Further Poisoned Mistrustful Relations' Between US, Russia
Washington 'Unable to Make Syrian Rebels Adhere to Ceasefire Deal'

<引用終了>


これで仮訳は終わった。

米国がロシアとの協調を実現できない要因は何かと言うと、この引用記事によると、最大の要因はペンタゴン(軍部)と国務省(外交)との間の主導権争いである。

シリアやウクライナではどちらが米国の政策に関して主導権を握っているのだろうか。シリア紛争の展開を評して、シリアのある政治家は「(米国の)外交は飾り物でしかない」と言った。結局、軍産複合体の利益のためにさまざまな策を展開しようとするペンタゴンのやりたい放題だということだ。

サダム・フセインが大量破壊兵器を所有しているとしてイラク戦争に踏み込んだ米国は大失敗を仕出かした。大量破壊兵器はどこにも見つからなかったのだ。今も、イラクは大混乱のままである。イラクだけではなく、アメリカが触手を動かされる資源が豊かな国では決まったように無政府状態に陥り、何十万、あるいは、何百万もの無辜の市民が殺害され、大混乱が待っている。大混乱になればなるほど、米国では莫大な軍事費が浪費される。軍産複合体にとってはこれ程有難い話はない。

こうした大失敗を比較的最近に経験しているにもかかわらず、米国議会やペンタゴンの高官らは多くが長い眠りから覚めてはいない。少なくとも、私にはそう思えてならない。そして、ほとんどの一般市民も同様である。米国では、例外主義、単独覇権、グローバリズム、ネオキャピタリズム、等、彼らを夢中にさせ、自己陶酔させ、あるいは、妄想に走らせるイデオロギーには事欠かないようだ。 

米国はイスラム国に対する戦争にはまったく気が進まないようだ。しかしながら、ロシアを最大の敵と見なすことには一生懸命になっている。これはいったいなぜかという命題に対して、あるジャーナリストが単刀直入な答をしている。要約すると、それは、イスラム国相手の戦争では金にはならないからだ。それに比べて、ロシアが相手であれば、全ヨーロッパを巻き込むことが可能であるから、NATO全体を動かすような大きな軍事的展開となる。米国の軍産複合体が欲しがっている高利潤のビジネス・チャンスとなるのだ。こうして、新冷戦が始まった。

さらなる詳細については、「芳ちゃんのブログ」にて「NATOはロシアを最大の敵として見るのか?なぜイスラム国ではないのか?」と題した725日の投稿をご一覧願いたい。

米国の経済構造はそのようなレベルにまで堕ちてしまったということだ

そして、政治家の場合、次回の選挙で自分が再選されるかどうかを考えると、当面の政治的潮流には逆らうこともなく、それに乗っかっていた方が無難だとする判断が意識的に、あるいは、無意識的に働いているのではないか。残念ながら、そこには真の政治家らしい洞察や将来像はまったく見られず、打算しかない。


米国人の長い眠りを覚ます方法は今のところひとつしかない。好むと好まざるとにかかわらず、米国では頻繁に行われている内部告発だけではないだろうか。たとえば、歴史的な事例から何らかの手法を掘り出そうとすれば、実は先例があるのだ。米国がベトナム戦争の泥沼にのめり込んでいた頃、機密扱いの「ペンタゴン・ペーパー」がダニエル・エルスバーグによって報道機関に漏洩された。その結果、ニクソン政権の終焉をもたらし、ベトナム戦争の終結に貢献した。

しかし、今進行しつつある米ロ間の新冷戦を終結させるには、いったいどんな内部告発があり得るのだろうか。私には見当も付かない。さらには、内部告発と言うと物騒な話として受けとられる。多くの国では内部告発は違法行為となる。

もっと穏当な手段を考えてみよう。少なくともひとつ言えるのは、米国人はロシアについてもっともっと多くの事を学ぶべきだ。2年前にウクライナ紛争が起こった時、大多数の米国人はウクライナの場所さえも正確に指し示すことはできなかったと報道されている。これが現実である。誤解されることを恐れずに言えば、米国人はロシアを知らな過ぎる。そして、われわれ日本人も然りだ。ロシアを学ぶ近道はロシアへ旅行し、ロシアでの生活を体験し、一人でも多くのロシア市民と交流することだと思う。

米国はそれとはまったく逆の方向へ進んでいるとしか思えない。

一例を挙げると、今年の夏、リオ五輪では目に余るロシア・バッシングが横行した。薬物の使用は多分に個人的な次元での話である。それにもかかわらず、トラック競技に参加するロシア人選手たちは十把一絡げで五輪への参加を拒否された。競技参加者のレベルにおいてさえも、ロシア人選手に対するあからさまな嫌がらせが見られた。たとえば、ある種目で表彰台に登った3人の選手のひとりはロシア人で、他のふたりは米国人であった。ここで何が起こったか。ロシア人選手が求めてきた握手を米国人選手が拒否したのである。これを見た時、我が目を疑った。

米国主導の新冷戦の延長として、ロシア・バッシングは国際政治とは関係がない筈の五輪の運営にまでも影を落とし、さらには、競技会場における選手の行動にさえも及んだのである。

ロシア市民との交流を深めることによって、米国市民がロシアを少しでも理解し始め、ロシアを国際政治のパートナーとして考えるならば、新冷戦を中断させることができるかも知れない。そして、最終的には、多くの人たちが心配し始めている米ロ核戦争を回避することができるかもしれない。

現状のままで、米国およびその同盟国(日本を含む)がロシアとの和平に向けて何の努力もせず、新冷戦が進行するのを座視し続けることはまさに愚の骨頂である。


新冷戦の状況が現在のまま継続する場合を想定して、その行方を孫子の兵法を拝借して占ってみよう:

1彼を知りて己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。
2)彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
3)彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし

米国は今(2)あるいは(3)の状況にあるのではないだろうか。

軍産複合体が米国の外交を牛耳ってしまって、外交は単なる飾り物にしか過ぎないという現状が続くとすれば、残念ながら、この可能性は高まるばかりだ。そして、そこには日本も巻き込まれていることだろう。



参照:

1US Has Repeatedly Missed its Chance to Establish Partnership With Russia: By Sputnik, Sep/24/2016, sputniknews.com/.../us-russia-partnership-security.html





2016年9月26日月曜日

壮大なるチェス盤は見事に壊れた - ブレジンスキー、全世界に対する米国の覇権をついに諦める



米国の世界に対する覇権やロシアとの新冷戦、あるいは、中国包囲網を論じる時、ブレジンスキーの名前が決まったように登場する。

ズビグニュー・ブレジンスキーはそれ程に米国の対外政策に影響を与えて来た人物だ。彼はカーター政権時代(19771月から19811月まで)には安全保障担当の大統領補佐官を務め、それ以降半世紀近くにわたって陰に陽に米国の外交政策にかかわってきた。外交政策の分野ではヘンリー・キシンジャーと並ぶ大物である。特に、対ロシア政策に関しては、1989年の東欧革命時における最大級の黒幕であったとも言われている。その後も、ブレジンスキーは米国における外交政策の頭脳として活躍してきた。オバマ政権では外交顧問を務めている。したがって、オバマ政権の政策は多分にブレジンスキーの戦略が反映されているとも言えよう。

彼の著書のひとつにThe Grand Chessboard: American Primacy and its Geostrategic Imperatives, (Basic Books, 1997)があり、日本では2冊の翻訳書が出版されている。山岡洋一訳『ブレジンスキーの世界はこう動く――21世紀の地政戦略ゲーム』(日本経済新聞社、1998年)『地政学で世界を読む――21世紀のユーラシア覇権ゲーム』(日経ビジネス人文庫, 2003)である。要は、ユーラシア大陸を制した者が世界の覇権国になるという考え方だ。

米国の対外政策はこの著書に示された思想にしたがって実際に動いて来たと思われる。たとえば、冷戦の終結後、旧ソ連邦諸国ではあちらこちらで「色の革命」が起こった。

セルビアでは200110月、「ビロード革命」によって長期にわたって政権を維持していたミロセビッチ大統領が下野した。この時の市民革命の進め方が後に他の国々で起こる一連の市民革命の手本になったと報じられている。2003年の「バラ革命」によってグルジアのシュワルナゼ首相が退陣に追い込まれ、200412月にはウクライナ(ロシアの隣国)で「オレンジ革命」が勃発、20053月には「チューリップ革命」がキルギス(この国は中国と接している)で起こった。こうして、セルビアを始めとして四つの旧ソ連邦の衛星国が、色の革命をきっかけにして、ロシア連邦の影響圏から離脱して行った。

東欧での色の革命から中東における「アラブの春」へと引き継がれていった。最近の事例では、2014年の9月から12月にかけて香港で起こった「こうもり傘運動」と称される抗議デモもこの流れにある。

これらの動きの背景には米国政府やNGOによる情報提供、親米派を育てるための奨学金の提供、活動家の訓練、資金供給があったと言われている。

これらの非暴力革命の手法は、セルビアでの成功例をお手本にして、毎回同じように演じられたことに着目して欲しい。なぜならばこれらの革命の脚本家は一人しかいないからだ。言うまでもなく、それは米国だ。(詳細はhttps://youtu.be/3XwMi_NOXMAを参照)

ということで、本日はブレジンスキーに関する最新の記事 [1] を覗いてみよう。この記事の表題にはブレジンスキーのかの有名な著書の表題に使われている「チェス盤」という言葉を用いている。過去数十年にわたって米国の外交政策について隠然たる指導力を発揮して来たブレジンスキーが今は何を考えているのだろうか?その点について学んでみたい。この記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>



Photo-1: 供給元は「ミュンヘン安全保障会議」。CC-BY 2.0ライセンスの下で提供。

世界を支配するワシントン政府の計画においては主導的な地位を築いていたブレジンスキーが今までの大計画を諦めて、今はロシアと中国との連携を呼びかけている。「世界の新秩序に向けて」と題されたズビグニュー・ブレジンスキーの論文がAmerican Interest誌に掲載された [訳注:2016417日発行] 。 しかし、大多数の主要メディアはこれを無視した。そうとは言え、これは政策決定をする指導層の強力なメンバーたちが米国の覇権を中東やアジアにおいて拡大することはもはや出来ないと思っていることを示唆するものだ。この考えの主導的な推進者であり、The Grand Chessboard: American Primacy and Its Geostrategic Imperatives」と題する1997年の著書の中で帝国拡大計画を描き上げたブレジンスキーは、今、回れ右をして、その戦略に大修正を加えるよう提唱している。American Interest誌上に掲載された彼の論文からその一部を下記に抜粋して見よう: 

「米国の世界規模の優越性が終わりを告げていることから、世界規模の新たな秩序を構築する上で米国は主導権を握る必要がある。

世界的な政治勢力の再配置ならびに中東で出現しつつある暴力的な政治的覚醒に関しては五個の基本的に正当な信念が挙げられるが、それらは新世界秩序がやって来ることを示している。

これ等の信念の中で最初の事項は、米国は依然として世界でも政治的、経済的、そして、軍事的にもっとも強力ではあるが、地域的な均衡における複雑な地政学的変化が起こる中、米国はもはや世界に君臨する帝国ではない。」 (世界の新秩序に向けて: ズビグニュー・ブレジンスキー著、American Interest誌に掲載)

繰り返して言うと、米国は「もはや世界に君臨する帝国ではない。」 この新しい評価については、彼が何年も前にかの有名な「チェス盤」の著書の中で記述した「米国は世界でも最高位にある強国である」という文言と比べてみて欲しい。

「・・・20世紀の最後の10年間、世界情勢には地殻変動的な大変化が起こった。初めてのこととして非ユーラシア系の強国が登場し、ユーラシアの強国間の関係を調停する役目を務めるだけではなく、世界でも最高位にある国家として出現した。ソ連邦の敗退と崩壊は西半球の強国が台頭する第一歩となり、米国は単独で最初の世界的強国となった。」 (The Grand Chessboard: American Primacy And Its Geostrategic Imperatives: ズビグニュー・ブレジンスキー著、出版元:Basic Books1997年、13)

American Interest誌に掲載された記事からさらに引用すると: 

事実、「米国が世界の檜舞台に出現するまでは、真の意味で「圧倒的な」世界的強国というのは存在していなかった・・・ この決定的な、新たな世界の現実はもっとも裕福であり、それと同時に軍事的にもっとも強力な国家として米国が世界の檜舞台へ現れたことで象徴される。20世紀が終わる頃、米国に迫る国はどこにもなかった。しかしながら、今や、そうした時代は終わりつつある。」 (American Interest)

しかし、どうして「そうした時代は終わりつつある」と言えるのだろうか?1997年にブレジンスキーが米国を「世界でも最高位にある強国である」 と述べた頃と比べていったい何が変化したのであろうか?

ブレジンスキーはロシアと中国の台頭、ヨーロッパの弱体化、ならびに、かっては植民地であったイスラム諸国の間で起こっている暴力的な政治的覚醒、等をこの突然の反転を引き起こした直接的な要因であると指摘している。イスラム諸国に関する彼のコメントは特に有益である。彼は「連中はわれわれの自由を嫌っている」といった政府がよく使う決まり文句を繰り返すのではなく、むしろテロリズムに関しては理性的な説明をしようとしている。立派なことには、ブレジンスキーはテロの出現は狂信的な変質者による暴力によって起こったものではなく、(強度の不公平感に由来した)「歴史的な抗議が噴出したもの」であると判断している。

ごく自然なことではあるが、1500ワードそこそこの記事ではブレジンスキーは米国が将来直面するかも知れない挑戦(あるいは脅威)のすべてを網羅することはできない。しかし、彼がもっとも心配している点はロシア、中国、イラン、トルコ、ならびに、他の中央アジア諸国が経済、政治および軍事の領域で強化されていく点にあることは明白だ。これは彼の心配のもっとも中心的な点であって、彼は1997年に例の「チェス盤」を書いていた頃でさえもこの問題を予測していた。彼が言ったことを下記に示してみる: 

「こうして、米国をユーラシアから排除し、そうすることによって米国の世界的な強国としての地位を脅かそうとする地域的な連携に対して米国は如何にして対抗するかを決心しなければならなくなるだろう。」 55頁) 

「・・・古代の帝国が置かれていた時代を想い起こさせるような語彙を用いてそれを表現すれば、帝国の戦略地政学の三つの大きな責務は従属国が結託することを予防し、従属国間に安全保障の依存性を維持し、朝貢国を柔軟に扱い、彼らを防護すること、および、野蛮人が攻め込んで来なようにすることだ。」 (40)

「・・・従属国が結託することを予防する。」 この文言がすべてを語っていると思う。そうじゃないかね?

オバマ政権の向こう見ずな対外政策、特に、リビアやウクライナの政府を転覆させたことは反米の連携を形成する動きを多いに加速させた。換言すると、ワシントン政府の敵国はワシントンの挙動に反応して、現出したのである。オバマ大統領は自分自身を責めるしかない。

ロシア連邦のウラジミール・プーチン大統領は、地域的な不安定による脅威が急拡大していること、および、NATOがロシアとの国境沿いにNATO軍を配置することに対してロシアの周辺諸国や中東諸国との同盟関係を強化することによって対応している。それと同時に、プーチンとBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、および、南ア)の彼の仲間たちは代替金融制度(BRICS銀行やAIIB)を設立した。この代替金融制度はいずれは米ドルが圧倒的な優越性を持ち、全世界を覆う米国のパワーの源泉となっているシステムに対しても挑戦してくることになろう。これこそがブレジンスキーが何故に慌ただしく回れ右をして、米国の世界覇権計画を諦めることにしたのかの理由である。なぜならば、彼はドル以外の通貨を用いるシステムが発展途上国や非同盟諸国間に台頭して来ると、それは寡占状態にある西側の中央銀行に取って代わるだろうと見ているのだ。このような事態が起こると、米国は世界経済に対して米国が演じる締め付け役や富を搾取するシステムを失うことになる。今まではこのシステムによって米ドルと貴重な物資やサービスとが交換されて来た。しかし、それが終ることになる。

不幸なことには、ブレジンスキーの注意深い進め方は大統領選で人気が高いヒラリー・クリントンに引き継がれる様子はまったくない。彼女は軍事力によって帝国を発展させることを信奉している。2010年の「米国の太平洋の世紀」と題したスピーチにおいて戦略関連の語彙目録に「ピボット」という新語を初めて導入したのは彼女だった。そのスピーチはForeign Policy誌に掲載された。それを抜粋し、下記に示して見よう: 

「イラクにおける戦争が終わり、アフガニスタンからは米軍の撤退が開始されると、米国はピボット点に立たされる。過去の10年間、われわれはこれらの戦場へ膨大な量の資源を投入し続けて来た。次の10年間は、われわれの指導力を維持し、われわれの国益を確かなものにし、われわれの価値観を推進させるためには、われわれは時間とエネルギーを何処へ投資するべきかについてはもっと賢く、かつ、組織的に振る舞う必要がある。次の10年間において我が国の国政術にとってもっとも重要な仕事のひとつは実質的にもっと多くの投資を確保することだ - 外交面でも、経済においても、戦略の面でも、そして、他の面においてもだ - アジア・太平洋地域も然りだ・・・ 

アジアの成長や活力を利用することは米国経済や戦略的国益の中心を成すものであって、オバマ大統領にとっては重要な優先事項である。アジアにおける開かれた市場は米国に投資の機会や通商、および、競争力のある技術へのアクセスをもたらす・・・ 米国企業はアジアにおける広大で、かつ、旺盛に成長し続ける消費者基盤へ進出する必要がある・・・ 

この地域はすでに世界の生産物の半分以上を生産し、世界貿易の半分近くを占めている。われわれは2015年までに輸出を倍増するというオバマ大統領の目標を満足することに邁進しながらも、われわれはアジアでより多くのビジネスを行う機会を模索し、アジアの活発な市場における投資機会を追求する。」 
 (ヒラリー・クリントン著の「米国の太平洋の世紀」、2011年にForeign Policy誌に掲載)

このクリントンのスピーチを14年前に「チェス盤」の中でブレジンスキーが述べたコメントと比較してみよう: 

「米国にとってユーラシア大陸は地政学的な賞金である・・・(30頁)・・・ ユーラシアは世界でもっとも広大な大陸であって、地政学的には軸を形成する。ユーラシアに君臨する強国は世界中でもっともよく開発され、経済的にももっとも生産性の高い三つの地域の中のふたつを制することになる・・・ 世界の人口の75パーセントはユーラシアに住み、世界の物的な富の殆んどはユーラシアに存在する。つまり、企業が集まり、地下資源が眠っている。ユーラシアは世界のGNP60パーセントを占め、世界で発見されているエネルギー資源の4分の3を占める。」 (31)

戦略的な目的は瓜二つである。違いは何かと言えば、環境の変化や米国の餓鬼大将ぶりや支配、制裁、等に対する抵抗が拡大する一方であることを受けて、ブレジンスキーは進路を変えた点にある。米国の優越性に関してわれわれはまだ転換点に達してはいないが、その日が急速に近づきつつあることはブレジンスキーにはよく分かっている。

それとは対照的に、クリントンは依然としてアジアに対する米国の覇権を拡大することに躍起となっている。彼女はそれがこの国に、あるいは、全世界にリスクをもたらすことを理解してはいない。米国の好戦的な多国籍企業がその軌道上で動きがとれなくなる日まで、彼女は軍事介入を頑強に続けることだろう。彼女の大袈裟な口調から判断して、彼女の最初の任期中のどこかの時点において、こういった事態が恐らく起こるのではないか。

ブレジンスキーは国家レベルではあるが身勝手な計画を提示し、将来の抗争を最小化し、核戦争を回避し、世界秩序(即ち、ドルに依存したシステム)を維持しようとしている。しかし、血に飢えたヒラリーは果たして彼の忠告を聞き入れるだろうか? 

そのチャンスはない。

著者のプロフィール: マイク・ウィトニーはワシントン州に在住。彼は Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion と題された書籍に投稿(AK Press)。 「Hopeless」はKindle editionとしても入手可能。彼のメールアドレスはfergiewhitney@msn.com.

<引用終了>


ブレジンスキーはネオコン派の政治家やコンサルタント業に従事する元軍人たち、あるいは、軍産複合体の推進者らにとっては生き神様のような存在であると小生はかねてから思っていた。しかしながら、利益集団としての軍産複合体にべったりの姿勢しか取れない数多くの批評家や学者、ジャーナリストらに比べると、ブレジンスキーはまったく違うことをこの記事が教えてくれた。

ブレジンスキーは超一流の批評眼や分析能力を持っており、彼の知的な想像力は簡単に既成の枠組みを超えてしまう。たとえ自分が以前唱えていた理論とは180度も方向が異なるとしても、自分の新しい考えを公にすることにやぶさかではない。なかなか出来ないことだ。この点は実に見上げたものだと思う。

ブレジンスキーが唱導した最近の理論は主要メディアによって冷遇されたとのことだ。米国の政治がどれ程健康であるのか、あるいは、不健康であるのかを考えずにはいられない。このエピソードは米国の政治は何十年にもわたる不摂生によってすっかり生活習慣病に陥っていることを示している。しかも重症だ。米国の政治は自分の健康さえをも見失ってしまったかのようである。

その極致は今進行している米大統領選だ。引用記事に示すように、著者のマイク・ウィトニーは、ヒラリー・クリントンは米国が置かれている現状をまったく理解してはいないと酷評している。


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彼女の他にも、そういう人物は米国の政界や軍部には多数見られる。彼らの多くはメディアで頻繁に使われている「グループ思考」の推進者たちだ。

ここで、最近の記事 [2] を抜粋し、下記に引用してみよう(斜体で示す)。

昨日 [訳注:2016917]、米国は、本質的に言って、シリアの正当な政府に対して戦争行為を犯した。公的な見解はこうだ。つまり、連絡の失敗(あるいは、恐らくは質の悪い諜報)によって米空軍は、オーストラリア軍の支援を受けてSAA(シリア政府軍)の将兵や車両を空爆し、60人のシリア軍兵士を殺害した。

ロシア側は、当然の事ながら、この事態に激怒している。米国人が「ISISを支援している」ことを批判し、これは「意図的な挑発」であると述べている。これはプーチン大統領が昨日行ったスピーチとも結びつく。そのスピーチで彼はあの取り決め(つまり、停戦)に米国人がどれだけやる気があるのかは疑わしいと言った。

しかし、この空爆はどのような経緯で起こったのだろうか?この空爆は単に能力に欠けていたからだというだけではないと想定すると、空爆の有効性そのものよりも空爆には費用がかかることに留意している米軍と折り合いをつけようとする際は、このような状況は常に起こる可能性があるのだが、いったい何が動機だったのだろうか? この取り決めを結ぶためにどうしてオバマ政権は何週間も費やしていたのだろうか?停戦の開始後何日かしてから米空軍がシリア兵を爆撃するためだけのものだったのか?ケリー国務長官はどうして何時間にもわたってセルゲイ・ラブロフ外相と注意深い交渉をしていたのだろうか?あれは単に小さないざこざなんてっ全然ないにもかかわらずサマンサ・パワーに口汚い、ヒステリックな言葉を速やかに喋らせるためのものだったのか?

理論的に可能なひとつの見方は、何らかの理由で、米国の政治あるいは軍事面における指導部は停戦がしっかりと定着する前にこの停戦を駄目にしようとしているのだと言えよう。彼らは生まれたばかりの平和を揉み消したいのだ。

これは証拠を記述する長いリストの中では最新の出来事に過ぎないが、米国の権力は一枚岩であると見て取りたいとしても、実際には、これらの証拠は帝国の心臓部には複数の分派が存在していることを示すものである。ワシントン政府内の亀裂は党の政治的または制度的な路線に沿っているとして何回となく説明されて来た。民主党対共和党。FBICIA。たとえば、エドワード・スノーデンはCIAのエージェントであって、NSAの信用を落とすために送り込まれたとする議論がある。私はそのように非常に細かく定義された境界に沿って走る亀裂については疑ってかかる方だ。しかしながら、少なくとも二つのグループがあって、それぞれが異なる目標や思想を抱え、あるいは、現実についてはまったく違った見方をしている、とわれわれには見える。当面、ここではこれらのふたつのグループを「現実主義者」および「心神喪失者」と名付けておこう。

「現実主義者」はそのほとんどが「保守派」の外交官とか冷戦時代のベテランである。ヘンリー・キッシンジャーのことを考えて見よう。彼は声を大にして、公然とウクライナにおける米国のアプローチを避難した。さらには、ニュース番組で政府の動機を攻撃した(キッシンジャーはTrack II プログラムを主宰してからというもの、ロシアと米国との協力を推進しようとして来た)。ズビグニュー・ブレジンスキーのことを考えて見よう。オバマ大統領が「レッド・ライン」というつまらない提案をした際、彼はシリアに関して理性の声を上げた数少ない人物の一人であった。同様に、ジョン・ケリーも明らかにこの保守派に属する。どう見ても、格別に慎み深いとか倫理観に長けているとは必ずしも言えないが、彼らは外交官であり、現実主義者である。暴力や無秩序を拒絶するが、これは共感から来るものではなく、時間と資源の浪費につながるからである。それらの浪費は政治家としての腕前(の悪さ)をじっくりと見せつけてくれる。彼らは現実的政治に取り組み、常に自分たちの最大の関心事に奉仕すると期待され、少なくとも真の現実という概念に近いものを持っている。

「心神喪失者」はこの舞台上では比較的に新しく、保守派のネオコンたちの精神的な継承者である。彼らは米国の例外主義に関する物語を期待し、自分たちを道徳的にも、知的にも、そして、感情的にも優越していると見なす。彼らは単に自分たちの言葉から現実を創出することができると信じ切っている。このような考えを抱いているので、彼らの確信の周りに世界を形作ることについて全世界が如何に拒否したとしても彼らはまったく意に介さない。サマンサ・パワーのことを考えてみよう。あるいはヴィクトリア・ヌーランドのことを。あるいはロバート・ケーガンのことを。彼らは危険だ。何故ならば、たとえ何かを仕出かしたとしても、彼らは自分たちの行為の道徳的潔白さを信じているからだ。彼らは自分たちの行動を外部の視点から眺めようとしたり、彼らが言うところの「敵国」の見方を評価しようとしても、そうすることはできないのだ。彼らは現実の世界と渡り合うことは拒むので、危険極まりない。彼らは灰色の現実世界において黒または白であると思っている。

このビデオをご覧願いたい。https://youtu.be/3J0URG9xoGg

これは今われわれが喋っていることの好事例だ。このビデオでは、ひとりの感情的で非理性的な特定のイデオロギーの信奉者がもうひとりの現実主義者の狂人と議論をしている。心神喪失者対現実主義者の構図である。カール・バーンスタインが、そう、あのカール・バーンスタインが「われわれは道徳的にロシアを孤立化するべきだ」と論じており、彼は現実主義者から「どうやって?」と反論されている。しかし、彼はそれには答えようともしない。

興味深いことには、このビデオで皆さんはロシアの「孤立化」という言葉を耳にする。この言葉はウクライナ危機の最中にはあらゆる大手メディアを通じて評論家たちによって頻繁に用いられた。ウクライナ危機は明らかにネオコンの計画によって引き起こされ、ロシアを弱体化しようとしたものである。これはロシアがシリアにおけるネオコンの戦争をチェックしようとしたことに対するお返しであるが、決してうまくは行かないことは明白である。ブレジンスキーが彼らはどのようにしてロシアを中国、あるいは、他のパートナー国家や同盟国から孤立化させる積りなのかと問うた時も、ここでもまた、ブレジンスキーは現実に根ざした答えを受け取ることはなかった。

ロシアを「孤立化させる」計画は(道徳的にも、戦略的にも)失敗した・・・ しかし、このことは決して認識されてはいない。それに代わって、評論家や政治家およびメディアにおける彼らの代理人たちは、ロシアを「孤立化」させ、ロシアは「国際社会からの除け者」であると宣言した。現実と如何に矛盾しているかはまったく関係なしだ。

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あまりにも長くなってしまうので、引用はここで中断したいと思う。

米国の対外政策を立案し、それを実行する米政府の内部には常に内部抗争があるという現実をいろいろな機会に聞かされても来た。近年、特にシリアの内戦とかウクライナ危機を観察してきた結果、私自身にもおぼろげながらにも気付いた点がある。一方ではシリアやウクライナにおける紛争を解決しようとする勢力があり、他方では紛争を継続し、米軍の関与を長続きさせようとする勢力がある。このふたつのグループによるせめぎ合いである。極端な例では、ペンタゴン(軍人)が国務省(外交官)の方針には従わないと公言したりする始末だ。

オバマ大統領が「ああしたい」、「こうしたい」と言っても、各省庁の実際の行動が大統領の意向や要請にどれだけ沿っているかと言うと、大統領の意向に沿っているのは実際には三分の一程度しかない、とどこかの記事で読んだことがある。米国の政府は伏魔殿である。

しかしながら、最大の懸念は、米国の超一流の現実主義の学者たち、たとえば、ジョン・ミアシャイマーやスティーブン・コーエン、あるいは、ズビグニュー・ブレジンスキーが世界を取り巻く現実に基づいた提案をしてくれたとしても、米国の政府内の高官がその提言を理解し、受け入れようとするだけの理性や見識、政治的判断力、道徳観、あるいは、感受性を備えてはいないとしたら、どうだろうか。これは間違いなく大きな不幸である。

これは米国だけの不幸ではなく、地球上の人類全体が生き残ることができるかどうかという次元の、それこそ喩えようもない程に大きな悲劇につながりかねない。



参照:

1The Broken Chessboard Brzezinski Gives Up on Empire: By Mike Whitney, Counterpunch, Aug/25/2016

2Syria Bombing Exposes Cracks in American Policy Façade: By Kit, Off Guardian, Sep/18/2016