2017年3月20日月曜日

1996年のロシアの大統領選に干渉したクリントン政権



昨年11月の米大統領選の結果、多くの予想を裏切って、特に、民主党陣営の楽観的な予想を裏切ってトランプ候補が当選した。

しかしながら、大敗を喫したクリントン候補の陣営はこの大統領選の結果を覆そうとする戦術を展開した。リベラル派、ネオコン派、ウールストリート、民主党、主流メディア、等はトランプ新大統領およびその閣僚に関して悪口を叩き、あることないことを大合唱し始めた。まさに、フェークニュースの乱用である。異常とも言えるような状況が続いた。そして、今でも、続いている。

ところが、ロシアが米大統領選に干渉したとする証拠は今のところ何も示されてはいないのだ。

この状況を受けて、クールな頭脳を持つ識者らは証拠も示さずに憶測だけで、あるいは、こうあって欲しいとする筋書きのためだけであれこれと強弁することには批判的である。そのような批判の中に、1996年のロシアの大統領選で米国のクリントン政権が大っぴらにロシアの選挙を干渉したことを解説する記事 [1] が最近現れた。これは証拠がないロシア介入説とは違って、証拠が揃っている事実に関する報告である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

政治が持つ特有のエネルギーと力学によって、今、米国の政治は機能麻痺に陥っている。米国が1996年にロシア大統領選に対して行った干渉について理解しておくことは今進行してる米国政界における大論争や米国の政治によって作り出された対ロ恐怖症、ならびに、政治がもたらす不条理を少しでも理解する上で役立つのではないかと思う次第だ。


<引用開始>

2016年の選挙へロシアが干渉したという証拠は依然として公にされてはいない。証拠の代わりとなるものは何もないが、企業メディアは果てしのないループを繰り返している。民主党には興奮状態を煽り立てる理由が山ほどあるのだ。何と言っても、それは選挙における大失敗から皆の関心を他所へ向けるためである。

ところで、米政府が世界中で選挙に干渉してきた長い歴史に関しては、誰も喋ってはいない。第二次世界大戦以降、いくつかの事例を挙げると、米国の大統領はイタリアやイラン、グアテマラ、ベトナムおよびホンジュラスにおいて選挙民の意思をひっくり返すために選挙において汚い誤魔化しを行い、不正や暴力を犯した。ハイチやチリでの例のように、可能な場合には選挙で選出された指導者を放逐するためには残虐な暴力や殺人行為さえをも用いた。

ロシアが選挙に、あるいは、トランプ候補に直接与えたとされる影響力に関する大騒乱の中、ロシアにおいて米国が成功裏に行った干渉行為については殆んど論じられてはいない。 

1996年、米国の政治コンサルタントたちやビル・クリントン政権はボリス・イルツィンがロシア大統領の座に留まることを確かにしたのである。

この事例についてはあれこれと憶測をする必要はまったくない。当時、一連の物語が公然と語られ、タイム誌 の特集記事にも掲載され、民主政治を堕落させた張本人らが果たした役割が公表されたのである。

1996年、米国のコンサルタントたちやビル・クリントン政権はボリス・イルツィンがロシア大統領の座に留まることを確かにしたのである。」

世論調査結果はイルツィンが共産党の候補者、ゲナディ・ジュガーノフに負ける危険性を示していた。ソ連邦の崩壊はロシア国民にとっては経済的にも政治的にも大混乱をもたらしていた。新興成金たちは大っぴらに公金をかすめ取り、政府職員に対しては無給状態が続いた。ロシア人たちは今まで享受していた安全ネットを失い、この大混乱は平均余命や出生率に急激な低下をもたらした。

米国は一般のロシア人の苦しみには関心を向けなかった。米国が抱いていた唯一の関心はかっては社会主義であった国が再びその方向へ逆戻りすることがないようにすることだった。イルツィンが敗れるかも知れないと分かった時、クリントン政権は国際通貨基金に圧力をかけて迅速に現金を用意し、100憶ドルの融資を与えてイルツィン政府を強化した。

クリントンは今までには見られなかった直接的な関与をした。彼の顧問役であるディック・モーリスとコネを持つチームに率いられて、政治コンサルタントの一団がモスクワへ飛び、仕事をした。しかし、彼らの存在は極秘にされた。陰謀家の一人はこの状況を簡潔にこう説明している。「もしも共産主義者が選挙前にこのことを知ったとしたら、彼らはイルツィンを米国の手先だとして攻撃するだろうと誰もが理解していた。」 もちろん、イルツィンは米国の手先であったし、まさにそれこそが彼らが求める成果であった。

タイム誌の記事は米国の権力掌握を暴露したが、そうしたのは企業メディアだけには留まらなかった。この物語は「Spinning Boris」という題名の映画にもなった。この良く知られた、よく文書化されている物語は皆の関心のもとに曝されるだろうと誰でもが思うかも知れないが、それとはまったく逆の事が起こった。クリントン政権の企みに関する物語はあたかもそんなことは起こらなったとでも言うように記憶の彼方に消え去ってしまったのである。

ルツィンが敗れるかも知れないと分かった時、クリントン政権は国際通貨基金に圧力をかけて迅速に現金を用意し、100憶ドルの融資を与えてイルツィン政府を強化した。

我が国では独立した自由な存在として見なされているメディアは大統領の意向に合わせて歩調をとる。オバマ大統領とヒラリー・クリントン国務長官がロシア叩きを行った後、全米規模の娯楽としてのメディアはそれに従ったのである。この敵意の理由は明白だ。ロシアはヨーロッパからアジアにまたがる広大な国家であり、ヨーロッパ諸国が頼りにするエネルギー資源に恵まれている。同国の天然ガスや石油の埋蔵量は影響力のある重要な役割を担う。それが故に、経済制裁や他の手段による戦争の対象ともなっているのだ。

他国を制御し、潰そうとする米国の欲求は独立心旺盛なロシアによって阻止されている。米国の国民が無限に続く「外国嫌い」という食事療法を処方されている間に、ロシアと中国は「新シルクロード」と名付けられた自分たちの経済連携を推進している。もちろん、この連携は米国からの脅威に対抗するという共通の必要性から生まれたものであるが、ニューヨークタイムズやワシントンポストの読者にはそのことは何も分からない。そればかりではなく、ウラジミール・プーチンの師がビル・クリントンの介入によって再選されたことについてもまったく無知のままである。

自分たちが望む結果を生み出そうとして企業メディアが権力者らと結託する時、ニュースはすべてがフェークニュースと化してしまう。もしも彼らがイルツィンをヒーローにしたいならば、彼らはイルツィンをヒーローにしてしまう。もしも彼らがイルツィンの後継者をならず者にしたいならば、彼はならず者となる。もしも米国が犠牲者の役を演じることを望むならば、その犠牲者は不幸にもロシアのスパイ行為の目標物となる。もしも他国の主権を阻害する米国の歴史が米国にとって不都合な真実であれば、その真実は消されてしまう。 

いったい何が真実であって、何が真実ではないかを判断することは困難である。しかし、この国の政府およびメディアは様々な種類の犯罪行為を隠ぺいしていると想定することは、多くの場合、安全側にあるのだ。1996年のロシア大統領選への介入の物語はそのひとつの例である。

著者のピロフィール: マーガレット・キンバリーの「Freedom Rider」での記事はBARに毎週掲載され、他の出版物にも広く転載される。彼女はhttp://freedomrider.blogspot.comにブログを掲載し、丹念にそれを更新している。著者はニューヨーク市に住み、彼女のメールアドレスはMargaret.Kimberley(at)BlackAgendaReport.com

注: この記事に表明されている見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの見解を反映するものではありません。 

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

この論文は非常に短いが、米国政府および企業メディアによる情報隠しの実態を単刀直入に解説している。小気味がいい説明だ。

民主党には興奮状態を煽り立てる理由が山ほどあるのだ。何と言っても、それは選挙における大失敗から皆の関心を他所へ向けるためであるという見方は非常に説得力がある。クリントン候補が大敗したことによって民主党の中枢が如何に狼狽したかがこの説明によってまさに手に取るように分かる。

著者は自分たちが望む結果を生み出そうとして企業メディアが権力者らと結託する時、ニュースはすべてがフェークニュースと化してしまう。もしも彼らがイルツィンをヒーローにしたいならば、彼らはイルツィンをヒーローにしてしまう。もしも彼らがイルツィンの後継者 [訳注: これはプーチンを指している] をならず者にしたいならば、彼はならず者となる。もしも米国が犠牲者の役を演じることを望むならば、その犠牲者は不幸にもロシアのスパイ行為の目標物となる。もしも他国の主権を阻害する米国の歴史が米国にとって不都合な真実であれば、その真実は消されてしまうとも述べている。これは帝国の政治が持つ特徴を簡潔に総括した、実に秀逸な言葉だ。

また、いったい何が真実であって、何が真実ではないかを判断することは困難である。しかし、この国の政府およびメディアは様々な種類の犯罪行為を隠ぺいしていると想定することは、多くの場合、安全側にあるのだ。1996年のロシア大統領選への介入の物語はそのひとつの例であるという結びの言葉はわれわれを現実に引き戻してくれる。

しかし、冷徹な現実には政府やメディアに対する不信感がついて回る。

政治が時には非常に不条理に見えることがある。その原動力は何かと言うと、今回の米国の大統領選へのロシア介入説の場合は、引用記事が明らかにしているように、民主党の長老たちのエゴである。政治を職業とする連中はそれを政治と呼ぶが、不幸なことには政治の質は際限なく低下してしまうことがある。ベトナム戦争がそうだったし、イラク戦争もそうだった。そして、今回は大統領選挙だ。

ところで、ここに引用した記事と並んで興味深く思った記事がもうひとつある。

それはグレン・グリーンワルドが最近書いたものであって、「トランプ陣営とロシアとの共謀説を支える証拠が出て来るとは期待するな - 民主党の重鎮が警告」と題されている。民主党の長老たちはそろそろトランプ陣営とロシアとの共謀説に幕を引きたいようである。

その詳細は次回のブログでご紹介したいと思う。



参照:

1When America Interfered in a Russian Election: By Margaret Kimberley, Information Clearing House, Mar/16/2017






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