2017年10月20日金曜日

ロシアのミサイルの射程距離は米国のミサイルの2倍もある - シリアではこのことが決定的な役割を果たしている



シリア紛争はアサド大統領が率いる政府軍と反政府武装勢力との間の武力闘争である。反政府武装勢力からの攻撃を受けて、シリア政府軍は後退に次ぐ後退を強いられていた。しかしながら、この戦いの形勢はある時点で逆転した。

その切っかけはロシア空軍がシリア政府軍を支援し始めた2015930日に遡る。シリア政府からの要請を受けて、その日、ロシアのプーチン大統領は連邦院(上院)に対してシリアへのロシア軍投入を認めるよう提案し、即刻了承された。こうして、シリアではシリア政府軍を支援するために、ロシア空軍による反政府勢力に対する空爆が始まった。これらの空爆は地中海沿岸のタルトスにあるロシア海軍基地の近くに新設されたフメイミム空軍基地から飛びたつロシア空軍機によって実施された。 

次にやって来た節目はその7日後であった。ロシアのカスピ海に本拠を置く比較的小型のロシア海軍艦艇から行われた巡航ミサイル攻撃である。発射された26発の「カリブル」ミサイル(3M14T)はイランとイラクの上空を通過して、約1500キロを飛行し、シリアの反武装勢力の拠点を11カ所破壊した。しかも、発射されたミサイルはすべてが目標を正確に捉えたのである。この出来事は西側軍事専門家の度肝を抜いた。要するに、カスピ海上のちっぽけな艦隊が実戦でみせた巡航ミサイル攻撃はロシア海軍の戦力投射能力がかなり高いことを西側に初めて見せつけたのである。さらには、地中海の海中に潜む潜水艦からの巡航ミサイル攻撃も新たに加わった。128日、ロシア海軍のデイーゼル駆動潜水艦から水中発射された巡航ミサイルがイスラム国の拠点を破壊したのである。

米国のトマホーク巡航ミサイルが実戦配備され、その活躍が華々しく報道され始めた時期は米国が推進した湾岸戦争(1990年)やコソボ紛争の際にNATO軍がセルビアに対して行った空爆(1999年)、イラク戦争(20032011年)の頃であったと思う。

ロシアにとっては、シリアでのカリブル巡航ミサイルの使用は実戦での経験として非常に重要な意味を持っている。今後、射程距離がさらに拡大され、核弾頭の搭載や超音速飛行といった新たな付加価値を付けることによって、より遠隔地から、相手に探知されることもなく発射することが可能となる。しかも、精密誘導によって目標を正確に捉えることができる巡航ミサイルの役割は大きくなるばかりであろう。

少しばかり時間を遡ってみよう。2015107日、シリアにおけるイスラム国の軍事拠点に向けてカスピ海上のロシア艦艇から巡航ミサイル攻撃が行われた。109日、ペルシャ湾上に配備されていた米海軍の空母「セオドーア・ルーズベルト」とその攻撃部隊はペルシャ湾から離脱した、と米国の星条旗新聞が報道した [1]

これによって、2007年以降では初めてペルシャ湾上への米空母の配備が中断された。代わりにやって来る空母に関する報道はない。米空母軍団はその存在こそが重要なんだという見方もあり、時には実際にそのような場面があったのは事実であるが、戦局としては非常に重要であると思われる時に、つまり、シリアだけではなく、イラクやイエメンでの軍事行動が激しくなっている中で取られたこの米海軍の行動は素人であるわれわれには理解することが難しい。

どの説明が当を得ているのかを私が断定することは出来ない。しかしながら、米空母がペルシャ湾から離脱した事実を念頭に置きながら、戦場で新たな主役となって来ている巡航ミサイルに関して、本日は興味深い記事 [2] を皆さんと共有してみようと思う。


<引用開始>


















Photo-1:地中海から最近シリアに向けて発射されたロシアの巡航ミサイル

武器について語る時、その大きさは極めて重要であり、射程距離や速度も然りである。ロシアからシリアに派遣されている比較的小さな作戦部隊に関しては大きな混乱があるようだ。

この混乱振りをもっとも端的に示しているのはシリアにおけるロシア軍、つまり、フメイミム空軍基地を攻撃することが可能であるかどうかについての議論だ。この議論は終わることもなく続いている。ロシア軍に対して米国が派遣することが可能な米軍の大きさを考える場合、この種の攻撃は果たしてロシア人を「撃退する」のに成功するのであろうか? 

巡航ミサイルを搭載した潜水艦や艦艇に関してロシアのニュース報道がある。素晴らしい内容だ。


これは道理にかなった質問である。しかしながら、極めて素人っぽい質問でもある。事実、米国では多くの重要人物が、このような恐るべきシナリオを考るだけではなく、そのような考えを実際に推進しようとさえしている。ラルフ・ピーターズ中佐はロシア攻撃を論じる際には遠慮なくものを言う人物だ。事実、彼はロシア人と戦う手法について処方箋を書くに当たっては実に単刀直入だ。彼はこう言った。これはかなり急速にコントロールを失うだろう。そうなった場合、われわれは迅速に、しかも、徹底的に勝利を収めて、この戦いをシリア国内だけに封じ込めなければならない。

ピーターズ、ならびに、彼が代弁する米国の軍人や政治家はクラウゼヴィッツやモルトケおよびガデリアンといった過去の戦略専門家に頼っていることは明らかではあるが、フメイミムやシリア国内の他のあらゆる場所においてロシア人を爆撃し、彼らを石器時代に逆戻りさせることに米国が成功するかどうかという議論はその存在感を失う。真剣さがまったく無いのだ。 

もちろん、米国はフメイミムに対して伝統的な方式で自由に裁量することが可能な手段は何でも活用することができる。ロシアが彼の地に所有する物は、それが何であっても、最終的には圧倒してしまうだろう。何機かのSU-35戦闘機から始まって、S-300S-400の対空防衛ミサイルに至るまで何でもだ。そして、多分、すべての出来事をシリア国内に封じ込めるというピーターズの夢を現実にすることは可能なのかも知れない。ロシアを除く他の国であったならば、この考えはうまく行くことだろう。

ここで問題となるのはロシアが核大国であるという点ではない。このことは皆が知っている。米国でもっとも狂気じみたロシア人嫌いでさえあっても、たとえ僅かな程度であるとは言え、このことは分かっており、自分たちがロシア本国を核攻撃するといった思いも寄らないことを仕出かした暁には、自分たちの愛する家族は皆が一瞬にして放射能の塵に帰してしまうという概念を掴んでいる。しかしながら、シリアの場合はいささか違う。つまり、核戦争へ展開するかどうかは通常兵器による戦いで決定的な優位性を持つ者によってコントロールされるであろうと思えるからだ。

問題は通常兵力による戦争だ。これは米軍が過去30数年にわたって自慢げに対処して来た方式であって、まさにその種の紛争のことである。まさに、これは米国は如何なる敵であっても対処することが可能だとして自慢して来たものだ。

このことの根底には、過剰とも言える独断的な対応が成され、遠隔地から発射される攻撃兵器に関する自信は米国にとっては本物の利点であり、それと同時に本物ではないのだ。ユーゴスラビアに対する攻撃においては、セルビアのような国の旧式になった対空防衛システムの手が届かない遠隔地からでさえも米軍は同防空システムを速やかに圧倒することが出来るということを如実に示した。トマホーク巡航ミサイルが使用されたのである。何千個ものミサイルがセルビアに向けて打ち込まれ、セルビアの防空システムは最初の23週間の攻撃の後にはほとんど無用の長物となった。

しかし、ここに米国の問題点がある。ロシアはシリアの国境から十分に離れた場所から、必要に応じて何時でも、この通常兵器による仮想的な紛争に応じることが出来る。私はたとえばウクライナのような他の戦略的な戦場について話しをしているわけではない。ウクライナではロシアはシリアにおける仮想的な「敗北」を「相殺する」ことが可能だ。何故かと言うと、これは純粋に技術論的な話であって、ロシアはシリアにおいて通常兵器による報復攻撃を行うことが可能だ。中東全域で可能なのである。 

事実、ロシア軍は遠隔地から使用することが可能で、もっとも近代的な精密攻撃兵器を所有している。これらの兵器は全世界が見守る中で実際に使用され、その威力を示した。

これこそがシリアにおけるロシア派遣軍を「打ちのめす」と言う議論のすべてを素人っぽく見せる理由である。 

戦争は戦闘相手の間で行われる撃ち合いを遥かに超える。戦争は実際に銃弾が飛び交う時点よりも遥かに前から作戦室や政治家のオフィスで始まっている。シリアにおけるロシア派遣軍が2005年に配備されていたならば、ラルフ・ピーターズのシナリオを想像することには何らの問題もなかったであろう。

しかし、今は2005年ではない。部屋に居る800ポンドにもなる巨大なゴリラ [訳注:「部屋にいる象」とか「部屋にいるゴリラ」とは誰もが認識してはいるが、話したくはない物事を指す表現] はロシアの遠隔地から運用される攻撃兵器の能力だ。単純に言って、これは米国のミサイルよりも遥かに優れており、フメイミム空軍基地が通常兵力による攻撃に曝された場合には、この地域の米軍拠点に対する大々的な報復攻撃作戦のドアを開くことになるだろう。 

昨日、シリアではデリゾールの近傍でいわゆる同盟軍の「支援」の下でもたらされたと報じられているアサポフ中将の死を受けて、ロシアの戦略空軍はシリアのISIS拠点に対してX-101型長距離ステルス巡航ミサイルによる攻撃を開始した。ロシアが5,500キロを超す射程距離を持つ巡航ミサイルを使用していることは今や初耳ではないし、東地中海やカスピ海の何処からでも2,500キロ強の射程距離を持つ3M14型カリブル・ミサイルを発射することができるという事実は今やニュースにもならない。

これらの射程距離は2,500キロの射程距離を持つ米国のTLAM-A ブロックーII型トマホーク・ミサイルや現在もっとも多く生産されている1,600キロの射程距離を持つTLAMブロックーIV型よりも優れている。

これらの米国製ミサイルはジグザクのコースを取ることも出来るし、飛行中の目標を撃墜することも可能だ、とレイセオン社は言う。彼らが言わんとしていることはすべてが素晴らしいし、格好がいいけれども、重要な点は射程距離と精度であり、これらの点については、米国側は、控え目に言っても、トップではない。射程距離は前代未聞の作戦上の柔軟性をもたらし、昨日行われたロシアのTu-95「ベアー」戦略爆撃機からの発射は非常に深刻なメッセージを含んでいる。ここで重要なのはX-101の射程距離 [訳注: X-101の射程距離は4,500キロ] そのものではなく、それよりもさらに長い10,000キロ近辺の射程距離を持つミサイルの調達が始まったという事実だ。また、もうひとつの重要なメッセージはこれらのミサイルがイランやイラクの領空から発射されたという点だ。彼らはそうする必要はなく、ミサイルの発射はカスピ海地域からでも行うことが出来た筈だ。しかし、ベアー爆撃機はイランの領空でロシア空軍のSu-30Su-35戦闘機によって援護されている間にミサイルを発射した。ロシアはこの地域にある米軍の如何なる地上拠点に対してさえも攻撃する能力を示していることは別にしても、何か不吉な予兆を与えた。 

想像を絶するような、決して起こり得ないわけではないことが起こった場合、つまり、米国がシリア国内のロシア軍を攻撃した場合、イランは脇から見ているだけではない。そうしたいのか、あるいは、そうしたくはないのかには関わらず、イランは直ちに「参戦」するということを十分に承知している。つまり、論理としては、核兵器を除いては、すべての方策が失敗に終わりそうな時、どうして最善を尽くそうとはしないのかということだ。イランはロシア軍を自国側につけ、自国の領空に維持することが出来る。明らかに、これは強力な支援となる。しかしながら、ロシアと米国の間で通常兵器による紛争が勃発した場合、これはもうひとつの深刻な作戦上の可能性を招くことになるかも知れない。ネオコン連中は軍事的には何も理解せず、戦略上の現実には無関心であることから、これはまさに彼らが夢にまで見て来たシナリオである。

避けることが出来ない感情論はひとまず脇に置いて、物事の現実に注視すると、2010年に採用され、2014年に再確認されているロシアの軍事ドクトリンは、その第26条に記述されているように、遠隔地から精密攻撃兵器を使用することが戦略的に(敵の)戦力を封じ込める上で重要であると言う。ロシアは米国との戦争は望んではいない。しかし、無理矢理に戦争に押しやられた場合、ロシアはカタールにあるアメリカ中央軍のような米軍地上施設を攻撃することは完全に可能であるばかりではなく、もっと重要な点としては、ペルシャ湾上の海軍拠点を攻撃することさえも可能である。

Tu-160Tu-95といった66機の長距離戦略爆撃機は別にして、ロシアは100機以上のTU-22M3爆撃機を所有する。 これらの爆撃機の多くは空中給油が可能であり、相手をたじろがせる武器であるX-32 (Kh-32)型巡航ミサイルを装備している。このミサイルの射程距離は1,000キロで、その速度はマッハ4.2である。本ミサイルは地上の如何なる目標でさえも攻撃することが可能であり、それだけではなく、その主要設計目標は海上を移動するものは何であっても攻撃する能力を備えることにある。

このミサイルを迎撃することは、たとえ可能であるとしても、極めて困難である。一斉発射の場合はなおさらのことだ。昨日の事例が見事に示してくれているように、最悪のシナリオが生じた場合、イランはこれらのTU-22M3型爆撃機が自国の領空で作戦を展開することを許容することにはやぶさかではない。ダーラーブ地域のどこかの地点から一斉に発射されるミサイルはペルシャ湾全域を網羅するだけではなく、如何なる海軍に対してでもオマン湾を封鎖することが可能だ。

シリアでロシアを相手にして通常兵器による戦争が起こった場合、如何なる艦船も、如何なる空母打撃群もこの海域に近づくことはできなくなる。これは戦略的な意味合いにおいてはとてつもなく大きな意味を持っている。2015107日にカスピ海から一斉に発射された3M14ミサイルでさえもが米空母セオドア・ルーズベルトとその打撃群はそそくさとペルシャ湾から離脱したとの印象をもたらした程である。

さらに言えば、この単純でたったひとつの作戦的な事実こそがロシアの比較的小さな派遣軍がシリアにおいて過去2年間にもわたって実に効果的な作戦を展開し、実際に地上の状況を決定づけ、作戦区域に影響を与えることを可能とさせた理由なのである。答えは簡単だ。つまり、何人かのアドレナリンが過剰な連中を檻に入れてサメがたむろしている水中に降ろし、サメと対面させる。彼らとサメとの間には金属の棒があるだけ。しかし、水上のボート上には銃を手にした男が常に監視をしている。何らかの理由で檻に緊急事態が起こった場合にはその銃を使うことができるようにするためだ。

シリアにおけるロシアからの派遣軍は単なる軍事基地ではない。彼らは十分な軍事的投影力や能力を持ったロシア軍と密に統合されており、それは如何なる敵に対しても非常に不愉快な選択肢に直面させることができる軍事力である。事実、限度いっぱいにまで展開するかどうかをコントロールしているのは米国ではなく、ロシアである。このことはシリアでの戦争の終末がはっきりと見え始めた頃から米国のメディアで止めどもなく続いている反ロ・ヒステリーの現状をうまく説明してくれる。上記に述べた内容はすべてが単なる憶測でしかないことを祈り、現実の生活に基盤を置くようなものではないことを希望したい。これらのシナリオが現実のものとならないならば、すべてがいい方向に向かう。

出典: The Unz Review

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

最後まで読んで、著者が表題によって言い表したかった意味がはっきりと分かった。ロシアのロケット技術の凄さはロシアが米国へロケットエンジンを今でも輸出している事実がその一面を物語っている。

そして、この記事だ。

著者はロシアの現状に関してここで重要なのはX-101の射程距離 [訳注: X-101の射程距離は4,500キロ] そのものではなく、それよりもさらに長い10,000キロ近辺の射程距離を持つミサイルの調達が始まったという事実だと言う。弾道ミサイルではすでに10,000キロの射程距離は実現されている。巡航ミサイルは、遅かれ早かれ、10,000キロの射程距離を実現することだろう。また、それとは別の開発の方向として、超音速のミサイルがある。しかも、マッハ5を越すような速度だ。そこまで行くと、今の技術では迎撃は極端にむずかしくなる。

また、著者は2015107日にカスピ海から一斉に発射された3M14ミサイルでさえもが米空母セオドア・ルーズベルトとその打撃群はそそくさとペルシャ湾から離脱したとの印象をもたらした程であると述べている。私自身も、当時、カスピ海からシリアのISISに向けて発射されたカリブル巡航ミサイルの威力を見せつけられて、米空母はペルシャ湾から逃げ出したのだとの印象を抱いた。しかし、インターネットで情報を検索してみると、空母セオドア・ルーズベルトは以前から点検保守の予定が決まっていたという事実が判明した。201586日の記事 [3] によると、米海軍の職員の説明として、「米海軍は、この秋、ペルシャ湾上への米空母の配備は継続することができないだろう」と報道されていた。点検整備のためだ。世界をアッと言わせたカリブル巡航ミサイルのカスピ海からの発射はそれよりも2か月後の107日のことであった。それ故、ここに引用した記事の著者は「・・・との印象をもたらした程であると記述したのであろう。事実ではなく、あくまでも印象である。

新冷戦が始まったことにより、先制攻撃における優位性を確立しようとして、米ロ間の軍拡競争は激しくなるばかりだ、と私の目には映る。世界は自滅の方向へと向かっている。これは一般大衆が望んでいるものではない。一部の政治家や軍産複合体を代弁する好戦的なネオコン連中、批評家、退役将軍らが商業メディアを駆使して、しゃにむに推進しているものだ。不思議なことには、彼らはこの体制を民主主義と呼んでいる。 



参照:

1As USS Theodore Roosevelt exits, US has no carriers in Persian Gulf: By CHRIS CHURCH, STARS AND STRIPES, Oct/09/2015

2Russian Missiles Have 2X the Range of US’s – It’s a Big Deal in Syria: By Andrei Martyanov, RUSSIAINSIDER, Oct/12/2017

3U.S. won’t have aircraft carrier in Persian Gulf for at least 2 months: By Barbara Starr, CNN Pentagon Correspondent, Aug/06/2015






2017年10月11日水曜日

ジャーナリストになるにはロシアを非難せよ。これこそが2017年に学んだ秘訣だ - アサンジの指摘



米国による最近のロシアバッシングは度を越していると私は思う。その典型的な例がロシアゲートだ。ロシアゲートとは昨年の米大統領選にロシアが介入して、ドナルド・トランプが大統領に当選することを手助けしたという主張のことである。

彼らは声高にそう主張した。民主党全国委員会のサーバーにロシア人ハッカーが侵入して、電子メールを盗み、それをウィキリークスに与えたと言った。けれども、具体的な証拠を示すことは出来ないままである。彼らには実に気の毒な展開となったが、元諜報専門家グループ(VIPS)は科学捜査手法を用いて検証した結果をトランプ大統領宛ての書簡の形で公表した。この報告によると、ロシア人ハッカーによってデータが盗まれたとする主張はあえなく崩れ、外部のハッカーではなく、内部犯行によるものであるという結論が導き出された。(詳細については、729日に掲載した「元諜報専門家のグループがロシア人によるハッキングに関して疑問を表明」と題した投稿を参照されたい。)



この科学捜査の結果が公開されたことによって、長く続いているどんちゃん騒ぎが鎮まってくれるものと私は思っていた。しかし、狂乱とも言えるこの状況の根は深く、その幅も実に広い。米上院の調査委員会が何ヶ月も費やして探し出そうとしたロシアの介入を示す証拠は見つかってはいない。証拠が見つからないという現実は非公式な形で流されてはいるが、何故か公式な報告にはなってはいない。



いわゆるフェークニュースが次から次と流され、とにかくロシアを悪者扱いし続け、トランプ政権の信頼性に少しでも打撃を与え、あわよくば大統領の罷免に追い込もうという民主党側や軍産複合体の筋書きは今でも依然として生きているようだ。



最近、ジュリアン・アサンジがこの米国の国内政治の現状を見事に、つまり、すこぶる辛辣に描写してくれた。この記事はRTからの報道で、「ジャーナリストになるにはロシアを非難せよ。これこそが2017年に学んだ秘訣だ - アサンジの指摘」と題されている [1]



本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。




<引用開始>


聞いてはいませんか?「ロシア人がやったんだ」と。「2017年に西側のジャーナリストでいるためにもっとも重要となる要素に関してジュリアン・アサンジが見事な説明をしてくれた。実に単純だ。ロシアを非難すればいい。それだけだ。



一見したところ、過去の数年間、ニュース性の高い主要な出来事の背後には、決まったように、まさに他の何れの国もがそうしているように、ロシアもそれらの出来事を単に報道することによって世界の出来事に影響を及ぼすことに忙しい思いをして来た。アサンジによると、この点が重要なのだ。彼が金曜日 [訳注:106] に説明したように、三つの戦略的な要素が絡んで来る。

第一に、「世界的に見てニュース性のある出来事を選ぶ。通常、そのような出来事についてはロシアのメディアも当然のこととして報道をする。」 


第二に、「あるストーリーを書く。つまり、ロシアのメディアがその出来事について報じていること自体が示しているように、ロシアは世界的にニュース性の高いこの出来事の背後で秘密裏に行動をしていると書き立てる。」


そして、最終的に、「利益を得る!」 


このアサンジのコメントはインターセプト社のグレン・グリーンワルド記者のそれとも共鳴する内容である。彼は、928日、「もうひとつの重大なロシアに関するストーリー」の崩壊について報じた。 この件については何の証拠もないにもかかわらず、米国のほとんどの主要なメディアが事実として報道していたのである。


問題のストーリーは「昨年の大統領選の直前にロシア人が21もの州で選挙システムに不正侵入した」と伝えた。USA Todayによって報道され、予想に違わず大騒ぎになった。


しかしながら、AP通信がその21州の中のひとつであるウィスコンシン州では選挙システムがロシア人ハッカーに侵入されたという事実はなかったと報道したことから、この筋書きは見事に崩壊した。


グリーンワルドによると、この報道はただひとつの孤立した出来事であるとは言えない [訳注:彼の記事ではカリフォルニアの事例も同様に取り上げられている]。こういった報道は「次から次へと起こった」と彼は指摘する。 


「ロシアに関する扇動的な主張はメディアによって無造作に書き立てられ、多くの場合、政府の高官が放つ証拠のない主張を上まわるものではない。これらの主張には何の証拠もないので、ほんの僅かな検証によって簡単に崩壊してしまう」と、グリーンワルドが書いている。


「ロシア人がやった」というストーリーは常に覆されているにもかかわらず、大手メディアによると、カタルーニャの独立に関する住民投票さえもがこの「ロシア人云々」の最新の目標物となったようである。


スペインの軍隊による情け容赦もない取り締まりを目にしながらも、カタルーニャの住民はスペインからの分離に票を投じた。しかし、もちろん、これはカタルーニャの住民がとった行動の結果ではなく、(ロシアゲートを推進したい勢力の論理によると)ロシアからの干渉の結果であるのだ。


「ロシア人の伝道者はカタルーニャの独立に関する論争においてフェークニュースや虚偽の情報を投入した結果、選挙に影響を与えたらしく、この週末、スペインで勝利をものにした」と、「情報戦争に関する米専門家」の言葉を引用しながら、ワシントンポストのダン・ボーイランは書いている。


選挙は、今や、「ロシアの介入」のお気に入りの舞台であるかのようだ。フランスやドイツ、そして今はカタルーニャ。フランスでは反ロシア路線の候補者(マクロン)が勝利し、ドイツでは現職のアンゲラ・メルケルが勝利を収めたが、これらの選挙はどれもがロシアの影響を受けたと彼らは言うのである。


これらの主張は2016年の米大統領選でロシアが介入したとする「でっち上げ」を模倣したものだ。


ドナルド・トランプが選出され、特にRT からの影響が大きかったらしく、「RT アメリカ」は米国内における親ナチ勢力に対処するために1938年に施行された「外国代理人登録法(FARA)」の下で「外国代理人」として登録する必要があるとの通告を得た。




上院諜報員会の議長を務めるリチャード・バーによると、ロシアが選挙に介入したことに関する調査が示すだろう結果は最終的に「かなり多くの」米国のメディアが事実に反するストーリーを流布したという事実を公表することになるだろう。


「われわれはニュース報道の組織そのものについての調査は行わないが、事実だと称して報道を行って来た組織に対しては責任を取るよう米国市民が求めることが出来るように、われわれの報告書の知見を活用する積りだ。多くの場合は情報源さえもが定かではない。少なくとも、それは事実だと認める情報源さえもがなしのままなのだ」と、バーは木曜日に「ポリティコ」に話してくれた。


<引用終了>




これで仮訳は終了した。


西側のメディアに対するアサンジの辛辣なコメントは言い得て妙である。まさに、的を射ている!

アサンジが指摘する三つの戦略の最後の項目は企業としてのメディアが追い求める利益のことだ。これは米大手メディアの一角を占めるCNNのあるディレクターがインタビューで「ロシアゲートはでっち上げである」ことをうっかり喋ってしまった珍事を思い出させてくれる。この件の詳細については、74日に掲載した「CNNがうっかり秘密を漏らす - ロシア・ゲートはでっち上げ、トランプを不要に悪魔視」と題した投稿を参照されたい。




メディアにとっては真実を報道するよりも、新聞の購読数が増え、テレビ番組の視聴率が上がることの方が遥かに重要なのだ。最悪の場合、彼らは情報を歪曲し、本当の情報を伏せてしまう。幸か不幸か、企業メディアのほとんどがこの種の情報操作を日常的に行っている。アサンジはその現実を実に的確に物語ってくれた。


「ロシアの介入」説を確立しようとして米国全体では膨大な人的資源と時間をかけて、無いものを在ると言い、白を黒だと言おうとして来た。まさに、膨大な浪費である。そして、選出されたトランプ新大統領の政府はほとんど機能不全の状態に陥った。しかし、ロシアの介入を示す証拠は今もない。非常に滑稽である。ディープステ―ツはとんだ誤算をしたものである。


何時の日にかメディアの無責任さを正当に非難する機会がやって来て欲しいと思う。この非生産的なでっち上げは米国における典型的な愚行として史上長く語り継がれて然るべきだ。


ところで、ロシアの国外で活躍するロシアのテレビネットワークである「RT」が今苦境に陥っていることを皆さんはご存知だろうか。


最近の記事 [2] によると、RTの編集長を務めるマルガリータ・シモニアンはロシア上院の委員会で次のように証言している。「より大きな打撃は、もちろん、社員が大量に退社しようとしているという点です。社員は恐怖に駆られ、心配をしています。われわれにとっては米国で特派員を見い出すことが今や非常に困難なものとなっています。」


米国の無責任なメディアやディープステ―ツの傲慢さのせいで、今、報道の自由が奪い去られようとしているのである。


ポール・クレイグ・ロバーツは「ロシアゲートはCIAとメデイアが発明したものだ」と一刀両断した [3]。そのことを念頭に置いて、ロシアゲートの実態について調査を行っている米上院諜報委員会がどのような報告書を出すのかに注目したいと思う。






参照:


1Blame Russia: Assange outlines how to be a journalist in 2017: By RT, Oct/07/2017, https://on.rt.com/8p93


2RT Employees in the US Are Quitting en Masse Over Security Fears: By RUSSIAINSIDER, Oct/09/2017


3Russiagate was a CIA/Media Invention: By Pail Craig Roberts, Oct/06/2017, www.paulcraigroberts.org/.../russiagate-ciamedia-invention/