2018年4月11日水曜日

西側はどうしてロシア人には我慢ならないのか


米ロ間の「新冷戦」はすでに始まっている。
米国は自国の外交政策に面と向かって反対するロシアや中国を敵視している。特に、ウクライナやシリアでのロシアの外交攻勢に関しては米国は神経過敏となっており、その状況はすでに数年も続いている。米国政府を忖度する米国の主流メディアはフェークニュースを流し、何も知らない、あるいは、知ろうともしない一般大衆を自分たちの筋書きに沿って洗脳することに余念がない。

どうして米国はロシアを嫌うのかという問い掛けに対してはいくつもの答えがありそうだ。その代表的なものは、軍産複合体やNATOが組織として持っている自己保存本能である。つまり、彼らは莫大な防衛予算を確保するためには米国の安全保障に脅威となる何かが存在しなければならないと考える。先の冷戦が終わった1990年代には軍産複合体は不況となり、NATOは存在理由を見失った。彼らにとっては、たとえそれが作り話であっても、外部からの脅威は大きければ大きいほどいい。9-11同時多発テロ後に開始された国際的な対テロ戦争はすでに峠を越した。シリア戦争はどう見てもシリア政府軍側の勝ちである。

2016年の米大統領選に干渉したとして非難されたロシアに関しては、20175月にロバート・ミュラー特別検察官が率いる調査委員会が設立され、長い時間と労力をかけて調査を行ってきた。しかし、ロシア政府が関与したという具体的な証拠を見いだせないままで終わりそうだ。

米国のディープステ―ツの意向(新冷戦をさらに押し進め、ロシアを国際的な政治経済の舞台から引きずる下す)を忖度して、英国はスクリパル事件を対ロ情報戦争に展開しようとし、NATO加盟各国に「団結」を促し、ロシア人外交官の追放騒ぎを引き起こした。しかし、英国、ポートン・ダウンにある軍用の研究所の所長がスクリパル事件に使用された神経剤がロシアで生産されたという裏付けを実証することはできなかったと表明したことから、ロシア政府をスクリパル親子の毒殺未遂事件の真犯人とする英国政府の試みは不発で終わりそうである。

このような国際環境において、「西側はどうしてロシア人には我慢ならないのか」という非常に興味深い表題を持った記事に遭遇した [1]1か月ほど前のことだった。鋭い分析で定評のあるアンドレ・ヴルチェクの論評である。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

西側はどうしてロシア人には我慢ならないのか?
『西欧人の目にはロシア人は「裏切り者」として映る。略奪者の側に加わろうとはせず、彼らは「世界の悲惨な人々」の側に立とうとして来たし、今もそうしようとしている。彼らは自分たちの国土を売ることは拒んでいるし、自分たちの民衆を奴隷のように扱おうとはしなかった。彼らの政府はロシアを自給自足経済にしようとし、完全な独立化を図り、裕福で、誇り高い、自由な国家にしようとしている。』 

ロシアまたはソ連邦のこととなると、報告書や歴史的説明はあいまいになる。西側においては、まさにそうなる。その結果、米国の同盟国ではどこでも同じことだ。
作り話が世界の何億という人たちの潜在意識の中に巧妙に叩き込まれて、お伽話は現実と混ざり合っていく。ロシアは広大な国家である。事実、領土に関して言えばロシアは世界でもっとも大きい。人口密度は非常に低い。奥が深く、かっては次のように書かれていたものだ。「ロシアを頭で理解することは不可能だ。信じるしかない。」 

西側特有の考え方においては、一般的に言って、未知で、精神的で、複雑な事柄は好みではない。昔から、特に、十字軍や悪魔的な植民地主義者が世界の各地で行った遠征の頃から、西側の人々は略奪の対象となった土地において行われた「崇高な振る舞い」に関するお伽話を聞かされてきた。すべては簡単明瞭でなければならなかった。つまり、「徳が高いヨーロッパ人は野蛮人を文明化し、そうすることによって、暗闇の中にいる貧しく、原始的な精神を救済してやっているのだ」と。 
もちろん、何千万人もの人たちがその過程で殺害され、何千万人もの人たちが奴隷として新世界に連れて来られた。金や銀、その他の略奪品が、奴隷の労働力とともに、ヨーロッパの王宮、鉄道、大学、劇場のための費用を賄った。しかしながら、そのことは問題とはならなかった。流血沙汰はほとんどの場合抽象的であって、西側の一般大衆の鋭敏な目からは遠く離れた土地で起こった出来事なのだ。

西欧人は単純さを好む。特に、「善と悪」の倫理的な定義の話になるとことさらにそうだ。もしも真実が組織的に「マッサージを受けた」場合は、あるいは、現実が完全に作り話である場合でさえも、それは問題ではない。大事なことは深い罪悪感に襲われたり、内省する必要がないことである。西欧の指導者や世論形成者は自分たちの市民(彼らの臣民)のことを完全に知り尽くしており、多くの場合市民らが求める物を彼らに提供する。支配者と臣民とは一般的に言って共生している。彼らは互いに不平を言うが、ほとんどの場合彼らは同一の目標を抱いている。それは心地のいい生活をすることだ。極めて心地のいい生活だ。相手がそのために代償を払っている限りにおいては、心地のいい生活を送り続ける。富や労働力を提供し、しばしば自分たちの血を提供することさえも要求される。

文化的には、ヨーロッパや北米の市民は自分たちの贅沢な生活のために支払いをすることを嫌う。自分たちの生活が「贅沢」だと認めることを忌み嫌う。彼らは自分たちは犠牲者であると感じたいのだ。自分たちは「活用されている」と感じていたい。自分たちは全世界のために犠牲になっていると想像したいのだ。
そして、結局のところ、彼らは真の犠牲者を憎む。何十年も、何世紀にもわたって殺人やレイプを犯し、略奪し、軽蔑して来た相手を憎むのである。

最近起こった「難民危機」はヨーロッパ人が自分たちの獲物について抱いている悪意を表面化させた。彼らを裕福にし、その過程ですべてを失うことになった連中は不満を覚え、絶望感を味わい、軽蔑された。アフガニスタン人、あるいは、アフリカ人、あるいは、中東から、あるいは、南アジアからの難民であるにせよ同じことだ。あるいは、ロシア人であるにせよ。その一方で、ロシア人は彼ら自身に特有なひとつの範疇に収められるのである。

***
ロシア人の多くは白人に見える。かれらのほとんどはナイフとフォークを使って食事をし、お酒を飲み、西側のクラシック音楽や詩、文学、科学や哲学に秀でている。

西欧人の目には彼らは「正常」に映るが、実際にはそうではない。
ロシア人は何時も「何か別のもの」を求め、彼らは西欧人のルールに従って行動することは拒む。

彼らは西欧人とは違うことを頑なに求め、そっとしておいて欲しいのである。
戦いが引き起こされ、攻撃されると、彼らは応戦する。

彼らの方から戦いを仕掛けることは稀で、ほとんどの場合他国を侵略することはない。

しかし、脅かしを受け、攻撃を受けると、彼らは確固たる決意と戦力の下で応戦し、決して敗戦することはない。集落や都市は侵略者たちの墓場と化す。自分たちの母なる大地を防衛するために何百万人もの人たちが死亡するが、国家は生き延びる。そして、このような状況は何度も、何度も切り返されて来た。西側は何世紀にもわたってロシアの地を攻撃し、焼き払った。西側は教訓を学び取ることは決してない。誇りが高く、断固たる意志を持っている強力な国家を征服し、支配下に収めようとする自分たちの邪悪な夢を諦めることはないのである。
西側は、自分たちの力で防戦し、侵略に立ち向かい、特に、勝利を収めてしまう彼らのことは好きになれないのである。

***
そして、事態はそれよりも遥かに悪くなる。 

ロシアは次に示すような悪い習慣を持っている・・・ ロシアは自衛し、自国の市民を防護するだけではなく、植民地とされ、略奪されている国家、あるいは、不当にも攻撃されている国家を防護しようとして他国のためにも戦おうとする。

ロシアはナチズムから世界を救った。その代償として25百万人もの男女や子供たちの命を失ったが、ロシアは世界を救ったのである。勇敢にも、誇りを持って、利他的にそうしたのである。西側はソ連邦によるこの英雄的な勝利を許そうとはしない。何故ならば、その勝利は決して利己的ではなく、自分たちの犠牲の上に立っているからであって、彼ら自身の原理とは直接矛盾し、それが故に、「極めて危険でさえある」のだ。 
ロシア人は立ち上がった。1917年の革命で闘い、勝利を収めた。これは歴史上見たこともないほどに西側を震え上がらせた。完全に平等で、階級が存在せず、人種偏見のない社会を作ろうとしたからである。この出来事は国際共産主義を誕生させた。私は最近この出来事に関してThe Great October Socialist Revolution: Impact on the World and the Birth of Internationalismと題して本を書いた。

ソ連邦の国際主義は、第二次世界大戦の直後、すべての大陸で何十もの国々を直接的に、あるいは、間接的に支援し、ヨーロッパによる植民地主義や米国による帝国主義に対して立ち上がらせ、立ち向かわせた。西側は、特に、ヨーロッパは自分たちの奴隷を解放したソ連の人々を、特に、ロシア人を決して許そうとはしなかった。
それは人類の歴史の中でもっとも大規模なプロパガンダの波が実際にうねりを見せ始めた頃であった。ロンドンからニューヨークへ、パリからトロントへと、反ソビエトの網の目が構築され、大っぴらに反ロ・ヒステリーが悪魔のような破壊的な力で展開したのである。何万人ものジャーナリストや諜報機関の工作員、心理学者、歴史家、ならびに、科学者らが動員された。ソビエト的なものやロシア的なもの(多くは作り話であったが、栄光を持って迎えられたロシアからの反体制派を除いて)はすべて見逃されることはなかった。

偉大な10月ソビエト革命や第二次世界大戦前の時代の現実を遥かに凌ぐ話が組織的に作り出され、誇張され、西側の歴史の教科書やマスメディアの筋書きの中へしっかりと刻み込まれていった。それらの作り話には西側からの悪質な武力侵攻や攻撃はなかったものの、生まれたばかりのボルシェビキ国家を破壊する目的が与えられていた。自然なことではあるが、英国やフランス、米国、チェコ、ポーランド、日本、ドイツ、その他の国々の悪魔的な残虐行為に触れるスペースなどはまったくなかった。 

ソビエト的、そして、ロシア人的な見方は、一枚岩でできており一方だけに傾いている西側のプロパガンダの筋書きの中へ侵入することはとうてい許されなかった。
西側の一般大衆は自分たちに注ぎ込まれた偽情報を従順な羊のように受け入れたのである。そうこうしている内に、西側の植民地や従属国家に住む多くの人たちが同じような行動を取った。植民地化された人々の多くは自分たちが被る悲惨さについて自分自身を責めるように教えられた。

これはもっとも馬鹿げたことではあるのだが、それでも何らかの論理を持つ出来事が現れた。ソ連邦に住んでいる数多くの男女や子供たちが西側のプロパガンダに屈したのである。自分たちを、あるいは、偉大な進歩を遂げている国家が不完全であることを修正しようとする代わりに彼らは諦めてしまい、皮肉を込めて物を見るようになり、酷い「幻滅」を感じ、堕落し、単純ではあるが頑固なほどに親西欧的になっていった。 

***
歴史上初めてのことであり、多分、これが最後となるのであろうが、ロシアは西側に負けた。これは虚偽を介して、恥知らずの嘘を介して、西側のプロパガンダを介して起こったのである。

その次に起こったことは大量虐殺とさえも呼べそうだ。
ソ連邦がアフガニスタンに入った当初は静かではあったが、間もなく、米国との軍拡競争に陥り、最後のプロパガンダの段階には敵対的な西側諸国が支援するラジオ放送が溶岩のように流され、この戦争では瀕死の被害を被った。もちろん、現地の「反政府派」も重要な役割を演じた。

西側の「役に立つ馬鹿」と称されるゴルバチョフの下で、物事は極端な程に奇妙なものとなっていった。自国を破滅させるために彼が買収されていたとはとても思えないが、彼はソ連邦が地に落ちるようなことのすべてを行ったのである。それはワシントン政府が彼にやって欲しいと思ったことそのものでさえあった。そして、全世界の前で、偉大で、誇り高いソビエト社会主義共和国は突然激しい苦痛に身を震わせ、大きな叫び声をあげて、崩壊した。激しい苦痛に苛まれながら、急速に命を落とした。
ターボエンジン付きの新資本主義者であり、山師であり、成金志向の、混乱しきった親西欧派のロシアが誕生した。ロシアはアル中のボリス・イルツィンに率いられていたが、彼はワシントンやロンドンの政府や西側の権力中枢によって好感を抱かれ、支えられた。

それは完全に不自然で、病的なロシアであった。つまり、皮肉っぽく物事を見、思いやりもない誰かよそ者の考えによって構築されたものであった。ラジオ・リバティーやボイス・オブ・アメリカ、BBC、闇市場の山師、振興成金、多国籍企業のためのロシアだった。
今、西側はロシア人がワシントンの何かを干渉したと言おうとしているのかね?連中は気でも狂ったのではないか? 

ワシントン政府や他の西側諸国の政府はロシアを「干渉」したばかりではなく、彼らは大っぴらにソ連を粉々に粉砕し、その挙句に、その時点ではすでに半分死にかけていたソ連を蹴っ飛ばし始めたのである。そのことを完全に忘れてしまったのだろうか?あるいは、西側の一般市民は、またもや、あの頃の暗黒な時期に起こっていたことについては何も「知らなかった」のであろうか?
西側も貧困化し、傷ついた国家には唾を吐きかけ、国際的な合意や条約を順守することを拒んだ。ロシアに何の支援さえも申し出ることはなかった。多国籍企業が自由に放たれ、ロシアの国営企業を「私有化」し始めた。基本的に言って、これはソビエト連邦の労働者が何十年にもわたって血と汗を流して築き上げたものを盗み取る行為であった。

干渉だって? それどころではない。もう一度言っておこう。西側の行為は直接的な介入そのものであって、侵攻でもあり、資源の掴み取りであり、恥をも恐れぬ窃盗だ!このことについては私はたくさん読み、書きたいと思うが、このテーマに関しては今それほど聞こえて来ることはない。そうだろう?
ロシア人は被害妄想だと評されているところを見ると、その大統領も被害妄想となる!率直に言って、西側は大嘘つきだ。ロシアを殺そうなんてしなかった、と彼らは装っている。

あの頃の数年間・・・ 親西欧の数年間はロシアが西側の従属国家になった期間である。もしくは、準植民地であった!慈悲のかけらも見せず、外国からは何の同情も届けられることはなかった。たくさんの愚か者たち、つまり、モスクワや地方で台所にたむろす知識人らは、突然、目を覚ました。しかし、遅過ぎた。多くの連中は、突然、食べる物さえも無くなってしまった。しかし、彼らは今まで教えられて来た物事を入手した。それは「自由と民主主義」であり、西側スタイルの資本主義である。要するに、完璧なまでの崩壊であった。
それが「当時」どのようなものであったのかを私はよく覚えている。恐怖に駆られながらも、私はロシアへ戻り、モスクワやトムスク、ノヴォシビルスク、レニングラードで働いた。ノヴォシビルスクの郊外にあるゴロドク・アカデミーの学者たちはノヴォシビルスクの地下鉄に通じる真っ暗な通路で、酷い寒さの中、図書館の蔵書を売っていた・・・ 蓄えで凌いだ・・・ 年老いた年金生活者らはコンクリート建ての建物の頑丈なドアーの背後で飢えと寒さで死んでいった・・・ 給与の支払いが滞り、ひもじさがつのる炭鉱労働者や教師たち・・・ 

西側による死の抱擁に抱きすくめられたロシアはこれが最初にして最後であって欲しいものだ!ロシア人の平均余命は突如アフリカのサハラ砂漠の南側にある国々のレベルにまで低下した。ロシアは屈辱を覚え、凶暴化し、恐ろしい苦痛の中にあった。

***
しかし、悪夢はそう長くは続かなかった。

短期間であったとは言え、ゴルバチョフとイルツィン政権の下での数年間に実際に起こったことは決して忘れることは出来ないだろうし、決して許せるものでもない。

もうこれ以上して貰いたくないことについてはロシア人は完全にわきまえている!
ロシアは再び立ち上がった。巨大で、憤然とした、断固たる決意をもって自分の命を自分流に生きるのだ。貧困化し、屈辱を覚え、略奪され、西側の従属国となった国家から、この国は進化し、数年のうちに自由で独立したロシアが再度この地球上でもっとも発展し、もっとも力を持った国々の一員となったのである。

ゴルバチョフ政権以前の頃のように、再び、ロシアは不正の下に置かれ、西側の帝国によって悪辣な攻撃を受けている国々を助けることが出来るようになった。
このルネッサンスを指導しているのはウラジミール・プーチン大統領であって、彼は毅然としている。しかし、ロシアは大きな脅威に晒されている。そして、世界もまた同様だ。今は軟弱な政治家の出る幕ではない。

プーチン大統領は完全ではない。(そもそも、完全な人って存在するのか?) しかしながら、彼は本物の愛国者であり、敢えて言えば、国際主義者でもある。
今、西側はまたもやロシアとその指導者を憎んでいる。負けたことがなく、強力で、自由なロシアはワシントン政府やその補佐官が想像することができる中で最悪の敵である。

これこそが西側が感じている事であって、ロシアがそう思っている訳ではない。ロシアに対して行われたさまざまな事柄が存在するにもかかわらず、何千万人もの命が失われたにもかかわらず、ロシアは常に譲歩する用意がある。たとえ忘れることはできなくても、許すことは可能なのだ。

***
西側の精神状態には奥深いところに何か病的な部分がある。100パーセント、かつ、無条件に従属することにはならないような状況は西側としては受け入れることができない。西側は何事についてもコントロールし、それに関与し、それを掌握しなければならない。つまり、自分たちが例外的であることを感じていなければならないのである。たとえ人々を殺害し、世界を破滅させたとしても、世界の何処よりも優れていることを感じ取りたいのである。

例外主義の信仰は西側の本当の宗教であり、キリスト教に比べてもそれ以上の存在であって、西側は何十年にもわたりキリスト教において重要な役割を演じたことはない。例外主義は狂信的で、原理主義的で、かつ、疑問を挟む余地なんてない。

また、西側は自分たちの筋書きは世界中でたったひとつしかあり得ないと言う。西側は道徳上の指導者であり、進歩の光であり、管轄権を持つ唯一の判定者であり、権威者でもあると言う。
嘘の上に嘘が積み上げられていく。すべての宗教においてもそうであるように、擬似的現実が馬鹿らしくなればなるほど、その擬似的現実を支えようとする手段は過酷で極端なものとなる。作り話が滑稽になればなるほど、真実を抑圧するための手段はより強力なものとなる。

今日、何十万人もの「識者」、つまり、教師やジャーナリスト、アーチスト、心理学者、高額の給与が支払われるその他の専門家が世界中で帝国によって雇用され、たったふたつの目標を達成しようとしている。つまり、それは西側の筋書きを栄光で満たすこと、ならびに、その途上に立ちふさがり、西側に挑戦しようとする者については彼らの信用を台無しにすることにある。
ロシアは、ロシアの直ぐ後を追いかけ、ロシアの同盟国でもある中国とともに、西側がもっとも憎んでいる敵国である。

西側によって開始されているプロパガンダ戦争は非常に狂気じみており、酷く強烈であることから、ヨーロッパや北米の何人かの市民らはワシントンやロンドン、ならびに、何処からともなく流されてくる物語に疑問を抱き始めている。
その物語のどのページを開いてみても、まったくの嘘、半分が嘘、あるいは、半分だけが本当の話で満載だ。これは極めて複雑で、航行が不可能な、陰謀説に満ちた沼地そのものである。ロシアは米国の内政に干渉したとして非難されている。さらには、シリアを防護したとして、自衛の手段を持たず、脅迫を受けた国家の味方をしたとして、強力なメディアを持っているからとして、自国の運動選手に非合法な薬物を提供したとして、依然として共産主義者であるからとして、あるいは、今や社会主義者ではないからとして非難されている。要するに、ロシアは想像可能なことや想像が不可能なことのすべてに関して非難されているのだ。

ロシアに対する批判は完璧を極めており、非常に馬鹿げている。誰もが非常に根源的な質問を開始することであろう。たとえば、「過去においてはどうだったのだろうか?ソビエト時代に関する西側の筋書きはどうだったのか、特に、革命直後やふたつの世界大戦の間の時期はどんなだったのか?」 
今日、西側が行っている反ロシアや反中国のプロパガンダを分析すればするほど、ソビエトの歴史に関して西側の筋書きを研究し、それについて書いてみたいという私の決意は強くなる一方だ。私は、将来、こうした事柄について友人たちと一緒に、調査を行う計画だ。これらの友人はロシアやウクライナの歴史家である。 

***
西側の目にはロシア人は「反逆者」であると映る。

略奪者の側に加わろうとはせず、彼らは「世界の悲惨な人々」の側に立とうとして来たし、今もそうしようとしている。彼らは自分たちの国土を売ることは拒んだし、自分たちの民衆を奴隷のように扱おうとはしなかった。彼らの政府はロシアを自給自足経済にしようとし、完全な独立化を図り、裕福で、誇り高く、自由な国家にしようとしている。

「自由」や「民主主義」、その他の文言は世界中のほとんどの地域においてまったく違ったことを意味する。西側で起こっていることはロシアや中国においては決して「自由」と描写されることはない。また、その逆も真なりだ。
不満に苛まれ、崩壊する寸前の、噴霧状態と化した、うぬぼれの強いヨーロッパや北米の社会はもはや自国の市民を動機づけようともしない。毎年、何百万人もの人たちがアジアや南米、アフリカへさえも逃げ出している。空っぽで、意味がない、感情面では非常に冷たい社会からは逃げ出そうとしているのだ。しかし、彼らにどのようにして生きるのか、あるいは、生きないのかなんてことはロシアや中国の知ったことではない! 

そのうちに、ロシアや中国の偉大な文化は自由や民主主義に関して西側にとやかく言って貰う必要がなくなり、言って貰いたいとは思わなくなるであろう。
彼らは西側を攻撃することはないし、そのお返しとして攻撃されたくもないのだ。

何百にもなる大量虐殺に関して責任があり、全世界で何千万人もの人たちを殺害した国家が他国に対してお説教をしようとする姿を見るのは実に気恥ずかしい。

多くの犠牲者は脅威のあまり、口外することさえもできないでいる。
でも、ロシアはそうではない。

必要ならば自国を守るということは冷静な考えであり、優雅でもあるが、完璧な決意を要することでもある。自国だけではなく、この美しいけれども、深い傷を負った地球に住む数多くの人々についても然りだ。
ロシア文化は膨大である。詩や文学から始まって音楽やバレー、哲学に至る・・・ ロシア人の心は柔軟で、愛や親切に遭遇するといとも簡単に融けてしまう。しかし、何百万人もの無実の人々の命が脅威に晒されると、ロシア人の心と筋肉は急速に石や鉄と化す。そのような瞬間においては、勝利だけが世界を救済する場合ロシア人の拳は石のように堅固になり、ロシア国家を防御する手段についてもまったく同じことが言える。

加虐的で卑劣な西側にはロシア人の勇敢さに匹敵するものはない。
希望と将来は両方とも東へ向かって不可逆的に移行しつつある。

そして、それもまたロシアが西側によって徹底して嫌われている理由である。
出典:New Eastern Outlook

<引用終了>

 
これで引用記事の全文の仮訳が終了した。

世界は、ごく単純に描くとすれば、資本家と消費者集団とに分けられ、覇権国とその他のすべての国々とに分けられる。米英両国の主流メディアであるニューヨークタイムズやBBCは資本家の論理でニュースを流す。われわれの多くがすでに知っているように、多くの場合はフェークニュースである。
一方、ここにご紹介した記事の著者は消費者を、あるいは、覇権国によって侵略され、圧倒的な武力で蹂躙されている国々を助けようとする。少なくとも、民衆の側に立って、擬似的現実ではなく、本当の現実を報じようとする。ドキュメンタリー映画を作り、本を書き、代替メディアに寄稿している。まさに、ロシア的な心情の持ち主である。

著者はこう述べている:
西欧人の目にはロシア人は「裏切り者」として映る。略奪者の側に加わろうとはせず、彼らは「世界の悲惨な人々」の側に立とうとして来たし、今もそうしようとしている。彼らは自分たちの国土を売ることは拒んでいるし、自分たちの民衆を奴隷のように扱おうとはしなかった。彼らの政府はロシアを自給自足経済にしようとし、完全な独立化を図り、裕福で、誇り高い、自由な国家にしようとしている。
この部分は実に秀逸である。

さらに、著者は次のようにも述べている:
ロシアはナチズムから世界を救った。その代償として25百万人もの男女や子供たちの命を失ったが、ロシアは世界を救ったのである。勇敢にも、誇りを持って、利他的にそうしたのである。西側はソ連邦によるこの英雄的な勝利を許そうとはしない。何故ならば、その勝利は決して利己的ではなく、自分たちの犠牲の上に立っているからであり、彼ら自身の原理とは直接矛盾し、それが故に、「極めて危険でさえある」のだ。
下記の文言を今日の国際政治に、特に、英国のソールズベリーで起こったスクリパル事件と並列させて全体像を見ようとすると、英国政府がロシアを執拗に敵視する政治姿勢がはっきりと見えて来る。しかも、これは歴史的な背景を見ながらの理解である。スクリパル事件は巨大な氷山の一角に過ぎないが、西側の精神構造、特に、その偏狭さが典型的には資本主義を守ろうとする形で「ロシア嫌い」として表面化しているように思われる。

「西側は、特に、ヨーロッパは自分たちの奴隷を解放したソ連の人々を、特に、ロシア人を決して許そうとはしなかった。」
ロシアを歴史的に、そして、文化的に眺め、西側の政治姿勢や文化との比較を行ったこのアンドレ・ヴルチェクの論評は実に素晴らしい。国際政治に関して毎日流されてくるニュースを少しでも深く理解し、西側の主流メディアの共鳴箱にならないでいようとすれば、彼の物の見方は不可決であると言えよう。

 

参照:
1Why the West Cannot Stomach Russians: By Andre Vltchek, New Eastern Outlook, Mar/09/2018

 

 

 

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